チリの風  その156 05年12月19日―25日

チリの風  その156 05年12月19日―25日

普通チリの会社はクリスマスの前日は半ドンです。で、23日の金曜日は、昼頃、ちょっとした軽食を社員が一緒にして、クリスマスを家族で楽しめますようなどと挨拶して別れることになります。チリ人全員が幸せな家族生活を送っているわけではありませんが、とにかくクリスマスは家族で過すと言うのがここの基本です。そして24日の深夜12時にプレゼントの交換をします。で、25日の朝は誰も町を歩いている人がいません。
ところで今年のクリスマスは今年最後の日曜日に当たりましたので、日本人会では恒例の餅つきを行いました。日本人、チリ人を含め100人近い人が日本人会館に集合して盛大に行われました。私もよる年波・・・ながら、毎年のごとく楽しんできました。


(政治)
1)今週は腰砕けの週でした。先週までのあの熱気が消えてしまいました。というのは盛り上がるはずの選挙方式改定案が国会で成立せず、その責任を誰も取らず、その結局、単に1週間無駄になった感じです。
現在の国会議員選挙のシステムは候補者間の争いでなく政党グループ間の争いになっています。例えば与党側が1位、2位を占め、野党側が3,4位を占めたとします。通常の選挙なら、与党側の二人が当選するわけですが、現行チリシステムでは与党の1位と、野党の3位が当選し、与党の2位は落選します。ただし勝った側(1.2位側)が逆のグループの2倍以上の投票を得たとき、二人当選になります。このおかしな仕組みは当然のことながら与野党間の政治折衝の結果で、狙いは大きく勢力を変更しないと言うわけですね。で、政府がそれを止めて通常方式に変えようとしたのですが、野党側はこの方式を決定したとき、ラゴス大統領は自分の任期中はこれを変更することはしないと言明しながら、今回の法律変更案は公約破りだとし、議会を退場、投票に参加しませんでした。
このためこの議案は否決されました。翌朝の新聞には1面トップで茶番劇とこれを批判していました。
さてピニェラはこの方式変更に賛成していましたが、野党側の最大党たるUDIが反対し、彼はUDIを説得する能力がなかったので、この結果になったわけです。つまりバチェレットだけでなくピニェラも大統領として自陣をまとめる力量のないことがはっきりしました。
さて今週のバチェレット側はヒルチが獲得した5%の得票を目指して共産党と必死のネゴ。これさえ確定できれば、当選確定と考えています。ピニェラはこれについて、こそこそやらないで堂々と話し合いをされたらどうですかと両者に嫌味。でも商談って普通、こっそり(ひっそり)やりますよね。

2)わずかに今週、盛り上がったのは第1州、イキケの名物市長が、彼は社会党系ですが、なんとピニェラと地方発展のための合意書を締結しました。この話し合いの会場になったイキケのコンサートホールに多数の左翼系応援団が集結し、バチェレットの応援を叫びながら市長の会場入場阻止を図って大混乱。昔、日本でもあった警察とデモ隊の乱闘なんて場面を再現しました。

3)外国の話
しかし前回のチリの風で、ボリビアの大統領選挙では過半数を取った候補者が出なかったため未決定(後で国会で選出)と書きました。18日(日曜日)の夜9時のニュースでTVN(日本のNHK)が発表したので、そう書いたのですが、翌朝の新聞を見てびっくり。なんと50.4%を獲得してモラレス当選とありました。確かに0.4%ですが過半数を超えたわけです。すみません。
彼は少年のときリャマ飼いをしていたそうですが、他の国では羊飼いの少年と言うところでしょうね、ろくに学校にも行かなかった彼が大統領に就任するなんて。アルゼンチンのゲリラ、チェ・ゲバラを崇拝しているらしいが、キューバカストロ、ベネスエラのチャべスと同じようなやり方がボリビアで出来るかどうか?
しっかりしたバックの政党も持たず、誰を大臣にすれば適任なのか、ボリビア国内でも想像できないと言う状態で、組閣が心配されています。ボリビア初めての原住民出身大統領ですが、天然ガスなどの資源の国有化、チリとの領土問題などの公約を実行しようとすれば、組閣直後から大きな壁にぶち当たるでしょう。正面突破しようとして失敗するか、実行できずに公約不履行で国民から不支持を受けるかのどちらかになる可能性が高いと見ます。いずれにせよ彼とボリビアのこの先は厳しい。
一方、ペルーのフジモリのほうは、サンティアゴから遠隔操作で動いているようですが、目立った成果は出ていません。ただクリスマス・イブに子供たちが訪ねてきて親子で食事を楽しんだようです。


(経済)
1)チリの輸出はわずか2年で倍増しました。ドル建てで03年が341億ドルだったのが、今年は623億ドルです。(1―11月ベースの比較)輸出先で日本はアメリカについで2位、全体の12%を占めています。輸入では日本は10位で3%。日本商品はチリ市場には高すぎるのでしょうね。中国や韓国に大きく差をつけられています。

2)ペルーの大統領選挙は、上記のフジモリの動向とも関連していますが、他の候補者で有力と言われるウマラが、チリからの経済進出はファーストフード・チェインや百貨店レベルなら大歓迎と言うべきだが、航空、港湾などの基幹産業でのチリの行き過ぎた進出は容認できないと発言しています。現在ぺルーの空はほとんどランチレの独占のようですから。

