チリの風 その238 07年8月27日―9月2日
ついに8月が終わりました。チリでは8月が終わるということは冬の終わりで、老齢者はこれでもう1年長生きできるという意味になります。それでチリ各地で8月31日、公民館などに長老者を集めてパーティが開かれました。
確かに気候も変わってきました。9月1日の土曜日、日本人学校に行ってサッカー教室をしましたが、往復とも半そでシャツでした。春や!
(政治)
1) しかし驚きました。統一労働連合が主催した社会正義を目指すなどを目的とした全国ストがこの水曜日実施され、国中が大混乱。何しろ逮捕者750名、警官の負傷者45名(これは新記録)ですからね。
夕方からもうバスが止まってしまうというので、私の働く会社も4時半でおしまい。街の中心セントロでは毎度おなじみの火炎ビンも飛び交って大騒ぎ。ここで笑ってしまうのは反政府デモに与党社会党が参加しており、国会議員のナバロは警官に頭を殴られ出血。大阪で、「どたま、かちわったろか」とよく言いますが、彼はホンマにかちわられたわけです。バチェレットは与党を構成する政党が反政府運動に参加するのはいかがなものかとコメントしましたが、社会党は「組合運動は社会党の基本。彼等と共同歩調を取ることは党の生命線」としています。
新聞の日曜特集でチリ社会党の左翼復帰とおちょくられています。もちろんこれは次の選挙で労働者の投票がほしい社会党の戦略の一環。
前大統領のラゴスはこのデモはチリの評価を下げるだけと一人前のことを言っています。しかしそれなら何故これだけの反政府運動がおこるのかを考えた方がいいですね。で、与党内はギクシャクした関係に。
騒ぎが終わってから冷静に見ると、労働組合の方も若手の突き上げなどで、たいした理由もないのにデモに走ったこと、参加者は以前に比べ明らかに減少していること、にもかかわらず騒ぎは大きかったこと。
なんだか今回のデモの威力と限界を示唆していませんか?
さらに笑ってしまうのは、土曜日に次の大統領は誰がなるかという人気調べで今まで抜群の強さを誇っていた野党のピニェラに与党キリスト教民主党(DC)のアルベアルが肉薄したことから、社会党とDCが急に和解して次の政権も私たちでとしています。何を考えているのかわかりませんが、権力維持のためにはなんでもするということでしょう。
ピニェラが失策をしないのに、またアルベアルが大ヒットを打たないのにそんなに今までの人気水準が変わるはずがなく、この種の調査で一喜一憂する政党、政治家が嘆かわしい。
アホなのは与党側だけでなく、野党側も同じで、バルディビアで開かれた野党連合会議でなんと自分たちを代表して大統領選挙を戦うはずのピニェラを招待しませんでした。彼はRN党でUDI党と上手く行っていないからですが、それでは選挙戦は戦えません。
2) 新交通計画
少なくとも5264台のバスが毎日運行され、それでも600台がまだ不足していると運輸大臣が発表しました。GPSで少しは数字がはっきりしましたね。
前政権時の運輸大臣がこの計画で大失敗だったのはそれまでのように乗客から受ける料金が収入のすべてだった仕組みを変えたとき、同じように乗客の数によって政府がバス会社に支払う仕組みにすべきだったのを毎月定額支払いにしたため、バス会社はできるだけバスを車庫において道路に出さなかったことだとしています。しかし良くこんなやり方で(こんな釈明で)政治生命がたたれないものですね???
