チリの風  その179   06年5日-11日

チリの風  その179   06年5日-11日

珍しいことに今週はよく雨が降りました。で、その雨が起こした問題が今週のチリの風の話題の上位を占めそうです。
さて先週は、チリの風と,エジプト紀行の最終回と、大使館表彰の答礼スピーチの原稿書きに追いまわされていましたが,今週はそんな烈風も元に戻って、通常の原稿書きでした。今、書いているのはある雑誌社向けのセカンド・ライフを海外でという種類の内容です。もう日本人が外国を旅したり,外国に住むことに大きな障害が無くなったことを感じます。日本(人)の国際化に成功したわけですね。この調子でサッカーも国際化して来週月曜日のWカップ第1戦の豪州戦に勝ってほしいもの。
一方のマラソン練習も順調に進んでいます。11日(日)、今シーズンの新記録で練習コースの16K を走りました。継続こそ力,それに健康あっての人生、みなさんもスポーツしたほうがいいですよ。


(政治)
1)バチェレット母さんは、スト中の子供を置いてアメリカに出張しましたが、残された子供たちはけなげに戦い続けました。しかし最後は力尽き、とうとう停戦決議を発表。占拠した学校を持ち主に戻す作業が始まりました。汚し放題で学生が逃げた学校とちゃんと掃除をして受け渡した学校に分かれますが,汚いまま引き渡された学校の責任者は自分たちの教育が悪かったことを思い知るべきでしょうね。
それから学生デモを利用してセントロで商品の略奪を行うグループが問題になりました。それに関連して子供が電気製品を盗んできたのをおばあちゃんが警察に届け、商品を返還しました。おばあちゃんとしては泥棒は許せない行為にあたるわけで、そんな(普通の)家の子供が悪いことをするなんて・・・。
しかしこの一連の闘争でチリの中高等教育は問題山積であることが明確になりましたが、一方それをどう解決していくかの道筋が見えてきたわけです。(少なくとも表面的には)しかし政府がそれらの公約を正直に、しかも迅速に履行するかどうかは予断を許しません。
学生連合はその懸念を明確にしながら,仲間割れして運動停止に追い込まれる前に,先週末に停戦すべきだったと思います。
しかし彼らの行動がここまで成功したのは,一般市民の広範囲な支持があったからで,逆に文部大臣は株を下げ,バチェレットまで評価を下げることになりました。
さぁ、後1ヶ月たって,今回の政府乙波のどれが実現されているかな?
一番最初にサンティアゴでこの運動に関するデモが行われたのは4月26日でした。3千人の学生が街頭に出ましたが,政府の反応はなし。次は5月4日。この日は600人の逮捕者が発生。さらに5月19日には最初の校舎占拠が始まる。しかし5月21日のバチェレット年間教書の発表に,教育問題は触れられず,政府がこの問題を軽視していたことが分かる。5月30日50万人参加と言われる歴史的な第1回全国ストライキ。政府もたまらず6月1日にバチェレットがテレビ演説し政府案を提示。しかし学生側はこれを蹴って6月5日第2回全国ストライキ。6月7日政府はさらに第2次提案。8日には学生側が混乱し始め(停戦に賛成する側とあくまで戦う側に分裂),最後に9日に闘争終結(停止)宣言がでたもの。
日本で大規模な学生運動が行われたのは60年代後半ですから、もう40年間そういう運動がありません。日本は学生が問題にする対象がないという好運に恵まれているのか,学生が問題を認識できる感受性に乏しいのかのどちらかでしょう。

2)さてそのバチェレットさんはアメリカを訪問し、ブッシュと会談。私の予測どおり,世間話が中心でベネスエラの大統領をどう片付けるかの問題は(公には)議題に登っていないようです。ブッシュはペルーの次期大統領ガルシアがチャべス憎しで固まっているので,彼をラテンアメリカ.グループの先頭にして、対チャべス・グループとの戦いを始めるつもりなのでしょう。
さてバチェレットはアメリカの帰りにハイチを訪問、平和部隊として同国に駐屯しているチリ軍を訪問し、この国に平和が訪れるまで、チリ軍は駐在を続けると宣言。しかしチリの中にも大問題があるのですが・・・
続いて,彼女の話題ですが、大統領就任時に公約した「新政権100日間で実現すること」の締切日が近づいて来ました。野党は公約のうち,既に実施済みはほんの僅か, 公約どおりに100日以内に出来そうなものもほんのわずか、大半は100日たってもペンディングか手付かずのままで、歴代政府の最低水準だろうとこき下ろしています。どうなるかな?

