チリの風 その122  05年4月25日―5月1日

先週、雨の予報が外れたと書きましたが、なんと今週は月曜日から木曜日まで4日続いて小雨が降りました。サンティアゴでは非常に珍しいことです。で、日本にいる人には信じられないことでしょうが、月曜日、降水量2ミリで道路が冠水、事故が起こりました。20ミリではありません、たったの2ミリですよ!もっとも同じチリでも年中雨の南部なら20ミリでもびくともしないのですが・・・。
それからその月曜日、雷がまるで花火大会のように市内各地に派手に落ちましたが、その内の一発が市内の病院のヤシの木に落ち、そのショックで近所の家の電気器具を壊したりして大騒ぎ。
されよりひどかったのはチリ北部で、アントファガスタなんかその日220人が避難所に入る始末。しかし(北部アリカから中央部サンティアゴまでの)チリは本当に雨に弱い国です。


(政治)
1)テレビ討論会
何と言っても今週のトピックスはこれです。水曜日、全国の政治ファンがテレビの前に釘ぎづけでした。40%を越える視聴率といえば、サッカーのWカップ予選の試合並み。
さて、私は試合前?に予想したのですが、劣勢を伝えられるキ民党の前外務大臣アルベアルは、この討論会で圧勝しなければ予備選挙に勝ち目はないわけですから、奇策、必勝策、いろいろとりまぜて大攻勢をかけると見ていました。一方の前防衛大臣のバチェレットは少々失敗しても防戦できれば選挙では勝てるはずですから、人情論などで、視聴者の共感を呼べればベストという作戦をとるだろうと見ていました。結論として新聞論調などでは、「両者ともKOを取れなかった。それどころか国民の前に一般市民を納得させるだけの力量がないことをさらしてしまった」と手厳しく批判しています。私の見方では正攻法で押したアルベアルのポイント勝ちだが、それでは意味がありません。それでも彼女は例のセルローサ工場の閉鎖はしようがないとはっきり、これは後で政財界に波紋を呼ぶはずです。
まぁ野党候補のラビンも似たり寄ったりの力だから、年末の選挙は接戦になるかもしれませんね。私は白紙投票します!!

2)先週のチリの風のトップニュースだったセルロース工場の環境汚染問題は単に、チリのニュースを越え、世界的な話題になりそうです。工場側はあくまでも生産継続を狙い、カトリカ大学の研究結果を元に無実を叫んでいます。環境庁は工場に罰金をかけるよう図っていますが、それが工場の閉鎖に(一時的もしくは永久的)つながるかどうか問題は深刻。
近くの主要都市バルディビアで二つのデモがあり、一つは環境保護から工場閉鎖賛成、もう一つは工場関連者のデモでいかに同工場が地域の就業率アップに寄与しているかを訴えるもの。私の知っているトラック会社の社長もテレビにでて怒っていました。少しくらい白鳥が死んだからといって何千人もの従業員、関連会社の人間を失業させたいのかって。
新聞に小さくコデルコ(国営銅公社)関連の鉱山で野鳥が大量に死んだ事件が過去にあったがメディア、政府は全く騒がなかったって出ました。やっぱり?

3)チリで開かれた第3回世界民主主義会議に出席したアメリカで最も権力をもつ女性といわれるライスはラゴス大統領と面談。この面談でアメリカ議会の次期議長をチリ内務大臣のインスンサにすることで合意に達し、前回の投票で彼と争ったメキシコ代表(アメリカ政府は彼を推していた)を候補からおろすことにした。そんなことが彼女独断で、メキシコ抜きで出来るの?という気がするが、アメリカ政府を代表する彼女には何でも出来るらしく、確かに会議に出席していた当のメキシコ外務大臣はインスンサを祝福する写真が載っている。これで来週実施の総会での投票で、ほぼ満場一致でチリ代表に投票がいくらしい。はっきり反対を表明しているのは今のところペルーとボリビアのみ。

4)ペルーのチリたたき
いつものニュースのようですが、今回はランチリ航空の子会社ランペルーの宣伝ビデオがペルー批判をしていると国民が騒ぎ出し、ランペルー側は、必要なら謝罪の意を表明し、政府が罰金を科すと言うのならそれも受け、責任をとって幹部の辞任を受け入れると表明。しかし普通に考えて航空会社が宣伝ビデオを作るとき、意図的にペルーの見苦しいところを取材しそれを世界的に流すなどありうるだろうか?それを見た人がペルーに行ってみたいと思うようなビデオにするのは当然と思うがどうだろう?
中国・日本の問題があるから2カ国間問題の複雑さは理解できるが、もうとにかく坊主憎くけりゃ袈裟までという感じ。
(とまぁ表面的なことを書いたが、実際そのビデオの一部をテレビで見るとなるほど、子供が立ち小便しているところとか、不清潔な道路の様子とか確かに見苦しいところもあったのは事実??)

