チリの風 その222  07年5月6日―13日

  チリの風 その222  07年5月6日―13日

土曜日、日本人学校でいつものようにサッカー教室をしましたが、その午前中、係りの人から電話がありました。大気汚染で今年初めての準非常事態宣言が出ていますが、サッカー教室を実施しますか?との問い合わせ。もちろん、やりますと回答する。というのは学校のあるラ・デエサ地区は郊外で汚染は中心部より少ないことと、毎日練習している人が一日休むのは影響しないが、たまにしかスポーツをしない人は身体を鍛える必要性から、少々の大気汚染を気にするよりスポーツをするメリットの方が大きいわけです。
ちゃんと子供も集まって(何人かの大人も)練習は通常どおり実施しました。


(政治)
1) 与党連合の中心DCの党大会が始まりました。これに先立って、同党の元党首が与党連合は崩れている。野党と組んで政権をとることさえ視野に入れていると爆弾発言。いよいよ与党連合の最後が近いのか?
バチェレットはその大会でDCなしには与党連合は成り立たないと分裂回避に必死。しかしDCの主要メンバーで前官房長官のサルヂバルはトランサンティアゴは今までの与党連合の政策の中で最悪と決め付ける。このおっさんと月曜日の大使館での小川大使送別会で一緒になった。その時トランサンティアゴをどう考えるか聞いてみようと思ったのだが、嫌味になるかとやめてしまった。聞いていれば、きっとこの種の強気の発言がドンドン飛び出したのだろう。
このDC総会で元大統領のフレイはバチェレットを批判するだけでなく次の選挙に負ければ巨額の資産を右翼の野党連合にお土産として残すのかと政府の予算の使い方にもクレームを入れた。今まで与党側は負けることを考えていなかったので、銅価格上昇でコデルコの利益が上がるほか、所得税、ローヤルティなどドンドン貯金を増やしてきたが、負ければそれをそっくり次の政権に引き渡してしまうことになるわけだ!?
最後にトランサンティアゴは計画段階から間違っていた。従いどんなに努力しても上手くいくはずがない。世界の他の主要都市のように市内の交通機関は公共であるべしとぶちあげる。
翌日、政府はもちろんこれを強く否定。問題継続でしょうね。
キリスト教民主党だけでなく社会党も党内分裂の危機になり、党首が会話をしようと党内反対派と対談をし、団結を図っている・・・。

2) トランサンティアゴの最後も近い?
何しろ、今年2月に始まったこの新交通計画に、その準備の始まった2004年から今日まで巨額の金がつぎ込まれているのに、最悪の結果を招いているのは周知の事実。今まで使ったお金で全国に30の大型病院が設立できるとか。フーム、もったいない。
国会に3億ドルの追加予算申請が提出され、運輸大臣コルタサルはこれが承認されなければ、現行の運賃380ペソを上げざるを得ないと脅迫。政府は一体どれだけ追加すれば計画が成功し一本立ちできるのか良く分かっていないのがつらいところ。これを泥沼作戦と言うのでしょうね。
土曜日、地下鉄の車両故障から操業を3時間もストップ。乗客を全部外にほりだしましたが、代替のバスが来ず、大混乱。多数の市民が怒り狂っていました。良かったですね、事故が土曜日に起きて。これが週日なら、大惨事まで起こりかねなかったわけですから。
この新計画が開始されてもう3ヶ月ですが、依然としてバスの本数が少ない、地下鉄の乗客が多すぎる問題は解決されていません。
つまり2月10日のスタートは間違いだったことがはっきりしています。
サンティアゴの新交通計画に多額の投資がされているのとは正反対に第5州バルパライソトロリーバスが経営不振から姿を消そうとしています。環境汚染をしないトロリーは有用なはずですが。

3) 元アメリカ副大統領のゴアが來チして環境保全のプレゼンテーションを行いました。それにはチリ政財界のトップが参加しましたが、ゴアは地球の温暖化問題でチリは最も大きな被害を受ける可能性があることを協調しました。バチェレットは経済成長を犠牲にせず、環境保全を図ることは可能とし、先進国の決定を待たずチリ独自でも汚染阻止の運動を開始するとコメントしました。
地球を一番汚染しているのはアメリカと中国でしょうが、本当にゴアが地球を心配するなら97年のキョウト批准を遵守しないアメリカの政策を替えてほしいもの。またチリも自然保護に本気に取り組むなら、世界の環境汚染の最高責任者たる中国にすりよる現状は不可解。
それにしてもクリントンは好きだけど、ゴアはなんだか・・・(根拠のない、単なる私のフィーリング)
   このプレゼンにラゴス前大統領も出席しましたが、彼が国連の環境保全委員に任命されたことを皮肉るグリーンピースなどの運動家に対し、「あのおぼっちゃまたちは何も分かっていない」と嫌味たっぷり。しかしどっちが嘘つきか、国民は見ていますよね。
   温暖化の影響か、ラ・ニーニャ現象か、チリの降雨が減少し、第四州を筆頭に砂漠化が進行しているのは確かめられています。

4) 教育問題
今週、学力テストの結果が発表になりました。どこの学校の平均点が高いか低いかなど、日本と同じようなことが話題になりますが、問題は小学生のレベルの低さで、算数や国語で学校の勉強についていけない子供が多い実態が明らかになりました。新聞に投書があって、「この10年間、教育が大切とし、それまでの何倍もの費用をかけた結果がこれでは、政府、文部省は何をしてきたのか?」本当に何をしてきたのかな?

