チリの風  その221 07年4月30日―5月6日

チリの風  その221 07年4月30日―5月6日

秋が一段と深まり、木の葉が日に日に舞い落ちています。
朝晩はもう寒いほどで、私のアパートでは集中暖房のサービスが今週から開始されました。さて遊びほうけた夏は終わり、これから仕事の秋、芸術の秋です。
やっとアフリカの旅その3が完成しました。読んでください。私たち二人が段々アフリカの色に染まってくるのが感じてもらえるはずです。


(政治)
1) あかんな。何がと言うて、チリの将来です。と、大上段に今週のチリの風は始まりましたが、実際、1979年からチリに住んでいる私の目に入ってくるチリは毎年、生活レベルが向上しているのとは裏腹に国の将来は暗い、苦しいと見えます。まぁその内容は順を追って説明する必要がありますが、仕事でも何でもすぐに収穫はありません。こつこつ行くしかありません。それを忘れてくれば・・・・
ところで現在のチリで最重要問題はトランサンティアゴですが、メトロの社長(日本なら地下鉄総裁とでもいうのでしょうか)が辞任しました。運輸大臣はトランサンティアゴの運営にフレッシュマネーが必要で、もう銀行・金融筋からのクレヂットはないから、地下鉄の資金をしばらく貸してほしいともちこんだらしい。これは違法でも、不明朗でもありませんと彼は説明しているが、この新交通計画が開始されるまで地下鉄はサンティアゴの誇りとまでいわれ、市民に信頼されてきたのに、今では満員で乗れない乗客が毎日怒りまくっている状態になっています。社長としても憤懣やるかた無しだった所へこの借金の要請、おまけに国営企業の赤字トップと言う不名誉な状態が重なりました。彼は他のダイレクタ−との意見の違いから辞任すると正面切って政府を批難していませんが、言っていることは同じ。さぁこの波紋はどのように政界に影響するか?
ところで新交通計画のバス路線が大分変更になってきました。血が通ってきたと言うか、乗客が行きたい所へバスが走るようになってきました。例えば、交通の要所から病院・役所へ通じる路線がいくつも新設されました。従来は全くそう言う点を考慮せず走行距離などからルートが机の上で計算されていたわけです。
またこの新交通計画の失敗は消費者動向に影響しています。つまり経済の先行きが不透明となり、従って一般消費者が財布の紐を締めようとなっているらしい。

2) 政界動向
(バチェレット大統領)
あかんな、彼女の人気。毎回、信任数が落ちて、最近の調査ではもう過半数が彼女を嫌っています。仕事が出来ないからね、彼女は、無理もない。
今週、最近新州に昇格したバルディビアに行きましたが、その後に予定されていたチロエ島行きをキャンセルしました。新聞の見出しに、「怖がったバチェレット」と出ました。これは前大統領ラゴスが決定した本土と島を結ぶ橋の架橋をバチェレットが経済効果がないとご破算にしたため、島での彼女の評判は悪い。つまり先週地震の起こったアイセンに行って、帰れコールの洗礼を受けた彼女は同じ失敗をしないため訪問をキャンセルしたと言うもの。さてどうかな。

(ロンゲイラ)
次の大統領選挙に野党側のUDIから立候補表明していたロンゲイラが自党の援助がないとして自ら出馬断念を表明しました。彼は野党の中で一番力があるのですがその独善的なやりかたから反対が多く、支持者の数より反対者の数の方が圧倒的に多いとされています。絶対入れたくない候補の首位では勝ち目がありませんね。

ラゴス
ラゴスがなんと国連の環境保護委員に認定されました。これに関し、自然保護団体は笑ってしまう、何故なら彼が大統領のとき行った20以上の自然保護案件の公約は大半が実現しなかった(全くの嘘つきと言うこと)と厳しく糾弾しています。
とにかく失地回復のためには公職につくのが一番と彼は考えたのでしょうが、国民はちゃんと見ていますからね。

(ピニェラ)
一方ピニェラはニューヨークで会議に参加。そこでクリントン(元アメリカ大統領)やゴンサレス(元スペイン大統領)、カルド−ソ(元ブラジル大統領)などと面談して国際的な交流の場を広げています。
ちゃんと目立つことをやって、新聞にそれが載るのは実に上手いやり方。


(経済)
1) もう一本調子です、銅の価格が上昇して、ペソの価格も上がっています。つまり対ドルの切り上げが急です。金曜日は1ドル523ペソで締められ、過去12ヶ月で最もペソ高になりました。
で、新聞の投書にチリのような小さな国で独自の通貨の維持は困難だから、ドル(もしくはユウロ)にリンクするのが良いとありました。これが国会で議論されるような日がくるのかな?

