チリの風  その219  07年4月16日―22日

 チリの風  その219  07年4月16日―22日

サンティアゴは気持ちの良い毎日です。朝晩はもう寒いほどですけれど。

さて新学年が始まったので、今年もサンティゴ日本人学校でサッカー教室を開始しました。先週の土曜日も今週も20−30人も集まり盛況でした。民起くん兄弟は今週が最終回になってしまい、恒例の胴上げをしました。帰国しても彼らがスポーツを続けてくれれば・・・。元気な子供と一緒に芝生の校庭を走るのは楽しいものです。もちろん日曜日はマラソン練習、そして平日の夜はチリの風とアフリカ旅行記を書くことで大忙しです。一方、仕事も順調と毎日充実です。いつまで続くのかなこの幸せ。読者の皆さんはどうですか?


(政治)
1) しかし私の世界を見る目もたいしたことはない。中国がその成長速度を落とす(落ちる)と昨年から言っていますが、実際は全く逆で今年に入って成長速度を上げ何と10%を越えています。これが世界経済、チリの経済に影響するか注目しています。
一方、アメリカはイラクで膨大な浪費をし、日に日に弱体化しているのにそれが報道されないのが不思議。勝てる見込みのない戦争の実態はベトナム戦争末期と同じように兵隊や下士官の逃亡になって表れているらしい。ボーナスを払って兵隊を現場につなぎとめようとしても志気のない軍隊が勝てるわけがない。この浪費が今年後半の世界経済にどう影響するか?
と、世界的な観点から今週のチリの風が始まりましたが、我がバチェレットはベネスエラとコロンビアを訪問、エネルギー会議で南米諸国の大統領と会議、面談をしました。
例のチャベスとは完全に一線を引いたようです。今まで彼の作戦(バチェレットの手を握る、肩に手を置くなどスキンシップのベタベタ作戦)を容認してきたのをきっぱり変更し、今回は2メーターの距離を置いてそれを避けました。それでも何故か彼を正式にチリに招待しました。
コロンビアではウリベ大統領からトランサンティアゴの窮地を救う秘策を授けられたとか?向こうはチリよりずっと昔から同じ方式の市内交通を実施しています。つまりコロンビアの方が先輩なわけです。ただ以前はコロンビアの新交通計画は大成功と報道されていましたが、最近はユーザーはこの方式を評価していないと全く逆の報せも入ってきて、なんだか今までは大げさにコロンビアの成功を信じさせられていたことが分かってきました。
さてそのチリのトランサンティアゴは今週もさらに大失敗が起こりました。それは、学生生徒は一般の約3分の1の乗車賃を払いますが、機械が間違って大人運賃をカードから引き抜いてしまったと言うもの。3万5千人の学生が被害を受けたと言われますが、もちろん、実際はこんなのは氷山の一角で日常的にエラーが発生し、クレームを出さない乗客には知らん顔を続けているのでしょうね。
昔の黄バスの時代、バスの運行を街角で調べる係りがいて、それをサポ(スパイとか見張りを意味するチリ語)と呼んでいましたが、それが一部の区で復活しました。なんとユニフォームには人間GPSと書かれていました。しかし見張りからGPSに表示変更ですか?
で、彼らがテレビのニュースで、政府発表の5分おきとか6分おきに1台走っているなんて全くの嘘ですねときついコメントをしています。
さて黄バスを運行していた昔からのバス屋が性懲りもなく1200台の新型バスの購入を発表。政府に基幹ルートの運行権利を自分たちにもよこすように要求している。もうこうなったら何が契約で、誰が正義なのかわからず、とにかく場当たり的にその場を凌ぐ作戦になってきました。その混乱から8月に予定されていた運賃値上げを12月まで延期すると言う動きが出ています。誰が(最終的に)それを負担するのかな?
トランサンティアゴはバチェレットにとって命取りにもなりそうです。実際、今週行われた世論調査でバチェレットの支持率は前より下がって51%になりました。(特に首都圏以外では48%と一段と支持率が下がる)
次回の大統領選挙に勝ちそうな候補として野党RNのピニェラが浮かびました。2位は与党DCのアルベアルでした。
やっぱり外国もよく見ています。フォーブス誌はチリでは市民の不安・不満が高まっており、それは現政府の安定化に逆行するものだとしています。

2) 大蔵大臣が提出したチリ投資計画と名づけられた投資に関する税金調整などを中心とした法案が、中小企業援助の名目もついていたのに上院で否決されました。何と与党の中からも反対票を投じた議員がいます。国会議員の声として大蔵大臣は態度が大きい、他人の声を聞かない、外国住まいが長くチリを良く知らないなど、とても法案について論議しているとは思えない発言が続出し、開いた口がふさがりません。これでは国会議員の質を疑ってしまう。この法案は経営者団体も応援していたのですが、国会で承認を得られず、廃案になるかさらに調整をして再度議案として国会に提出するかになります。もっとも二度目の拒否をされてはあまりにも惨めだから、この法案の国会提出は(無期延期にしよう)とする声も与党内で出ています。
さらに興味深いのは従来野党(右翼)は大企業と関連が深かったのに、現政府(中道左派)はその概念を打ち破って大企業に上手く取り入っているようで、逆に野党と大企業の連絡が悪くなっているとの新聞報道されました。

3) しかし前大統領ラゴスは毎日テレビのニュースに出ていたのに、バチェレットはそれを嫌っているようです。私は毎日(朝晩)テレビのニュースを見ていますが、今回の外遊に際し、出発も帰国もテレビのニュースに出ませんでした。新聞の一面にもその写真が載りません。なぜそれほど執拗にニュ−スに出るのを嫌がるのかな?