5) もう5年も立ったのですが、自動車の車検場に関する汚職の罪に問われているトンボリーニは刑の軽減と公職復帰許可を勝ち取りました。で、また政党に復帰の予定。しかし誰がこうした汚職人間の政界復帰を画しているのでしょう。刑期が終わっても公職にはつかせるべきではないでしょう。彼の事件で関連して有罪になった他の議員も刑の軽減となりました。

6) チレ・デポルテ関連の法案審議が与党側の議員が賛成しなかったため成立しませんでした。欠席(もしくは否認)した与党議員を懲罰委員会にかけると憤って見ても、もう与党内の足並みは無茶苦茶で、大統領が小異を捨てて大同につこうなんて言っても誰も聞いていません。


(経済)
1) 国際競争力
06年に23位だったチリの競争ランキングは07年26位に落下。この理由は06年の経済成長率が低かったからと説明されています。
日本は06年は16位、それが07年は24位。どうして?
しかしこのランキングの世界1位はアメリカですが、どうしてアメリカが1位なのと聞きたくなりますね。中国が15位と高いのも理解できないけど。

2) しかしチリの07年は好調に推移で、最初の4ヶ月の平均経済成長率は5.9%と予想以上の数字。このまま好調持続できるか?
この好調の原因としてアメリカは伸びていないが、それ以外の重要貿易国が高い成長率を記録しているのでチリは外需としてその好影響を受けた。政府の予算使用が前年対比8.9%アップと大きく伸びているのが内需に影響。06年伸び悩んだ工業、鉱業界が今年は好調などを上げています。

3) 鉱山大臣がパキスタン訪問。パキスタンには発掘されていない銅鉱山がたくさんあって、それをこれから開発していこうとするらしい。つまりこの訪問は投資先を捜す民間会社の幹部の仕事という感じ。ルクシックなんかすぐにでも投資をしそうですね。
   今年の初め1ポンドあたり2ドル50セントを割っていた銅の価格が今週は3ドル60セントを越え、専門家は4ドルを越えると予想しています。チリにとっての神風はまだ続いているようです。


(一般)
1) 先週から始まったTVN(日本のNHK)の番組エポペヤは大きな反響を呼びましたが、私はなぜペルーが過激な反対をするのか理解できません。
(もっともガルシア大統領はチリとの外交関係を悪化させるほどのインパクトは持たないと評価しています)
百年ちょっと前の太平洋戦争をチリ、ペルーそしてボリビアの立場から見たドキュメンタリーですが、ちゃんとペルー、ボリビア歴史学者も登場させ、彼らの見た戦争を語らせています。チリはこの戦争を、ボリビアが協定を破って新たな税金をかけてきたためとし、ボリビア側は、わずかな税金を払わないためチリは戦争を仕掛けてきたとしています。しかし当時ボリビア領土だった現在のチリ第2州の州都アントファガスタの住民は大半がチリ人だったというのは皮肉もの。ボリビアは太平洋に興味を示していなかったことがはっきり分かる。さてこの後、番組はどう進むのかな?

2) 先週のトップの話題だった林業会社のストは解決しました。カトリックの神父が中に入って会社側と労働者側が面談し、合意に達したもの。65000ペソの昇給や時間外手当ての支給など、労働者側の要求が大半のまれ、争議の締結になったもの。

3) 世界観光都
どれほど客観性があるのか知りませんが、ロンリィ・プラネット社の世界の観光すべき都市ランキングが発表されました。世界では1位パリ、2位ニューヨーク、3位シドニーとか。まぁ私も納得できそうです。ラテンアメリカでは1位ブエノスアイレス、2位リオ、3位メキシコ市でサンティアゴは7位(全体では200都市中の66位でした)まぁまぁですね、


(スポーツ)

1) テニス
  テニスの話題がチリの風から消えてもう何週間になるかな?しかし今週は違います。ATPのローマ大会でゴンサレスは並み居る強豪を押しのけて決勝まで進出しました。世界2位のナダンと対戦。ちょっとテレビで見ましたが、すごい差があってぼろ負け。でも決勝まで来たからまぁええやん。ちゃんと世界ランキング上位を維持しています。この大会、実は3回戦でチリ同士の戦いがありました。そこまで勝ち進んだマスとゴンサレスが対戦したわけ。マスも精進すれば勝てる力があるのに、なんだか芸能界の方に目が行っているようで・・・。

2) サッカー
  先週メキシコに行ってアメリカに負けてしまったコロコロですが、今週はその続きのリベルタドール杯のホームゲーム。さすがにチリでは勝ちましたが、2対1で、向こうで3対0で負けているので、合計得点で敗れ、もう3回戦には進めません。
  国内リーグは首位のコロコロと2位のカトリカが勝って、優勝争いは最後までもつれそう。

以上