チリの風  その900  2020年8月9日―16日

今週のサンティアゴの最低気温はほとんど毎日0度ですが、昼間は穏やかな天気が続いています。
まだ枯れ葉が残っていますが、新芽が見えてきました。歩いているとアルメンドロ(梅の種類)が咲いていました。もう春ですね。
花粉症が怖いですが。
山岳公園はまだ閉まっているので山登りはできませんが、近くの丘に登っています。上から街を見るとスモッグがひどく、街の西側や海岸山脈などは全く見えません。悲しい事実です。
ラソン練習と丘のぼりをどちらか毎日しています。
隣の老人ホームでおじいちゃんおばあちゃんが歩いていたので係員に聞くと、「外には出られませんが、敷地内は自由に歩けます。正常化の第1歩です」とのこと。良かったね。
窓の外を見ていると通行する自動車の数が急に増えました。正常化ですね。
通訳・ガイドの仕事が来て、サッカー教室・登山教室を継続して・・・私の生活も正常化してほしいです。もう少しの辛抱ですね。

(政治)

1)ピニェラ動向
 大統領府の発表では、
 1)中間層への50万ペソの援助金は100万人以上の人に渡ったとのこと。この案を発表してわずか10日でこれだけ多くの人を助けることができたのは素晴らしいとコメントしています。その内55万人がその他に無金利の借入金を要請したとか。
 2)エクアドル自由貿易協定の調印がなされたこと
 3)マプチェ問題でトラックなどに放火する犯罪の罰則を現行より厳しいものにする法案を作成し国会に送る、などが報道されています。
   10月末に予定されている憲法改正の是非を問う投票も間近になってきました。政府の方針を明らかにする必要がありますね。普通、野党が新憲法、与党は現行憲法維持と考えられますが、実際は大きく異なり、現職の大臣も是非が半分くらいづつです。
 2)マプチェ問題
   いつもの通り、今週もトラック・重機に放火がありました。その中で最悪だったのは放火されたトラックに乗っていた運転手が死亡したことです。また大きな木を切り出し、道路に放棄したことから、オートバイがその巨木に激突し、運転手は死亡しました。
   次はバチェレットの話題です。国連人権員会のトップの彼女はバチカンローマ法王と面談。主要なテーマの一つはべネスエラの問題だったとか。国連とカトリックがべネスエラ問題を話し合う意味が分かりませんが、上手く行ったのかな?
   マプチェ問題で言えば、先住民を殺したのはバチカンの責任でしょうね。「神の前には誰も平等」としないでスペイン人が先住民を殺しているときその横にいて、それを止めるのではなく、「イエス・キリストの教えを分からないなら人間ではない」という論理を使用したのはカトリック神父でしたから。
   最近、カトリック神父の性的悪戯事件のニュースが消えましたが、マスコミももう飽きたのかな?ローマ法王が先年、チリに来た時、この件を聞かれ彼は記者に「証拠を持ってこい、知ったようなことを言うな」と暴言を吐きましたね。そんな人間が組織のトップですからカトリックの将来も暗いです。
   ところで、これって勢いのないチリの野党がバチェレットのイメージで反政府運動を盛り上げようとしているのでしょうか。さてバチェレットは部下をチリに送りマプチェ人権問題を調査させました。その係官はハンストをしているマチ・コルドバと面談しています。国連の人権委員会はマプチェ問題を取り上げるつもりなのか、単にピニェラに嫌がらせをしているのかどちらでしょう。
   昨年10月以来のチリの反政府運動で、デモ隊の人が警察の発砲したゴム弾で失明したとかは人権委員会で取り上げていますが、デモ隊が警察に暴行したのは問題視していないようです。ということは人権委員会は反政府、左翼の味方と言うことなのでしょうか。