3)公共事業省の不正問題はもうこの2.3年疑惑の中心でしたが,今週,その最初の判決が出ました。元大臣は4年の刑に処せられることになりました。ただし4年間刑務所に入るのではなく4年間見張りがつくとの事で,ほとんど有罪は飾りのようなものです。彼は大臣職を利用して私腹を肥やしたのですが,これで少々のことは大丈夫と他の悪い大臣は考えるでしょうね。
その他の事件の関係者も同じような有罪になるでしょうが,そいつらは全員ラゴスの腹心ですからね、寂しい現実です。
今週TVNの特別報道番組で、「ピノチェットの隠し財産の謎に迫る」というのがありました。興味をもってテレビの前に座りましたが,軍の管轄にある兵器工場がイランなど武器の輸出禁止国に兵器を密売し、そのとき隠し口銭をピノチェットが取ったのが彼の財産の基本としていました。それは既に知られたことで新味はありませんでした。そのうちラゴスの隠し財産の秘密などと言う番組も出るかもしれませんね。

4)隣国の話題ですが、ボリビアの話題はボリュームが小さくなり、わずかに今週末にラ・パスで両国の国会議員が面談と報道されました。ボリビア政府はチリ政府との交渉に進展が無いことにクレームしています。
一方、ペルーの話題がチリのマスコミに載るようになりました。ガルシアはペルーを同国をどこに導くのか,一方敗れたウマラは反政府組織を結成すると言われるが,その実行力はあるのか?またガルシアは早期にバチェレットとの面談を要求する予定とか。フジモリは今週サンティアゴの高級ホテルでどこかのグループと食事会兼ミーティングを行ったようですが,地道に基礎を固めているようです。


(経済)
1)ドルの価値がジリジリと上がって来ました。輸入品への影響は必至です。それも受けてガソリン代が来週から30ペソ以上も上がり、もう日本と変わらない値段になってしまいます。自家用車のオーナーは怒っていますよね。ガソリン価格の40%は税金ですから,ガソリン価格の上昇は即時に国家収入の増加になります。
昔はこのガソリン税で道路の建設や保守を行ったものですが、今は高速道路はちゃんと通行料を取られます。じゃ、こんなに高い税金を取る必要はないのではと自家用車族がクレームするわけです。
で、バス代も来週から20ペソ上がって現行350ペソが370ペソになります。

2)5月の物価上昇率は0.2%と予算の範囲内で、コントロールされています。ただ4月の国民総生産が2.8%と低かったため,2006年通年も計画より低い懸念が出てきました。
チリの好調に陰りでしょうか?
銅の値段も最高時の1ポンド4ドルまで達したのが,3.5ドルのレベルまで落ちています。


(一般)
1)雨が降ると大被害と言うのはサンティアゴでは通常のことです。テレビのニュースで昨年のフィルムを流しても、見ている人は分からないと思うほど。今年も例年どおり、たった61ミリの雨が降るといたるところで浸水騒ぎでした。いったいいつになったらそれをちゃんとコントロール出きるようになるのか知りたいものです。軍事政権のときも民政化しても問題は変わりません。特に出来たばかりの首都圏高速道路が立体交差の地下の部分が冠水して通行不能になったのは惨めだった。排水システムは無いのかな?その他,政府関係の建物に軒並み雨漏りなどの被害が出ているのも悲しい。出来たばかりの裁判事務所,それに最高裁判所、外務省事務所、バルパライソの国会などなど。で、その問題の原因として保守作業がちゃんと行われていなかったか,設計に問題があったとされていますが,いやはや。世界の一等国にはまだまだですね。
先週までは雨の少ない年と言われていたのに、今週末は例年より雨の多い年になっています??
もっとも水力発電のためのダムの水位が上がり,当分電力不足の問題は回避されたそうで良かったです。
それからこの雨は、山間部では雪になり、スキー場が来週の16日から開かれそうです。

2)TVデヂタル放送がこの10月から開始になります。このWカップを見るために壁掛けテレビのような新型テレビがチリにも浸透してきましたから、今までのシステムと違った放送も可能になってきたわけです。もちろん受信料は取られますが・・・

3)新しい航空会社がチリの空に進出。
この7月からロス・セドロス・アビアシオン社が開業予定で、航空機5機で出発とか。チリの国内線のシェア―は1−4月ではランチリが75%のシェア―、スカイが17%、他が8%です。一方の国際線はランチリが54%、他のラテンアメリカ社が22%、アメリカ系が12% 欧州系が12%となっています。まぁランチリの一人勝ちの構造は変わりなし。


(スポーツ)
1)サッカー チリの国内リーグはプレイオフに参加するメンバーが全部決まりました。一番最後にカトリカが入ったのが愛嬌。さてこの後,優勝するのはどこか?でもはっきり言ってWカップの後ろに隠れ、余り注目を集めていません。

以上