チリの風  その181  06年6月19日-25日

チリの風  その181  06年6月19日-25日

土曜日,日本人学校でサッカー教室をしていると雨が降り出し,最後のゲームの途中で中止にしました。その雨のお陰で、太陽が出た翌日の日曜日は空気汚染が解消し、すっきり空も晴れました。
チリ,青い空の素晴らしさと、国歌に歌われる通りになり、アンデスを見ながら走るいつものマラソン練習も最高でした。日本の皆さんにこのサンティアゴの素晴らしさを知ってもらいたいです(もっとも年に数回ですが)
先週は週末,二晩続けて催し物があり、家についたのは翌日になってから,それでもマラソン練習をしたので体力の限界、したがってチリの風も内容に乏しかったけど,今週は気合を入れて書いています。それではいかんか?でも私の体力も限界があるから・・・


(政治)サンティアゴの大気汚染と同じく厳しい環境。いつもテレビカメラの前でにこにこしているバチェレットも顔がゆがんできている。
   今週、満面笑みでニュースに出たのはペルーの次期大統領ガルシアがチリ訪問した時とマプチェの人と踊っている時くらいだった。

1)アラン・ガルシアは半日のチリ滞在で各方面と対話して帰っていった。その中で注目されたのは「選挙運動中に公約したペルーはチリを超えるというのは何も戦争をしてその存在を脅かすというのではない。チリの優れたところを見習って行こうとするわけで、両国間の協調こそあれ緊張はない。そして二国間通商協定を結びたい」とし、緊張関係の問題を生み出す、例の海岸国境線の線引き問題やフジモリ処遇は出さなかった模様(少なくともメディアの前では)
さらに国連の安全委員会で仮にチリがチャべスのベネスエラを推薦したとしても、両国間にひびは入らないとリップ・サービス。(もっとも、ベネスエラ応援をするかどうかは与党間に意見の不一致があり,問題がくすぶっている)
しかしそのペルーから密入国するペルー人が絶えないというのは悲しいニュースですね。以前から多数のペルー人がチリに来て働いているが,それらは観光目的で入国してそのままオーバーステイし,不法に働いている。最近はそのレベルを超えて、当初からチリの国境を潜り抜ける動きがある由。メキシコからアメリカに密入国するのと同じように、業者に金を払い、トラックの荷台が二重になっているその裏に潜むなどしてチリ領土に入り,そこでバスに乗るらしい。チリとペルーの生活格差が大きいのでこういう犯罪が起こるのだろう。じゃ、私がチリ人に、「みなさんはチリで正式に働けるので幸せですね」と言うと、彼らから何をおっしゃいますか、仕事はきついし給料は安いし、暮らしは楽ではありませんという回答があるのですが。

2)今週マプチェのカレンダーでは新年を迎える。(彼らは冬至の日に新しい年が始まると考える)で、彼らのグループのお祝いにバチェレットが顔を出し,一緒にお祝いのダンスを踊りました。チリの人口の約5%はインディへナと言われる。(02年の国勢調査の結果)もっともこれは本人の申告なので,自分はチリの原住民の子孫とは認識しないと言えばそれはそれで通ります。その約70万人のうち、大半の約90%がマプチェ族です。その他に北部地区のアイマラ,ケチュア,さらに太平洋のラパヌイの人々がいます。チリ最南端の地区にヤマラ族が住みますが,全人口は1700人で,これはチリ在住日本人と同じようなものですね。

