チリの風 その228 07年6月18日―24日

チリの風 その228 07年6月18日―24日

雨の上がった日曜日、快晴でした。街の背後の雪をかぶったアンデス山脈の美しさは首都と景色としては世界1でしょう。カトマンヅより上や!!
しかし私の方は仕事が忙しくなりました。今までのリキャップタイヤの仕事のほかに一般タイヤの仕事がまわってきたからです。今週はチリ最大手バス会社でプレゼンテーション。上手くいったのでこれで契約締結かと思ったら、先方の社長が、最後にじゃ少し値段を考えてよと一言。がっかりしましたが、事務所で最終乙波を作成。ただ値下げをするのは不愉快だから、タイヤ関連費用を下げる努力を一緒に行い、費用が下がった分を半分づつにしましょう。つまり値下げ分を戻してほしいとして先方に送ったら、先方からフジオさんのスペイン語が良くわからない、英語でもよいからもう一度説明乞うとメール・・・トホホ。
さて先ごろ掲載したアフリカの旅の感想文が大量に寄せられています。(嘘。ほんの4名だけ)その4に登場する前田さんから次の情報が入りました。レソトにはダイアモンド鉱山があります。そこでゴミとして捨てられた人間のこぶし大の石が、何とダイヤモンドの原石だったそうです。それを発見した掃除のおばさんにダイヤモンドの価値の10分の1が渡されたとか。すごい。


(政治)
1) 普通どこの国でも国会では与党と野党が対決するのですが、チリの場合は与党間の争いが中心になっています。先のトランサンティアゴ向け2億9千万ドルの追加投資のとき、与党側に反逆者が出て、土壇場まで採決が危ぶまれましたが、今回は最低賃金の設定に関し、政府の示唆した数字を与党の一部が拒否し、政府は彼らの要求する14万4千ペソまでアップして妥協しました。しかしこんな茶番劇いいかげんにしてほしい。
最低賃金は国家経済の基礎になるもので、これを政治的な観点で捉えると票のほしい議員は誰でも高めに設定しようとする。しかしそれでは企業の競争力が失われ、逆に失業率の高騰をよぶ危険が出てくる。したがい技術的な観点から検討されるべきだが、今週のチリの国会では、それらの観点からはなれた政治的見地からの論争になり、政府提出の最低賃金を大幅に上回った数字で落着している。
現行の最低賃金は13万5千ペソで全労働者のうち6%がその給料で就業している。これをドル建てにしてラテンアメリカで比較すると一番高いのがアルゼンチン258ドル。2位がチリ250ドル。続いてパラグアイ(238)ベネスエラ(238)。ブラジルはずっと下で167ドル。メキシコ(116)ボリビアは65ドル。もちろんチリの250ドルは日本円では3万円にもならないが、物価が日本の4分の1くらいなので実質10万円の価値はあります。

2) ラゴス元大統領はもう一度チリ大統領に返り咲こうと虎視眈々とチャンスを狙っていることは既に書いたとおりです。しかしその職を離れてから1年以上立つと当時見えなかったぼろが続々出てきます。その筆頭はトランサンティアゴですが、その他にも貧困者対策政策があります。今週13チャンネルのコンタクトと言う番組でそれに関するラゴスの公約がほとんど実現しなかったとレポートすると、それに怒り狂った彼は番組の責任者に文句を入れ、とうとう離任後継続していた沈黙を破り記者会見。しかしここでも記者が細部にわたって疑問を提出すると君とはこれ以上話することはないと打ち切り。記者からこれは会談で一方的な発表会ではないですよと忠告されるありさま。年はとりたくないものです。
これに関してラゴスグループからも注文が続出、記者会見で怒りのあまり取り乱すのは避けてほしいと言われたらしい。ただ最大問題は彼の責任とされるトランサンテァアゴ計画で自分を擁護すると後任のバチェレットを攻めることになり、それはまずい。じゃ今までどおり沈黙を守ることですね。
今週発表された世論調査では、次の大統領になれそうなのは1位ピニェラ、2位ラゴス、3位アルベアルDC党首となっています。
落ち目続きだったバチェレットの人気も落ち着いてきました。ただし政府の仕事を評価する33%、認めないは55%と大きな差があり、世間の目が依然として厳しいのは同じです。
ただし落ち目の政府を横目に、野党側の人気も低落で、国民の政治離れが顕著です。

3)外国の話題
その1 ボリビア
 先週、ボリビアでバチェレットは先方のモラレス大統領と面談したが、ボリビアは今週、念願のボリビアの海について下記を提案してきた。
 さしあたって、領土権の主張は行わないが、下記の2案を問題の解決の手口としたい。その1はチリ第2州のミチーヤ近くの地区を借地し(50年期限)そこにボリビアの住民登録所(政府機関)、工場、海水浴場などを設置する。その2はチリのアリカとペルーの国境間の地区を帯状にボリビア専有地区としボリビアから太平洋まで自由に通行できるようにするというもの。(この案にはペルーは強烈に反対しています)この見返りにボリビアから天然ガスの輸出を行うことになります。
 今週も寒波に襲われたアルゼンチンは国内への天然ガス供給も十分に行えず問題山積。これではチリへの供給ができるわけがありません。
その2 ペルー 
ペルーの元大統領のフジモリが日本の議員になるかもしれないというニュースはチリでも報道されました。ペルーの大統領選に登録するとき私はペルー人だ、日本人ではないと言っていたのは嘘だったのかな。
やっぱり彼もチリでは目が出ない、ペルーでは刑務所行きが免れないと考え始めたのでしょうね。じゃ問題はどのようにチリから日本に事故なく(?)戻れるかになりますね。


