チリの風 その136  05年8月1日―7日

降りました、サンティアゴに雨が。木曜日、仕事を終えて戻りのバスに乗ったら雨が繰り始め地下鉄の乗り場につくころは本降り。すっかり濡れました。夜になって気温が下がり郊外は雪に。北海道の人にとって雪が降りました、なんて珍しくも無いですが、ここではたまにしかないので。

日曜日はバッチリ天気。良し!と山登り。いつものプロビデンシア山。6合目の展望所からの景色はいつもながら抜群でした。東,北,西と頂上のある南側以外の眺望が眼下に広がるのですから。東側の山にはスキー場のリフトもくっきり見えました。この素晴らしい自然を味わった登山者はほんのわずか。この日一日いっぱい歩いてたった13人しか会いませんでした。うち3人はフランス語を話していました。デパートに行くより自然の中を歩くほうが良いのでは?

さてまた原爆の日がやってきましたが、60周年記念でもありチリのメディアでも広島, 長崎は大きく取り上げられています。その観点からはイラク戦争も止めてもらいたいですが・・・。


(政治)
1)いやぁー驚きました。チリには三権分立はないのかと思っていましたが、司法が政府に待ったをかけました。ラゴスの親戚で公共事業省に働いていた人間が、いったん逮捕され、その後仮釈放になっています。彼の容疑を巡って最高裁で合議が行われ、その結果、同裁判の継続が確認されたのです。もう裁判は終わりと踏んでいた政府関係者には大ショック。
チェヴェシッチ裁判官が満面の笑みを浮かべている写真が新聞にのって、大統領の苦虫を噛み潰している写真と対照的。まるで連続テレビ・ドラマですね。
民間の会社に金を出させ,それを高級官僚の給料の上乗せにしていたこの事件、もう2年以上裁判が続き、いいかげんに結論を出してほしいもの。
それとは全く逆ですが, コデルコ問題で疑惑のあったラゴス大統領夫人の兄ちゃんの方は無罪放免になりそうです。これは国会で特別委員会を作って調査していたのですが、野党側の中心議員が、彼の経営する会社とコデルコとの間の複数の契約に疑問点はなかったと発表しました。ほんまかな?これを発表させるのにどんな条件がついたのかな?

2)面白くもない大統領選挙の関連ニュースはほとんどなし。
次の大統領に決まっているようなバチェレットは、私の政府では現在と同じ大臣はいないだろうと発言。ぼけっと大臣椅子に安住しているような大臣はこれで目がさめたでしょうね。
国会議員選挙関連では、大統領の長男が次回選挙に社会党から出馬することが予定されていましたが、今週それを断念することが明らかになりました。何か裏がありそう。

3)外交関係では、まずペルー。チリとペルーの間を旅行するのにもうパスポートは必要ありません。両国人はお互いの国のカルネ(身分証明書)を見せるだけで国境を越えられます。
一方アルゼンチンとの間では、例のバスが国境を越えられない問題があります。どう対処したのかは報道ありませんが(バス会社が賛助金?を払ったのでしょうね)、チリ向けの新車がアルゼンチンを通過できることになったそうです。来週チリに到着の予定。これは本当に不愉快なニュースでした。


(経済)
1)セルロース工場問題
もう二ヶ月間工場は環境汚染問題から閉鎖されています。ラゴス大統領は今週、その工場のあるバルディビア地区を訪問しましたが、そこで工場再開のためのサジェスチョンとして、工場廃水を川を汚染させないよう排水溝を作って海まで運び廃棄するのが良いのではと発表しました。そんな方法でよいのかなと私には疑問が残りました。正解は工場近辺で排水の浄化施設をつくり、きれいになった排水を川を使って海に流すのではないでしょうか。しかしこの工場を持つ財閥グループが政府と連絡をとり,何だか政治的配慮から工場再開がありそうです。
そういうとチリの環境汚染規制は実効がないのかと思われそうですが,そうでもありません。今週カレラにある小さなマインを訪問しましたが,そこのマネージャーにオペレーションについて聞きました。トラックの走る道路の最大傾斜が15度というので、それは限度を越えた傾斜ですよコメントすると、それはわかっているのだが、道路建設の許可を環境庁に頼んだら、周りの森林の伐採を制限され, ジグザクの道路を作れなかったとのでこうなったとのこと、ねっ。けっこう厳しいでしょ。
さてバルディビア関連ですが、現在10州に属するここを州として昇格させる案が出ています。国会の承認が必要ですが,ここと北の国境の町アリカを州に昇格させ現在より自治権、予算権を与えるというもの。これが通れば現在の13州が15州になります。(現在は北の1州から最南端の12州に首都圏が加わり合計13州)イースター島はどうなるかな?

2)価格の上昇
原油, 銅, チリ株式市況の三つがそろって今週新記録を更新しました。銅価格も同じ継続成長路線ですから、これにともなって米ドルの価格が低下。なんとこの数年で最低の1ドル550ペソまで落ちています。もう米ドルが強くなることってないのかな?
これらは一見良さそうに見えますが、投資家にすれば、もう安全かつ有利な投資先がなく、厚生年金の配当に影響が出ると見ています。
頼むで、私の年金は上手く運営してね。もう少しすればもらい始めることになるのだから。

3)アルゼンチン政府関連機関が、ランチリがアルゼンチンに持つランアルゼンチン航空を法律違反の疑いで提訴。それによるとランアルゼンチンは国の法律で決めた国内の航空会社は50%以上は国内資本にすべきという条項を破っており、名目だけはアルゼンチン人弁護士が過半数をしめているように見せながら、実権はチリ企業が握っているとするもの。しかしアルゼンチンの高飛車攻撃は目に余る。もっとも同じような裁判は昨年ペルーでもあったから驚かないけどね。こんなことはちゃんと計画済みで進出しているわけで、ランチリにとって言い訳の準備は万端でしょう。
ランチリは11億ドルを使って、現在の65機から、一気に12機を新規購入しラテンアメリカ間の増便に当てると景気の良い話を発表。