3)さてバチェレット政権は問題山積です。全部が私のせいじゃないと怒っている彼女の姿が目に浮かぶようですが,問題をどうやって解決していくのかそれが国民の目に映ってきません。
先日までの大問題,高校教育は対策委員会設置まではこぎつけましたが,その先の進歩はほとんど無し。さらに14万人が加盟する教師組合も給料アップを政府に要求していますが、週44時間働いて、最低賃金は42万ペソの由。約8万円ですね。もっともこれは他の職種に比べるとそう悪くはありません。(ただしこれを認めると診療所などに働いている医療機関組合が黙っていません)
続いて、検査医機関の不正(もしくはエラー)問題も新聞に例として取り上げられただけで10ほど上りますが,その不正の責任は誰にあるのか全く進歩なし。
さらに大気汚染は軍事政権時代からの問題ですが,一向に改善無し。古いバスを廃車にして新型バスを導入することで少しはよくなるかと期待されたサンティアゴ新交通システム(トランサンティゴ)は完全実施が遅れるばかり。何と今週、次のような交通事故がありました。新型バスの運行ルートはちゃんとテンダーを実施して、それに勝ったところが運行権を得たのですが、それを無視して海賊バス(山賊バスかな?)が出現し,そのバスが新型バスに追突,なんと30名もの負傷者が出ました。驚いたことにその事故バスの運転手は免許を持っていなかった。つまりバスのオーナーは儲けのためには法も何も無視して仕事をしているわけです。これではテンダーに勝ったバス会社が、利益が出ないと泣いているのは無理はない。
おまけにサンティゴ市内の道路は9万箇所も穴があいて車両の通行に支障が出ているし、ガソリン代の値上げに怒ったマイカー族が市内の中心でデモ運転をして抗議をしました。
しかしそれらにまして国民の間で一番深刻なのは犯罪の増加でしょう。
とにかく最近、犯罪の増加が目立ち、それが年々凶悪化していくのです。で、今週,もう政府や裁判所にはうんざり(がっかり)した。これからは自分で(銃を所持して)身を守るという運動がはじまりました。
さらに一人の弁護士が中心になって犯罪はもう十分だという市民運動を起こしています。
何しろ首都圏では5分に1件の割合で犯罪があり、犯人が捕まっても刑務所に入って服役を終えるのはわずか半数と言われます。つまり捕まった犯人が数日のうちに釈放され,再度犯罪に走るというわけで,いったいこの国の裁判所はどこの法律を運用しているのかと思わされます。もっとも裁判所は法律に問題があるとしています。
私も過去10度ほど犯罪者と対決していますが(くわしくは商工会議所の会報に思い出の3大名勝負というタイトルで書きました)チリの裁判所には苦い思い出があります。
最後に付け加えると,新聞論調にこの先バチェレット政権は過去3代の与党連合政府が対面しなかったほどの社会問題に遭遇する。その理由は銅の価格の高騰からくる「チリは既に金持ち国の仲間入りをしたと国民が認識し始めたから」だとか。言えてる?!

4)ボリビアの国有化政策
良い悪いは別にしてボリビアが天然資源などを国有化するのは他国の問題のように見えました。プルマンブス(チリのバス会社)の事務所が締めさせられる事件はありましたが、それは小さなこと,しかし今週,発表されたルクシック・グループが所有するボリビアへの鉄道の国有化は問題になっています。
チリとボリビアの間にはチリのアリカとアントファガスタの2箇所からボリビアに向けて鉄道が敷かれています。それらを持つルクシック・グループにボリビアが国有化したいとしてきました。向こうは取り上げようとするのではない、これをボリビアが50%以上の権利を握るようにするだけで、チリ側はその代償に他の分野に入ってもらうとしています。ルクシックはチリを代表する財閥で、資産的にはこの鉄道は4%の重要性しかない由。
さらにルクシックの不運はこれだけではなく彼らが管理するボリビアの川の管理権もボリビア政府が取り上げるらしい。
余談ですが,ボリビア大統領モラレスはアルゼンチンにコカの葉の輸出許可を申請するとか。


