チリの風  その121  05年4月18日―24日

週末になって天気が崩れ、日曜日は小雨という予想がすっかり外れました。
雨の日曜日だと戸外に出るのに困難をきたしますから、良かった。

さて今週の話題といえば、再度ローマ法王のことでしょうね。人数から言えば圧倒的に信者の多いラテンアメリカからでなくまた欧州から、今回はドイツから新法王が選ばれました。当のドイツでは人が街頭に出て大騒ぎをすることはなかったそうですが、チリでは前任者が死去したときと同じくマスメディアも大騒ぎでした。そればっかりという感じ。チリ人でもカトリックでない人はそれについて文句を言っています(例えば同じクリスチャンでも新教徒の人とか)
あまり熱狂的なのはカトリックでもイスラムでも気持ち悪く感じます。私にはついていけません。バチカン庁舎の煙突から、新法王が決定されると白い煙、未決定のときは黒い煙が出るとかで、候補者選定の会議が開かれると広場の前から煙突の煙がどうなるかテレビ中継しているのですから・・・・馬鹿らしい。
そうそう、日本と中国の問題もこっちのメディアでちゃんと報告されています。


(政治)
1)大統領選挙は12月とまだまだ先のことですが、街角で候補者の運動員が旗を振ったり、パンフレットを配ったりし始めました。壁に大きく候補者の写真が貼られたりしています。少しずつ盛り上がってきたわけですね。
次の水曜日(27日)に与党間の候補者選定のための第1回テレビ討論会が開かれます。二人の女性候補の戦いもいよいよ本番になってきました。

2)例のピノチェット事件ですが、不正蓄積の疑いで調べが続いています。その一部は武器の輸出や購入の際の謝礼金、それから国家機密予算の流失から来ているようです。その他に確かに彼に献金した企業や私人も多くあるに違いありません。これが単に税金の不正支払いで落着するのか、さらに拡大していくのか興味深い。(国家機密予算の個人着服は当然刑法に抵触)
先日逮捕された彼の個人秘書などはまだ逮捕されたままで仮釈放なし。
右翼側の大統領候補ラビンは、これが事実とすれば残念なこと。チリのどの大統領も汚職には関連していないことを願っているとコメント。おまけに彼が首都圏に持っている別荘の購入時、軍の高官が当時その地所を所有していた人間を脅すようにして軍に売却させ、さらにそれがピノチェットの手に入るように仕組んだことが報道されてしまった。いやはや。
さてこれらの裁判に関連してきたグスマン裁判官は引退することになったが、チリの裁判所は独立した機関になっていないことを示唆し問題に。三権分立が建前だけで、実際に機能していないことは誰でも知っているがこれを現職の裁判官が言ってしまえば・・・


(経済)
1)経済の話題か、政治か、または一般の所に入れるべきか迷いますが、例の首黒白鳥が大量に死んだ事件で地元の大学の研究結果が発表され、それによると問題の元凶とされているセルロース工場からの排水が環境汚染した結果ということになりました。大騒ぎです。これが認められると他地区のセルロース工場にも影響し、地元のみならず全国の(同業種、他業種を問わず)製造業者に与える影響は甚大です。
この工場は操業開始直後から訪問して原材料運送のトラック・タイヤを調べてきただけに個人的にも関心がありますが、当の工場はあくまでも「大学研究の結果を認めない、なぜならそれと違った研究結果を当方は所持している」と強気の発言をしていますが、工場側の不利は免れません。さぁどうなるか。
もちろん彼らは最終的に工場閉鎖になれば国の機関を相手に訴訟を起こすことになるでしょうね。国に認証された基準で工場を開設したのに閉鎖に追い込まれたのは国の責任、従い国は損害賠償を支払う義務があるとして。
チリの最大手企業アンジェリー二・グループも今回は厳しい戦い。
彼らグループの収益は林業関係が75%、石油が20%、残りが水産となっており、稼ぎ頭の林産での失敗は命取りになってしまう。
それにしても工場周辺の湖沼地帯で操業前は8千羽確認されていた白鳥が現在2百羽ですからね。日本でも水俣病とか工場からの汚染が社会問題となっていた時代がありましたね。

2)コデルコ国営銅公社の借金体質が問題に
2000年からわずか4年で借金が45%膨れ上がり、04年決算では借方が88億ドルになっています。これがさらに増加する傾向になっています。これを民営化、外国資本との提携などいくつかの方法で安定的に成長できる方法を見つけるべく同社トップの経営手法が問われています。
もっとも銅価格の上昇からこの国営企業の見積価格は飛躍的に上昇し、もし近い将来民営化が実現し、株式市場に上場されれば、同社の価値は200億ドルと評価されています。フーム、すごい。

