チリの風  その218  07年4月9日―15日

チリの風  その218  07年4月9日―15日

気候が変わってきました。長かった今年の夏も終わりのようで朝晩の気温が下がり始めると樹木の紅葉が始まりました。そして落ち葉が公園に舞っています。
先月,私の担当しているリキャップ工場で生産新記録が出たので社長が関係者をレストランに招待してくれました。30名くらいの参加者でしたが,酒がまわってくると工員さんが,ワインを飲みながら「藤尾さんに乾杯、日本万歳」と始まり、そのうち「ゲイシャに乾杯」とか叫びだして・・チリの日本認識もこのあたりです。(ゲイシャって分かるかな?)
それから平岡さんら日本から取材に来た雑誌グループと会食しました。世界を歩いた経験のある4人なので話は盛り上がりましたが、彼らと一緒にいながら、日本がこの先どうなるのか考えていました。若い彼らは私たち団塊の世代を超えるパワーがあるかと。日本がこれからも国際競争力を維持してほしいです。彼らはサンティアゴの後、パイネに向かいました。上手く取材できますように。
それから昨年、サンティアゴ日本人学校リュージュの競技紹介をしてくれた小林さんグループはコロンビアで南米踏破を終え、現在中米です。最近コスタリカ日本人学校で同じようなプレゼンテーションをしたらしい。しかし若い間はエネルギーがあふれていますね。素晴らしい。


(政治)
 若いチリは混乱の真っ只中ですね。バチェレットは指導力のないことを当初から見せていますが,それを笑顔のかわいい彼女個人の人気で持ちこたえています。いつまでそれが持続するかは神のみぞ知るですが、今週も問題続発で、その解決に向けての施策を出せないでいます。
 もう3ヶ月目に入ったトランサンティゴは、とうとう最終的に,彼女はこれは最初から上手く行かない気がしていた。私のところにちゃんとした情報が届いていなかったとコメントしました。そんなことで政治ができるのかと思いますが、このコメントが出た後も特に野党から強烈なパンチが出るわけでもなく、市民が苦しむ新交通計画は続行です。今週、私は上記の食事会の後,夜遅く地下鉄を利用しましたが,超満員でした。11時近くにホームに乗れない乗客をのこして地下鉄が発車するなんて想像も出来ませんでした。
 もちろん準備が整わなかったまま進行してしまったこの新交通計画の責任は辞めさせられた運輸大臣にあるのでしょうが、彼をかばうDCは彼一人の責任ではないと執拗に政府全体の責任を強調。そんなこと一般市民にはどっちでもよいのですが。まだおまけがあって与党陣営から、この新交通計画のテンダーは始めから勝者が決まっていたと暴露。本当だったら大スキャンダル。
 それからその他に国内問題では教育基本法の改正と選挙制度の改正が図られていますが,当然のことながら両方とも大方の支持を得られるとこまで行っていません。
教育基本法の場合、主要な問題点として生徒の選出を従来のテスト方式から抽選方式にするとしていますが、これでは今までの学校のレベルが維持できないとする反対が出ています。
これは法案作成を準備する人間が下手なのか、それを指示する政府中枢がドジなのかどちらでしょう。国内問題は実はまだあるのです。国鉄が13億ドルの赤字垂れ流し、しかもあちこちの路線で運休が続いています。しかも営業管理が上手く行われていないだけでなく、不明の領収書とか所有地の不明朗な売買など赤字の出方が不透明なのが分かってきました。これは争論になりそうです。来週辺りもっと詳しい(もっと厳しい)ニュースが出るでしょう。
しかし毎回書いていますが、野党の中に少しは頭の切れる人間はいないのでしょうか?これだけバチェレットが失敗しても野党の人気が一向に上がりません。これは従来からのまずいやり方(政府を責めるのに同じ切り口で迫る)を踏襲しているため、彼らのほうが信用できると思われていません。
 もう一方の外交ではベネスエラ問題が中心でしょう。これも大問題になりそうです。ベネスエラのチャベスと言えば,言いたい放題やりたい放題で、国内問題は力で野党を押さえつけ反対運動は一切行わせない方針です。彼はチリの野党が自分のやり方を批難しているとし、「彼らは民主的に選ばれたアジェンデを力で倒しておきながら正義のベネスエラを批判するのはどういう了見か」とコメント。そこへバチェレットが来週訪問するわけですが、南米エネルギー会議の後、首都カラカスで彼と面談予定です。メリットが何かあるのでしょうか?ブラジルのルラ大統領など、ブッシュが来れば大手を広げて大歓迎、その後はチャベスと組む政策を実行。バチェレットがこれくらい狸ならチャベスとの面談も楽しみですが、彼女のようにまじめ一筋の人間には逆効果でしょう。辞めたほうが無難です。
 最後になりました。新聞の広告で見ましたが,前アメリカ副大統領のゴアがチリに来て地球環境保全のプレゼンテーションを行うらしい。チリ側参加者も豪華メンバーで前大統領候補のピニェラとかバチェレット大統領も参加計画中らしい。参加費用は150ドルほどでこの種の企画では破格の高額。でも物好きな人は集まるのでしょうね。


