チリの風 その157 05年12月25日―31日

チリの風 その157 05年12月25日―31日

今年も無事に過ぎようとしていますと書き始めようと思ったのですが、事実は全く違い今週はベッドで苦しむことになりました。
日曜日の日本人会の餅つきは何とかこなしたのですが。夜に入って体調が狂い七転八倒の苦しみ。翌日医者に来てもらうことになりました。何かのビールスにやられたそうです。(多分,前日の親子どんぶりに使った卵に菌が入っていた)
4日間の休養命令になってベッドの中でおとなしく。しかし初日何も食べなかったのですが、普通なら信じられませんが、そのときは空腹を感じませんでした。ということは普段、必要以上に食べていると言うことかな?もっとも何も食べずにエネルギーが出てくるわけはありませんが。
アパートの窓から外の景色、歩行者を見ているとこれからの人生を考えさせられました??自分はいつまで忙しく走り回っているのかと。
それでも05年は平均して、月に一度は登山、コンサートにいって、月に二度のサッカー教室、毎週一度のチリの風を書きつづけ、週に二度はギターをひいて歌の練習、三日くらいマラソン練習、ほとんど毎日原稿を書いて・・・楽しく過せたことを感謝せずにはいれません。もちろん通常の仕事はちゃんとこなしてです。


(政治)
1)来月4日に大統領候補者間でテレビ討論会が行われますが、その他にもピニェラは討論会を要求しています。しかし、バチェレットはそれにうんと言いません。彼女にとって何か失敗すれば敗戦の基になってしまう討論会なんてやりたくないのは当然です。でもそれをピニェラが攻めると、彼は男性中心主義者で女性の権限を認められない古い型の人間という(おかしな)レッテルを貼られます。
そうそう彼女のグループと共産党の話し合いが成立し、共産党は次回選挙で彼女に投票すると公表しました。
新聞やテレビでは先週に続いて今週も盛り上がりがなく、左右の対決かと心配された選挙直後の緊張はペンディングのまま進展がありませんが、実際はそうではありません。
今週,バチェレットが発表した「私が政権をとったら最初の100日でこうします」と言う綱領を野党側はぼろくそにけなしました。民政後16年かかって出来ないことを100日で実行するなんて・・・出来なければ辞任するのか?
さて一見レースが盛り上がらない理由は応援団にあります。4人で争っていたときはそれぞれの党が自分の候補者を押していたから熱中していたのですが,今は二人になり、つまり各グループに一人となったので、グループ間の反発があり,盛り上がらないというもの。
第5州で裁判騒ぎになりそうですが、失業対策の予算を使って選挙応援をしていたと落選した候補側が当選した候補者を訴えていますが、それがなんと同じ与党グループ。ねっ、常識はずれでしょ。
しかしピニェラのDC崩しも進んでいるみたいだし、(現外相の兄が切り崩されました)そうした状態を憂慮するラゴス大統領はなりふりかまわずピニェラ攻撃するし、何がくすぶっているのか来週が楽しみ。

2)一方隣国の話題はチリでも非常に頻繁に報道されています。ボリビアはこの先どうなるのか、チリにとって最も大きな脅威はチリの孤立化でしょう。南米諸国が左傾化するなかで(チリもそうですが)ボリビアの要求が国際的に認められることになるとそれを拒むチリの孤立化は避けられません。モラレス次期大統領は近々世界各国を歴訪予定しています。キューバカストロと会うのを皮切りに、欧州各国のほかなんと中国や南アまで。しかしペルーにもチリにもアルゼンチンにも行きません・・。
ところでそのボリビアだけでなく反米の波は中南米では根強いものがあります。まぁここだけではなく中近東でも同じでしょうが、これはアメリカの政策の失敗か、こういう緊張状態を保つことで利益の出る集団がいるということでしょうね。
さてペルーではボリビアと同じような風が吹き始め、並み居る政党人を押しのけ今回の人気調査で、始めて元軍人で国粋主義のウマラがトップに立ちました。原住民として始めて大統領についたトレドが大失敗している中、この元軍人はかってのピノチェットのような政治を狙っているのだろうか?彼の本名はオジャンタ・ウマラですが、インカを知っている人ならクスコの近くにあるオジャンタイタンボという遺跡を思い出すでしょう。
フジモリのほうはペルーからの強制送還請求が出た段階でチリの裁判所に保釈を要求するのでしょうが、それは完全に政治マターなのでこの先どう転ぶかは誰にも分からない。
(それから関係のないことですが、日本の新聞でフジモリは憲兵隊学校に入れられてとしているのがありますが,これは間違いで、刑務官学校です。刑務所で働く人間を養成する学校,まぁどっちでもいいのかな?)

