チリの風   その215 07年3月12日―18日

チリの風   その215 07年3月12日―18日

日本は暖かい冬が終わって寒い春が始まったと聞きました。何だか変ですね。さてサンティアゴももう秋の始まりというのに、週末の最高温度は30度となり暑さにうんざり。一向に秋らしくなりません。通常この時期は落ち葉が歩道を埋めるのですが,今年は街路樹もまだ緑が鮮やかです、なんかおかしいな?

ラソンの話です。4月1日のレース参加を申し込んだ相棒のリカルドはもう参加制限を越えたので登録できませんといわれて,目が回った。10Kとハーフ,フルマラソンの同時レースで10K参加者が多く、合計6千人の制限を越えたらしい。空席待ちで登録してくれとか。登録しても参加費を払っていない人がいる由。さぁどうするリカルド。次のレースを捜すか,もぐりで走るか?それでも週末,彼と私は暑い中ハーフマラソンのコースを走ってくたくたでした。

来週日本から写真家の飯田さん夫妻が来ます。私のブログのHPを飾る写真は彼の撮影したものです。昨年、彼らと一緒に四国のお寺周りをしたので今回はみんなでオソルノから内部に入った温泉アグアス・カリエンテスに行きます。このため来週のチリの風はお休みです。今回彼の撮影する写真を次のHPに使わせてもらいたいです。

(政治)

1) チリ国政に干渉したとクレームされ、ベネスエラはチリ駐在大使の交代を余儀なくされましたが,今度はその逆でチリの内部情報を流したとして駐ベネスエラのチリ大使ウエペが首になりました。彼は向こうのテレビの番組でバチェレット大統領は先日の国連非常任理事国の選挙でベネスエラを推そうとしていたんですよ。しかし・・・としゃべってしまったもの。本国召還されチリに到着した段階で辞表を提出。近々、バチェレットはベネスエラ訪問を予定しているので、手痛い失点です。
新聞の政治批評マンガに、その大使の件が出て、きっとチャベスの悪い癖が移ったんだよとなっていました。言えてる。しかしチリの外政をどうするのか、バチェレットの舵取りは大丈夫か心配です。
その彼女は中米訪問を開始。この週末はグァテマラです。

この件に先立って、TVN(日本のNHK)が制作した太平洋戦争の番組がペルーを刺激する可能性があるから放映を見合わすよう外務省が要請。この放送禁止(中止)命令は適切かどうか文化省と外務省との見解の相違もあり、もめましたが、結局放送延期になりました。確かに隣国との戦争を扱ったテーマはもめること必定ですね。日本でも韓国,中国との戦争マタ−はこの種の問題を呼びますから。
でも不思議なことに同戦争でペルーと組んでチリと戦ったボリビア側はこの作品について理解を示し、これでチリ側に自国が失ったボリビアの海について認識を深めてもらえるかもしれないとしています。放映されれば,是非見たいものです。

2) スポーツ振興局(チレ・デポルテ)問題は近年継続して話題になっている問題です。先ず最初は振興費を選挙資金に流用した疑いで政界を揺るがし(まだ決着はついていません),それから前局長が学歴詐称をしていた問題で罷免されました。今回はなんと新しく任命された女性が、数年前チリ政界を激動にまきこんだ年少児わいせつパーティのスピニャック事件で、野党UDIの当時の党首などがこの問題に関連していると若い女性に偽の証言をさせた疑いがある女性でした。野党側はこともあろうに偽証問題で野党党首を落としいれようとした人間を局長に据えるなんてと噛み付きました。彼女は優秀で潔白ですと当初かばった政府も、翌日野党側グループが政府に協力するためとして大挙して大統領を訪問し,おかしな女性の局長就任に噛み付いたため,わずか一日その職についただけで彼女は辞任に追い込まれました。もちろん政府側は,彼女にちょっと待ってね,すぐに違う職を用意するからと説得したのでしょうね。彼女はDC党員で,アルベアル党首の側近です。しかしバチェレットもこうなる可能性をわかっていて任命したわけで,よっぽど野党をなめていたのか、それとも大統領の政治判断が甘いのか,彼女にアドバイスをする人間がアホなのか、どれでしょう。
もちろん彼女を推薦したDC側はカンカンで、与党と野党とどっちが大切なのだ?彼らの言い分を聞いて、DCの言い分は聞けないのかと大声でクレームしています。さらにDCの女性党首アルベアルにも一部党員が噛み付き、彼女はDC党首の資格はないとこき下ろしています。
たった1年しか経過していない段階ですが、私はバチェレット政権の将来を危ぶんでいます。彼女は4年の任期をまっとうできるのかな?
しかし野党側(右翼ですね)がそれをうまく突く能力がないので国民の間でじゃ政府を変えてみようかという声が出てこないわけです。

3) 73年の軍事革命で殺されたアジェンデ大統領の娘は下院議員をしていますが、その軍事革命を起したピノチェットの長女が私も議員をしてみようと思うと発表。さてどうなるでしょう。ピノチェット派は確かにまだチリに存在しますが、それを統合する力がその娘ルシア・ピノチェットにあるかどうか?