(経済)
1)銅の価格ガ1ポンド3ドル近くまで落ちました。と言っても昨年の平均価格が1.7ドルですから、3ドルでも上がりすぎですが。

2)エネルギー源の問題
チリを代表する産業はもちろん銅鉱業ですが、銅の生産には電源はかかせません。で、チリ鉱山理事会は政府に介入を要請し,コストアップを受けるから電力の安定供給を保証してほしいとしています。
この関連のニュースはチリの風の174あたりから毎週のように載っていますが、そのエネルギー源の一つのアルゼンチンからの天然ガスは、契約を締結した1995年段階では同国はチリが必要なだけの量を提供するとしていたが、同国の国内需要が高まりチリの要請通りの輸出できなくなったとしてます。これは一部本当だが一部には虚偽の事項が入っています。それは国内の天然ガスの価格上昇を嫌った政府が天然ガス生産企業に価格上昇を認可しなかったため, 膨大な天然ガス保有量に変化はないのだが、それを取り出すための生産量増加のための投資を行わないことが問題です。
で、もうアルゼンチンを止めて他の国からの代替資源を輸入する調査が進み,今回の鉱山理事会の発言を受けて,政府も新しい供給先の選定,実施を早急に行う必要があります。
しかし天然資源関係は石油問題だけではありません。次の100年を考えると水資源が世界的大問題になると考えられます。そうなるとチリの南一帯を買い上げようとしているアメリカ人の存在がチリ政府にとって非常な脅威になることが予想されます。

3) セルコ(セルローサの生産会社)は河川の汚染をしているとグリーンピースのメンバーが、同社が第8州に建設中の新工場の前の道路を封鎖して抗議。全員逮捕されましたが,その中にブラジル、アルゼンチン人が混じっていたらしい。
さらにグループの一部はスパイダーマンのように工場に入り込み,屋上から汚染は止めようという立て幕を垂らしたりしている。ほとんど映画の世界ですね。
この結果?その新工場は生産開始を遅らせるらしい。計画では年間約90万トンのセルロースを生産と言う。

4) 厚生年金の支給時期の変更案
政府の審議機関の一つで女性の厚生年金の支給時期を変更するプランを検討していたマルセル委員会が、結論として男性と同じく女性も現行の60歳から65歳に引き揚げを示唆したところ、世間からの批難ごうごうで、それを受けた各政党も反対の声を上げ、国会審議にまで持ち込めるかどうか予断を許されない状況。
委員会としても、当初から反対は予想されたので、一挙に5歳棚上げするのではなく段階的に時間をかけて実施していくことを提案している。支給が5歳遅れれば,それだけの間、お金が厚生年金運用会社の手元に残り、それは当然どこかに投資されるわけですからね。景気への影響は大きいものがあります。さてどうなるか?
これに関連して,チリの実態としては男性65歳,女性60歳になっても年金を全く受け取れない層(それまで積み立てていなかった層)が20%を越え、それらをどうするかの問題が浮上しています。


(一般)
1)ガソリン価格の上昇に関連して,モーター付き自転車が爆発的売れ行きとか。昨年1年間でたった20台しか売れなかったのに今年は今までサンティアゴだけで500台を越える売れ行きとか。べトナムみたいになるかな?

2)今年2月に高速道路を走っていて、上の歩道橋から石を投げられ事故を起したと訴えたカップルが、逆に虚偽の訴えをしたと国から訴訟された事件がありましたが,その裁判が今週始まりました。どれくらいの刑になるのでしょうか?

3)新聞に大きな記事で日本の話題が出ました。それによると日本の出生率が大幅に低下しているがその原因は日本人はセックスに興味を示さないからだとされていました。
私は出生率が低くなったのは結婚年齢の高齢化と教育費などの問題から少子化したと思っていたのですが・・・
  チリ人から奇異の目で見られたりして。


(スポーツ)
1)サッカー  チリのサッカーの前期リーグのプレー・オフはいよいよ準決勝まできていますが、その結果,コロコロとチリ大学が勝ち上がり、決勝進出です。つまりチリの2大人気チームの対戦になりました。
一方、W カップの日本は為すすべも無く3試合で帰国の途につきましたが、最終戦のブラジルとの戦いで最初のゴールを上げたのは日本でした。で、よせばよいのに私は事務所から200mくらいを走ってリキャップ工場に行き、大声で工員さんに日本のゴールを教えてあげました。試合が終わってから最終的には惨敗したので、工員さんから派手に馬鹿にされました。しかし日本がゴールすると私は自制が効かなくなるのです。
でもこの惨めな結果で次回からアジア枠が一つ減って、それをオセアニアと南米が0.5枠ずつ取ることになるでしょう。

2)テニス
来週からイギリス.ウィンブルドン大会が始まりますが、ATPランキング10位と30位のゴンサレスとマスはグループのトップに位置付けられています。さてどんな結果になるでしょうか?


以上