チリの風  その174 06年5月1日―7日

チリの風  その174 06年5月1日―7日

先週の風には、気温が30度に近づく日もあってと書きましたが,一転,今週は朝晩寒い日が続き,通勤の途中,マフラーと手袋をしている人を見ました。
週末は穏やかな秋の陽射しを楽しめました。ただ空気汚染がひどく、私はサンティアゴの山の手に住んでいるのですが,それでも空気の汚れを感じます。
さてエジプト旅行記を早く見たいと言う声が届いて、私も張り切って書いていますが、まだまだ終わりそうにありません。それで1から4部まであるうち最初に第1部を来週、掲載します。最終校正は全部出来上がったときに行う予定なので,一応できあがったところから読んでもらうわけです。よろしく。


(政治)
1)5月1日はメーデーで、南米の国はたいてい祝日です。この日ボリビアのモラレス大統領は天然ガスなどの資源の国有化を発表、大騒ぎ。いやこれから始めればチリの風がボリビアの風になってしまう。自重して・・・
毎年のことですが、サンティアゴで労働者連合が主催するメーデー集会に集まった人の中に覆面組みが入り込み最後に投石、商店の略奪などを行いました。不思議なことにほとんど逮捕者が出ません。その理由が良く分からない。誰も捕まえないようにと指示が出ているのだろうか?
で、そんな騒動を利用して銀行の備品のイスを持ち出した(盗んだ)おばさんが話題になっています。テレビのニュースにそのフィルムが出たので、すぐにどこのおばさんか身元がばれたもの。彼女は当日投石がひどく、自分の息子を守るためイスが必要だったとコメントしています。さて彼女の処遇はどうなるかな?
4日にも同じような学生のデモがありましたが、このときは622名の学生が逮捕されている。

2)サンティアゴの新交通計画のトランサンティアゴは既に一部の計画は実施になっており今年の10月から完全実施になるはずでした。
ところが政府の説明ではなにやら理由は良く分かりませんが来年始めまで4か月延期になるらしい。野党は計画のエラーを認めて抜本的改革をする必要があるのに、それをせず単に先延ばし作戦では全く将来性が無いと厳しい。
もっともこのテンダーに勝ったあるバス会社なんか1000台以上のバスを運行するのに,この業種を経験していない人間を課長や部長に起用しているが、それで上手くいくはずが無いとの声もある。いやはや。
技術的な問題にファイナンスの問題も加わって緊張は頂点です。
その赤字は政府が埋めることになっているのですが,それをどう避けるか政府内で協議中。確かに野党の言うように抜本的改革が必要。

3)上記の延期発表を受け,野党は前政権の批判を開始。交通計画だけでなくこれもやりました,これも出来ましたと政権末期に多くのプロジェクトの完成を祝ったが,単に選挙目当てのもので、そのどれもが目論見を大きく逸脱し機能していない。先週の共同墓地第29番地事件も含めラゴスは何を残したのか?負の財産ばかりではないかと厳しい。
もちろん前政権のラゴスを批判するとみせて現政権の無能をついているのですが、バチェレットには頭の痛い問題が山積です。
日曜日の新聞にラゴスの反撃と言う記事がありましたが、彼も作戦を練っているようです。このまま黙っていると次回の大統領選挙に出馬できなくなると読むのでしょうね。しかし彼が出てくるとますますバチェレットが消える?!それでもバチェレットの支持率は結構高いです。

4)似たような感じですが,先週話題になった下請け労働者契約法案がいよいよ大詰め。政府は問題解決のため,野党側と接触を図ったら,与党側からクレームが出たり,いやはや。バチェレットのリーダーシップが求められる。

5)今年は海軍記念日イースター島で実施。バチェレットもこれに参加し,島の独立性を上げることを約束しました。島民はわしらはポリネシアの人間やからね,南米とは関係ナインよと言っていましたが。

