チリの風  その173  06年4月24日―30日

チリの風  その173  06年4月24日―30日

勢いを弱めていた太陽が今週は勢いを盛り返し、30度近い日がありました。
さてレースから3週間たち,久しぶりにマラソン練習でいつもの16Kを走りました。新しい仲間が加わって3人で、秋晴れの土曜日、気持ちよかったです。
ところでエジプト紀行文は原稿用紙で既に150枚を越え、5月完成を目指して必死に取り組んでいます。上手く出来上がるかな?


(政治)
1)軍事政権時に殺害され秘密に埋葬されていた29番地事件と呼ばれる問題が今週の最大の話題でした。既に発表されていた内,49のケースでエラーがあったと考えられています。その責任について人権問題委員会と現政府,前政府関係者などが入り乱れて争っています。
人権問題委員会の中も二つに分かれています。バチェレットは前政権の不手際を正そうとする一部のグループを批判して問題はピノチェットだと発言しています。テレビの討論番組で左翼グループが二つに分かれて登場し,政府を批判する方に右翼UDIの代議士が入っていました。前代未聞です,そんな右翼と左翼が同席するなんて。
この問題の発端は古く1991年に共同墓地29番地で人骨などが発見され、93年に最初のその身元について調査結果が発表されました。95年にグラスゴー大学がその結果に疑問ありと表明。2001年に法医学研究所のストが行われた際、93年発表の結果の信憑性について内部告発が出ました。02年に人権問題委員会の弁護士がグラスゴー大学の発表から7年もたってまだチリ側の正式発表がないとクレーム。05年にムニョス裁判官がエラーの訂正を要求。
つまりラゴス前大統領はすべての経緯を知りながら何もしていなかったことが分かります。バチェレットはラゴスをかばって矛先をピノチェットに向ける幼児的作戦を取っていますが、それではだませないでしょう。
しかし私には理解できませんが、エラーがあったのなら訂正すればよいことで、歯型や人骨を調べるのに初歩的な機械しか持っていなかったとなってもしようがないのではないですか?
不手際の責任に元大臣の名前も上がり、左右取り乱れての醜聞ですが,私にすれば簡単な問題ですが・・・

2)前政権で大臣職を務めていた人間が最近,大挙して民間企業の幹部に登用されています。公共事業省の元大臣で問題が多かった人間はセメント会社のダイレクターに。なにやら胡散臭い。元労働大臣は新交通計画のコロンビア資本の会社に。この会社は発足間際から運営の不手際で経営困難が噂されている。その他,電源開発やタバコ屋とか厚生年金関係とか多数です。要するに顔を効かしてその会社の利益を図るためのロビー就職でしょうが、どう考えればよいのか。もちろん彼らも50歳くらいで引退する必要はないでしょうが。

3)キリスト教民主党(DC)の党首を選ぶ選挙が実施され、推定されていたように前大統領候補のアルベアルが圧勝。次の2年間、党の舵取りをします。

4)しかし外国の問題も、ラテンアメリカですが、面白いですね。ハバナで3カ国自由貿易協定が調停されましたが,もちろんキューバ、ベネスエラとボリビアです。その時チャベスはペルーの大統領選挙に触れ、もしあの泥棒ガルシアが次の大統領になったらベネスエラ大使を引き上げるとコメント。確かにガルシアは泥棒でしたが、他国の大統領候補を公然とののしるのもどうでしょうか?もっともペルーでも彼が大統領になることについて自嘲的な声が出ています。ペルー政府もすぐに反応してベネスエラ駐在ペルー大使を引き揚げました。
ところで最近の調査でペルー人は半数以上がチリを天敵と考えながら、一方では経済的に南米でもっとも成功している国でペルーもそのやる方を見習う必要があるとしています。フーム。
アルゼンチンが国際機関から批難されていますが,南米で一番報道の自由が少ない国らしい。アルゼンチンと言えばチリとの天然ガス供給問題の他にウルグアイとの製紙工場設置問題における争いも華々しいものがあります。
ボリビアに不法に進出していたブラジル企業の国外追放を指示したモラレス政権とブラジル政府との関係はかってないほど悪いと言われます。つまりどこも隣国とは最悪の関係と言うわけです。
ところで2005年のチリの軍事支出28億ドルはラテンアメリカで最高の金額とスペインの新聞が報道しました。銅の価格の上昇で軍事予算が拡大して、タンクや戦闘機や軍艦を買っているのですね。政府は単に古くなったものを入れ替えているだけで、軍事拡大を図っているのではないとしています。それにしてもベネスエラやブラジルを超える金額を使用する必要は無いと思いますが,どうでしょう。


(経済)
1)会社の収益
  2006年1−3月で収益の多かった100社のランクが発表されましたが,とにかく今年は前年対比50%以上の収益率アップと驚異的な伸び。何しろ1位はコデルコ、2位はエスコンディーダと銅鉱山の上位確保は当然でしょう。うなずける。銅鉱山からの税収だけで今年度の予算総額の50%になるだろうと発表されました。どうだ,見たか銅の実力をと言う所かな?