(経済)
1) 銅の値段がまた高値を更新しています。今年の平均銅価は3ドルを超し、新記録。コデルコの利益は止まることを知らないし、国庫の増収も同じ。で、トランサンティアゴに3億ドルくらい食われても政府は痛くも痒くもないということでしょうか?しかしそんな甘い話がいつまでも続くわけはないでしょう。

2) 5月に一時落ち込んだ証券取引ですが、ここに来てまた勢いを取り戻し今週新記録を記録。とにかく手持ちの金を株にすれば大きな利益が約束される状況が続いています。1年で27%のアップとか。チリの経済成長力の堅調を示すものですね。ここで実は私も株でもうけているのですと言いたい所ですが、素人では勝てそうにないから遠慮しています。

3) セルロース工場からの排水汚染問題
   アラウコ・グループのセルコ工場から出た汚染排水が1ヶ月の間に2度も海に流れ込み環境破壊をした問題は地域に深刻な影響を与えていますが、政府はもちろんセルロース生産者連盟もこの産業に著しく悪い印象を与えていると同社を厳しく批判しています。この工場はアラウコ社に所属し、チリでは最大手の生産会社で昨年は29億ドルの売上を記録。利益は6億ドルを報告されています。これだけ利益の出る産業なら、もう少し環境問題も考えればいいのですが、利益第1の思想はどんな大企業でも変えられないのですね。
   該当工場は当分の間全面閉鎖になる見込み。
   同じように、チリの輸出産業のサーモン産業でも汚染問題は避けられず、養殖工場から脱出したサーモンが近隣地区の自然破壊を引き起こしているとか。海や川のサーモンはサバンナのライオンみたいな危険な存在らしい。98年に5千8百万匹だった養殖が2005年には1億1千万匹に倍増しているから、こういう事故がおこる可能性が急増しているわけだ。


(一般)
1) こんな話題はどうでしょうか?ほんの2ヶ月前まであった大きな湖が突然姿を消すなんて。第12州のオヒギンス国立公園の水深30mあった湖が消えました。湖はあるのですが、水がなくなってしまったのです。湖の底に亀裂でも出来てそこから水が流失したのか氷河の下を通って水が反対側に流失したと思われますが、アイセン地方の地震が影響しているのかな?琵琶湖が消失すれば、地域住民への影響は甚大なものがありますよね。幸いこの湖は人里はなれた地域にありました。

2) 幼児へのわいせつ行為で有罪判決を受けていた犯罪者がチリから逃亡した事件がありましたが、その犯人はチリからボリビアパラグアイを経由してブラジルに潜伏していました。それが今週やっと発覚逮捕されました。チリ政府は彼の送還をブラジル側に要求していますが、どうなるかな?チリから陸伝いで不法に隣国に入るのは意外と簡単で、ペルー、ボリビア、アルゼンチンのいずれの国にも行けるとか。逆に向こうからチリにも不法に入国しているのでしょう。そう言えば、人権問題で有罪になった元陸軍軍人の行方もわかりませんね。

3) 冬至の日が来て、南半球では冬の入りとなりましたが、チリのマプチェ族は1年に始まりとしてこの日を祝いました。ペルーのインカはこの日をインティ・ライミ(太陽の祭り)として最も重要な宗教行事にしていましたが、農耕民族にとって太陽が復活するこの日の重要さは共通ですね。
北半球だって欧州で12月の末に各地でこの日をお祝いしています。
ところでチリの南部は大雪のため孤立した地区が多く、住民や家畜の安否が気遣われています。


(スポーツ)
1) 来週から二つの国際大会
まずアメリカ・カップがベネスエラで開催されます。チリの入ったグループはブラジル、メキシコそれにエクアドル。いずれもワールドカップの常連で、どうみてもチリが2回戦に進むのは困難。通常なら、大会の1週間前から国中で盛り上がるのに、今回はほとんど話題にもなりません。チリ人がサッカー嫌いになったわけではなく、やっぱり国民は見る目があるわけです。先月のようにコスタリカに負けるようではメキシコに勝てるはずがない。じゃ最悪の3連敗もあるわけで、そんな大会が盛り上がるわけはありません。昔、サモラーノ、サラスのいた時代は世界選手権でも上位を狙えたのに。なにしろ今回は守り重視の戦法で、今回のチームでは攻撃するフォワードはわずか一人の布陣。これでは勝てるわけがない。
もう一つの大会はカナダの20歳以下の世界選手権ですが、こっちは上位進出を祈りたい所。

2) サーフィン
チリの最北部アリカで行われていた世界サーフィン大会でチリ代表の二人が一部の競技種目で優勝しました。他にも種目があって全競技の終了するのは7月1日です。チリにもサーフィンブームが来るかな?

3) スキー いよいよシーズンが始まりましたが、サンティアゴ近郊のスキー場へ行くルートで先週3件の交通事故が発生。死亡事故まで発生していますから安全なスキーを楽しんでほしいもの。
スキーバスに乗って現地に行き、レンタルスキーを使ってリフトに乗ると、それらの費用の合計で一人1日5万ペソ(約1万円)ですから、チリの一般的な家族では支払える金額ではありません。


以上