3)企業税
企業家グループが、最近大蔵大臣が発表した企業税増加案示唆を批判しています。新聞の数字では世界で一般企業税が一番高いのはイタリアで40%、ついでカナダの34−41%、フランスの36%となっています。日本は真ん中くらいで24―39%、チリは下のほうの17%です。

4)個人の所得格差
この問題はチリの現状を徹底的に否定するものです。何と、世界124カ国の比較でチリの所得格差は悪いほうから12位にランクされました。世界でチリより悪いのはアフリカの諸国、南米ではブラジル、パラグアイとコロンビアだけです!!つまり金持ちはともかく貧乏人には苦しい国ということになります。

5)チリの貿易相手国
05年3月の統計が発表されましたが、輸出先では1位はアメリカ(15%)2位が中国(13%)日本は3位でした(12%)。一方輸入先では1位が同じくアメリカで18%、2位がアルゼンチンで15%、日本は5位で4%でした。

6)アルゼンチンのワイン輸出のトップはチリ企業
アルゼンチンもチリと並んでワインの生産国、輸出国として知られていますが、1996年からアルゼンチンで操業するチリの会社コンチャイトロ社は同国からの輸出額で04年で2位、今年は1位を確保しそうとか。すごい。

5)サーモンの超過関税
欧州市場でチリ産サーモンに関し、欧州産サーモン保護のためこの2ヶ月、超過関税が適応されていましたが、それが今回撤廃されました。裏での戦いがどう展開されたのか分かりませんが、チリ産サーモンを虐めるメリットがないということになったのでしょうね。


(一般)
1)トラック組合のスト回避
数年前、バス会社がストをしてサンティアゴの町中が麻痺した事件がありました。バスの同業組合の幹部が逮捕されましたが、数日間牢屋にいただけで、同業者から英雄的な歓迎を受けて出てきました。結局バスを道路に放棄して町中を交通麻痺にしたことに関し、最後は有罪になったのかほとんど無罪のような有罪になったのかわからない苦しい結末になったのですが、今回トラック業者が原油価格アップからくるガソリン、デーゼルなどオイル価格アップに抗議してストを宣言しました。トラックが数珠繋ぎに道路上に放棄されれば、交通麻痺の再現でしたが、組合、政府の間に合意が成立し、スト回避になりました。なにはともあれ、良かった。
 まぁトラック業界のクレーム内容はガソリン料金の高騰ですから、先週それが下がり、来週の月曜日2週連続で下がるのでストを打つ必要がなくなったのでしょう。

2)首都圏高速道路の料金
前回の風で、新しい首都圏高速(コスタネラ・ノルテ)の開通のお知らせをしましたが、これを有効に利用すべき消費者の意見として、「連日この高速を往復、つまり日に2度利用すると月に使用料が数万ペソにもなりとても一般庶民には払える金額ではない」と言うのを聞きました。で、出来るだけ高速を使用しないように、料金を徴収されるところは直前に外に出て一般道路を通行し料金の支払いを逃れようとするらしい。さすがチリ人はしぶとい。それでも先月、正規に料金を払わないで高速使用した料金が米ドルに直して1百万ドルにもなるらしい。罰金をちゃんと徴収できるのだろうか?

3)偽札事件
先週に続いて、今週も新しいロットの偽札がチリに入ったらしい。しかしチリの警察もやるもので、コロンビアから入ってきた27000ドル分の偽札を押収、またチリ人犯人を逮捕しました。米ドルのほかにチリの最高額紙幣(2万ペソ)の偽造もあるようです。

4)自動車の最高到達地点(?)
フォルクスワーゲンの発表で、チリで最も高いオホス・デル・サラド(6850m)に挑戦していた同社のトウアレッグ車が6080mまで到達。これが現時点での世界最高記録とか。それをギネスに申請中。この山に挑戦して死にそうになった私としては、車で6千mまで行けるのかと不思議な気がします??


(スポーツ)
1)サッカー
チリ代表チームの監督が首になりました。彼は試合に負けてもまだ大丈夫、次から勝てばよいと同じ文句をお経のように唱えていましたが、最後にサッカー協会から引導を渡されたもの。協会も金がないから、裁判になるでしょうが、彼に退職金を支払らわないらしい。

 サッカーその2
20歳以下のチリ代表が今年のWカップに出場しますが、その練習過程でチリで4カ国代表が集まって大会が行われ、チリはブラジルに続いて2位になりました。最後のブラジル戦は勝てる試合だったのに、引き分けと惜しかった。来月日本と対戦しますがどうなるかな?楽しみ。

一方、リベルタドールカップに出場中のチリ大学(プロチーム)はブラジルのサオパウロサンティアゴに迎えて対戦、引き分けに終わりました。これで最終戦のアルゼンチンチームに勝つか引き分けると2次リーグに進出となりました。 


以上