チリの風 その223  07年5月14日―20日

チリの風 その223  07年5月14日―20日

外気温が首都圏で最低0度なんていう日もありましたが、集中暖房のお陰で私のアパートの室内はポカポカ、半そで過しています。
で、寒くなっていなくなっていた蟻がまた洗面所のあたりに出てきました。温度が上がると彼らの鈍っていた行動力が元に戻るのですね。すごい。
この日曜日、国立美術館に日本現代デザイン展を見に行きました。大勢の見物客で賑わっていました。しかし日本もなかなかやりますね。面白かったです。


(政治)
1) さて、そんな蟻さんの元気がほしい与党ならびに政府関係者ですが、土曜日の新聞に国民の信任指数が発表されましたが、バチェレットを支持するのが40%、支持しないは46%。さらにその中でサンティアゴに限れば支持は33%とか。もうはっきりしていますね、彼女の将来は。ますます支持率は下がりますよ、これから。

2) 今週も最悪の事態が良くならず、来週21日(月)に行われる大統領の年間教書が心配されています。野党はいいかげんな公約の羅列はやめて実態を赤裸に分析してほしいと要請、大統領も馬鹿にされたものです。
   演説の行われるバルパライソの国会議事堂周辺は大変な警戒振りです。

3) 先週、元大統領のフレイがトランサンティアゴを国営化せよと発破をかけましたが、何かい、またぞろアジェンデの亡霊を復活させるのかい?と右翼側は目をむいています。じゃピノチェットその2が出るのでしょうか?
   しかし運輸省のエンジニア―や官僚がテンダーを実施しその計画を実施しているわけですが、彼らが問題の解決案を出せないのなら全部国営化すべきという過激な意見も声を大きくしています。
   それにしてもそのトランサンティアゴの基本になっている地下鉄はそれまでほとんど事故らしい事故を起こしませんでしたが、今週何と4回も事故を起し、最悪事態が継続中。
   昔、私はこの地下鉄にタイヤを供給していましたので、毎週地下鉄の車庫に行ってタイヤ検品をしました。で、彼らの仕事振りは良く知っていますが、最近の故障続きの原因は点検・補修にかける時間が減っていることと、運ぶ重量が2倍になっている(オーバーロード問題)ことから来ているわけです。このままでは事故は減少しませんね。
タイヤに関して言えば負荷荷重が急に増加するとタイヤの能力は決まっていますから、つねに超荷重で動くことになり疲労、過労からのバースト(破裂)が起こるのは避けられません。
   それから未だにサンティアゴを走っているバスは4000台なのか5000台なのかはっきりしませんが、こんなの私に任せれば5分で解決です。回答はGPSを使い、実際に走っているのが何台か見ればいいだけです。5月15日にはすべてのバスがGPSをつける事になっていましたが、まだそれが完了せず、誰の責任か騒いでいますが、私ならGPSを付けていないのは稼動していないと見なし、走っているバスに対して政府は使用料を払えばいいわけです。これでバス会社はあわててGPSを付けるでしょう。夜になると急にバスがこなくなるなんて問題もこのGPSで全部分かってしまいますよ。しかしこんな基本的なことも出来ないなんてバチェレットさんのメンバーのレベルは低い。

4) 住宅問題
   大統領の力が弱くなると、さぁ今がチャンスと、住宅問題が一段と過激になってきました。国の建設した貧困家庭向け住宅などで、銀行への借入金を払えないため差し押さえになるケースが多いのですが、それに政府が援助すべきと彼らは訴えています。個人問題を社会責任にさせようとするわけですが、その数が大きくなると・・・・・多分、21日の教書でバチェレットは差し押さえを防ぐための何らかの援助を発表すると思います。

5) エネルギー問題
   アルゼンチンからの天然ガス供給問題は、今に始まったことではありませんが、今回は始めて家庭用ガス供給に黄色信号が灯ったと新聞報道がありました。今までは工場用の天然ガスがその標的になっていましたが、(そのときは石油などの代替エネルギーを使用)それが拡大して家庭用もストップする可能性が出たわけ。このチリの風で過去に何度も、信用できないアルゼンチンからの天然ガスによらず他の供給源を探すべしと書いていますが、政府当局は何しろアルゼンチンからのガスは他のものにくらべると値段が極端に安く安いんですよとし、これを他のエネルギーに替える努力を渋っている。しかし6月、7月の寒いころに、サンティアゴの一部の家庭でガスが出なくなったらまたまた大問題ですよね。
   ついでに、サンティアゴの大気汚染も深刻で雨が降らないのでほとんど毎日非常事態のようです。これに天然ガスがこないからと各家庭が薪などを燃やし始めたら・・・


(経済)
1) しかし贅沢な問題です。チリでは銅の値段が国の命運を握っていますが、それが大きく国の財政に影響しないよう、一定の値を決めてそれで予算を作成します。銅の値段がそれを上回れば、オーバーした分は予備に入れ、下回ったときはそれを使用して上下に大きくぶれないようなメカニズムになっています。ところが問題は最近の銅価格の高騰でチリのその基金が現在140億ドル、今年末には220億ドル、来年末には350億ドルにもなりそうで、これをどう使用するか問題になっています。
もちろん税金を下げる(例えば現行19%の消費税を17%に)とか公共設備を拡大するなどの案が出ていますが、トランサンティアゴなんかの財源もここから出ているのでしょうね(こっそりと)

