チリの風 その159 06年1月8日―15日

チリの風 その159 06年1月8日―15日

暑い日が続いています。夏が暑いのが当然、涼しい夏は自然ではないと言いながら仕事でチリ北部の鉱山をまわっていると半砂漠の暑さが身にこたえました。


(政治)
1)決戦投票が終了し、とうとうチリの大統領が決まりました。
いつものように結論を先に出さずに、先ずは前哨戦からお知らせします。水曜日の夕刊紙ラ・セグンダに候補者の人気予想が出ました。
何と!いつも勝っていたはずのバチェレットを抑え、ピニェラが一部の南部地区では優勢でした。
そうか明日の朝刊はこれが一面トップだなと思ったら、エル・メルクリオもラ・テルセラも一面にこれに関連したニュース無し。そうかチリの新聞は政府の側に立った報道を心がけているんだなと先週に続いて再度確認。
昔、キューバに行ったとき、キューバ人から「君の国に報道の自由はない。私たちはここに自由がないことを知っているからまだましだが、君の方は自由がないことさえ知らないのだからがかわいそう」と言われたことがありますが・・・フーム、当たっている?
さて投票前日になるとさすがに緊張が高まってきます。もう選挙運動は終了しているので、街角で旗を振る運動員の姿もありません。政府側はなりふりかまわずバチェレットの応援をして、味方のDCからも出すぎた政府の応援は不必要と言われるほど。
バチェレットの選挙資金を集めるのに政府関係機関の人間から強制的にカンパをさせていた事実が明らかになり、さらに選挙資金法で認められた以上のお金をかけていたのではないかと疑いが出てきたり・・・つまりひところ、どう転んでも彼女が勝つのは間違いないと言う確信が崩れたことを表明していました。
おまけです。前回の選挙で左翼側候補で立ち4位に終わったヒルチェの写真が14日のウルティマ・ノティシア紙の1面トップに出ました。記事は、彼は全部なくしてしまった。選挙には負けるし、持っていた商売もなくしてしまったと報道しています。彼は写真現像所のチェーン店を12箇所持っていたのですが,全部売却したらしい。しかし勝負の世界は厳しい。わずか1月前、彼は旋風だったのですから。

さてここまでは投票の前日までに書上げたものです
15日の日曜日。7時に投票所が開かれました。いつものように民間人で運の悪い人間が立会い人になっています、しかし今回から六千ペソ(約1200円)がご苦労様でしたという感謝費用として支払われます。失業対策でもないでしょうが、まぁ昼食代と往復の交通費用にはなります。
私は前回と同じく,マラソン練習をしてから投票所に。3分で終わりました。
投票所の近所は駐車禁止なのでずっと離れたところに子供が車を誘導しています。チップをもらうためです。投票所の近くでは氷で冷やしたコーラを売っています。こうして選挙投票も金を稼ぐ手段になるわけです。
さて結果です。意外でした。私は51対49くらいの接戦になると予想していましたが、何と7ポイントも差のついた勝負でした。確かに南部の一部でピニェラが優勢のところもありましたが、北部なんか20ポイントの大差がついて、結局与党の政権継続です。すぐに車が道路に出て、クラクションを鳴らしながら夜遅くまでパレードをしています。
これから4年間、バチェレット(54歳)の活躍を期待しましょう。

2)いつものように隣国の話題
最近ロシアとウクラニアの間で、天然ガス供給で問題が起こりましたが、どの国でも自国の発展にエネルギーは欠かせないものです。水力発電はどこの国でも出来るわけではないし、石炭発電は大気汚染が激しい。また原子力発電は拒否反応が大きい。となると天然ガスの要求が増えるのは当然です。従い、これを手にするロシアの影響力は欧州を相手に十分戦えるほどのものです。
同じことがボリビアにも言えるはずなのですが、ボリビアはそれを政治的に使う能力がまだないので、ロシアのような影響力をもてません。国民が「天然ガスは私たちのもの、他の誰に売りはしない」なんて言っていればモラレスも全く力を行使は出来ません。さて彼はその状況を変えることが出来るか?
ペルーの方は、フジモリの大統領選挙申請は一度拒否された後、再度ネゴしていますが、まぁあっさり拒否されたので・・・無理でしょう。もう一方の有力候補のウマラについてですが先週私が書いたように彼がどういう考え方をしているのか, メディアでも分かりかねているようです。右翼なのか左翼なのか?チャべス、モラレスと組んで反米路線を走るのか、単に反チリで国内をまとめようとしているのか?とにかくきっぱりとランチリがペルーの国内航空を独占している状況は容認できないと言っています。
チリとしては自国が順調に進んでいるので、近隣諸国の発展を願いたいところ(そうすればもっと経済交流が図れますからね)


