チリの風  その220  07年4月22日―29日

チリの風  その220  07年4月22日―29日

我慢して毛布を使いませんでしたが、とうとう今週は最低温度が4度にもなった夜もあり毛布を一枚使うようになりました。やせ我慢の限度でした。
大気汚染がひどくなり今年初めて準非常事態宣言がだされました。その日は排ガス非対策車は40%の走行制限になりました。トランサンティアゴで空気がきれいになるという神話もこれまでかな。確かに週末、空気がにごって街の後ろのアンデス山脈が良く見えなかったほど。
ところで、このチリの風にリンクしているジャパン・フライの魚釣りの話は面白いですね。魚を釣る楽しさが伝わってきます。もっとも私は魚釣りは未経験で、どうして私は魚釣りに興味がないのか自分でもわかりませんが。
アフリカの旅その2を読んだ読者から、藤尾さんが一人で旅しているならともかくバレリアさんと二人でよくそんな危険な所へ行きますねと、お褒めの(お叱りの)コメントを受けましたが、その3も完成寸前。来週には発表できそう。


(政治)
1) 先週の地震の話題は今週も毎晩のテレビニュースの中心話題です。まだ7名の行方不明者がいて、必死の捜索中。それと「地震津波は起こりません、大変なことが起こるという流言に惑わされないように」とする政府の配ったパンフレットはなんだったのか問題になっています。11州の州知事はこれに関し、パンフレットを制作した今年1月段階ではそれは真実だったと反省の色なし。しかし、おばちゃん(州知事は女性)、それを配ったのは地震が起こった3月ですよ。いったい住民の不安、不快、不満をわからんのかと文句を言いたい。
バチェレットはどこかの集会で、「チリに広がっている悲壮感、不満感が私には良く理解できない。失業率は下がっているし、私の任期が終わるときは今よりきっと素晴らしいチリになる」と先行き不安を広げようとする野党の作戦に国民が乗ってしまったと不満げに話しているのがテレビのニュースに出ました。オバちゃん、それは違うでしょう、失業率だけを取り上げるのは。この地震にせよ、首都圏のトランサンティアゴにせよ、解決のない汚職問題にせよ、問題山積で、指導力のなさを隠せないオバちゃんの政権に国民が見切りをつけてきたんだよと教えてあげたいですね。
地震の話に戻りますが、行方不明の方々が早く見つかりますように。それからツナミのあった地区はサーモンの養殖所がたくさんありますが、大量のサーモンが生簀から海になだれ込みました。それらが生態系に大きな影響を及ぼすとする声と、餌を与えられていた魚は自然界では生き残れないとする声が相対しています。

2) 次期大統領候補の話が毎週賑わっています。まだおばちゃんが大統領になって1年と言うのにもう彼女に見切りをつけて、次の勝負を狙う人が沢山いるわけです。しかし今週のニュースは政府側にはショッキングでした。すなわち与党のどの候補もピニェラに勝てないとしています。つまり野党側はもうRNのピニェラで決定ですね。ランチリ航空などをもつ彼は選挙資金はあまるほどあるし、口も立つ。ただ問題は所属するRNがもう一つの野党UDIに比較すると弱く、例え彼を最終的に支援することになってもUDIが随所に口をはさみピニェラのやりたいような政治が出来ないはず。
与党側の主な候補は3人で、前大統領のラゴス、現在米州機構の議長を務めるインスンサ、それにDCの党首アルベアルです。ラゴスは今までの政治的沈黙の原因を現大統領を責めないためとし、彼女が上手く舵を取っていないことを認めたため、バチェレットとラゴスの関係は悪化の模様です。それにしても汚職にまみれた政治を続けたラゴスがまだ候補者になるなんてチリの国民は何を考えているのか?最も隣国ペルーでは最悪大統領だったガルシアがまた大統領になっていますからね。
ピニェラはUDIの干渉を嫌って、右翼同盟からRNを離脱させ、与党の中で中道のDCを左翼から切り離させて合流する。これが勝利シナリオでしょうね。

3) 下らない気もするが、保険金融庁の長官が辞任しました。来週、国会で彼の履歴についての疑問に説明を求められていましたが、その前に逃げ出したもの。ちょっと前も同じような例があり、チリの役人は自分の経歴について思い違いや、書き間違いをする人が多いようです。彼の場合は資格がないのに弁護士としていました。


(経済)
1) 政治はレベルの低い戦いが続いていますが、経済は今年も堅調です。まぁ銅の値段が高いから国庫に金があふれている、大雑把に見るとそうなるでしょう。
なにしろ、この1−3月の数字で収入は99億ドル(対前年13%アップ)支出は62億ドル(5%アップ)つまり37億ドルの黒字で、これは過去にはなかった数字、また07年の目標の半分を3ヶ月で達成らしい。
隣国が羨ましがるのが良く分かる。しかしこれは国民一体になって働いた結果と言う気がしません。政府が何もしないでもこんな数字が挙がってくるという感じ。違うかな?私の見方。

2) もう銅頼みのチリ政府ですが、今年も銅の価格が高値安定で、陰りが見えません。さて世界1を続けていたコデルコ銅公社を抜いてエスコンディーダ鉱山が世界1の銅生産マインになったようです。私はその鉱山を採掘が始まる前、つまりまだ露天掘りの穴が開いてない状態のときに、訪問していますが、とうとう世界1ですか。灌漑深い。

