チリの風 その216  07年3月19日―4月1日

チリの風 その216  07年3月19日―4月1日

この2週間,ずいぶんたくさんのことがありました。それでも一番印象的なのは、最初の週は最高気温が30度だったのに、今週は最高が20度の日が何日も続いたことです。一気に10度も下がるなんて。そして雨の日もあって、アンデス山脈が冠雪しました。
さて計画どおりチリの南に旅してきました。旅行記を書くほどではありませんが,一応参考として今週の風に記録を残します。その旅行記とは別にアフリカの旅はその2)の完成までもう少しです。その1)を読んだ読者から、良くそんな旅をバケーションでしますねと誉められているのかけなされているのか分からない感想をいただきました。その2)も同じようなものかな?!
それから、例のマラソンはリカルドが、主催者にフルマラソンに登録させてくれと頼み込んだ所,それを断られただけでなく、もぐりで走るのは遠慮してくれとくぎを刺され走行不能に。で、次回マラソンまで自重するはめになりました。
そのマラソンの日、私がいつものように16Kの練習を終えて戻ってくると内藤さんから電話があり、「藤尾さん走ってる?私のアパートの前に37Kの表示があるよ!」昨年走った42Kレースなのですが・・・。


(政治)
1) バチェレットは先週、「内閣改造はしない。すべて順調に推移している。問題のあるトランサンティアゴも徐々に改善されている」と言明していましたが,今週に入ると豹変して,内閣改造を実施。運輸大臣だけの更迭ではなくその他に3名。それがさらに波紋を呼んで大騒ぎになりました。それは罷免された法務大臣が、「DC(キリスト教民主党)のお陰だ。彼らは自分たちの党から出た運輸大臣だけが罷免されるのを認めず,与党を結成する各党から一人ずつ閣僚から去る人間を選ばせて被害の痛みわけを狙ったんだ。仕事で全く過失なく任務を全うしている大臣(自分のこと)をこうして罷免するなんて」とコメント。
その辞めさせられた大臣の中に例の泥棒癖のある子供を持った女性防衛大臣も入っていて,バチェレットから彼女は仕事より子供の世話をすべきと考えられたのでしょうか?彼女の後釜に入った新防衛大臣のゴニはコデルコ銅公社の利益を軍隊にまわすというおかしな現行の仕組みを改変したいと意気込んでいます。ピノチェットがいなくなった今がチャンス。

2) もちろん毎週欠かせない話題のトランサンティアゴはこの2週間,あいも変わらず話題を提供しています。
バスが来ない、地下鉄が満員で乗れないなどの問題には解決策なく、一般市民の苦渋は継続し爆発寸前。これに関し、この計画の顔となってテレビなどで宣伝をしたサッカースターのサモラーノへの怒りも大きく、あるスペイン人歌手のコンサートのとき、会場でサモラーノを紹介するとファンの怒りの声がやまず大騒ぎになったほど。落胆したサモラーノは記者会見をして「政府のやり方には心底あきれた。私はこの計画の責任者ではない。計画が上手くいくなら支払ってもらった賃金はお返しします」ときっぱり。
何しろ,今年だけで,この計画の補充のために70億ドルが必要とか。銅の値段があがってぼろ儲けのコデルコ銅公社の利益が大半これで消えていくのか?しかし税金でこれを払わされるのは不愉快ですね。良く国民が騒がないものです。

3) そのため、今週発表の世論調査で、大統領支持が46%、不支持が40%と接近しました。もちろんトランサンティアゴ計画の不支持は78%、支持は15%と圧倒的に嫌われています。
ただバチェレットは内閣改造の発表の前にトランサンティアゴの混乱の責任は自分にあると誤りを認め、従来の大統領や大臣レベルでは見られない自己批判をしました。
この問題に関し、一般市民の考えはバス会社の責任とするのが一番多い意見ですが,2番目に責任のあるのはこの計画を考え出した前大統領のラゴスとなっています。当のラゴスは前大統領が政治の全面にシャシャリ出るべきではないとして発言を控えています。

