チリの風 その135  05年7月24日―31日

サンティアゴの冬はスモッグが有名です。世界中どこでも工場や自動車の排気ガス問題はあるのですが、サンティアゴの場合は、盆地になっていて冬場は風が少ないため雨が無いとスモッグが溜まる一方なのでこうなるわけです。この冬はしばらく前は雨が多かったのですが、ここ最近, 雨が降らないので最悪になり、今週とうとう準非常事態として、排気ガス対策のしていない車は60%、対策車も20%の走行禁止処置がとられました。週末雨が降るという予報は外れ相変わらずよどんだ空です。2位に転落したサンティアゴの汚染はこれでまた首位を取り戻したようで・・・天気予報では月曜日から雨らしいが。


(政治)
1)しかし大統領夫人の家族親戚の件はメディアに載ることが少なくなりました。政府が頼んでいるのでしょうね。あまりどかどか書かんとってって。
また公共事業省関連では、政府はこれらの問題(犯罪はとはいっていませんが)はかなり時間がたっているから、すべて時効にならないかと図っているようです。さぁ大統領の二人の親戚はこのまま司法の手から逃れることが出来るか?有罪になるのか?
しかしこれだけおかしなことをしても国民がラゴスを糾弾しないのが不思議。現政権を是認する数は増え、今年に入って昨年の60%から65%になっています。ただし国民の司法界への不信感は増大しており、これに対応するため?例のおかしな女性裁判官は4ヶ月の停職処分になりました。

2)大統領選挙
与党側の社会党グループは当初からバチェレットを支持、キ民党(DC)は同党のアルベアルがレースを棄権したので、他に選択の余地なくバチェレットを支持するはずですが、その発表がずるずる遅れていました。国会議員候補者の選定綱引きを自党に有利にするためキ民党側がじらしていたのですが、それがとうとう今週、党の正式候補と彼女が認証されました。もちろんその党大会で彼女が演説したように、「キ民党抜きでは与党連合はなりたちません、全党に公平な配分が行き渡るように手配します」というのが、回答だったのでしょうね。
  右翼側は二人の候補者が同じくらいの人気で甲乙つけがたく、どちらが12月の選挙で2位に食い込むのか余談を許しません。
  しかし誰が勝つかはっきりしている大統領選挙の行方より、国会議員の選挙のほうに国民の目が行きますね。私の住んでいる東サンティアゴ地区なんか、DCの女性元大統領候補が優勢ですが, 次の大統領選挙を狙うとする元UDIの党首がこれに続き、RNの女性候補もけっこうがんばって楽しい競争です。まぁ年末まで同じようなニュースが続くわけです。

3)ピノチェット
  今週, 彼の奥さんが不法蓄財で裁判官の取調べを受けました。もっとも彼女にしてはまたかというだけで全く時間つぶしのようにしか思っていないでしょうね。しかしピノチェット家族は強い。(もしくは司法側の非力、無力感が漂う)


(経済)
1)銅価がまた上がって歴史的な記録を更新していますが、それにともなってチリに流入するドルが増え、国内でのドル需要が減少しています。このため、先月からドル安状態が続き、今週は今年に入って一番のドル安になりました。このため輸入物価の値段はさがり、現在冬季のバーゲンセール中ですが、確かに良い品物が安く売られています。
以前1ドル800ペソが近いと信じられていたのが嘘のようです。今週はなんと1ドル560ペソでしめられました。(つまり投資のつもりでドルを買った人は30%も損をしているわけです!)
このため大蔵大臣は今年度の財政支出の増大と来年度の経済成長率は予想を上回るものになること間違いないと発表、しかしチリにとって銅は神様のようなものですね
さてその銅の話ですが、コデルコが所有するマインの一つ、サルバドール鉱山は銅の含有率が低く毎年、損失が出ていました。このため同社ではこのマインの存続を認めずあと5年程で廃鉱にすると発表しました。その廃鉱にかかる費用は1億ドルと見られています。3万人が住むこの鉱山町はそれからゴーストタウンになるでしょう。
私もコデルコの仕事で何回も行っていますが、ここほど魅力のない町も珍しい。まるで砂漠の中で鉱山以外何も無い感じです。

2)先週お伝えしたチリ史上最高の罰金額が課せられた電力会社インサイダー取引の件は、被告側は罰金額を期限内に全額支払ましたが、金利分は全く未払いでした。被告側から出された金利分免除要求を最高裁判所は拒否しましたが、さてこのさきどうなるのか?
元大臣のロビー活動あかんかったんかな?
グループ合計で支払った罰金は1億6300万ドルです。けたが違いますね。よくこんな罰金が払えるもの。最も彼らはそれより多額の収入を得ていたわけですが。