(経済)
1)コデルコの評価価値が毎週のように発表され、それが銅価格のようにグングン上昇していますが、(今週発表のゴールドマン・サックスでは275億ドル)それと正反対なのがその鉱山に働く下請け業者の労働者。で、50万ペソの臨時ボーナスをよこせとデモ、道路封鎖などして警察と対峙しています。まぁ選挙前だからと波風を立たせないようにラゴス大統領は選挙後、コデルコと労働者組合の面談を示唆。ところがコデルコ社長が自社の業績が良いからと何故、下請け労働者にコデルコが臨時ボーナスを払わなければいけないのか?それなら中高年労働者や失業者にも払う必要があるのかと全く歩み寄る気配を見せていません。選挙が終われば大統領もデモなんか気にもしないだろうし・・どうなるかな先行き。

2)上記に水力発電のことがでましたが、南部アイセンでエンデサが計画中の水力発電所を巡って自然破壊にあたると反対派が叫び、問題になっています。近日中に結論が出そうですが、チリも天然ガスは出ないし、エネルギー問題には苦戦しています。

3)いつも銅の価格の話ばかりですが、金の価格も上昇しており、今週ついに過去25年の最高記録を作りました。金鉱山も笑いが止まりませんね。


(一般)
1)大統領官邸の前の市民広場が改装されたことはお知らせしましたが、その広場のモネダ宮殿文化センターにメキシコ大統領の來智をまってメキシコ3千年の歴史と言うタイトルでメキシコ考古学の文化財が展示されます。久しぶりにオルメカの人頭像(高さ1.7m)も見られそうです。楽しみ。

2)その広場にある大きな噴水の中まで入りましたが、政府機関から金を借りて家を建て,その支払い遅延で問題を起こしているグループが政府に援助を要請してデモをかけました。もちろん政府は相手にせず、グループは警官ともめて多数の逮捕者が出ました。
チリではグループを作って力で対決すると言う例が良く見られます。表向きは拒否しても政府も裏でネゴしていたりして・・・

3)チリでは麻薬犯人が使っていた物品(自動車など)を押収するとそれを犯人に返還しないようです。まぁ犯人は刑務所の中と言う理由かもしれませんが、家族に自動車を返還しても良さそうですが・・・。 さて今週その種の自動車を、それは警察が保管していたのですが、地方裁判所の女性判事が借り出し私用で運転し事故を起こしました。もちろん問題になっています。そんなルーズなことでよいのか、誰が保管責任を持っているのか?
新聞報道では新しい麻薬取締り法ではその種の自動車は競売にかけて売り、売上金を内務省に納めることが出来るらしい。

4)欧州のロックグループのU2が2月26日に国立競技場で演奏会をしますが、その入場券がわずか発売二日で7万枚を完売です。一番高い3万円とか言う席も売り切れたらしい。しかしチリも元気のあるものだ。

5)宝くじにあたった奥さんが賞金を引き換えようとしたら当たり券が行方不明に。連日テレビ局も協力して捜したら、ある日突然ドア下においてあるのが見つかりました。彼女の家は月の収入1万円の極貧家庭で、毎日の食べるものにも困っている家庭でしたが、これでやっと人並みになれると、先ずデパートで新しい服をそろえ、賞金の千万円を受け取りに行くのも用意された大型リムジン車でした。何と副賞に新車がついていて、彼女の驚きが一段と大きくなりました。
彼女は小さな果樹園のついた家を買いたいといっています。上手くいくかな?

6)さて観光の話題です。第2州のサンペドロ・デ・アタカマは月の砂漠と呼ばれるところやタチオ間歇泉、さらにインカ以前の文明の遺跡もあって有名ですが、先年ここを訪問した外国人の調査結果が発表になりました。1位はフランス人で、23400人。これに欧州のドイツ、イギリス、スペインが僅差で続き、なんだか欧州人ばかりが訪問しているみたい。
観光客急増で一部地区では入場制限の必要が考慮されているらしい。
ところで不思議なのは外国人観光客の数が急増しているのにチリ人観光客の数は微増とか。そうでしょう、2州の山奥に高い金をかけて行くくらいなら、もっと安く隣国アルゼンチンやブラジルに行けるのですから。


(スポーツ)
1)先週お知らせした女子の20歳以下の南米サッカー大会は地元開催でしたがチリは2次予選に進めませんでした、チリの選手は全員アマチャ-ですがブラジルなんか年棒100万ドルとか言うプロ選手がいるとかで勝てるわけがありません。

2)06年ATPツァーが始まりました。ニュージーランドの大会で、昨年はチリのゴンサレスが優勝したのですが、今年もどうかと期待されましたが、準準決勝でそのゴンサレスももう一人のマスも負けてしまいました。来週からオーストラリアでATPの4大大会の一つが始まります。
がんばってほしいもの。

3)自動車オートバイのダカール・ラリーが始まり、オートバイの部でチリのデ・ガバルドの健闘が期待されました。一時首位に肉薄しながら僚友の死が響き、制限速度違反の反則もとられ上位進出は出来ませんでした。
なんだか今週はさえない話ばかり。


以上