チリの風  その111  05年2月7日―13日

しかし暑さがまたぶり返し、今週なんとサンティアゴで35度にもなる日がありました。
たまらないですね。何でも90年ぶりの暑さだそうです。でも週末、午前中だけですが、霧雨が降って涼しい日がありました。
それから金曜日出張でビーニャに行きましたが、サンティアゴからたった100キロしか離れていないのに、小雨が降る肌寒い天気で、ビーチにあふれているはずの観光客もまばらでした。首都に戻ってきたら、もちろん暑かったですが。


(政治)
1)ピノチェット問題に関し、チリ銀行アメリカ支店が特別の配慮を行っているとの報道がありましたが、まだ良く分かりません。特別の配慮って言うと彼を助けようとしているのか、陥いれようとしているのかのどちらかでしょうが、普通、規則どおりにやるのがベストと思いますがどうでしょう、来週には詳細が分かるはず。

2)例の上院議員
今度は彼の秘書兼運転手が逮捕されました。何か秘密を隠しているのか、議員と一緒に幼児いたずらを繰り返していたのでしょう。
しかし問題は拡大する一方で、この事件を隠そうとしたとして検察陣営の中に疑問が生じ、一部の検察官がこの上院議員と癒着、便宜、もみ消し工作など不正を行っていたことが明らかになってきています。いったいどこまで疑惑が拡大するのか、最後は政府関係者まで行くのでしょうね。
しかし事件の直接の加害者(と訴えられている)議員が、自由に歩き回れて、彼の秘書が逮捕されるのは何かおかしいですね。


(経済)
1)7年ぶりに04年の国家収支が黒字になったそうです。04年の経済成長率は5.9%を記録し、05年も同様の好調が見込まれています。この5.9%はそうとうのインパクトがあったようで、政府関係者だけでなく財界からも驚きと喜びの声が出ています。
何しろ04年は輸出が好調でしたからね。ところで好調は継続し05年1月の輸出はなんと前年対比37%アップと驚異的な伸び。銅の値段も高値に張り付いたままですし、これは行けそう。

2)赤字のことをチリでは痩せた牛といいますが、これでもうチリに痩せた牛はいなくなったと、テレビのニュースに太った牛が出ていました。確かにマンションの売れ行きが好調とか、高級乗用車が売れるとか、04年の空の旅を楽しんだ乗客数が新記録(国内海外合計で6.6百万人)だったなど景気の良い話がよく出ます。
さて私の今週の出張目的はバルパライソ港で使われるコンテナー・ハンドラーに使われるタイヤの検品でした。そこの課長クラスと話をしていたら、港の荷動きは確かに増えている。従い04年、港湾関係会社の業績は軒並み黒字拡大だった。しかし従業員の方といえば、仕事量だけ増えて給料は据え置きで、全く浮かばれないとこぼしていました。
それを私も取り上げたいのですが、国の経済が好調とか、鉱山会社を筆頭に会社経営が順調なのは数字で証明されていますし、国民一人当たりの所得もドル表示では上がっています(これは曲者で、ドルが弱くなれば、給料が上がらなくても見かけの数字は上がる)しかし生活実態はどうなのでしょう?
一部の人間が、好景気にのって生活をエンジョイしているのは理解できますが、私の目には一般大衆までそれが来ていない、おこぼれに与れないと見ています。まだまだ底が浅いということでしょうか?何しろ、50万人といわれる失業者にとって国の好景気はまったく存在感の薄いものでしょうね。
さて銀行の貸付け金の焦げ付きが、2004年は過去7年間で最低になったと言う数字はどうでしょう。国民は銀行から金を借りて家を買い、その借金をちゃんと返済していると見れますか?もっとも銀行が貸すのが上手くなったとか借金の取立てが上手くなったという見方もあるようですが。
同じくチリ資本の海外進出はめざましく、新聞に写真がのっていましたが、ペルーのリマにあるショッピングセンターにチリ資本のデパート、レストラン、スーパー・マーケットが進出、チリ人が見るとまるでサンティアゴ郊外のようです。
ところで彼らより先にペルーに進出したパスタ会社ルケッチは環境汚染問題から訴訟を受け倒産し、多額の損失を出していますが、そんなマイナス事件は他山の石にもならないようです。

