チリの風  その217  07年4月2日―8日

チリの風  その217  07年4月2日―8日

サンティアゴでは落ち着いた感じの天気が続いています。この週末はイースターで特に金曜日は「聖金曜日」と呼ばれる祝日でした。教会のミサに行きました。カトリックでもない私がイースターのミサに毎年参拝するのは日本人が神社仏閣にお参りするようなものです。

先週のマラソンのあと、会社でたくさんの人から結果を尋ねられました。で、参加しなかったと答えると,「そう、リカルドも藤尾さんも年だからね。」

この休み、金曜日と日曜日,いつもの16Kを一人で走りましたが79分の平凡なタイムでした。この前リカルド,水野さんと3人で走ったレースが懐かしい。あれは74分台と結果が良かっただけでなく,内容のあるレースだった。生涯に残るほどの名勝負。また3人で走りたい。

先月は飯田さん夫妻の訪問がありましたが、今月はパタゴニアの専門家の平岡さんが来チします。私のブログを日本で支援してくれているのは彼です。さてどんな話が彼から聞けるかな?

それから私は写真を全くとりませんが,写真の上手な飯田さん,内藤さん、武蔵からそれを借りてチリの風「写真室」を計画しています。乞うご期待。

最後に、アフリカの旅(その2)を掲載しました。

(政治)

1) 昨年までチリはラテンアメリカの優等生で,政治経済の安定性はピカ1と言う評価を受けていました。ところがバチェレットになってからそれが揺らぎ始め、国際信用性の低下が見られます。海外マスコミに皮肉な書き方でチリの課題は軍事政権時は人権問題, 民主化してからは汚職問題かとされています。

2) ペルーのオジャンタは今回の大統領選の候補者でしたが,今週チリとの国境へ押しかけようと発表しました。それを受けた熱狂的国民主義者がチリとの国境に向けてタクナをバスで出発する事件がありました。

当のオジャンタは法廷から24時間以上リマを離れることは認められていないのでこの行動には参加できず。デモ隊は両国のテレビカメラの前で、国境見直しを叫びながら自国の警察と衝突しました。一方,両国の首脳はこの問題を重視しないことで合意していたのですが、デモ隊とペルー警察の衝突に関しコメントを求められたバチェレットはそれは先方の問題とし、「勝手に騒ぐなり、国際提訴をするなりしたら」と軽くコメント。ペルーのガルシア大統領は,じゃお言葉に甘えてと,この問題を国際法廷に持ち出すと決定した様子。バチェレットの軽い一言が国際紛争を生み出すキーになるとは。

それからペルーとの太平洋戦争を扱ったドキュメント番組が政府の圧力で放送延期になっていましたが、5月に放送されることが決定。3週間にわたって日曜日の夜放送されます。もちろんこれが報道されれば,各方面からの反響は大きいでしょうね。

アルゼンチンとイギリスが争ったフォークランド戦争から何ともう25年も立ちましたが、その記念日が来るとアルゼンチンではなんとかしてあの島を取り戻したいとしています。日本の帰れ北方領土ですね。

3) さてチリ国内でも問題が発生中です。国政選挙で与野党の間で大きな変化がないようにとする例の怪しい選挙制度を通常に戻そうとする仕組みが発表になりました。政府は与野党の間での合意を得るため、波風を少なくしようと国会議員の数を増やそうとしています。(これで落選する現職が少なくなる)

これに対し、野党の中でもRNのピニェラは賛成,UDIのロンゲイラは反対と分かれました。

新方式では投票を得た順に議席を得るわけで、現行のようにグループ毎の得票ではなくなります。現行では与党グループに入っていない共産党議席がありませんが、新方式では議席が獲得できることになります。これに反対して(役立たない)国会議員の増加より厚生年金の増加をしてほしいと貧しい老人グループがデモしています。

それから現行制度では選挙登録は各人の自由ですが、投票は義務付けられているのを、日本のようにすべて「義務」を外して各人の自主性に任せるという考えも出ています。現在はとにかく選挙に行かなければ、あとで罰金が来る可能性があります。また投票日に立会人に選ばれれば、逃げることは出来ません。チリの国政選挙は完全義務制です。これが自由になるかな?

それから軍隊制度も変わってきています。いまだに徴兵制ですが,今年は自主的に応募してきた人間だけで枠が埋まったので,徴兵制といいながら,行きたくもないのに無理やり軍隊に入れられることはありませんでした。

(経済)

1) 経済成長率が5%をこえるかどうかが今年のチリ経済の基本テストになっていますが、このほど発表された2月の数字はそれを大きく越える5.7%で、大蔵相は大喜び。「な、ゆうたやろ、今年は行けんで」としています。

2) 高めの経済成長率が見込まれると失業率の低下から国民生活の安定化が進み、それは,家屋の販売増など消費の増加につながり、引いてはチリの発展になるわけです。さぁこの先その通りになるでしょうか?