6)しかし今週の話題はなんと言っても隣国の話題、ボリビアのモラレスですね。先週のキューバでのチャベス,カストロとの面談ですべての作戦を固め、それを5月1日に実施したわけです。天然ガス,石油などの資源の国有化宣言しすべての事業所を軍隊の管轄下に置きました。外国資本には現行契約をすべて新契約に変更するか,ボリビアからの撤退を選択するよう指示しています。
これを受けてあわてたのがブラジルとアルゼンチン。とりあえず真相を聞きたいとモラレスをイグアスの滝のある町で集合を呼びかけました。ボリビアにモラレス応援のため滞在していたベネスエラの大統領も顔をだして4ヶ国会議になりました。ブラジル,アルゼンチンにすれば「おい、そんな古い左翼妄想主義に囚われず新しい民主主義の我がグループに入りなさい」と言いたかったのでしょうが,モラレスはチャベス・グループの方が居心地がよいのかアルゼンチン,ブラジル連合にいい顔をしません。それどころか、今まで安い値段でお送りしていたボリビア産の天然ガスの値段を正常化させてもらいますと冷たい反応。
ボリビア天然ガスは南米で2番目の埋蔵量で、これは切り札になる。
チリは南米の優等生だから,外相が即時ボリビアの一方的な国有化を批判し、国際的な信用を失う自殺行為とコメントしました。しかし情勢を見ると盟友ブラジルを押しのけて悪の枢軸ベネスエラの躍進が目立つ。で、しようがなくしばらくしてバチェレットはモラレスに電話したらしい。モラレスの話ではおめでとう,元気にやっているわねと励まされたらしい。
ただしボリビア国内では左右両方ともモラレスを批判している。先ず野党側は外国資本の一斉撤退が起こったばあい、誰が今までのような雇用の安定を図るのかとモラレス決定を疑問視し、与党側の急進派はモラレス宣言は単なるジェスチャーで,外国資本は未だに自分の手で輸出作業を行っている。完全国有化なら今すぐ彼らを国外追放すべきとしています。
もっともモラレスはこれらにはびくともせず,その他の鉱山の国有化も示唆しているが、これは彼が従来言っている鉱山,森林,交通などすべての分野での国営化の第一歩なのでしょうか?
これに関連してチリの最大手バス会社プルマン・ブスはボリビア政府が一方的に税金の不払い(もしくは未払い)があるとして同社がラ・パスに持っている事務所を閉鎖したと発表。この税金問題が発展するとチリ・ボリビア間のバス便が大きく減少するだけでなく、ボリビア国内のバス代も上がることになり社会問題再燃が懸念される。
ブラジルはリオ・デ・ジャネイロの沖合いの石油基地からの産油で、当分国内の使用量と産出量がほぼ同量で、エネルギー危機は当面なし。アルゼンチンは天然ガスはあまるほど?持っている。
チリからも、第12州に天然ガスが出るというニュースがありましたが、それが現実のものになれば良いのですが。
付けたしですが、ボリビア天然ガス問題のおさらいをします。
1995年頃,ボリビア南部のタリハで天然ガスが埋蔵されていることが確認され、しかもその埋蔵量は南米第2と推定され大騒ぎ開始。
タリハは東部のサンタ・クルスと同じく北部のラ.パスと上手くいかずボリビアからの分離独立を目指している州です。
さて2003年,この天然ガスをイギリスのBPなどの連合会社がボリビア政府と契約して購入し,それをパイプライン建設で太平洋岸まで運びアメリカなどに輸出しようとした。このとき積出港をタリハから一番近いチリの港メヒジョネスにしようとしたが国内から猛反対が起こり,敵国チリを有利にすることは許さないとなりました。チリから見ると積出港なんてチリでもペルーでもどこでも良いから天然ガスを出せばよいのにと思いますが,そのうちボリビア国内で「天然ガスは私たちのもの、誰にも渡さない」という論調に替わり、結局外国資本と国内の反対運動の高まりの間にはさまれサンチェス大統領は辞任。
確かにサンチェス計画では天然ガスの売上の18%しかボリビア政府に入らず,約束した福祉の充実には程遠い収入だったようだ。
副大統領が暫定的に受け継ぎ、04年に国民投票を実施。その結果、国会は新炭素資源法を制定したが,それも国有化とは程遠いと国民は納得せず、2005年、再びラ・パス周辺の道路閉鎖が続き、最後にメサ大統領が辞任している。
私は過去ボリビアに20度ほど行っています。私の一番好きなのは中央部のコチャバンバ。南部のタリハも馴染めるところでした。どちらもチリの排斥度が少ない地域。タリハ人でチリともめている現状は嘆かわしいと言う人に何人もあった。一方ラ.パスは高度が高く呼吸も困難と言うほかに(私はそこでマラソン練習をしようとして恥をかいた経験あり)反チリの拠点のようで居心地悪い。サンタ・クルスは低地でとにかく暑い。そこは白人の比率がもっとも高い地域だが、ここの人は他のボリビア人を馬鹿にしている。ブラジルとの密貿易で懐を潤している感じがあった。
しかし上記の通り、ボリビア人の感覚は21世紀のそれではなく、リーズナブルな感じがしない。もっともタリハ人言わせれば、ラ・パスの人間が自分たちに都合の良いように大声を出しているだけなのだが。


(経済)
1)4月の物価上昇率は0.6%でした。ガソリン価格と固定資産税のアップが4月の物価上昇率のアップの原因となりました。

2)銅の価格がなんと3.5ドルに。もうこうなったら3ドルでも4ドルでも同じように見えてしまいますね。1ドル以下だった時期が続いたのが信じられないほど。
  金の価格上昇も顕著でオンスあたり850ドルと1980年以来の高水準。これに連れられ銀の価格も上昇。
  一方原油価格は少し下がって。1バリル70ドルを割りそう。チリにとって最高の条件ですね。


(一般)
1)しかしこんなこともあるのですね。先年,チリ国内を揺るがした国会議員ガ関連したの児童売春騒動はすべてインチキだったことになり、野党党首他を名指して批判したカトリック神父とその証言をした女性に有罪判決。
しかし女性に嘘の証言をさせてイメージ潰しを図っても、嘘がばれたときはどんな形でそれが戻ってくるか神父も考えなかったのでしょうか?
もっとも有罪といって刑務所にすぐに入るのではなく見張りつき自由罪とか?そんなの有罪に入るのかな?
野党UDIのノボアはその二人の仕組んだ芝居じゃない。もっと後ろに誰かいるはずだと言っていますが,私もそう思います。

2)ダライラマが3回目のチリ訪問
ノーベル平和賞受賞のおっさんですが、いつもニコニコして歩いていますね。たいしたものです。もっとも仏教徒代表のような評価を受けると少し違和感がありますが。しかし世界の精神的なリーダーになればちゃんと生活できるんですね。


(スポーツ)
1)サッカー チリのナショナル・チームがこの5月欧州遠征し,アイルランド,スエーデン、そしてアフリカのアイボリーコストと対戦します。せめて1試合でも勝ってほしい。


以上