4) 元公共事業省の大臣クルスは背任、国庫への虚偽申請などの罪に問われていましたが,この度,量刑を4年から61日に軽減するとの判決が出ました。彼はこうして虚偽に作り出した資金をラゴスの大統領選挙の資金に使用したといわれるのですが。分からん,司法の考えていることが。
さてこの裁判を担当しているチェベシッチ裁判官は車に乗っているところを襲われガラスを破られる事件が起こりました。裁判とは直接関係ないようですが,テレビカメラの前で暴漢が石でガラスを壊していました。そしてこの男が捕まったのですが,裁判所は証拠不十分として彼を即時釈放しました。何でかな?仲間が被害にあっているのに。
それより新しい最近の事件ですがスポーツ関連の援助費用を選挙に使っていたチレ・デポルテの裁判で判決が出る前にあらかじめ刑務所に入れられていた疑惑の人間が全員保釈になりました。有罪になればまた刑務所ですが,雰囲気として執行猶予付きの判決でしょうか?政治に関連した事件は裁判所が政府を見ながら判決を出しているようで不愉快ですね。


(経済)
1)電源開発の問題がまた主要な話題になってきました。というのはアルゼンチンからの天然ガス供給に問題が出たからです。今回は大統領の政治的カットでもなく、従業員のストでもなく、単に先方の施設点検のための供給カットだったのですが、それでも黄色信号がともりました。しかし不愉快ですね。アルゼンチン側の供給体制に問題があるのは以前から分かっていたことです。それを何故,他の供給源に変更しないのか,理解できません。水力発電,原子力発電,その他にもいろいろ考えられるでしょうが、どれが一番経済的な安定供給になるのか真摯な討論がされていないのが不思議。もう少し立つと冬になってアルゼンチン側の需要が増えたからチリへの供給をカットさせてもらいますと言ってくるのは自明ですからね。

2)2005年からネゴしていた日本との自由貿易協定がやっとまとまったようですね。これが発効された日から、チリからの70%の品目は輸入税無しに日本市場に入り、日本からの輸出品は90%が課税されずにチリ市場に入ります。チリからの輸出は昨年度60億ドルでしたが、そのうち60%は銅でした。問題になったのは農産物で、固く閉ざされた日本市場に何とか風穴を開けようとしたのですが、若干の進歩は認められます。これでチリは日,欧,米の主要国家とすべて協定を結び、世界貿易の最先端に位置しました。

3)チリ南部の主要産業はサーモン養殖のほか木材関連の産業ですが,ここにきて木材関連の会社で労働争議が続発しています。特に8州のセルコで3000人の労働者がストに入り,外部労働者もそれに加わり、混乱に輪をかけているとか。輸出にも影響する問題です。

3)事務所の空き
  サンティアゴは事務所の空き率が1.1%とラテンアメリカで最低の数字を記録しています。もっとも空き部屋の多いのはサンパオロで11.2%とか。
  これを解消する為、一番需要の多いラス・コンデス地区でコスタネラ・センター(21万平米)やチタニウム事務所ビル(45000平米)などの大規模ビルが建設中です。

4) チリのTVのデジタル化について日欧米のどの標準を採用するか検討中ですが、3月中に結論を出すのは中止し,期限を決めない延期となりました。さぁどうなるのか?


(一般)
1) この2週間で最大の話題は、29日の青年戦士の日でしょう、これは今から20年程前,軍事政権時、左翼青年が警察軍に殺害されたのを追悼する日です。毎年,騒ぎの規模が拡大し,この日の由来を知らない青少年が町に出て車に石を投げ,警察に銃を撃ち、商店を略奪する騒ぎが続発です。翌日の新聞に743名の逮捕者が出たが,刑務所に送られたのはたった1名と出ました。石を投げたり、物を盗んだりして捕まった青少年(何と12−13歳から)の家族がテレビカメラの前で,私の子供に限って悪いことなんかしていないと逮捕した警察を避難する光景が続出です。
中心街を歩いている警察の大尉に後ろからキックを入れ,彼を道路に突きとばすのもニュースにでました。警察もおちおち歩けません。
BBCのニュースにもこの騒ぎはでましたね。