3)鉱山会社
国の基本は税金を徴収することから始まります。04年チリでは企業にかかる税金の40%を鉱山会社が支払っていることが発表になりました。これでは例のローヤリティ新税を鉱山会社が払いたくないのも無理がないかな?その中でも税金の支払額の多いのは国営のコデルコ、民間ではエスコンディーダ、コジャワシが続いています。

4)事務所の賃貸料
チリ経済の好調を受けてビルの建設ブームが続くサンティアゴ貸し事務所の値段があまり上がりません。東京が1m2あたり1300ドルくらいですが、チリは235ドルとラテンアメリカ14都市の中で9番目と低い地位。進出企業にとっては有利ですね。ブエノス・アイレスが8位で平均253ドルとか。


(一般)
1)サンティアゴのメイン道路アラメダの補修工事が始まって1ヵ月ちょっとたちましたが、歩行者が車にはねられる事故が続出し、死者が5名になりました。しかしどう考えても異常です。せいぜい数キロの範囲の道路で毎週のように人がはねられて死ぬなんて。いったいチリ人の感覚ってどうなっているのでしょう?
2月末に工事は終わりますが、あと何人死傷者がでるのかな?

2)警察と犯罪グループの戦い
麻薬関係の犯罪が急増していますが、彼らは警察と正面切って戦うようになってきました。ある夜、麻薬関係者の家を張り込んでいた警察グループが、そこで麻薬を買いにきた人間を逮捕し、さらに家宅捜査を行おうとしたら、中の人間が発砲し、銃撃戦になったとか。しかし警察に発砲して撃ち合いになるというのがすごい。

3)チリの芸者逮捕
しかしまた彼女のニュースがでました。チリ人芸者としてチリでは知らない人はいないほど有名なアニ―タ・アルバラードが逮捕されました。罪名は売春斡旋です。チリから女性を日本に送り込んでいたというもの。訴えでた女性はレストランで働くと言われて日本にいったら売春婦にさせられたというもの。暴力団とかからんで日本滞在中は厳しい毎日だったのでしょう。しかし彼女アニ―タのニュースが出ると、もと彼女の夫の顔写真が出て(彼は刑務所の中です。日本人の顔写真が新聞に出るのは珍しい)日本のイメージを落とすのが残念。しかしその男もアニ―タに会わなければ、青森の公社でまじめに働いていたのでしょうか?

4)山の遭難
アコンカグアといえば、アメリカ大陸でもっとも高い山(約7千m)ですが、そこで遭難していたチリ人が救助されました。36時間行方不明になっていた彼を5900m近くで救助隊が発見、救出したもの。通常ルートならそこからベースキャンプまで8時間で下りられるが霧のため、彼はルートを間違えたもの。
これまでに今シーズン既に5000名が登頂に成功し、4名が死亡しているらしい。
毎日50名くらいが登頂している計算になりますね。50名ですよ!私はその山より50m低いオホス・デ・サラドに挑戦したとき、登頂失敗しただけでなく、身体が寒さで硬直してしまったのを悔しく思い出します。


(スポーツ)
1)サッカー Wカップ
日本は北朝鮮に辛勝しましたが、南米はその9日、各地で練習試合が行われ、チリはエクアドルと対戦、3対0と圧勝しました。とくに前半のチリの動きは素晴らしく、まるでブラジルみたいな軽快な球捌きで、エクアドルを翻弄、観客を楽しませてくれました。3月のウルグアイとの本番もこの調子でいきたいものです。

2)テニス
こっちはあきません。ビーニャでのATP大会はチリのゴンサレスが準優勝に終わり、3月に予定されているWリーグの対ロシア戦に、マスが負傷欠場と、せっかくWリーグに復帰したのにベストメンバーで戦えず、試合の前から負けムード。


以上