5)ピノチェット
 担当判事はピノチェットの財産差押えを発表。15億ペソ分(約三億円)で、これは税務署から不正納税・脱税で訴えられている分に相当。
おまけに逮捕されている彼の個人秘書の2度目の仮釈放請求が却下され実に苦しい戦い。人権問題ならともかく、脱税の件なんか、少しくらいの金は出すから、はやく結論を出してくれという気にもなるでしょうね。


(経済)
1)天然ガス問題
これから先、家庭向けと家内工業の少量は確保するが、アルゼンチンからの一般工場向け天然ガスの供給は期待できないと、今までのコメントとは全く違う発言が経済大臣から出ました。
しかし一般家庭にも影響は出ます。天然ガスが来ない分、発電費用がかさみ、電気料金の値上げが通告されていますから。
もうアルゼンチンからのガス供給は信用できないのがはっきりしてしまいましたが、今週ペルーから天然ガスの乙波がありました。チリが現在必要としている量の25%までだしたいというもの。チリにとって願ってもない申し入れですが、上記のとおり、反チリ感情の強いペルーからの申し入れ、どこまで信用できるか・・・

2)世界グロバリゼーション指数というのが発表になって世界62カ国の中でチリは34位でした。1位がシンガポール、2位がアイルランド、3位スイス、4位アメリカと言うのですが、日本は20位にも入っていません。これを実施しているアメリカの会社の指数の取り方に問題があるのか、日本は根本的にグローバルの考え方に逆らっているのかどっちでしょうね。

3)05年最初の3ヶ月のチリ利益ランキングとして1位エスコンディダ2位コデルコと発表されましたが、どちらも銅の生産会社です。エスコンなんか2600億ペソの利益とかで、もう利益を隠すことも出来ないでしょうね。4月の平均銅価格はさらにアップして過去17年間で最高ですから。
エスコンディーダは約15年前、チリで操業を開始しましたが、そのころの初代購買部長はカナダ人でした。その彼からひょっこり今週メールが来て、チリのことを思い出したら、ふと君にメールを送る気になった。君の本って、何について書いてあるのかな?私も日本語がわかれば読みたいものだ。でも君は変わった人だったね・・・これってほめてくれているのでしょうか?
しかしチリへの外国からの投資は05年にはいって、急激に落ちており、近い将来の影響が心配される。

4)失業率がやや低下
3月の失業率は首都圏の11.3%で前年対比0.6%ダウンと若干良くなってきました。


(一般)
1)北湾岸高速道路が開通して初めて雨が降ったら、どこかの地区で溜まった雨が地下の高速道路に滝となって流れ込むお粗末。おまけに交通渋滞が起こり使用者から怒りの声。しかし設計者のコメントして、水が少し漏った位のことには驚かない(マポチョ川の水が流入したのではない)、交通渋滞は運用者の問題と涼しい顔。

3)ロト
数字当て宝くじの賞金が何回も当選者が出ないことからぐんぐん増えて賞金は5億円まで到達。国中の熱気の中、今週とうとう当選者が二人でて、一人あたり賞金11億ペソ(2億円強)を獲得。私の同僚もみんな?買っていましたが、明日会社に来なかったら賞金が当たったと思ってくれと言っていました。

4)マポチョ川公園
マポチョ川はサンティアゴの中心を流れる川ですが、とても風情のある川と呼べるものではありません。それを川をせき止めることによりボートを浮かべて川遊びが出来る公園にしようという計画が浮上し、この先2年くらいで実現しそうです。昔、私はゴムの袋状の堤防ダムを売り込んでいた時期がありましたが、今回計画に使用されているのはまさにそのゴムに空気を入れて大きくしてダムにするものです。懐かしい、誰がこのゴム製ダムを売り込むのかな?


(スポーツ)
1)Wカップの南米予選はあと5試合しか残っていませんが、チリを世界選手権に送り込むべく、チーム不調の責任をとらせ監督を更迭し、新監督に元チリ代表監督を選びました。(彼はフランス大会にチリ監督として出場しています)私は以前から監督の交代を主張していました。
と、書くとまるで通常のニュースのようですが、チリらしいのは新監督になったアコスタはサッカー協会からの乙波を不満とし当初、監督就任を拒否しました。このため協会技術部で新たな人選が始まったのですが、協会会長がそれを全く無視して誰もしらないうちに電話で彼を説得、突然アコスタの就任が発表されました。
このどたばた騒ぎに対し、新聞発表では国民の意見として、協会トップを入れ替えなければ勝てないと発表されました。言えてる。
肌の色が黒くエキゾチックな顔をしている彼はチョコレート・パンダと呼ばれていますが、このチョコパンダではな。
一方、南米のクラブ対抗戦リベルタドールカップに出場中のチリ代表(チリ大とコブレ・ロア)は2チームとも、最終戦を残していますが、2回戦にいけそうです。
これは日本の読者には全く重要ではないニュースですが、チリではこれで熱狂するファンが多いということです。


以上