(一般)
1)犯罪の増加と、左翼テロリストの取り扱いについては既にこのチリの風で何度か取り上げています。
  私の身近に起こった例ですが, この冬休みを利用してチリ南部に住んでいる親戚の子がサンティアゴに来ることになりました。その娘さんが(16歳)バス停に歩いているところをグループに襲われ、金品を強奪されました。
会社で一緒に食事している職工さんの奥さんが車に乗っていたところ、グループに襲われ車を強奪されました。私のパートナーのおかあさんが銀行で年金を受け取って家に帰る途中、二人組みにその金を取られました、これらの3つの事件はこの2週間の間に起こったことです!!
  ところが今週の新聞に過去7年間で初めて、今年上期の凶悪犯罪届け出件数が前年対比減少したとなっていました???
(もちろんこれにはすぐに反論が出て、警察に犯罪を届け出る件数は実際の犯罪数と一致していないのは明らかで、警察に届け出ることをいやがる風潮さえあることを重視しなければならないとしています)
さてもう一つの話題の、右翼による犯罪も左翼のそれも同じと何度も書いてきましたがその続き。
右翼政党UDIの創設者を暗殺したとして指名手配になり、スペインでいったん逮捕されたが(そのときスペイン政府はチリへの強制送還を拒否)そのあと逃亡したオレアは, 何とその後の捜査で事件とは全く関係無く無実ということになりました。その頃は、かわいそうな人間だ, 不必要に逃亡者として世界を逃げ回わらなければならなかったと思われたのですが、なんと、彼は今週, 銀行を襲い、ガードマンと撃ち合いの末、死亡しました。左翼テロリストではなく単なる犯罪者だったのですね??
まだありますよ。ずっと昔、サンティアゴの安全刑務所からヘリコプターで脱出した左翼ゲリラがスイスで保護されているのですが、チリ政府の強制送還要求にもかかわらず、スイス政府は彼を政治犯として欧州定住を認める方針です??

3)もう1ヶ月以上になりますが、バルディビアのセルロース工場が環境汚染問題から閉鎖になっています。水面下でも表面でもネゴが続いていますが、環境庁の要求する数字に届かないとして工場再開が出来ません。
  そのうち社会問題化するでしょう。失業者が小さい村にあふれて・・・

4)サンティアゴ市内交通
 トランサンティアゴ計画の実施が遅れていることは既にレポートしていますが、それに関連して今週はホットな話題。この計画に使用される大型連結バスが50台ブラジルを出発, チリに向かいましたが、国境でストップ。アルゼンチン側がこのバスにはナンバープレートがついていないという理由で通行を拒否。しかし新車にナンバープレートなんかついているわけがなく、またブラジルからチリにバスを移送するのも初めてではなく、何故今回トラぶっているのか分かりません。例によって賄賂をよこせということだと思いますが、しかしこれはもう政府間の問題と思われます。
それからこの新計画が実施されると、現在バス関連企業で働いている多くの人が失業すると言われますが、その一つとしてサポと呼ばれる職種があります。これは道端でバスの通行を記録して、同じ路線のバスが来たら,前のバスとの間隔は何分だと教えるわけです。運転手はこれで速度を上げるか落とすか判断します。そのサポに運転手は20円くらい渡します。新計画ではGPSを使って衛星からバスの間隔を管理するそうですから・・・

5)観光産業
 世界の最南端の都市はアルゼンチンのウシュアイアですが(私の旅行記を参照のこと)その都市のまだ南に位置するチリのプエルト・ウィリアム村を観光の拠点に使用する計画が進んでいます。もっともウシュアイアのような大規模な観光産業ではなくホーン岬公園などを整備してアウトドア(トレッキング)の客や近辺を船で回るツァー客を呼ぼうとしています。まぁそれなら環境破壊にはならないでしょうね。

6)サンティアゴの中心に位置するアルマス広場に面する中央郵便局は国定文化施設になっていますが、それに落書きしていた3人組が逮捕されました。インカの壁に落書きして捕まったチリ人が半年間牢屋暮らしだったのと比較してどうなるか?罰金刑で終わるのかな?


(スポーツ)
1)カナダで行われている世界水上でチリのチームは国内記録も書き換えられず残念な結果でしたが, 一人だけ女性スイマーで有望な選手がいます。1500mで9位になったクリステル・ケェブリッチです。
ボートの世界選手権で優勝したチリ2人組みが遠征資金にも事欠くと報告しましたが, 水泳でも同じようです。で、最近その選手にスポンサーがつきまして、それが何と天下のマクドナルド、これで彼女も思い切って練習に打ち込めるでしょう。ボートでも水泳でも世界レベルの選手が出てそれをマスコミが報道すれば、それに影響された子供がその競技に参加してくるはず。それは社会の健康促進、若年層の犯罪化の防止など社会的にプラスに働くと見ますが、現政権はスポーツ促進にあまり乗り気ではありません。残念

2)テニス
 先週はオランダのATP大会でチリのゴンサレスが優勝しましたが、今週はオーストリアのキッツブヘル大会でマスが活躍、準決勝まで行きました。

3)サッカー
 チリ大学に入団予定のサラスはまだ契約にサインできません。これは彼の所有権を持つイタリアのインテルがリバープレーからチリ大学に移籍しても良いと書類を送付してこないからだといわれる。いつまで待たされるのかな?

以上