(一般)
1)一番で取り上げるニュースでもないけど、とうとうチリからも南極観光が出来るようになりました。古い欧州の船を改造して、プンタアレナスから南極へ。船の名前は南極の夢号です。約3週間の日程で南極をまわって一番高いクラスは2万4千ドルとか。えらい高いなー!
今までアルゼンチンに独占されていた南極ツァーにチリも参入というわけです。シーズン終わりの来年4月ころまで、ツァーの30%は既に予約が入っているとか。おめでとう。9月から近辺ツァーが始まり、南極へは季節の良くなる11月かららしい。

2)タバコ受難時代の幕開け
政府提案では喫煙禁止地区でタバコを吸っているが見つかれば最高で61500ペソ(約1万円)の罰金が課せられます。さてどうなるか国会の裁定を見てみましょう。

3)5州の刑務所から凶悪犯人が脱走
レニャカの強姦者として有名になった男が刑務所を脱走。なにしろ短い期間に27件の強姦ですから。刑務所も誰の責任かで大騒ぎ(トップクラスが首になりそう)、警察も全力で捜していますが、捕まりません。そいつの親父は街で靴磨きをしていますが、子供の事を聞かれ、さぁどこにいるのかな?小さい頃から全く社会的教育を受けていないからなとコメントしていました。放置された小屋や空き地で夜を過しているのでしょうが、捕まる前に当然犯罪を犯すでしょうね。所持金もないし、親戚、友だちのところは手が回っているから行けないし・・

4)車のナンバープレート
現在、チリの車の登録番号は6桁で最初の2桁がアルファベット,残りが数字です。例AB3458
これを他のやり方、例えばアルファベットを3桁に(ABC264)する方法が考えられ、今年の末から実施予定。とにかく毎月新車が売れて売れて(年間15万台)もうナンバーが不足してきたわけです。
現在のところ、車の登録台数は175万台,ステーションワゴン30万台、軽4輪が60万、他で合計340万台。

5)コスタリカのチリ大使館で警備の警官がチリ人の大使館員3人を射殺した事件から1年経過し、チリのテレビがその事件を詳細に報道した。その中で当時チリ大使館がチリ大使の横暴さから末期的症状にあったことなどが浮かび上がりました。さてその大使がテレビのカメラに向かってこの事件で4人被害者があった、それは3人の死者とこの私だとコメントしたので被害者の家族が激怒。彼は大使職を辞任した後、サンティアゴに家族を置いて、自分はコスタリカの田舎で同国の若い女性と生活を楽しんでいるらしい。

6)旧ドイツナチ残党たちが作ったチリ南部の共同体は長い間問題を起こしていますが、今週そこから約3トンにもなる大量の武器弾薬が発見されました。しかし軍隊ではなく一般の農場でこれだけ大量の武器弾薬が見つかるのは尋常ではなく(ここの元責任者は逃亡先 アルゼンチンで逮捕され現在チリの刑務所に入っています)これを使って何を考えていたのか詳細を知りたいところ。この共同体はレストラン、売店も持っていてそれは現在も継続して営業されているとか??私も一度そこで食事をしたことがありますが・・・

7)8200箇所
何のことかな?と思われたでしょうが,政府発表のサンテァゴにある道路の穴の数。そうかその内の20や30は昨日経験しているとここに住んでいれば誰もが思うはず。それだけあったのかと感慨にふける人はいないでしょうが。で、翌日の新聞の漫画批評で掲載されたのが、「注意!この先200m舗装状態良し」笑ってしまう。
しかし昨年鳴り物入りで行われた中心道路アラメダの舗装工事は記録的な短期間で終わり、これで国民にこの先10年間迷惑をかけないと政府は胸を張ったものですが, たった1年後こんなことになって。お詫びの言葉は政府からは一言もありません。


(スポーツ)
1)サッカー
サッカーの話題としては極めて珍しいテーマですが、カトリカでプレーしていたマーク・ゴンサレスが欧州チャンピオンのイギリス・リバープールに移籍しました。そうか、彼もこれで1流プレーヤーの仲間入りかとチリでは大騒ぎ。ところがイギリス政府が彼の労働ヴィザを発行しないと発表? これには分けがあってサッカープレーヤーとしてイギリスでプレーするにはナショナルチームでプレーしていたかがポイントで、それも世界ランキング60位以下の国では認められないとなっています。問題は、最近の低迷でチリがランキング60位以下になってしまったことです。リバプールは例外を認めろと交渉しているそうですが・・・チリサッカーファンとしては実に悲しい。
もうすぐペルーとの練習試合, 9月に入ればすぐにブラジルとのガチンコ試合(W杯の南米予選)が待っています。がんばれチリ。
次の話は平凡なもので、サラスがイタリアのジュベンツスから移籍確認をもらいチリ大学と契約しました。で、今期のリーグ戦の優勝 いただきと宣言。同チームのファンは大喜びで、練習場も警察の警備が必要なほどの人気。さてどうなるか?彼のデヴュー戦は古巣リベルプレーの宿敵ボカ・ジュニアとなるらしい。8月18日の国立競技場は雨でも降らない限り満員でしょうね。で,全員でマタドール(キラー,殺し屋)と叫ぶのでしょう。

2)陸上競技
チリで陸上競技が話題になることはまずありません。今回の世界陸上でも日本なら大きく報道されるでしょうが、チリでは新聞にもテレビにもほとんどニュースとして取り上げられません。いちおうチリからも選手は参加しているのですが。


以上