3)いつも鉱山会社が儲けすぎて笑いが止まらないと書いています。もう書きたくもないけど、今週も銅価格は210セントに迫る新記録。更にもうチリ国内では新規の大規模開発の可能性はないとしてルクシック・グループはパキスタンに投資をすることを決定。約十億ドルの投資で銅を採掘。
一方、銀行界も今年は大きな利益が出ているようです。11月まで14億ドルの利益を計上、これは歴的な数字とか。顧客数も過去最高のものになるらしい。
チリでは銀行で口座を開くには会社員だと勤続年数、かなりのレベルの給料が要求されます。でないと口座が開けないのですが、顧客数が過去最高になるだろうと言うことはチリの給料レベルが上昇していることの証明にもなる。おめでとう


(一般)
1)今回の選挙について私見をいろいろ書きました。その中で選挙立会人は一般から選出すべきでないと書きました。今週、それに関して次のような記事が出ました。「意地を張ったら刑務所に」です。
前回の選挙のとき、立会人に選出された女性が、体調が悪く選挙の日、投票所に行けませんでした。しかし前もって、警察に体調不調で実行不可能との届出を出しておきました。にもかかわらず、半年して裁判所から呼び出しがかかり、医師の証明書などを提出したにもかかわらず不十分として5千円くらいの罰金を言い渡されました。それは納得が出来ないと支払い拒否したところ、刑務所に3日間留置されたというもの。
罰金を払わない彼女の頭が固いのか、チリの裁判所は一般常識がないのか、法律が現実と乖離しているかのどれかでしょうね

2)家庭内暴力
チリで今年度、家庭内暴力で殺害された女性が35人にも上るというのはほとんどショックですね。日本はチリの10倍の人口ですから、日本で毎年350人の奥さんがご主人に殺されているというのと同じことです。しかしこれはチリはマチョ(男性中心)の国だなどといって喜んでいる事態ではありません。
そんな中で象徴的な事件が起きました。夫が、裁判所からの命令を無視して別れた妻の住んでいる所にいき、口論の末、自分の6歳の娘をアパートの窓から下に投げ捨て死亡させ、さらに妻に暴行、自分も自殺を図った事件です。その夫婦は二人とも病院などで社会保護などの仕事をしているプロで、こういう事件を防ぐのがその仕事だったのでは??
夫は既に裁判所から妻の住居の近辺に立ち寄ることを禁止する命令を受けていました。

3)クリスマス
クリスマスは宗教行事ですが、もうチリでは商店街が売上を増やすための週間(もしくは月間)の感じです。近辺の日は夜遅くまでモールが開かれ、買い物客でごったがえしています。で、先週のチリの風に書いたようにチリの家庭に借金が増えていくのでしょう。
さてクリスマスに直接関係ありませんが、子供へのプレゼントに特に売れている中国製自転車の安全性が問題になっています。値段は安いけどすぐ故障する、ぶつかるとつぶれてしまうと言うクレームが多発。
またチリでのオートバイの販売は、05年は04年対比80%アップの売上になるそうですが、その売上急増の原因は安い中国製の流入です。オートバイは100キロ近い速度で走るから自転車のように故障が起これば、生命の危険になりますね。じゃ中国製の自動車も大丈夫かな?
ついでに借金の話。家やマンション購入のローンがこの10年で2倍になったとか、贅沢な物件に人気が出たのか、物件の価格があがっていると言うほうが正しいのか?で、給料がそれだけ上がっていないとますます持ち家が遠くなると言うわけです。逆に無理して買ってしまって、返済に困ると言う例もあるかもしれません・・・

4)プンタ・アレナスでフランス人がマラリヤで死亡
これを見たとき、あっ、エラーだと思いました。だってチリ最南端の都市、寒冷のプンタ・アレナスにマラリヤ蚊なんていません。で、そのフランス人はアフリカで病気にやられ、南米まで来て発病したもの。気の毒。

5)大統領官邸前の広場の工事が終了
モネダ宮殿で要人が出入りするのは憲法広場側ですが、反対側のアラメダ大通りに面したほうの広場は市民広場と呼ばれています。
この公園を1年以上かけて大改装していましたが、それが完成したもの。水を張った大きなプールを中心とした近代的な設計のもの。
一般市民はなかなか素晴らしいが木陰のあった以前の公園のほうが親しめるとさめた発言をしています。


(スポーツ)
1)サッカーの後期リーグ戦が終了。22日の第二戦でカトリカが久しぶりの優勝を飾りました。試合後クラクションをならして車が走りまくり、私のアパートの近くは深夜までうるさかったです。
と言っても、ことはそう簡単ではなく、第1戦を辛勝したカトリカが、二戦目をサラスのゴールなどラ・ウーのがんばりで落としてしまい、なんとPK戦にもつれこみました。それを5対4でかろうじて押さえ優勝。しかし最後まで冷や冷やしました。
2試合で10万人の観衆と例年以上に今年の決勝戦は盛り上がりました。
カトリカファンの私は翌日、会社のクリスマス行事のとき、ラ・ウーの熱狂的ファンの社長に、昨日は残念でしたねと言うと、試合に勝ったのでうれしいよと嫌味な返事が戻ってきました。おっ、素直に敗戦を認めないのかと私はさらに逆らって、カトリカファンとしては、優勝がうれしいんですよ、昨日の試合を勝ったかどうかより・・・。
これがもとで解雇でもされたら、笑ってしまいますね?!
しかし試合の翌朝、イタリア広場の近くを歩いたらガラスの破片が散乱していて、見ると街灯やバス停の広告ガラスなどが割られていました。カトリカファンがここに集まって一晩中騒いで、悪さをしたのでしょうが、同じカトリカファンとして嘆かわしいことです。カトリカファンは他のチームよりは上品と言われているのに・・・


以上