(経済)
1) FMIの発表で国別総生産額が発表になりましたが、1位はアメリカ、2位は日本、3位はドイツと順調で、チリは42位でした。国の規模小さいのでラテンアメリカでブラジル、アルゼンチン、ベネスエラに抜かれています。ただしこれを国民一人当たりにするとラテンアメリカではトップに踊り出ます。チリが9026ドル、ベネスエラ7977ドル、ブラジルなんかずっと下の6220ドルになります。

2) 今年3月の輸出は前年対比5.8%下がり、2002年から継続していた右肩上がりの上昇気流から外れました。評論家の話では銅の輸出量が下がった結果で、これは一過性のもの、従い4月から再び、上昇すると見込んでいます。

3) チリ労働者連合は最低賃金を現行135000ペソから18万ペソに上げるよう政府に提案すると発表しました。給料を上げるのと生産性が下がるのとどちらが重要か政府の検討が始まります。

チリの最重要輸出品目は銅ですが、その生産コストはわずか3年で50%アップになったと由。もちろんその原因は人件費でそれが30%アップを引き起こしたらしい。つまり銅の価格がこう高いと新鉱山が続々開発されますが、そこで働く人間を違うマインから引き抜いてくるため給料の上昇が著しく、また既存マインも従業員の圧力で多額のボーナスの支払いを余儀なくさせられてこうなったもの。確かに給料とコストは直結している。

4) 近年の雨量は通常より多く、このためアルゼンチンからの天然ガス供給に問題が出ても、ダムにたまった水量は少なくとも今年の電力発電には十分との発表がありました。そうだといいのですが・・・

5) サンティアゴではマンションの建設は雨後の筍ですが、日本のバブルを思わせます。銀行が金利を低くして購買欲をあおっています。物価上昇率を考慮して使われているUFという単位を使わない、つまりペソ建てで貸し出されるようになりました。現行制度ではたとえば4000UFを借りると借金の総額はいくらなのか毎月変動していきますがペソ建てならその心配はないわけです。もっともこの新しい制度が使われだしたのはチリのインフレはこの先10―20年はないだろうとの読みからです。
しかしあまりに大量のマンションが市場に出されると乙波過剰になり建設業界破綻の一歩になるわけですが・・・。
今年に入っても物件の販売増は3%増を記録し好調持続です。

3) チリでは知的所有権が一般に認知されていないため、コピーされたCDやDVDや一般の書籍まで道端で安く売られています。このためチリはアメリカのブラックリストに載せられていますが、これを何とか改善しようと政府は海賊版生産(販売)禁止法案を国会に提出します。しかし店で買うよりはるかに安い海賊版を全廃することができるだろうか?


(一般)
1) チリ海軍の帆船エスメラルダは今年も世界各地を回る練習航海にでましたが、今年は今までの日数を越える過去最長の日数になるとか。日本にも訪問します。(過去にも日本を訪問していますが)
その帆船は現在ペルーのカヤオに入港中ですが、歴史上初めてペルー海軍の練習生をエスメラルダに迎えました。両国親善の象徴と発表されました。


(スポーツ)
1)サッカーばかりじゃないですよ。何しろ一人のチリ人がランニングでギネスに挑戦し、世界新記録を立てました。その人は毎日42Kを走っているのですが、今回24時間ランニングに挑戦、4年前にアメリカ人がたてた記録を抜きました。何しろ24時間で275Kを走破したのですから驚異的。彼はサン・ベルナルドに住んでいて仕事場はサンティアゴの中心部,で片道21K、往復42Kを毎日走っているらしい。服は近くの職場の弟が持ってきてくれるとか。で、トランサンティアゴのバスに乗ってくる弟より、マラソンで来る彼のほうが早く事務所に着くと言う皮肉が続いているらしい。政府にとっては屈辱的なニュースですね。

2) サッカーの話では、なんと試合の結果ではなく、次のワールドカップの予選試合をどの競技場で行うかについて。
今まで国立競技場でおこなわれていたのですが、そこでサッカー以外の催し物が行われることからグラウンドの状態が悪く、これでは良い試合が期待できないと、試合場をそこからコロコロのホームグラウンドに換えることを検討中です。ただしFIFAのオブサーバーは厳しく、両方とも世界レベルではないとコメントしています。
来週にチリ対アルゼンチンの親善試合が実施されます。まぁ、あかんとは思うけど応援します。

3) テニス
デービスカップの世界リーグ生き残り戦に出場のチリはイスラエルとこの9月敵地で対戦することになりました。日本もこれに参加していますが、ルーマニアと日本で対戦とか。両方とも勝ってもらいたいもの。

以上