チリの風  その237  07年8月20日―26日

チリの風  その237  07年8月20日―26日

先週の週末は最高でしたが、今週はそんな甘いことはなく、土曜日など憂鬱な天気でした。サンティアゴの最低気温はまだマイナスですが、それでも春が近いのを感じるこのごろです。
しかし今年の日本はまれに見る猛暑ですね。日本で暑さのために人が死ぬなんて想像もしませんでした。大阪で世界陸上が開催されていますが、何故この暑い8月に実施するのでしょうか?高校野球は夏休みの8月と決まっていますが、世界陸上選手権を季節の良い10月に実施すれば、もっと良い記録が出ると思いますが。


(政治)
1) 今週はどう言うわけか、バチェレットさんがテレビや新聞にたくさんでました。その中で注目を浴びたのは政府の新諮問機関の設立です。例の人道的賃金を含む国民生活の改善を探る委員会ですが、政治、経済、宗教界を代表する人たちが選出されました。その委員たちの中に前大統領候補のラビンが含まれています。ラビンって最右翼のUDIから出た候補ですよ。うーん、この人選は上手い。右と左を混ぜて、何がなんだかわからなくする作戦ですね。この太っ腹作戦(彼女は確かに太っ腹ですが)は楽しみです。どういう結論を発表してくれるのか。ただしこの委員の中に共産党系と労働組合代表は入っていません。

2) その人選に漏れたもう一人の候補だったピニェラですが、先週、株が暴落した時に大きく株を買い上げ、話題を呼びました。投資総額は3億ペソとか。株価が戻ったので1週間でぼろもうけでしょうね。
それをせこいと批判した社会党の党首に、ピニェラは「彼は政府の金で生活して自分で稼ぐことをしない人間」と厳しく反論すると、政府のウェベル官房長官が「ピニェラは彼のように大金を持っていない人間は仕事をしていないと考える」とさらに反論。この戦いは次の大統領選挙まで継続します。

3) 病院がパンク状態
普通遅くても1―2月の間に手術を含め患者の手当てをしなければならないのに、(それでも遅いが)それが公立病院では何と半年、1年もかかっているという数字が発表されました。このため政府と医師組合の対立は深刻。
それでやっぱり新病院の建設は不可欠です。で、サンティアゴの病院建設にスペイン、ブラジルなどを含む9社が応札。いつ着工するのかな?

4) 外交問題
この1週間ペルーの地震ニュースがメディアを埋め尽くしましたが、まるで各国の援助合戦のようになりました。南米ではコロンビアの大統領が現地を訪問、ベネスエラはチャベスの顔写真の入った缶詰を被災者に配りました。チリも大臣を二人現地に派遣し救援物資の輸送をしました。現地の被害者の苦しい生活は継続していますが、もう飽きたのかニュースに出なくなりました。
さてフォックスレイ外相がボリビア問題の解決案を探るチリを邪魔するのはペルーと爆弾発言。
もちろんそれは正しいのだろうが、こうして公式に発言するのはペルーが領海線問題でチリに挑戦してくることへの返礼だろう。ペルーとしては現在問題にしている地域の海域をチリがボリビアに譲渡するのは認められないとするのは当然で、両国の嫌がらせ応酬は当然継続でしょう。
そのボリビアですが、国会で与野党議員が多数入り乱れての乱闘。結構パンチやキックも入っていい試合ぶりでした。
フジモリ問題もついでに少し。フジモリの指示で1990年代の後半サンティアゴ駐在のペルー大使館がチリ政府高官の電話盗聴をしていたと暴露されました。ホンマかな?

5) 人権問題
日曜日の新聞で元大統領のエイルウィンがこれ以上軍事政権時の行方不明者を探すのは無駄だと爆弾発言。彼の発言の真意は不明ですが行方不明者の家族を含め左翼側は猛反発しています。かなりこの余波は続きそうです。


(経済)
1) 今年チリの上期の経済成長率は5.9%でした。商業、金融、鉱業が高い成長率を示す一方エネルギー関連(ガス、電気、水)はマイナス成長でした。
そのエネルギーですが、アルゼンチンからの天然ガスが5日間止まり、首都圏の一般家庭への供給危機問題がでましたが、備蓄のある間になんとか供給が再開されたので大問題は起こらず、ホット一息。この問題を軽減するためメトロガスがサンティアゴ天然ガスの新備蓄基地の建設を申し出たところ、政府から許可が出ました。しかしこれに対しペニャロレン地区の住民が区長を含めこれに反対、工事差し止めの動きを見せました。首都圏知事は区にこの工事差し止めの権限はないとしましたが、裁判沙汰になりそうです。
今週出張でラ・セレナからサラマンカに向って車で走っていると海岸沿いで大きな風車を建設していました。風力発電でしょうが、昨年エジプトで紅海沿岸に風車の並んでいる地区を通ったのを思い出しました。チリの電力不足は年々深刻化していますからね。
それに電気代の値上げも問題になっています。今年になって既に2度の値上げ、それが年末までにさらに2度の値上げが予定され、それも何と約20%のアップ。平均家庭で現行17500ペソが20600ペソになるとか。

2) 労働争議
   コデルコやその他の企業で継続していた労働争議が今週はアグロスーペル社に飛び火。第6州でブタや鶏肉を製品にする工場の操業が止まりました。経営者側は政府の弱腰を強く批判し、このままでは正常な経営が出来ないとしています。
   第5州の漁師もメルルーサの漁獲量が激減していると抗議して警察を相手に派手に戦いましたが、政府の月12万ペソの和解案をのみ解決。

