チリの風 その47 2003年11月2日―8日

2003/11/10 (月) チリの風 その47 2003年11月2日―8日

風の強い日が続いて、サンティアゴのスモッグを吹き飛ばし、きれいな空が見える一週間でした。

さて週の終わりの金曜日、大規模な停電があり、チリの首都圏を含む広範な地域が緊張しました。人々が仕事を終えて帰宅する夕方に停電したので、信号が消えて交通渋滞。ビルの中でエレベーターが止まって消防が救出に向かったとか、地下鉄が動かず中に閉じ込められた人が、暑い中、空気がよどんで死にそうだったとクレームするとか、大変でした。デパートなどはすぐに店を閉めたので追い出された客が外に出、動かないバスから降りた人と一緒になって道にあふれ、テレビのニュースを見ているだけでも大変でした。私は仕事の帰り、バス大渋滞に巻きこまれましたが、バスが列のほとんど一番前にいたので、しばらくして列から抜け出すことに成功。なんとか暗くならないうちにアパートに戻れました。すぐに食事を作り、ろうそくの灯りでそれを食べました。

でもニューヨークの大停電よりはましで約二時間後には復旧に向かいました。

(政治)
1)事実は小説より奇なりと良く言われますが、今週チリ中をあっと言わせた事件はまさにそれでした。
現在、チリ中を騒がせている年少児の性的虐待事件を担当している判事が実はホモクラブの常連だったと言うもの。何でも過去、何年もその手のクラブに入り浸っていたと言われる。そこで年少者との性行為も持っていたらしい。有名になるまではそれが通ったのだろうが、担当した事件が政界を揺るがす最重要事件になったものだから彼の写真が連日、マスコミで報道され、それを見たクラブの人間がテレビ局と連絡を取ったという。
テレビ局では事実関係を調べた後、これをスクープとはせず、同氏の発表を待つことにしたらしい。
同氏はマスコミの前で、この事実を明らかにし、自分の調査に何らかの操作を加えようとする動きがあるとコメントした。そして、自分がこの事件を継続捜査するか上司の判断を待つとしたので、それを追って、大ニュースになったわけ。
そのあと、多数の国会議員が、これをもって彼を同事件の担当判事からはずすのは好ましくないとコメントしているが、なんだかおかしい。
判事が自分はゲイだと告白して(そんなことをするはずがないか?)それが問題になっているのではないからだ。

国会議員が彼をかばうのはこれで、彼は追及の手をゆるめると見るからだろうが、個人的な問題(彼がホモと言うこと)と公の仕事を混同してはいけないと言う国会議員の発言はナンセンスだ。
どこかの商事会社の部長がホモクラブに出入りしていたと言うのは確かに個人の問題と言えるだろうが、大臣、裁判官、大学総長などの公職にある人間がして許される行為ではないのでは。まして彼は年少者との性行為を問題にした事件を裁く立場にあって、自分も同様行為をしていては、言い訳が出来るのだろうか?
もちろん、モラルの問題だけではない。これを発表する前は、誰かから「お前がいかがわしいところに出入りしているのを知っているぞ。明日xxさんを呼び出しているが、あまり深入りして尋問しないでほしいな」なんて言われていたのだろう。
それにしてもある日、突然、こんなニュースが飛び交った彼の家族の心労を考えると、気持ちが沈む。

さて上記の文章を書いた翌日、最高裁判所の出した結論は、法律に裁判官は身辺を潔癖にすることと規定されているとして、彼をこの事件からはずし、別の人間を担当判事に任命した。当然だろう。
すると前日競って、彼を辞めさせるなと口にした国会議員が一転して、新しく任命された判事は実績もあり、素晴らしいとその決定を絶賛。笑ってしまった。
議員は一々口をはさまず、黙って裁判所に仕事をさせるべきだろう。
ところで、いやみなことに最高裁判所はその判事と平行して、今回の判事とマスコミの関係を事件として調べる判事を任命している。彼女は(女性裁判官)は前任者がどのようにして辞任しなければならなかったのかを調査するわけだ。なんだかマスコミやホモクラブの関係者への脅しのようにも取れるが。
ホモクラブの経営者が自分の顧客のことを話するはずがないとして、今回のテレビ局へのたれこみ事件を、金のからんだ作戦だと言うコメントもあるが、いずれにしてもチリも落ち目になってきたと感じてしまう。新聞の投書にあったが「政界や財界の人間でこのパーティに参加していたものはいないと言われ始めたが、じゃ、なにかい、このパーティにはただ、子供だけが参加していたのかい?」笑ってしまう。
彼がホモだったと言うのを問題にしているのではないが、この事件の経緯そのものが、チリの将来の暗雲をしめしていると言いたい。

(経済)
1)物価上昇率
10月の月間物価上昇率がマイナス0.2%と発表されました。過去12ヶ月で2.1%と物価は完全にコントロールされていることを示しています。

2)ペソ価格と金利
2001年には金利は年6.5%でしたが、何と今年はその半分以下の2.75%まで下がっている。
またチリペソの対ドル換算も金曜日は615ペソとここ2年間で最強になっている。今年2月には750ペソまでいっていたのに。
今週、過去に例のない一度に5千台の車が輸入されたのもこのせいだろう。(車は大半が日本車だった。)まぁしばらくストックになってもこのペソ高と低金利なら競争力があるとの判断に違いない。もっともアメリカからの製品は来年一月以降の関税廃止以降に急増するはず。輸入品の値段はさらに下落しそうだから、物価は一層安定の度合いを深めるだろう。けっこうなこと

先週も報告した銅価格の上昇もチリ経済の安定に寄与するのは間違いない。となると心配なのは政治がどうなるかと言うことですね、

(一般)

1)トランサンティアゴと言うのは2004年にテンダーになるはずの公共の新輸送手段の名前です。
現在250万の人間が毎日使用している公共輸送の近代化をどうするかというのは既に何年も前から論議されていましたが、今回やっと実現しそうと言うわけです。
で、先週開かれた南米最大と言われる運輸交通見本市に、多くの新型バスが展示され、企業側の熱意を見せました。でも排気ガスを撒き散らす旧型バスを全部廃棄処分に出来るだろうか?
現在の公共手段の中心的担い手であるバス会社(組合)は既得権を手放すつもりはなく、また昨年のように道路を封鎖して実力を見せるなどの問題が起こりそうです。困ったもの。

2)マンションなどの売りあげも順調そうですが、その値段は区によって大きな差があります。土曜日の新聞の広告では同じ3ベッドルームの部屋で首都郊外では1200UF, 新興住宅街では1800UFラスコンデス地区で4000UFです。1UFは17000ペソつまり約3千円です。日本円で1000万円あれば、チリのたいていのマンションが買えることになります。

(スポーツ)
サッカー
 どないなるかな?チリのナショナル・ティーム。あと一週間でWカップの南米予選第3戦なのに、期待の2選手(サラスとピサロ)が故障で出場できそうにない。一方、ウルグアイは主力選手が欧州リーグで得点をあげて絶好調。さて。

国内リーグは予選の最終週にかかり、勝ち抜いたチームがプレーオフと言って決勝トーナメントに出ることになります。コロコロ、チリ大学、カトリカ大学などの大手ティームは順当に勝ち進んでいます。

以上