(経済)
1) 政治の失敗(混乱)から国民の目をそらそうと(?)大蔵省は第3次大改革案を発表しました。70億ドルを投入した大計画ですが、新政権が発足して1年で3回目の改革案ですから,以前と同じように今回もアカンやろなと思わされますが。
その27点の改正案の要点は新規投資に対する減税、新規投資の審議の迅速化、中小企業への融資などです。

2) 上記を受けて経済評論家は空気がよくなってきたとし、国民総生産が07年は5.5%になり、外国からの投資も増加すると見込んでいます。とにかく5%以下の低成長は受け入れがたいと言うのが政府の声です。
中銀は一般の予想を裏切り,3月に金利の引き下げを行いませんでした。もっともチリの現行の金利5%はブラジルの12.75%に比較すると半分以下です。一方、日本なんか1%にもならないわけで、じゃ日本の安い金利を利用して他の国で商売しようと考えるのは素人でも分かることですね

3) コデルコの新しい銅山ギャビイは87億ドルの投資で開発が始まりますが、その近くにさらに新しい鉱山が見つかったとか。その鉱山の卵は埋蔵量の見込みからして、年間15万トンの生産が見込まれ,それはコデルコの総生産の10%を占めることになるとか。まるでここ掘れワンワンですね。チリは確かに天然資源に恵まれている国です。
銅の価格は再度3ドルに接近し、生産費用のことは考えなくても良いから増産だという銅鉱山会社もあるそうです。


(一般)
1) もうトランサンティアゴ計画についていろいろ書くのがチリの風の日常みたいになってしまいましたが、まだまだ飽きませんね。さて政府が従来の古い黄バスは絶対使いませんとコメントして出発した新計画ですが,新型バスの数が足りないので廃車になっていた旧型バスにペンキを塗っただけで再使用しています。私が朝晩乗るバスも旧型のものが多く、ドアがちゃんと閉まらないとか,閉まる時に大きな音がするとか、そうかちょっと前はこんなバスばっかりだったのだと灌漑にふけっています。旧型バスを使い始めたら,急に大気汚染もひどくなってきたようです。じゃなんのために新交通計画を始めたのでしょう。
この計画の柱となって支えている地下鉄(ここではメトロと呼ばれる)で二人死者がでました。心臓麻痺の系統の事故で,呼吸困難,気を失うといった経緯で倒れ病院で死亡です。遺族はもちろん地下鉄側を批難していますが,人災なのか天災なのか?それにしてもメトロはよく混んでいます。
さらにこれに関連した反政府運動が日増しに過激度をまし、とうとう銃による死亡事故まで出ました。もちろん地域住民による穏やかな反計画のデモもありますが,夜間にデモ隊が警察と銃撃戦まで開始し、危なくて夜歩けない地区があちこちに出ています。トランサンティアゴは名目だけで,とにかく騒動を起すというのは世界中によくある例です。それを抑えきれない警察、政府が情けない。
ある日,私がバスに乗っていると後ろのドアから4人組が料金を払わずに乗ってきました。私はとっさに身体が動いて彼らを外に押し出そうとしましたが1対4で負けました。で、運転手に大声で不正乗車を報せたのに、それを無視してバスは動き出しました。すると4人組は私に「このスパイ野郎が」と悪口を言って挑戦してきたので、パンチを入れそうになりましたが、ある乗客からも抑えたほうが良いよといわれ自粛。ここで揉めておれば、問題は大使館の水野領事のところまで行ったでしょうね。しかしこんな奴らがいるからサンティアゴもよくならないわけだ。
さて日本でもパスモというチリのプリペードカードと同じような仕組みがスタートしたようですね。問題はないのかな?

2) デジタルテレビのスタンダードを今月中に決定するとか。チリも近代化の波を受け一般のテレビシステムからデジタル放送に変換されるわけですね。

3) サンティアゴでクラッシク音楽を楽しめるのはテアトロ・ムニシパルとチリ大学劇場ですが,交通の便が良いので私はチリ大学のほうをいつも利用しています。今週そこで行われるコンサートの指揮者はイタリア在住の日本人の杉山さんと聞いて、バレリアと行ってきました。ファウレのレクイエムなんか楽団70名、合唱70名の豪華版で素晴らしかったです。演奏が終わってから杉山さんとお茶を飲む機会があって夜中まで話しこみましたが、3歳からバイオリンを始めた天才で、彼の世界をまたにかけての活躍ぶりに感心しました。さすがプロですね。ところでクラシックな曲目なら(バッハやモーツアルト)チリの交響楽団も欧州のそれと変わらない演奏ができると聞きました。チリ人もなかなかやるものです。
それからイタリアに住む彼がチリに来る前,このチリの風を見たとか。そうか、私のブログも役に立っているわけだ。
もう1週間彼はチリに滞在して来週末はモーツァルトを指揮します。このチリの風をサンティアゴで読んでおられる方は是非,週末のコンサートに行ってください。劇場は地下鉄バケダーノ駅を出てすぐです。開始は夜の7時半です。

4) アメリカの旅行雑誌の発表で、ラテンアメリカの飛行機会社の中でランチレが第1位にランクされました。チリもラテンアメリカでトップというのがいろんな分野で聞かれるようになったと喜びましょう。


(スポーツ)
1) サッカー
来週,国際親善試合としてスウェーデンでチリはブラジルと闘いますがそのメンバーが発表されました、欧州で活躍する選手が大挙して入っていますから、見た目にはそう見劣りしないのですが、試合が始まると・・・
勝てるとか結構いい試合になると思っているチリ人はごく少数で大半はあかんやろなと考えています。
それでもFIFAの今週の発表ではチリは世界の32位にランクされています

以上