   もう一つあります。それはバチェレット本人では無く、彼女の娘フランシスカフランシスカは今週、サンティアゴの中心地区でマプチェ応援のデモ活動に参加。そこは自宅待機令地区だったので警官が外出許可証を見せるようにデモ隊に言うと、フランシスカはそれを見せましたが、食品購入の許可だったので、規則違反として捕まりました。母親から、若いうちから警察に捕まっていると貫禄が出るものよと聞いていたのでしょうか。
   先に出たマチ・コルドバはハンストだけでなく水も飲まない戦いに入ると政府を脅しています。水を飲むのを辞めれば1週間もしないで死ぬでしょうね。厚生大臣はそんなストは止めるよう要請しています。コルドバはマプチェ運動のリーダーですが、彼は老人夫婦を焼き殺した犯罪で刑務所に入っています。仮釈放にするか、刑務所でなく自宅で刑期を終えるよう要求しハンストをしていますが、裁判所はその要求を拒否しました。もちろん彼は命を懸けて戦っているわけですね。ここで自分が死ねば、もっと多くのマプチェがチリ政府と戦うだろうと考えて。
 

(経済)

1)経済成長
  厚生年金の10%払い戻しは既に6百万人以上の手にわたり、生活費の確保とか、投資に回ると言われています。投資と言うのは、二つあって先ず新車の購入、その他にそれをマンションの頭金にして、購入し、誰かに貸し出すわけです。すると毎月、ローンの額より大きい賃貸し料が懐に入ってくる。年金生活に入るときそれを売れば豊かな老後を送れるとか。そんな上手く行くかな?
2)失業率
  6月の失業率は14.1%でした。これは少し前の3月の15.6%より低い数字。毎月、失業者が増えているというのに不思議な気がします。首都圏では16.9%とかで、その数字は1982年以来の最悪のものです。コロナ問題が終焉してくれば。次の大問題は経済の立て直しですね。
  今日、ピニェラは公共投資に340億ドルをつぎ込み、新しい仕事を生み出す大きな一歩にすると宣言。180万人が仕事を失ったと言われますが、そのうちどれだけが就職できるでしょう。
(3)光海底ケーブル
  チリと豪州の間の海洋ケーブルをチリ政府は日本案を採用しました。日本でこのニュースが出てから約2週間遅れでチリで発表されました。何でかな?中国がかなり危ない状況ですからチリ政府の判断は適切と思いますが、2週間も、考えていたのかな?日本案が中国に勝ったわけですね。1万3千キロすごい長さのケーブルです。

(一般)

1)コロナ問題
  全般的にはチリでコロナは治まってきています。首都圏では新たに中央部のサンティアゴ区と中央駅区の規制が緩和されます。サンティアゴ区は3月末から約5か月も自宅待機令が適応されていました。その他の大きな区では西のマイプ区と南のプエンテ・アルト区がまだ全面自宅待機令です。
  死亡者は2桁、新規患者も2000名以下とピークの時の3分の1くらいです。死者は土曜日は57人で、ピークの時の5分の1に下がっています。PCR検査は金曜日までで196万人実施。金曜日は1日で27600人、土曜日は3万人ですから、日本とは大きな差がありますね。チリの感染者数は世界の8位か9位ですが、百万人当たりの死亡者数はそれよりずっと上です。最悪がペルーが777人、スペインが612人、イギリスが609人、次いでチリは540人、アメリカは518人、ブラジルは501人。チリはアメリカ・ブラジルの上ですね。もう再発せずにこの辺で収まってほしいもの。
  新聞の社説にこの1年を失ってしまわないため、文部省は直ちに学校の授業再開計画を発表してほしいと書かれました。オンラインで授業をしているところもありますが、大半は自宅で宙に浮いたままのようです。
2)世界平和指数順位
  2019年の数字ですが、1位はアイスランド、日本は9位。ラテンアメリカではトップはチリで27位、次いでコスタリカ33位、ウルグアイ34位でした。確かに昨年10月まではチリはラ米のトップでしょうが、その後は・・・だめですね。2020年ではかなり下まで落ちているはずでしょう。残念ながら。
3)殺人事件
  先週の話題だったアンバル殺人事件の犯人の裁判が始まりましたが、その犯人を仮釈放させた裁判官が憲法法廷に訴えられました。何人かの国会議員がその裁判官のエラーでこの殺人事件が起こったとするわけです。裁判官が家庭内暴力で訴えられるというなら何とかわかりますが、自分の仕事を訴えられるのは不可解ですね。ちゃんと法律にのっとって決めたことでしょうから。過去4年で仮釈放は19件記録されているとか。


以上