3)ここで現在のチリの置かれている立場を見てみましょう。中南米はスペイン(ポルトガル)の支配下の数百年を経て、すべての地区が独立していますが、スペイン人子孫(もしくは欧州系白人)優位の社会構造が続いていました。また農業と鉱業の一次産品を生産する単純構造でグローバル化に遅れをとっていました。
さて第2次世界大戦後、社会主義の影響を受け、左傾化した60―70年代、ほとんどの国で軍事政権が出来たのは力による支配がもっとも簡単だったからでしょう。
ここチリでも左翼政権の失敗で73年に軍事革命が起き、それから16年間継続しています。ただ救いだったのはピノチェットによる軍事政権が、例えば隣国アルゼンチンのそれに比べはるかに視野が広く、国際的に通用する経済政策を採用したことでした。
さらに88年の国民投票で軍事政権の継続が拒否され民政化が決定された後も心配された軍の介入はなく、そのまま民政に移管されたことです。
また10数年の期間があったにもかかわらず野党側?は準備が出来ており、政権の正常な移管が行われ国の発展が見られました。この最初の大統領、DCのエイルウィンの手腕は見事だったと思います。
確かにチリは小国でブラジル、アルゼンチンに比較すると見劣りしますが、近代化の観点からは全く遜色することはなく、観光やビジネスで3国をまわられた方ならチリの進歩を確認されていると思います。
もちろん、毎週のチリの風でお知らせしているように社会問題を抱え、失業率も依然と高く、貧富の差があることは紛れもない事実ですが、中南米諸国の中ではもっともまともな国と考えられます。
最近発表になった統計ですが、大多数の家族が今年は去年より良かった,来年は今年より良くなるだろうと考えているのはなによりです。
私はガイアナ3国以外の全部の中南米諸国を訪問しています。その中でチリでの25年,ペルーの滞在2年間は別格として、ボリビアには20数回、コロンビアに4回、ブラジルとアルゼンチンには3回など、仕事と私用を含め訪問しています。住めば都と言うのは事実ですが、それとは別にチリを高く評価しています。

4)我がなつかしのピノチェットに関するニュースが,最近出ていません。停滞していますが、終了したわけでなく,着々と本丸に攻め入っています。06年に入ってあっと驚くニュースが出るのではと期待しています。


(経済)
1)今年の日本はバブル時代のように景気がよかったようですが、チリも同じようなことが言えると思います。ただ大きく異なっているのは日本の場合は株式市場が絶好調だったこと(チリでは若干の上向きのみ)、為替が日本では円が弱くなったのに、チリのペソは全く逆に強すぎて国内産業に悪影響を与えている点です。
(日本の株が上がっているのは不思議ですね。最近の、航空機や列車の事故とか耐震構造のないマンションとかは同列の問題と思います。競争力の低下を嘘で固めているようで、それを高く評価しているのはどういうことでしょうか?)
今年のチリ経済にとってもっとも重要だったのは中国との関係ですが、中国がこれからもこの高度成長を続けることは考えられませんから、そのバブルが終わった後のことを考えて来年度の計画を設定する必要があります。
でないと80年代の終わりのように東南アジア危機問題の再現になるでしょう。
(笑ってしまったのは, クリスマスのあと、新聞の時事マンガで小さな子供が父親にこういっていました。おとうさん、サンタクロースは北極から来るなんて嘘だよ。中国人だったんだよ。子供の前に置かれたおもちゃは全部中国製と書かれてあります)