3) 株価が元に戻る
   世界中で株価が下落しましたが、チリは1週間でその下げた分を取り戻しました。(先週の下落は10%、これを今週8.4%取り戻す)これはチリの先週の下落は国内要因ではなく外部の影響であったことを示しています。日本の場合、日経平均で先週10.3%の下げを今週4,1%戻していますから、チリより問題は深刻ということでしょう。アメリカの失敗が世界に影響する構造はまだ続くでしょうが、アメリカ支配の度合いが変わっていくのも見えています。

4) ガソリンの値段
   今年の平均価格は95オクタンで605ペソとか。一番安かった日は2月19日で546ペソ。しかし2001年にはそれが310ペソだったのですからね。もっとも銅の1ポンドあたりの価格は2001年72セントだったのが昨年は305セントと、今年はもっと高くなっていますから、原油価格の高騰を十分補う銅の価格上昇です。


(一般)
1) トランサンティアゴ
海賊バスの横行が問題になっています。正規のバスと同じ色に塗った海賊バスが料金を安めにして(正規は380ペソ、海賊は300ペソ)一般乗客を運んでいます。警察が出て運転手を逮捕すると、彼はテレビカメラの前でかわいそうな乗客を助けているんですよとコメント。まぁ一部は当たっているのかな?
金曜日、午後から雨になりましたが、そのトランサンティアゴの運行バス会社の一つにいってタイヤチェックしました。すっかり濡れましたが仕事はちゃんと終えました。仕事をしないと給料はもらえません。
しかしバスの運行が未だに不安定で、土曜日の朝、アポキンド通りでバスを待っていた乗客がバスが来ないと怒り出し、道路を閉鎖して抗議。何と1時間も目抜き通りを封鎖したので警察が出る騒ぎになりました。その乗り場は私が毎日使っている所です。

2) 10人中9人のチリ人は差別されていると認識
えっ、それじゃほとんど全部のチリ人が自分は差別されていると考えているのですか?
差別の対象と考えられているのは1位が貧困。34%が貧乏のため自分は差別されていると考え、続いて24%が皮膚の色(容貌)、さらに学歴、年齢と差別理由は続いています。もちろんマプチェなどの原住民、他の国から来た外人なども被害者意識を持っています。しかしこれではチリ人ものんびりと生活できませんね。もっともチリ人の外国人への差別もひどいですが。

3) 上院議員の息子が今年の初め麻薬所持で逮捕され、裁判になっていましたが、今回無罪になりました。その判決は麻薬が彼のものかはっきりしないというもの。しかしその裁判官の頭の中を疑いますね。彼の車の中から麻薬が発見されたら、彼が所有していたのは明白、もっとも友だちが忘れていったというケースもありうるだろうが、それならその友だちは誰か特定する必要がある。「何もわからないが彼は無罪」とするのは疑惑が残るだけ。母親のクリスティ議員は息子の疑惑が晴れてうれしそう。

4) サンティアゴのラ・レイナの公園でマンモス象の骨が発見されました。今から約2万年前に、サンティアゴにもそれらの動物が存在していたのですね、知りませんでした。気候の変化などで絶滅したのでしょうが、人間も同じ道を辿りませんように。

5) チリ人でパラグアイで活躍している記者がマフィアに殺されました。彼が同国で犯罪グループの活動の様子をレポートし始めると、脅迫が始まりました。自分と家族の安全を考えチリに帰国する準備を始めていたそうですが、帰国する前に殺されたもの。

6) 極限競歩大会
今週からアタカマ砂漠でウオ―キング大会が開始。これは世界の砂漠を歩く競技でアタカマ、ゴビ、サハラなど世界の砂漠を歩くシリーズらしい。しかしそんな物好きが世界には沢山いると見えて、このアタカマ250キロ歩きにも世界16カ国から80名が参加。チリからも3人とか。しかし参加費用は一人約百万ペソ(2千ドル)ですからね。1週間歩き続けるらしいが目的地に到着したときはもう脱水症状でしょうね。厳しい。なんでも参加者の半数は昨年の大会にも参加しているとか。

7) ノートブックコンピューターの売れ行き急上昇
チリではもうPCはどこでも自由に使用できるようになってきましたが、それにともなって携帯パソコンがなんと1年間で売れ行き倍増とか。価格が下がったのと、チリ人の購買能力が上がったのと、仕事や家庭でのパソコンの重要性が知れわたった結果でしょう。


(スポーツ)
1) サッカー
9月の欧州遠征するチリチームのメンバーが発表されました。数年前、ササコンビで世界に名を売ったサラスが久しぶりに復帰です。(もう一人はサモラーノ、彼はもう引退しています)
さて国内リーグはカトリカ大学とチリ大学の2大学チームの対決で盛り上がりました。工場で、カトリカファンの私に大多数を占めるチリ大学ファンの工員さんが「フジオさん、月曜日また涙顔で来ることになるよ」と態度を大きくして言うので、「何なら賭けても良いんだよ、えらそうにいうんなら」と脅してやりました。
   で、結果は2対1でカトリカの勝ち。やっぱり。口笛でも吹きながら月曜日、工場に入っていきます。
   ところで、チリと日本の親善試合も考えられていたそうです。元アルゼンチン代表監督を迎えたチリのバリューが上がり、日本側の乙波した価格ではやっていられないとなったらしい。日本対チリの試合がテレビで放送されたら、私は両方のゴールに歓声を上げなければいけないところ。


以上