2)政府の投資
  何でも今年の始めから前政権の大蔵大臣の作戦で外国投資が活発になり、今年度既に十億ドルを投資済みとか。なんだかサラリーマンが自分の資産を増やすのに株にどれだけ、投資会社にどれだけ預けるか考えているようで、それが国としてやるべきことなのか考えてしまう。

3)国民の借金
  先週もチリの風で昨今のチリ国民の借金依存体質をお知らせしましたが、その続き。なんとチリの家庭でノーマルなのは4分1だけとか。これは支出が収入より少ない家庭です。他の4分の1は収入と支出が同じで貯蓄が全くなし。しかし残りの半数の家族は,なんと、支出が収入を上回っているとか?!!
  普通貧しい家庭は銀行に口座をもてません。で、彼らは銀行借金ではなく、百貨店やスーパーマーケットから借りることになります。つまり月賦で買うわけです。その金利が法律で決められているものを上回っているとして先週,業者にそれを消費者に払い戻すよう指示が出ました。
しかしもう氷山の一角では無く、年内にチリの家庭がばたばたと倒産?していくニュースがでるのは避けられません。悲しい現実。
国民の借金とはやや違いますが,トラックの06年1−3月の売上が過去最高の水準です。これが問題。運送屋さんが泣いていますが、例えば,鉱山会社の契約条件では古いトラックはつかえない。しかし,契約があれば銀行はすぐに金を出す。で、トラック会社を外から見ると新型トラックばかりを使用しており、いかにも繁盛しているようにみえるが、実は青息吐息でいつ倒産するかわからないと言うもの。こんな現実はバチェレットのところにまで届いているのかな?

4)電源開発問題と石炭発電の増加
  水力発電のための大規模ダムの建設をチリ南部のアイセンで大手2社が手を組んで開始したいと発表していますが,その開発現場近くの土地を大量に所有するアメリカ人は誰が開発しようと同じこと、大規模ダムの建設は自然破壊につながりそれを容認できないとしています。ダムから電力を送電する塔をどうしても彼の所有地に立てる必要があります。
  その水力発電ダムを建設企画中のコルブン社の社長によると「ダムの建設か停電のどちらかを選ぶことになる。もし自然破壊としてこのダムの建設が認められないと他のエネルギー源,GNLとかを選ぶことになるがそのときは現行の電気代が3倍とか10倍になるだろう」とか。
チリのエネルギー源として期待されていた天然ガスはアルゼンチンの契約不履行でこの先も期待はできず、そこで再度石炭発電の重要性が高まってきました。中国の電力の80%は石炭だとチリの風で書きましたが,チリもそうなっていくのかな?
自然破壊,大気汚染・・それが人間の破滅への1歩は間違いないのですが。
日曜日の夜のニュースで,観光客に人気のサンペドロ・デ・アタカマ近くの間歇泉もエネルギー源になるとの企画が発表になり,同地区では発電所計画への拒絶反応が起こっています。

5)下請け労働者法案がもめています
  国会に提出される同法案に関し、与党を構成する社会党とDC党の間でもめています。労働者保護をする同法案はすべての業種にわたりコストアップにつながり経済成長に影響するのではないかと言うわけです。
同じような仕事をしても本社採用の職員と下請けの人間では給料や待遇に天と地の下があると言われます。危険な仕事は下請けにと言うわけです。まぁ世界中どこにでもある図式でしょうが。


 (一般)
1)学生の反政府活動
  今週は久しぶりに全国的な反政府運動が盛り上がりました。要求は大学検定試験の無料化と市内交通機関(バスなど)の無料化です。全国で高校や大学生が町に出て警察と正面衝突していました・

2)大気汚染
  サンティアゴの空気は今年の冬は最悪でしょう。今週,まだ秋の始まりですが既に週に4日も準危険日指定がでました。


(スポーツ)
1)サッカー
 今週ナショナル・チームはニュージーランドと二度戦い連勝しました。しかしニュージーランドがどんなチームを送ってきたのか知りませんが,ひどいチームですね。サッカーを始めて間が無いと言う感じで、普通はチリが勝つと大喜びする私たちもほとんど反応しませんでした。
やっぱり5月に欧州に遠征して、欧州、アフリカチームとの対戦が楽しみです。国内リーグでは、コロコロ、カトリカの主要チームがころっと負けてふがいないところを見せました。

2)テニス  
 レベルは低いけど一応ATPの公式戦モロッコ大会でチリのマスは準優勝。優勝できずに残念だったけど。それでもランキングがアップですから良かった。


以上