2)チリ経済の柱となっている銅産業で、国営のコデルコ社の企業価値についてメルクリオ誌はある米銀の推定で260億ドル以上、一方ラ・テルセラ誌ではコデルコ内部の資料として230億ドルと見こんでいます。この先10年間の同社の動向として、生産高が170万トンから230万トンに増産、ただし生産コストは1ポンドあたり31セントから50セントにアップする。さらに銅価格を現行の200セントから半分の110セントを見こんでいる。このため今年度コデルコから国庫に入る税収は52億ドルになるもようだが、来年は半分,さらに07年は大幅減の8億ドルと見込まれる。
ところで人件費を減らすため,機械の大型化を図ってきましたが,それでも足りないと機械の無人化(ロボット化)を図っています。このあたり日本企業も大型トラックやそのタイヤ以外にコデルコ商内に食い込む余地があるのではないでしょうか。
しかし上記の数字も中国との契約で大幅増産を行うことが前提で企業価値を上げているわけで、中国が銅の購入をしないなど契約不履行をすれば将来は真っ暗と言うこともありうる・・・心配。
それからコデルコを支えるのはその従業員だけではありません。下請けの人間が毎年膨れ上がっているわけで、その彼らが、今年の最高収益を前に黙ってみているわけには行かないとコデルコに1人あたり50万ペソのボーナス要求中。これが受け入れないとストに入ると通告。足元に弱点がありました。一日あたり1000万ドルの損失になると言うのですから・・・
年末、彼らは道路封鎖をして警察と向かい合いました。


(一般)
1)たった1週間前にクリスマスが終わったばかりですが、チリ人の関心は年末年始をどう過すかに移っています。一番は第5州のビーニャとバルパライソ市の海岸で打ち上げ花火を見ることですが、何でも南米一の規模と言われ、今年は二人の大統領候補を招待して行われます。
首都サンティアゴではアラメダ大通りに面して立つエンテル塔前の催し物です。大晦日9時から交通を遮断して各種のショーのあと12時前から打ち上げ花火、市民は盛大にシャンパンなどを開けて、その後、バンドが入ってクンビアなどを踊りつづけることになります。毎年、恒例の行事でお金をかけずに家族が楽しめるとして盛況。

2)それに先立って、バルパライソで文化カーニバルが開催されています。年末4日間ぶっ続けのこの催し物は毎年テーマ国を決め(昨年はコロンビア,今年はアルゼンチン)映画,音楽,ダンス,詩の朗読などを中心に幅広いショーが繰り広げられるもの。この種の催し物の少ないチリでは市民に熱狂する場所を与える機会です。私の娘も出かけていきました。

3)大学受験が終わり、その結果が発表されました。それを受け大学入学手続きも順調に行われています。
今年注目を集めたのは、(高い授業料が必要な)私立学校からの入学者が増え、公立高校からのそれは伸び悩んだと言うことと、最高得点者のリストに載った優秀学生はなんと大半(88%)がチリ大学とカトリカ大学の二つに集中したことです。
チリの受験システムは高校時代の成績を受験の成績に加味するものなので、公平と思えますが、公立と私立の差が余りにもつきすぎると社会問題になることは必須です。

4)航空業界
ランチリの一人勝ちで、国内線の77%シェアー,国際線の58%を押さえています。旅客数は微増で、05年11月は国内線31万人とか。(サンティアゴ発着のみ)


(スポーツ)
1)年末になると今年の最高スポーツ選手が選ばれるのですが、先日その発表があって、ヨットの世界選手権で優勝した選手が選ばれました、テニスのゴンサレスが有望と見られていましたが、審査員の見方は違ったわけです。マイナーなスポーツにも目を向ける必要がありますからね。

2)サッカーはリーグ戦が終わって、ストーブリーグの幕開け。注目の的は決勝戦で敗れたラ.ウーで主力選手の大量放出を発表しチーム総崩れの様相。というのは来年のリベルタドールカップにチリから3チームが参加する資格があるのですが、前期リーグ優勝のウニオン・エスパニョ-ラ、後期優勝のカトリカ、それに通年でそれらに続いて最も成績の良かったコロコロが出場権を手に入れ、ラ.ウーは蚊帳の外。これで来年の収益予想が大幅縮小になった彼らは主力選手の高い給料を払えないとなったもの。でその選手が他の球団に入ってラ・ウーを苦しめるというわけでしょうか。内紛の末,監督もくびになりました・
それから選手会から嫌われていたサッカー協会の会長が来年の任期切れでその職を退くことになりました。これで少しチリのサッカーも良くなるかもしれません。


以上

チリの風の読者の皆様が素晴らしいお年を迎えられますようお祈りしています。