(政治)

1) 教育問題
ここに30年以上住んでいる私も今回のこの教育問題は読みきれません。バチェレットの時代にペンギン運動と呼ばれた学生運動が起こり、今回のように社会的な問題になりました。政府は適切な最終解決案を提示できなかったにもかかわらず、運動は尻すぼみになりました。それが今回は全く萎縮することなく力を持続しています。アイセンの水力発電ダム建設反対にも多数の一般市民が立ち上がりましたが、今回の学生運動に比べると量・質ともに軽いものでした。
それほど盛り上がっている今回の学生運動ですが、世論はこの運動の未来はリーダーの女子学生バジェホにかかっていると見ていますが、そんなわけはありませんね。彼女は共産党員ですが、チリの共産党がそれほど社会全体に影響力を持つとは思えません。彼女は黙って学生資格を一時凍結したようです。これで留年しても学費の支払いはする必要がありません。他の学生はこの方式を取っていないので留年すると1年遅れる上に1年分多く学費を払うことになります。
政府は3度、学生・教師連合に解決案を提示しましたが、3度とも拒否され、面目丸つぶれどころか、この先どうすればよいのか思案に苦しんでいる様子。政府の奨学金を増やす、奨学金金利を大きく下げる、今まで奨学金の返済が出来ずディコムのブラックリストに掲載されている大学卒業生の救済を図るなど、種々の援助案を出しても、教育の無料化という大条件には大きく届きません。
学生側から政府が何をすべきか国民の声を聞く全国投票を実施すべきと言う意見が出ています。1988年の軍事政権継続かどうかの国民投票が思い出されますが、それほど今回の社会問題は大きなものになるのでしょうか?もちろんそれは選挙権のある人間だけが投票できますが、高校生グループは教育問題に関しては自分達も投票の権利があると主張しています。
学生で占拠されている校舎で火災が起こり、占拠学生が怪我をし、ハンストに入っている学生が入院騒ぎと数々の問題が起こっています。
政府内で問題解決につき内部抗争があるようですが、野党内でもどう対処するか(政府への援助・接近を行なうのか、もしくは学生運度への援助。接近)一致しておらず声を合わせて事態に立ち向かう様子がありません。従って近い将来に、この問題が円満解決するとはとても思えず、多くの学生の留年や大学入試の延期・中止が実際に行なわれれば、それは誰の責任かを問う更なる社会問題が出てきそうです。
大学生の学費負担を政府・民間で分けてみると政府負担の多いのはノルウェイデンマークフィンランド、逆に多くを一般の家庭が多く負担しているのは最悪からチリ、韓国、日本、アメリカの順でした。
ピニェラは時々顔を出しますが、リーダーシップを取っているとは思えません。
いつものように今週発表の次期大統領候補のトップは野党側がバチェレット前大統領、与党側はゴルボルン大臣でした。                                    
2)コロンビアの大統領のチリ訪問
しかしわからないのは南米の大統領のチリ訪問をマスメディアがほとんど取り上げないことで夜のテレビのニュースにもほとんど出ません。この国際感覚は良く理解できませんが、日本に諸外国の首脳が訪問してもあまり大きく取り上げられないのでしょうか?
テレビのトークショウで司会から同大統領は次のようなコメントをしました。
「チリは南米では優等国と思われているが教育問題が深刻化している。これを外から見るとどう考えられるか?」
「チリは南米でもっとも安定した国で、その未来は明るい」「チリ・コロンビアと同じ同盟国のペルーが新大統領を持ったが、どんな国になると見るか?」
「ペルーの政治に変化はないだろう」
当たり障りのない回答ですね。

2) 労働組合のスト
CUT労働総連が来週ストに入ると宣言しました。副大統領のヒンスピテルは「組合がストに入る理由がない、政府は皆さんと話し合う用意があるのに」と弱気の対応。泣きっ面に蜂ですか?
組合側も今がチャンスだ、今なら要求が通ると見ているのかな?教育問題の強烈な側面援助ですか?
野党側は政府対応を批判し、多くの問題を抱えるのは政府の施策がすべて失敗しているからだとしています。
もっとも野党の中からも過去20年の統治期間で抜本的な教育改善を行なわなかった自分たちにも責任はあるとしています。
学生代表の1人がバチェレットのときには騙されたが、今年は最後まで戦うとコメントしています。