3) グーグル・アースで世界の地名を探すのは楽しいものですが、チリ外務省はこのほど正式に同社にチリ南部11州のオヒギンス村が隣国アルゼンチンの領土となっていることを訂正するよう注意しました。そんな些細なこと・・・ではすまされませんよね。


(一般)
1) 交通の話題二つ
  一つはもちろんトランサンティアゴ。一向に改善されぬオペレーションに市民の怒りは爆発寸前ですが、今週はそのオペレーション用に準備された備蓄金がわずか2か月でほとんどゼロになったらしい。国際金融機関はこれ以上トランサンティアゴへ貸し出すつもりはなさそうで、いつどのバス会社が金融不安から倒産するか分からないとか。次の非常用積立金は7月1日で、全バス会社分を合計すると2000万ドルほどになり、それを払わないと契約上、この新交通計画から外されることになる由。ところがその資金がどこも出せないらしい。7月1日は大変なことになりそうですね。
  それからバスのただ乗りが問題になっています。いつか私はただ乗り4人組と対決しましたが、もう今ではおばちゃんでも後ろのドアが開くのを待ってちゃっかりただ乗りするらしい。テレビ・ニュースであなたは今、ただ乗りされましたがとカメラを向けられると、あらそうだったかしらなんて言っています。モラルの問題。
  もう一つはチリの国鉄の話題です、
  なにしろラゴスの時代に鉄道を南部まで通すと全力で線路を敷きましたが、ほとんど全部の投資が無駄になっています。サンティアゴコンセプシオン間は07年3月から不通。サンティアゴーテムコ間は06年6月から不通。ビクトリアープエルト・モン間は07年3月から不通。不通ですよ、すべてこれだけ不通とは普通ではありません。しかしすべての路線で何十億ドルがつぎこまれ、全部で1000億ドルの投資と言われます。開通式にはラゴスが鼻高々でテープを切っていましたが、こんな結果で誰も責任をとらないなんて悲しい。国会は何をしているのかな?もちろん国鉄は今年も来年も赤字が見込まれています。前国鉄社長は「不正は全く無い、すべての資金は現在線路、駅舎となって今も残っている」と平気です。ところでこの国鉄社長は歴代DCから出ているらしい。チリってそう言う点、完全に政治が牛耳っています。コデルコ総裁もずっとDC党員です。

2)地球と似たような惑星が太陽系の中で発見されたと言うのは世界中に報道されましたが、その星を発見した天文台はチリの第4州にあるラ・シジャでした。わずか光速で20年の距離なので、一度探測機を送ってみれば面白いですね。

3)マリファナ
  マリファナは世界的に使用されているライト・ドラッグですが、国連の保健機構の発表では、ラテンアメリカで一番使用率の高い国がチリとなっています。何と5.6%、2位はベネスエラで3.3%ブラジルは一番低く1%。こんなもんでトップになりたくないですね。マリファナの本場のジャマイカなら20%くらいになるのかな?医者の中にはマリファナはライトではないとする人もいますが。
  確かに犯罪をおこして逮捕された人間の半数はその1ヶ月以内にマリファナの使用をしたとする統計もあり、やっぱり麻薬は身体に悪いだけでなく社会に悪影響を及ぼしています。
  ところで1980年にチリ人は一人当たり42リットルのワインを飲んでいたのに2006年には年間14Lと激減しているらしい。まさかその分、マリファナにまわったんじゃないでしょうね(正解はワインから他のアルコールに替わっていったらしい)


(スポーツ)
1) 南米のクラブチームカップであるリベルタドーレスカップの1次リーグ予選は今週で終了。その最終戦が行われました。
予選6組みのコロコロはそれまで勝ち点9で、敵地のブエノスアイレスに飛び、リベルプレーと対戦。これに敗れたので、勝ち点9のままでリーグ戦を終了
一方、予選2組のアウダックス・イタリアーノは1次リーグ戦の最終戦を敵地でサオ・パウロと対戦、壮絶な点の取り扱いになり、何と2対2で引き分け。勝ち点を11として1次リーグを終えました。
さてクイズ。じゃこの2チームのうち、どちらが2次予選に進めたでしょう。もちろん勝ち点11のイタリアーノでしょうと答えたあなたは、失格です。そのグループは最激戦グループで、勝ち点11でも4チーム中3位で失格。コロコロはわずか9点でも4チーム中1位で突破。次はメキシコのアメリカと対戦です。どうなるかな
一方国内リーグは首位のコロコロがチリで人気を二分するチリ大学と日曜日に対戦。国立競技場を満員にした。結果はゴール無しの引き分け。
しかしサッカー場に向うファンがその途中の道筋で乱暴狼藉を行うと言うのは昔からある話だが、この日、バス停でバスが来るのを待っていたバレリアとほかの女性のところへコロコロ・ファンが近づいて二人のハンドバッグなどを奪おうとした事件が起りました。必死の抵抗で、かなり殴られたりしたらしいが、結果的には二人とも物は盗まれずにファンは通り去ったとか。しかし現実のチリを表す悲しい事件だ。二人はもうバスを待たないで、通りかかったタクシーでそこを逃げ出したとか。


以上