チリの風  その158 06年1月1日―1月8日

チリの風  その158 06年1月1日―1月8日

新年明けましておめでとうございます。
しかし暑いです。連日30度を越えています。客先訪問のためセールスマンの小型貨物車で町を走ると気の狂いそうな暑さです。毎日多くの市民がこの暑さに耐えて働いているわけで、生きていくのは大変な修行だと思わされます。
もっとも先週の病気の癒えた私はその暑さの中、仕事を終えるとマラソン練習をしていますが・・・・。


(政治)
1)大統領候補のテレビ討論会
4日の水曜日、討論会がありました。前回4人候補者で行われたそれは、もう退屈で、最後までテレビを見つづける勇気がありませんでしたが、今回はワクワクドキドキ、最後まで楽しめました。
さて討論の内容の一部です。既にお知らせしたとおり、先週からコデルコで働く下請け企業の労働者が特別ボーナスを要求して闘っています。ピニェラはそれを理解できるとしたので、大蔵大臣は何を猪口才なと、彼がオーナーをするランチレ航空では90%の社員が下請けではないかと攻撃。この発言をピニェラは討論会で取り上げ、現役の大臣の発言とは思えない低次元のもの。おまけにランチリの下請け率は7%、これを90%と発表するなんて大臣レベルのエラーとしては惨めではないか?政治的攻撃以外の何者でもないとばっさり。(政府側は反撃なしの完敗)
この問題はチリ国内にダイレクトに影響し、今週、私の働いている会社でこの種の下請け問題がないか調査が始まりました。別に下請けを使うのは違法ではありませんが、契約がちゃんとしているか、事故の場合の責任は誰が取るのかと言った問題を検討しているわけです。 
それから質問者の一人が嫌味にピニェラの学歴詐称問題を取り上げたら、私は楽屋にハーバードの卒業証明書など全部持ってきていますから見て下さいときっぱり。しかしバチェレットの個人問題(子供はいるが、その父親はどうなっているのか, 何回結婚したのかとか)は全く出ませんでした。
選挙資金の出所について質問が出たとき、ピニェラは自分が大半を出していると回答。バチェレットは銀行借り入れですと回答したが(どの銀行がそんなアホな貸し出しをするのか知りたいと新聞に投書あり)そのあと、政府機関で全国的に全職員に対しバチェレット援助基金を出すよう指示を出したのが明るみに出てしまった。
ところで、私の見る目はたいしたことはないですね。というのは、その討論会は私の目には圧倒的にピニェラ優勢で終了したのですが、なんとその日以降のメディアでは互角の判定になっています。お互いの陣営が自分たちのほうが勝っていたと発表するのは当然ですが、新聞の論調にも互角とか不毛の対決とかになっており、ピニェラ圧勝とした私の判定と似たような結論はありませんでした。
しかし不思議なのは一緒に見た私のパートナー(彼女はチリ人です)も彼女の職場の仲間も私と同じ見解です。じゃメディアは一方の側に立った報道は出来ないとの自主規制でしょうか。もちろん私は討論会の結果がそのまま投票につながるとは言っていませんが。
ピニェラが番組の中で現在のチリの教育は問題があるとし、大学検定試験の結果が発表になる直前、文部大臣が辞任しバチェレットの応援部隊に入ったのは敵前逃亡のようなものだと発言したら、当の元大臣が番組終了が彼に食って掛かっていたのが注目を集めました。
さて土曜日のラ・テルセラ新聞の一面に依然としてバチェレットの人気が高いと出ました。で、そうか、やっぱり私の目に狂いがあったのかと思ったら、なんとその人気投票はテレビ討論会の前に調べられたもの。これはくさい。討論会前の調査を今ごろ発表して何になるのか?討論会の後では結果が大きく変わったので(例えばピニェラ人気が追いついたとか)この間抜けた結果を前に押し出したとか・・・
新聞で、ただ一つだけ見つけました。その論文は連合与党政権の悪夢として、バチェレットはラゴスの比ではない。見当違いな失業者の数を言うエラーなんてラゴスではありえない、現在チリでラゴスに匹敵する政治力を持っているのはピニェラだけだ。(私もそれを思っていたのですが・・・)
その後も、両陣営が入り乱れて戦っていますが、12州の国会議員は無所属ながらピニェラ指示を表明したのがやや注目されたくらい。
ピニェラが要求するさらなる討論会はバチェレットが拒否。こうして大きな波乱なく15日の決選投票を向かえる模様。
ただし当初、私が指摘したような左右の対決という雰囲気はありません。間違いました。ピノチェットの時代の対決はほとんど存在しません。

2)隣国の話題ですが、ペルーの大統領選挙にチリからフジモリが立候補を届出しました。もちろんこれが受理されたのではなく、届を出しただけです。人気候補ウマラはベネスエラでチャべス大統領と面会。(そこにボリビアのモラレスも同席)さて彼は左翼社会主義者なのか右翼国粋主義者なのか分からないと言うのはすごい。演技なのか、本当にどっちなのか自分でも分からないのか?
もう一つのボリビアは次期大統領モラレスはまずベネスエラでチャベスと会って、アメリカ帝国主義者と戦うと宣言してから欧州訪問しましたが、そこで出てきたニュースが楽しいです。なにしろ、相手国の大統領に面会するのにセーターを着ていくとか、それも同じセーターを何度も着て・・・。ボリビアでは庶民はネクタイを締めないんですよとコメントしているらしい。しかしボリビアの将来が心配される。
もっとも欧州組はみんな狸だから、ボリビアの資源に目が行けば、モラレス援助を約束するのは当然だろう。