2) チリの最大手小売業者のファラベラとDアンドSが合併することになりました。この大型合併で新会社は小売業としてラテンアメリカで2位の規模となります。政府は合法性について検討中とか。スーパーマーケットの例では両社のシェア―を併せると約40%にもなり、価格設定について独占権?を持つことになりそうです。あるときは異常に安く売って競争相手をたたき、他の場合は異常に高く売って利益を出すなんてことが出来そうですね。


(一般)
1) 政治の項で5月21日のことがちょっとでましたが、この日は128年目のイキケ海戦の日です。ペルーと戦った最初の海戦で、もう一つの海戦に勝ってチリは太平洋の制海権を握りました。
イキケに住む人はこの日を新年や9月18日の建国記念日に勝るとも劣らない大事な記念日としています。で、この日に毎年、大統領教書が発表されるわけです。

2) 今週一番話題になったのは一般公道での自動車速度。何しろ時速280キロまで出して走っているのをビデオで撮影してそれをインターネットで流しました。しかし警察も馬鹿にされたものですが、その車BMWの運転手を必死になって追いかけています。

2) TVNのドキュメントを見ていますが、
(第2週目)この太平洋戦争ってドキドキするものがありません。アントファガスタを落としたチリ軍は一部は東に向かい、ボリビア軍と対峙します。そしてカラマを落とします。このあたりで戦闘があったのはここだけ、ここを落とすと後は何もなし。敵はボリビア軍ではなく食料や水の補給。何しろ軍隊は一日4リットルの水を兵隊に補給する予定が当時わずか0.5リットルだったらしい。それでは戦闘の前に半病人でしょう。また北に向った軍隊はイキケ、アリカを落とす。その近辺の戦いがボリビア軍の最後の戦いでその後、まだまだ戦争は続くのに彼らは責任をペルーだけに任せて自国に引き揚げたまま。それでは100年後、ボリビアの海を返せと迫っても迫力がありません。私の日本の友だちはそんなボリビアが可愛いといいますが・・・
(3週目・最終回)
 リマに入ったチリ軍はそこに留まらず、さらに進撃を続ける。しかしそれはいつも簡単だったわけではなく、例えば東部のラ・コンセプシオンの戦いでは200名のチリ軍に3000名のペルー軍が襲い掛かり2日間の戦闘でチリ側は全滅したとか。
 その後、戦争が終結してチリに戻った勝利軍の兵隊は、負傷兵に対する正当な補償がなかっただけでなく、大半の兵隊に恩給がなかったので生活に困り、街頭で物乞いをするか、犯罪行為に走ったといわれる。つまり一人、政府だけが勝利のうまみにありついた由。なにしその戦争前は国家予算に占める硝石の割合はわずか5%だったのが、戦争後は一気に55%になったらしい。これは現在の銅がチリにおいて示している役割に近い。
 この番組を見て、確かに戦争が一般社会にもたらす悪影響は世界中同じようなものだと思わされた。また一方的にチリが正しいと報道していないので、この番組がペルーやボリビアを傷つけるとは思えないがどうだろう。

3) トランサンティアゴの交通事故。私が毎朝、会社のバスに乗るプラサ・イタリアで交通事故がありました。例の2両連結のバスが歩いている親子をはね、母親が死亡しました。事故を起した運転手は、停留所でないところで降ろすように乗客に言われ、それを拒否して走っていると、そのグループからピストルで脅されたため運転を誤ったとしています。バスについているカメラでは、そんな銃で脅される所は写っていないのですが真相はまだわかりません。しかしトランサンティアゴは災難続きです。

4) 未成年の犯罪者にも罰則をという法案が国会を通過しましたが、彼らを収容する刑務所がないので、大量に未成年の犯罪者が収監されれば今以上に刑務所問題が起こると警告されています。刑務所がないから犯罪者を捕まえないというのは本末転倒ですが・・・


(スポーツ)
1)先週に続いてテニスの話題。
先週ATPのローマ大会で決勝まで進出したゴンサレスは今週のハンブルグ大会でも勝ちあがり、準々決勝で、再度先週の宿敵世界ランキング2位のラダンと対戦、またしても敗れました。一度くらい彼に勝って優勝してもらいたいですね。

2)サッカー
国内リーグはコロコロとカトリカの活躍が注目の的ですが、何しろ勝ち点で10も差があったのが先週は3になり、今週首位のコロコロが負け、カトリカが勝ったので同率首位に並びました。そして来週その首位と2位が激突。これは興味を呼びますね。
ところでそのコロコロの監督ボルギがメキシコのチームから破格の乙波があり、今シーズンが終わった段階で移籍と発表されましたが、最後にけんかをしたため結局、移籍は成立しませんでした。これは彼の人生に吉と出るのか狂と出るのか。
  今週チリ対キューバの試合がありました。チリが2対0で勝ちましたが、試合のあるのもしらない人がほとんどで、なるほどマスコミが報道しなければ、サッカーの国際試合でも盛り上がらないことの例でした。まぁキューバはスポーツ国ですが、サッカーはアマチュアですからね。
  ところでイタリアのセリエAで活躍するピサロは所属するローマがリーグ優勝し、チリ国旗をデザインしたシャツを着て、表彰席に出席。彼は過去にもミランなどで優勝経験があり、勝負強い。

以上