2) 世界の富裕な都市
   プライス・ウォーターハウスが世界の富裕な都市のランクを発表。それによると世界1は東京、2位はニューヨークでした。上位に入ったラテンアメリカの都市はメキシコ,ブエノス・アイレス、サンパオロでサンティアゴはそれらについで5位でした。まぁ順当な気がします。
   これを個人ベースにすると。IMFの発表で2006年の国民一人当たりの総生産は1位がルクセンブルグで85000ドル、2位がノールウェ−の71000ドルと続き、日本は10位にも入っていません。チリは181国中の51位で8900ドルでした。ここではメキシコの7600ドルを越えています。
   この8900ドルですが2003年には4700ドルだったので,わずか3年で2倍にと驚かれています。もちろん給料や需要が2倍になったのではなく,ペソが対ドルで切りあがったからこうなったもの。アメリカの先行きによってさらにペソが強くなるかもしれません。

3) 観光  ここで今回のチリ南部の旅を紹介します。目的地は第10州のオソルノからアルゼンチンに向った方向にあるアグアス・カリエンテス(温泉と言う意味ですね)。サンティアゴから飛行機でプエルト・モンまで飛び,そこでレンタ・カ−をして出発。約2時間のドライブで国立公園プジェウエの中の温泉ホテルに到着。30のロッジがあり、2階建てのそれには6名まで宿泊できる。私たち二組の夫婦はそのロッジにそれぞれ入りました。週末プランを予約した私たちは3食つきの贅沢なバケーションです。ここには室内と戸外の温泉プールがある他、子供用の遊戯施設や完備された遊歩道もたくさんありました。歩くのが趣味の私たちはそれらの遊歩道を次々歩きました。その中で一番本格的なピオネロ・コースは全部歩くと3時間。上り下りのあるルートは疲れるがもちろんその価値はありました。
天然林の中で各樹種がテリトリーの維持拡大に日夜闘争をおこなっているのを感じました。テリトリー争いはなにも動物だけのことではない。植物だって,種の保存のためには大変な努力をしています。昼なお暗い樹林の間を歩くいていると、都会で失った人間の精気が森林の間で取り戻されるというのは本当だと感じました。
   それから週末プランの中にはエステ(テラピー)が含まれており、私たちは蜂みつテラピーというのを受けました。全身に蜂蜜を塗って半時間我慢するのですが、髪の毛まで塗られると異様な感じがします。口に入ったそれは当然だが甘かった。私の人生でそんな贅沢をするとは夢にも思っていなかったので、違う人種になったような気がします。
二日目に近くのスキー場のある山に景色を楽しみに車で登ったが,あいにくの雨で何も見えず、巨大な火口があるのだけ確認した。戻りに道路の上に絶滅寸前と言われるプドを一匹見ました。
   しかし2泊3日のこのプランが一人130ドルほどなのだから安いです。
   観光局の発表では、この夏の観光シーズンで一番観光客が増えたのは,このオソルノ地区で(36%)、ついでプエルト・モン(32%),3番目がイースター島(26%)4位はラ・セレーナ(25%)とか。確かにこの自然公園は素晴らしいところでした。ご家族づれで,カップルでこの温泉を訪れることをお勧めします。冬季ならスキー場まで半時間ですよ。
   www.puyehue.cl 


(スポーツ)
1) サッカー
この2週間にチリ代表は2試合をこなした。最初はブラジルとの試合をスウェーデンで。なんと4対0の惨敗。ちょうど飛行機に乗っている時間だったので,よかった、こんな試合を見ずにすんだ。2試合目はコスタ・リカ戦。これはちゃんとテレビの前に座って見た。チリのゴールに過激に反応し,窓を開けてご近所さんにチリのゴールを知らせる。ところが、なんと最後は1対1で引き分けの惨めな終わり方。これではアメリカ・カップの結果はもう見えている。
一方,リベルタドール杯に参加中のチリのコロコロとアウダックスの2チームは両方とも勝利を収め2回戦進出の可能性を膨らませました。
4チーム参加の1次リーグでコロコロはグループの1位,アウダックスは別のグループの2位です。2回戦には上位2位まで進出可能です。

2) テニス
ATPの大会でチリ選手の活躍が聞かれず寂しい限りですが,引退選手で元世界1同士のアガシとリオスがシニアとしてサンティアゴで対戦。リオスの勝利に終わりました。アガシって年をとっているけど、リオスなんて30歳そこそこでシニアなんだから、せこい気もする。

3) 豪州で行われている水泳の世界選手権で、チリ人女性として始めて決勝リーグまで進出したコブリッチが女子1500M自由形で7位に入賞。日本はさすが金メダルもとっているようですが。

以上