(経済)
1)チリ国の市場開放度は少し下がって世界14位と発表されました。香港が1位と言うのが不思議ですが、チリの後ろの15位がスイスですからね。日本はどこに位置するのかな?チリの前には名が出ていません。
ところで、銀行などの推定でチリの2006年推定国民総生産は5,5%アップ、失業率の大幅ダウンらしい。その通りになってほしいものです。
しかし全く逆に、現在実施中の選挙運動の様子も含め、今年のチリは見込み薄と言うのが経団連の見方。困ったものだ。
どっちが現実なのか、見分けなければいけないが,05年の企業倒産は大幅に減少し、倒産による失業者は02年には1万1千人だったのが、昨年はわずか1100人。
さてドルはやや持ち直し、昨年末のような弱さから抜け出してきている。
もちろんそのドルの上下が大きく影響するわけですが、一人当たりの国民購買力が93年に3500ドルだったのが05年には7000ドルとなり倍増。チリ経済の好調を裏付けています。この数字は僅差でアルゼンチンについでラテンアメリカで2位。

2)石油価格の高騰が2005年のチリの物価上昇率を過去5年で最悪の3.7%にしたと発表されました。確かに2%以下の時期もありましたからね。
ついでに05年の数字として輸出は対前年23%アップの390億ドルだった由。その中でまだボリュームとしては小さいが豚肉の輸出が伸びています。前年対比30%のアップで、なんと総輸出の63%が日本向け!!!北部第3州にその豚肉用の大型基地建設が進んでいます。日本人がチリ産豚肉をもっと消費するようになるとワイン輸出を抜く可能性もあります。
ところでガス会社は今年1月からガス供給問題が出るかもしれないと不穏な発言。市民生活に直撃の可能性。隣国アルゼンチン, ペルー, ボリビアが順調ではありませんから・・・

3)銅の価格が、例のコデルコ騒ぎで今週も高値新記録を更新。労働者がストにでも入れば生産が落ちる可能性があると市場は見たらしいしかしチリの銅産業界もついているものです。1ポンド212セントですからね。
政府は下請け労働者とネゴするつもりはないといっているので問題が深刻化し、銅価格のさらなる上昇も考えられますね。
ところで昨年法制化されたマインへのローヤリティ税について世界最大の鉱山エスコンディーダが支払い拒否を表明。他の全鉱山が新法案を受けたのに対し、エスコンのみがこの法案の前の条件で支払うとしているもの。(もちろんそのほうが支払額が少ないから)
大蔵大臣は法的にどうやってこれを打開し、支払わせるか苦慮中。


(一般)
1)長い間、ドイツ人の共同体ディグニダのニュースが出ていませんが、着々と調べは進んでおり、拷問が行われていた実態が明らかになってきました。老齢の女医がそれに荷担した疑いで逮捕されています。(拷問をしていたときはもちろん老齢ではなかったでしょうが)それに墓が発見され人骨が見つかっていますが、これらも拷問されて殺された人間のものでしょうか?以前、警察の調べがこの共同体に入ったとき、ここから軽飛行機が飛び立ち、なんとそれは近くの陸軍基地に着陸していたことも明らかになっています。つまりピノチェットと組んで、左翼主義者を拷問していた事実が明らかになっているわけです、もっともこの共同体の首謀者はその他に年少児への性的虐待でも起訴されています。

2)昨年、チリ人青年がクスコでインカの壁に落書きして逮捕された事件をお知らせしましたが、その同じ人間がこんどは国境の町タクナでマリワナ所持で逮捕されました。ペルー・チリ間の麻薬運搬の仕事でもしていたのか分かりませんが、さすがに今回は彼を助けようと言う声はありません。

3)観光の話題
チリ政府は申請されていた南極での3つのマラソンレースを許可しました。
しかし南極にまで行って走ることはないと思うのは素人で、あそこで42kを走りたいと言う人がたくさんいるわけです。まぁ半分観光でしょうでしょうが。
それから私の愛するチロエ島に橋がかけられる話は既にお知らせ済みですが,その橋は橋げたまでで60mの高さ。ところがクイーンメリー2世号はマストまで72m。つまり橋の下を通れません。で、これがプエルト・モンの観光に影響されるのではと心配されています。公共事業省はそんな大きな船は世界に数えるほどと本気にしていませんが、どっちが正しいのかな?一度出来てしまえば、取り壊しは出来ません。

4)ラヴ・パレード
7日の土曜日、首都サンティアゴの大通りアラメダを封鎖して大パレードが開かれました。昨年に続いて2回目ですが何でも15万人が昼から深夜までテクノポップのリズムに乗って踊り狂ったとかで、そのエネルギーには驚かされます。30度の暑さで踊り狂うのですからね。まぁ私にはとても無理です。でも、あのころ、ウッドストックの時代は、私も確かにその頃の大人に同じようなコメントされていたのですが・・・


(スポーツ)
1)05年のスポーツ選手の所得ランキングが発表になりましたが、毎年トップはサッカー選手だったのが今回はテニスのゴンサレスでした。年収150万ドル。もっともタイガーウッドの8700万ドルに比べるとかわいいものですが。

2)現在チリで20歳以下のサッカーの南米大会が開かれています。と言っても女子です。第1回戦、チリはブラジルと対戦、8対1で敗れました。悔しい。男子も女子も勝てないのか・・・


以上