(経済)
1) 国内問題で問題山積のチリですが、それとは全く別のようにチリ株式市場は好調持続です。4月になって20日までに7,6%も平均株価が上昇しました。この調子で株価が上がれば、それに連結している厚生年金のベースが上がり、私が年金を受領するとき、配当が大きくなります。そんな上手いことが続くわけがないかな?

2) しかしチリのペソが強い。今週1ドル530ペソまで上がって、過去4ヶ月で最低の水準に。今年は1ドル520−550ペソの間で動くのではと見られている。輸出業者にとって極めて不利な状況で政府に調整を要求するらしい。

3) アルゼンチンからのチリ北部への天然ガス供給が止まりました。これはボリビアからアルゼンチンに向かう天然ガスが止まったことによる連鎖反応。ボリビアのタリハ地区で死者が出るほどの住民と警察の対決があり、住民パワーがガスの輸出を止めてしまったもの。


(一般)
1) アメリカの大学で起こった30人以上の殺人事件は世界中を驚かせましたが、チリでも似たような事件が頻繁に起こっています。何しろテレビのニュースに20歳にもならないような青少年が手にピストルを持って一般の歩道を歩いているのが出るのですから。町内に二つのグループがあって、相手グループのメンバーを殺すなんて事件が起こりました。殺されたのは17歳の少年で、彼は以前にもピストルで撃たれており、警察はそれを解決できないまま今回の殺人に発展したもの。何も出来ない警察も惨めだが、犯人が18歳以下だと例え逮捕されても青少年を罰する法律がないので留置されてもすぐ釈放されるのが問題とされている。

2) 先月私たちは10州のプジェウエに行って素晴らしい天然林の中の温泉でバケーションを楽しんできましたが、新聞報道によると2020年までに10州のそれは35%も喪失するだろうとなっています。幾つかの樹種は絶滅する恐れがあるらしい。もちろんそれにつれて、動物や草花も危機に面するわけです。

3) チリにアラブ難民が流入
イラクのヨルダン国境地区に住むイスラム教徒が政治難民として受け入れてほしいとチリ政府に要請中。現在までチリ国内には北部を中心に1100人のイスラム難民が居住中とか。イラクでは毎日殺人事件が発生しており、請求理由を生命の危険から逃れるための政治難民としています。

4) 第11州の地震
今年の初めからアイセン地区では地震が相次ぎ、住民を恐怖に陥れていますが、政府は「万全の体制をとっている。地震予備調査もしっかりおこなっているからむやみに騒ぐのは謹んでほしい」と言ってきました。それが土曜日、大きな地震が起こり、政府の調査団が現地に置いていた機械類を大半喪失する騒ぎ。10名近い死者と行方不明者が出ています。しかし地震は来ないと言いつづけてきた機関の所長は役に立たないとバチェレットは現場に急行。しかし地区の住民は怒りましたね。集会で反バチェレットを叫び、彼女の釈明に厳しく反発しました。
さてサンティアゴでも日曜日の朝、地震がありました。寝ているとグラグラと揺れたのですぐ目が覚めましたが、地震は怖いですね。


(スポーツ)
1)サッカー  先週お知らせした対アルゼンチン戦、3点差以上ついたらテレビを消すことにしていましたが、最後までテレビを見ました。負けてもいいからせめて1点でも入れてほしい、ご近所の皆さんにチリのゴールをお知らせしたい・・・これが私のささやかな願いでした。試合は敵地アルゼンチンのメンドーサで行われました。前半の中ごろは一方的に攻め込まれ、まるで1軍対2軍の戦いでしたが、それを辛くも凌ぐと情勢が逆転です。アルゼンチンが攻め倦んだのでしょう。チリも一方的に攻められる状態から互角に闘うようになり、敵陣に攻め込んでシュートを放てるようになりました。前半はこうして0対0で終了。アルゼンチンが後半どう攻めてくるか楽しみでしたが、全く戦法を換えず単純な攻めのみ。チリは最後まで互角に戦って引き分けで終了。自軍にこもって引き分け狙いの試合ではなく堂々と戦っていました。敵地で引き分けは気分的には勝ったようなものです。これで本番の南米大会にも気後れせず挑めるわけです。
   まぁ一回アルゼンチンと引き分けただけでチリの実力が上がったなんて素人の言いそうなことですね。世の中そんなに甘くはありません。
   一方国内リーグ戦は、星取表2位同士の試合があり、カトリカはコブレ・ロアと対戦、これを何とか2対1で凌いで、今シーズン無敗のコロコロとの対決に命運をかける。明日、工場に入るとき、カトリカ・ファンの私はもちろんカトリカの歌を歌いながら入るが、そういうささやかな楽しみがたまりません。


以上