3) 厚生大臣が厳しい批判の波を浴びています。アウへという新健康保険システムが上手くいっていないからです。医師組合のほか、今回は政府の検査機関からも問題点を指摘されました。ところが当の大臣は3百万人も患者のアテンドしてクレームはほんの3000件、これでシステムが破綻しているようなことをいうのはおかしい。問題を政治的また組合的な観点から討議しないで国会で論議しようと訳のわからない釈明をしています。
4) ところでバチェレットが訪日しています。こっちの新聞にも日本の新聞にも小さくしか報道されていないようですが。大丈夫かな。チリ海軍の帆船エスメラルダが日本に寄港していますが、それを訪問するだけが成果だったなんてことのありませんように。
しかし日本のメディアに「チリを代表するのは私です。チリ人ゲイシャと言われるアニ―タではありません」と言うと受けるでしょうね。それで、彼女の人気が一気に上がって、連日、カメラマンがバチェレットの後ろを追いかけると思うのですが、どうかなこの作戦。
その後、彼女はシドニーでAPECの総会に参加しますが、ペルーのガルシア大統領と面談するかな?領海線とかフジモリ問題とかありますから。
世界重要女性ランキングで昨年17位を占めた彼女は今年は27位に後退。彼女を見る目が厳しくなったのは世界共通です
(経済)
1) 株価の動き
チリ証券市場の8月の締めは結局0.9%の下落で終わりました。大騒ぎした割にはたいしたことはなかったわけですね。おめでとう。もっともまたアメリカが落ちればチリにも影響するのでしょうが
2) チリで一番の富豪アンジェリニが死亡。93歳でした。彼はイタリア移民で1948年に10万ドルをもってチリに入国。94年に国籍をチリにし、6億ドルを残して93歳で死亡の由。側近の話で晩年の彼は最近の政府のやり方を強く批判していたとか。6億ドルの持ち主ってどんな生活をしていたのかな?まぁ死んでしまえば1億ドルも10万?も同じですが、すごい富豪ですね。
3) 天然林保護
2週間前に法令が出され、天然林の過剰な伐採が禁止されましたが、この法令が準備中だった過去15年で12万ヘクタールの天然林が消滅しました。何しろ最初にこの法律が国会に提出されたのは民政化した最初の大統領エィルウィンの時期ですからね。
原生樹木アレルセ(alerce)なんかドイツ移民が入植しはじめてから植林地が半分になってしまったらしい。自然保護と人間の生活権の問題はどこでも複雑です。
(一般)
1) 9月に入って、急にチリ国旗が目に付くようになりました。また公園で凧揚げが目立ちます。いよいよ愛国週間、愛国の月9月です。
上院に続いて下院でも承認され9月17日は祝日になりました。
つまり14日金曜日の午後から19日まで5日間以上の休日です。事故や事件の多発が心配です。ちゃんと20日の木曜日、仕事が始まるんかな。
2) 先週の風に、チリ人記者がパラグアイで殺された事件を書きましたが、その続きがあります。警察が記者殺害に関して、何と、彼の伴侶のパラグアイ女性の父親を逮捕したようです。その父親が暴力団と関連しているのか、たんなる家族問題なのかまだわかりませんが、暴力団の違法行為を記事にし始めてから脅迫を受けていたので、当初は暴力団に殺されたとなっていましたが、警察は伴侶(結婚はしていないらしい)とその家族が怪しいと見ているらしい。殺されたチリ人の遺骨は土曜日、チリに到着。しかし原因は暴力団か家族問題か、どっち?
3) チュキカマタを閉鎖
チリで長い間、銅生産の首位を走っていたチュキカマタ銅山の町、同名のチュキカマタが92年の歴史を閉じました。マインが大きくなって、町の近くまで接近してきたため公害汚染がひどく町の閉鎖が余儀なくされたもの。18000人の住人は隣町のカラマに移りました。私もタイヤの仕事でこの町を何十回と訪問、従業員クラブで同社の重役と食事会をしたのが懐かしいです。
4) 南部観光
チリの最南端にあたるパタゴニアは風光明媚で世界的な観光地ですが、それは夏季の一時期だけでそれ以外は全く観光客の訪れない場所です。それが最近変わってきて冬場でも魅力のあることが認識されてきました。トレッキング、乗馬、ボート・ツァーなどが主な行動ですが氷河近くまでカヤックで近づくツァーも用意されているとか。観光客を集めるため冬季間(3―9月)はすべて費用を半額にする案が考えられています。
私はパタゴニア好きですが、冬季の厳しい寒さ(強風)はハンパじゃないですよ・・・
5) 魚を食べましょう
チリ政府は国民の間に魚を食べる習慣がないのを是正する必要があるとキャンペーンを始める予定。何でも1年で一人当たりの魚の消費量は日本が60キロ、スペインが30キロ、チリは5キロとか。
(スポーツ)
1) テニス
あかんなー。やっぱり、今年最後のグランスラム、ニューヨーク大会に参加したチリの3選手は、カップデビルは1回戦を勝ち抜いたのですが2回戦世界1位スイスのフェデレルと対戦し玉砕。ゴンサレス(世界7位)は世界94位のガバシュビリに1回戦でフルセットで負け、マスも1回戦で負け。これではチリの面目丸つぶれ。
2) サッカー
ナショナルチームは欧州遠征に出発。どんな成果を上げるのだろうか?対戦相手はスイスとオーストリア。まぁ相手にすれば不足の気がしないではないが、現在のチリではどの相手も強すぎるから、文句を言わずに勝って帰ってほしい所。
その選抜選手の一人で今シーズンからアルゼンチンのリバプレーでプレーするサンチェスは出場した最初の試合に得点を挙げ、満員の観客からチレーノ、チレーノの祝福を得ました。これはサラスがその昔、同チームで活躍していたとき、得点するたびにさすがチリ人!といわれていたのと同じ。あのアルゼンチンで満員の観衆がチリ、チリ!と絶叫するのを聞くとチリ人は感激するものです。
春が近いサンティアゴより
以上