その例として薄型テレビの伸びが急激で今年に入って売られたテレビの3分の1は液晶型テレビでした。高くても良いものを選ぼうとする層が確実に増えているわけですね。

3月の物価上昇率は0.4%を記録し,過去12ヶ月では2.6%になりました。

3) しかし何回もレポートしているようにチリの電力問題は深刻でその発電コストは何とラテンアメリカで最悪とか(最も高いということですが)。アルゼンチンの4倍,ブラジルやペルーの2倍のコストが必要と新聞報道がありましたが,それでは競争に勝てません。アルゼンチンが供給にストップをかけなかった頃はチリの発電コストは1メガワットあたり20ドルでしたが、現在はそれが67ドルに急上昇。天然ガスの豊富なアルゼンチンは16ドルですから、はるかに優位に立っています。

4) 銅の価格が高値停滞して鉱山会社が笑いが止まらないというニュースはもう長い間続いていますが,そういう緩んだ気持ちが無駄な投資をしているようです。今回問題になったのはコデルコのチュキカマタ銅山で28億ドルを使って精錬工場を新しくした所,古い工場より少ない量しか精錬できなくなりました???国会で問題になるらしい。28億ドルって、すぐ簡単にサインできる金額ではないのですが。

鉱山会社は昨年からローヤルティを払うことになりましたが、その最初の支払いが決まりました(税金とは別ですよ)合計で96億ドル。コデルコがトップで39億ドル,2番目がエスコンで27億ドルとか。

鉱山会社全体では2006年の売上は370億ドル。またコスト88億ドル。利益215億ドル。利益税76億ドル。ローヤルティが96億ドルです。それで今年の銅鉱山からの国庫収益は1年だけで、なんと1990年代の10年間の総収入より多いとか!!

しかし鉱山会社も儲かって笑いが止まらないし,政府の国庫も笑いが止まらないし,コデルコの売り上げ増がそのまま予算増になる軍隊も笑いが止まらないでしょうね。

5) 健康保険の値上げ

今年,健康保険会社は値上げを実施しました。一番上がったのは5.7%、ただし幾つかの会社は値上げを実施せず。しかし値上げを実施した所の加盟者は怒っているでしょうね。私の入っている保険は3.9%のアップ。私はもう高齢者なのでこれ以上保険会社の変更は出来ません。何でかな?

(一般)

1) イースターの週末,サンティアゴは静かでした。別にすべての家庭が宗教行事に参加して、つつましい毎日を送ったのではなく,多数の住民が街の外に出て行ったからです。多くのチリ人が外国に出ています。もっとも外に出るほうが国内旅行より安いという気もしますが。

チリ全体で200万人が旅行に出て2億ドルを支出するとか(一人当たり100ドルの予算)

   首都圏から外に出て行った車の数は16万台といわれています

2) また学生と警察の衝突がありました。これは首都圏の学生が(高校生が中心)トランサンティアゴに反対して市内を行進した後,警察と衝突。多数の逮捕者を出しました。これに関連して青少年の犯罪増加に対応するため現行の年少児には罰則はかけられないを改訂し若年者にも裁判を実施できるよう検討中です。以前からこの問題はあるのですが,いつも何かわからないうちに準備された法案は消えていきました。14―18歳用の刑務所の設置も考えられています。

3) そのトランサンティアゴ計画は依然として苦戦が続き、バスの増車が鍵と急いで輸入する一方,つかえないはずの旧型の黄バスを塗り替えて市場に投入。しかし機械が古いので故障続出で役に立っていません。さらに新型バスを購入するのにコルフォ(産業開発公社)の金を使っているのが分かり、チリ全国のための予算を首都圏だけで使っていると国会で問題になりそうです、与党のDCもこれを問題視。政府に釈明要求中。

さて今週から地下鉄駅に入るところに信号設置??? これはプラットホームが一杯だと中に入れば危険なので,駅に入る前に扉を閉めて入れなくするもの。これを見た乗客は駅に入るのに信号を守るって世界中で行われているの?とカンカンです。

世界的レベルのサービスを現行のように1ドル以下で乙波できるわけがないと新聞にコメントが出ました。じゃ最初からそれをみんなに報せてから始めてほしいですね。政府が値上げを発表すれば翌日大混乱でしょう。

4) ランチリはチリの航空会社ですが,もうラテンアメリカ全体を視野に入れて行動しています。そのランチリが2011年までに現行の80機を115機まで増加すると発表。このための予算は26億ドルとか。強い。

一方国鉄のほうは混乱が続いています。首都圏でサンティアゴとサンフェルナンドを結ぶ線は半時間置きの出発が1時間ごとになり、乗客は怒っています。またサンティアゴとプエルト・モンの間の線は中止されたまま、サンティアゴとタルカワーノ線はこれから3ヶ月間操業中止とか。

日本で青森行きは3ヶ月中止ですなんて考えられませんが・・・

5) 住みやすさの世界ランキングでチリのサンティアゴは世界215の都市の中で83位にランクされました。ラテンアメリカの都市のなかではブエノス・アイレスとプエルト・リコの首都サンフアンについで3位でした。

1位と2位はチューリッヒジュネーブとスイスが獲得。東京は35位でした。東京はサンティアゴより住みやすいかな?

で、チリとスイスの国の比較として平均寿命スイス(男性77歳,女性83歳)チリ(男性73歳,女性79歳)一人当たり国民所得(スイス34000ドル,チリ12800ドル)文盲率(スイス0%,チリ5%)となっています。

ラス・コンデスとかビタクラなど東部地区は世界的ランクだが、南部の区では安全性と快適性に大きく劣るので,このようなランキングになるのでしょう。

(スポーツ)

1) サッカー

   開催中のリベルタドール杯の1次リーグで,コロコロが勝ち残りました、アルゼンチンのリバープレーが何とベネスエラのチームに本拠地で負けて敗退決定。これでコロコロの2次進出が決定。ベネスエラがアルゼンチンに勝つなんて数年前なら誰も想像できなかったのですが。さてコロコロ、今年はどこまで行くかな?もう一つのアウダックス・イタリアーノは2次進出に苦戦中。

以上