チリの風  その899 2020年8月3日―9日

最高気温が20度ほどの日が続き、春の雰囲気のサンティアゴです。雨は全く降っていません。
この2週間、自宅待機令が緩和されたので、マラソン練習をしたら、遅いけどちゃんと走れるようになりました。それで少し自信がつきました。学校が正常化したら、サッカー教室、登山教室を今までと同じように実施できるかもしれません。いつかな?
息子から「お父さん、もうこれからの自信がないとか言っていたのに、すぐに元に戻ったなんて、大げさだったね」と言われました。老齢者に新しい風が来たわけです。
読者の方はほとんど誰も自宅待機令なんか体験されていないでしょうが、強制的に一日中、部屋の中にいるのは厳しいです。

(政治)

 1)ピニェラ動向
先の内閣改造について49%の人が意味はなかったと考えています。
さて今週、彼は久しぶりに与党連合と面談し、正常化を図っています。この会議の主要なテーマは次の地方選挙だったようです。
しかし今までと同じように、彼は皆の前に立って道を開くという雰囲気はありません。
2)援助計画
厚生年金の積立金の10%を引き出す案はいよいよ実行に移り、支払い初日の金曜日、合計14億ドルが120万人に渡されました。
来週も毎日、これが続くわけですね。
それから中間層への50万ペソの寄金も開始されました。
いつものようにあちこちに長い列ができていますが、新しく始まった各自の個人番号の取得目的の人が多いとか。
私はそれをインターネットで入手しました。

(経済)

1)経済動向のイマセック指数は先月マイナス12.4%でしたが、予想はマイナス16%でしたから、 
意外とそれほど落ち込んでいないと言われます。
 外国からのチリへの投資は今年の第1四半期、何と前年より53%も上昇したとか。チリの人気がまだあるわけですね。
2)物価上昇率IPC
7月のIPCは0.1%のアップ。過去12か月では2.5%の上昇です。
ただ食料品の値上げは7月だけで6.8%と過去5年で最高の値上げになりました。
3)銅価格と為替
銅は2.92ドルと先週とほぼ同じ、為替は1ドル788ペソと急にドルが強くなりました
さて地下資源局の予想では年間平均銅価格は2020年は,2.62ドル、来年は2.85ドルです。
今年はコロナ問題で生産に影響が出ていますが、それでも予想は5.7百万トンで昨年よりわずか1.2%マイナス。
来年は5.1%アップが予想されています。
確かに、この問題で生産計画に支障があったコデルコが通常生産に戻って来ているとか。

(一般)

1)コロナ問題
南米諸国は8月になっても勢いが衰えず苦戦しています。アルゼンチン・コロンビアは先週、過去最高を記録。
ブラジル・ペルーにも2度目の大きな波が戻ってきているようです。
チリは6月に新規患者数が1日7000人まで行きましたが、最近は2000人と3分の1.
死亡者も1日200数人から2桁に大幅減少。このまま落ち着いていくかな?
来週からプロビデンシア区など各地で緩和地区が増えます。

ところで、この問題のため自宅待機・在宅勤務になった人は多くいますが、なんとこの期間にそのうちの44%の人が体重が増えたとか。毎日、ポテトチップを食べていたのでしょうか。
それから閉所恐怖症の逆で外に出るのを嫌がる・怖がる症状の人が出て来たとか.
空間恐怖症でしょうか。
2)マプチェ問題
先週12台のトラック・重機に放火されましたが、今週は17台。ひどくなっています。南北をつなぐ主要路線の5号線にタイヤなどが置かれ火がつけられます。通行中のトラックが数珠つなぎ。そこへ警官が来ると、デモ隊は発砲し警察と正面 から衝突。 その他、家屋などにも放火しています。それに通行中のトラックに発砲し、フロントガラスが壊れた例も出ています。
これだけ激しい抗議行動は過去になかったと言われています。警察・陸軍はそれを放置しているのでしょうか?
いくつかの市役所が彼らに占拠されましたが、排除してみると家具が壊され壁は落書きだらけで、高校生が自分の学校を占拠した時と同じ様相でした。
10数人のマプチェが刑務所でハンガーストをしていますが、自分たちは政治犯として扱われていると抗議中。
その一人は先年、荘園主の老夫婦を生きたまま家屋に放火して殺しています。

歴史的に見れば、500年前にスペイン人がチリに入ってきて殺人・略奪のしたい放題をしました。サンティアゴの中心広場はアルマス広場ですが、そこにペドロ・デ・バルディビアの像が立っています。その下に「我らが英雄」と書かれていますが、それを寄贈したのはチリ中央スペイン人会です。彼らには英雄でも地元の人には殺人者だったわけです。何人を拷問・殺人したか知りませんが、彼は最後はマプチェに殺されています。
ところでマプチェは本拠地のテムコ周辺は守り切り、そこまでスペイン人は入りませんでした。そして200年前にチリは独立しましたが、独立した時、その州の北まではチリ領土になりましたが、アラウカニア州はチリ領土ではありませんでした。
後で、チリ政府が侵略したわけです。
マプチェにとって今のチリ人は殺人犯の子孫だということになるのでしょう。歴史的にはそれは正しいが、今、サンティアゴに住んでいるチリ人は大半が最近、移民した人の子孫です。私の嫁さんは3世ですから、祖父母が欧州から来たわけです。
政府、州政府とマプチェの面談が実施されていますが、彼らの自主権を認められない現状では両者の合意事項は無いでしょうね。
その州には誰も新規投資をしたがらないのでチリで最も貧しい州になっています。
軍事政権が終わって民政化して30年、左右の政権がこの問題を取り扱ったわけですが、ほとんど前進はありませんでした。

そこでこんな提案はどうでしょう。先住民保護省を作りその大臣は先住民から選ぶ。もちろんマプチェだけでなく北部のアイマラなども含まれるでしょうが。その他に先住民の国会議員、州知事、市長・町長なども考える。このアイデアを年内に行われる新憲法是非の投票に関連させるべきでしょうね。どうかな、私のアイデアは。

3)アンバル殺人事件
今週のチリの最大の話題は多分これでしょう
バルパライソ州の小さな町で16歳のアンバルが行方不明になり町中で探しましたが、死体で発見されました
そして一人の男が逮捕されましたが、その男は彼女の母親と同棲している人間でした。アンバルはその二人と違う家に住んでいました。
ところでその男はそれまでに二人の殺人事件を犯し刑務所に入っていましたが、裁判所が刑期の半ばで仮釈放を認めたことがわかりました。
町中が怒り狂ってデモをしました。デモ隊の一部は彼女の母親の住居に入り、中の個人の持ち物を戸外に捨てました。
警察はその母親を保護することにしました。
一部の国会議員が、彼を仮釈放させた裁判官を訴えるとさえ言っています。
もちろんその裁判官は個人の主義で釈放したのではなく、ちゃんと法律の条項を適応して釈放したのですから、裁判所の問題よりその法律を作った議会の責任でしょうね。
明日からその男の裁判が始まります。
4)移民難民
ハイチ人が大使館の前で座り込みをしているとか
5)思い出
今週、ニュースに75年前の広島の原爆と10年前、北部の鉱山の地下で生き埋めになった33名のことが流れました。


以上