2) チリの貿易の進歩
1990年から今年まで、チリの輸出は大きな進歩を遂げました。90年に122ヶ国だった輸出先が昨年は181カ国になり、輸出品目も5215にも及んでいます。輸出業者も4100社から7000社に増加。チリが自由貿易協定を結んだのは世界の17地域で、これらの国(地域)は世界経済の86%
を占めている。チリの積極的な政策がずばりと的中していることを示した数字ですね。

3) ペルーの経済もかなり良くなってきたようですが、それにつれチリ資本が続々とペルーに進出しています。今週話題になったのは不動産で、チリ資本の会社がペルーに進出して事務所やマンションの建設管理を行い始めています。金儲けのためなら少々の危険には目をつぶるということでしょうが、チリ資本もそれくらい力をつけてきたわけですね。


(一般)
1) 今週の最大の話題は5月1日メーデーのことでしょうね。毎年同じ繰り返しで見ていて悲しいですが、最初、労働者組合の行事があって、その後、警察とデモ隊の一部が衝突します。しかし毎年同じことを繰り返さず、どうして警察はデモ隊の取り締まりが出来ないのか。警察で力が足りなければ軍隊を出せばすむはず。例えば、陸軍にアラメダ通り、海軍にアルマス広場周辺警備とか割り当てて競合させれば、浮浪者の石投げや商店への略奪なんか一件も起こらないと思います。この話を会社ですると、それをすると第2のピノチェットが出る可能性が膨らむから、政府はそれを怖がって軍隊を使うわけがないというのですが、どうでしょう。

2) しかしそれにもまして世間を驚かせたのは8州の林業労働者対警察の争いで、なんと警察官のいるところへ突進してくるローダー(重機)めがけて警察がピストルを撃ちまくり運転していた人間を射殺しました。いや単なる事故ですと警察は逃げようとしたはずだが、それを撮影していたテレビ局があり、確かに数人の警官が運転手を銃撃しているのが放送されました。労働組合、地域の住民は怒り狂っています。しかしそのセルコ林業と労働者の間のストとその解決策を探っているときに起こったこの事件は後を引きますね。来週はどのように進展するのか?

3) 先月問題になったTVN制作の太平洋戦争のドキュメントが放映されました。その番組エポペヤは今週の日曜日から3週間連続で放送されます。今週はその1回目でした。
テレビの前に座って興味深く見ました。ペルー、ボリビアの神経を逆なでするのはどの場面かと思ってみながら。詳しい感想は来週のチリの風に書きます。

4) サンティアゴ郊外のピルケにセクト
セクトというと日本ではオウムの印象ですが、最近ピルケのグループがマスコミの話題になっています。発端は彼らの共同体の庭から死体が発見されて、その死体(女性)は妊娠しており、出産の問題から死去したので埋葬したとされていますが、当局に届を出さず勝手にどこへでも死体を埋葬できるわけがありません。そのグループは近代医学(薬品)を認めない、使用しないと考えているらしく、その共同体にいる妊娠している女性や、数名の子供の保護を政府がしようとしています。
メンバーは富裕な層の子弟が多く、元州知事の子供・孫も入っているとかで、テレビのニュースに出たその元知事は何がなんだかさっぱりわからん。早く正常な生活に戻ってほしいと答えていました。

5) チロエ島で生まれ国籍をアルゼンチンに替えた(元)チリ人が、アルゼンチンで同大統領の住居を襲うと言う事件がありました。この男はトラックを盗み、途中、何台もの自動車と衝突しながら、大統領の住む家を目指し、その近くで転倒して逮捕されたもの。住居に車をぶつけて大統領暗殺の意志があったのか、その真意は良くわかりませんが、車で大統領の家に突っ込んで何ができるのかな?

6) 日本料理の進出
なにしろ10年前たった10店しかなかった日本料理店が現在は200店に増加とか。大半は安易なスシ店ですが、それでも日本料理がチリ社会に認知され始めたと新聞に報道されました。トウフも人気があるらしい。
他の東洋料理と違って日本料理はチリの味と似たところがあるとか(ホンマかな?)


(スポーツ)
1) ちょっと前まで、無敵を誇っていたコロコロが最近は様子が変わり、苦戦続きです。リベルタドール杯の1回戦の最終戦はアルゼンチンで敗れ、続いた2回戦の初戦、メキシコでの対アメリカ戦でまさかの0対3の敗戦。
国内リーグも、先週は今年は弱いチリ大学に引き分け、今週もコブレ・ロアと引き分け。2位のカトリカとの差がわずか3点に縮まりました。後5試合を残しますが、その中に両チームの直接対戦が残っているので、リーグ戦の成り行きが楽しみです。
それからチリを代表するサッカー選手サモラーノが引退してから始めて監督をやってみたいと発表。チリでもっとも有名なプレーヤーだった彼はトランサンティアゴの宣伝に出たのが失敗で評判を落としていますが、さてどうなるか?
同じ監督の話題ですが、2部リーグ最下位で今年まだ一回も勝っていないテムコが新監督就任で大騒ぎ。今週の地元の試合はスタヂアムが超満員になりました。最下位のチームの試合にどうして?と思われるでしょうが、その新監督ボンバレというのは今までチリナショナルチーム代表監督を狙って画策しテレビやマスコミで現監督をこきおろしていた人間です。もちろんその批判に何らかの価値があったからこそ一部のファンの間で、彼がどこかの監督になればという期待感があったわけです。従い今回今まで大口をたたいてきたのは本当だったのか、口先だけだったのかはっきりします。彼は2部リーグを早く乗り越え、1部リーグで活躍して同チームをリベルタドール杯に出場させると公約しています。
ところが今週も今までどおりの敗戦。新監督は出発を勝ち星で飾れませんでした。


以上