チリの風 その224 07年5月21日―27日

チリの風 その224 07年5月21日―27日

21日(月)祝日、突然の電話で驚きました。工場のトラック運転手が死亡通知。何でもその朝ベッドから出てこないので家族が見に行くと死んでいたらしい。死因がはっきりしないので検死機関に死体を搬入するとか。翌日の通夜に行きましたが、他に何も手伝えることがないのでお母さんと一緒に泣いていました。お母さんはベッドで死んでよかった。これがハンドルを握っていれば・・・と私にコメント。水曜日の葬式は工場を閉めて全員で式に参列。彼はまだ45歳、子供は一人で11歳。彼の冥福と残された家族の回復を祈りたいです。
私も落ち込んだ気持ちを何とか持ち直すため、土曜日曜とマラソン練習。朝、薄い霧が出たりして気温は低く、寒い中のランでしたが、最後は汗びっしょりになりました。特に日曜日は風があったため、最後に残った木の葉が空に舞い、その中を走る幻想的な走りになりました。
アフリカの旅の最終回(その4)も完成間近です。来週には掲載したいところ。


(政治)
1) 先ずは5月21日の大統領教書の話から。
  何と約2時間の長い演説でした。でも長ければ情熱がこもっているというのは間違いでしょうね。実際長い話の間、うたた寝をしている招待者(各国大使とか)がテレビのニュースに写っていました。
  毎年、国会議事堂周辺で大規模なデモが繰り広げられますが、今年は警察の事前規制が効いたのか、大きな混乱もなく終わりました。
  教書の内容は「もっとお金を使います」で1990年以来最高の増加レベル。これを可能にするため毎年国民総生産の1%を預金繰越としていたのを0.5%と下げ、その分を予算アップに使用するらしい。このエクストラ分だけで予算は75億ドル上昇とされる。
  そのバチェレットですが、第11州アイセンの大地震から1ヶ月、約束どおり被災地訪問の予定でしたがその前日になって突然延期を表明。行きたくなかったんでしょうね。前回の惨めな訪問が頭に残って。でもそれではチロエ島にもいけないし(ラゴスが橋の建設を公約したのにバチェレットがそれを反故にしたので島民は怒っている)その他北部の地震被災地にもいけません(そこでも復旧に全力を尽くし、3ヶ月以内に元に戻しますと言いながら約束違反のまま)。これでサンティアゴにもいれなくなったら辞任でしょうね、かわいそうですが。

2) 現在のチリの問題としてトランサンティアゴ、教育、住宅、医療、ネルギー
それに首都の大気汚染などがあげられますが、先週のチリの風に書いたようにありあまる財源の使い方も議題の一つになっています。
さてその一つ一つを取り上げますと
トランサンティアゴ: もうどうしようもないですね。政府内でも問題解決は不可能との風が出ています。抜本的な改革には多額の投資が必要で、これを正常化するには運賃の大幅値上げが避けられませんが。しかしそれを政府は怖がっているので、いつまでたっても小規模改定案で、進歩なしです。
教育: でました。昨年のペンギン騒ぎの第2幕目。また学生の抗議デモがあり首都圏で40名以上の学生が逮捕されました。昨年の大騒動で政府は改革を約束しながら、それが遅々として進まないことに反発するもの。政府はバチェレット政権の終わるまでにすべてを解決したいとしています
住居: 先週のチリの風で書いたとおりの展開です。もっと貧困層のための住宅を建設する。さらに1997年以降に建設され、出来の悪かったものは(雨が降ると天井から雨が漏るなど)その未払い分が約30万ペソ以下の場合、借金を棒引きにするなどの提案あり。
医療:バチェレットはアントファガスタなど各地に病院を建設と約束しましたが、各地の人が怒っています。何故ならその病院には病人を受け入れる(入院させる)施設がついていません。医師連合が病人用のベッドが一つもない医療機関を病院とは呼べないと厳しい批判。
  厚生大臣は一生懸命やっている政府をただ批判するのはいかがなものかと反撃するが、勝ち目はなさそう。
大気汚染: しかし雨しか頼りに出来ない首都圏の汚染対策問題ですが、なんと大統領は市民の協力がないからと、責任を政府から市民の方に戻しています。彼女によると、準非常事態宣言が出て車の走行制限が出ているのにそれを無視して車を街に乗り入れるとか、また禁止されている薪のストーブをその日にも使用する。これでは空気が良くなるわけがないと言う訳です。
しかし新型バスがくれば公共運輸は大気汚染問題の緩和に寄与すると今まで言われていましたが、実態はあけてびっくり玉手箱で、なんと新型バスの大半はフィルターを煙突に取り付けていないらしい。じゃ旧型の黄バスとほとんど汚染ガスの排出量は変わらない?それをバス会社に問えない政府の弱腰にはがっかりです。運転手にこのバスはフィルターをつけていますかと聞くとそんなの使ってないよ、でもちゃんと車検更新のとき、検査を通っているからフィルターなんか要らないんじゃないか?
排気ガスの濃度を調べられ、基準を超えているというので罰金刑を受けた運転手はなぜ私にこれを渡すのだ、これはオーナーに渡すものだとプリプリしていました。
5月15日までに全部のバスにGPSを装着させるといいながら、実際は未だに装着完了しておらず、口で言うことと実態がかけ離れる政府発言(公約)は信用できません。
  その他首都圏で薪を使用するストーブが人気を得ています。しかしそれが大気汚染の元なら首都圏ではそのストーブの販売を中止させるのでしょうか?
エネルギー: アルゼンチンからくる天然ガスがカットされるのが問題の根源ですが、現在そのアルゼンチンが過去20年間で最悪の供給状況となっている。とにかく資源のガスは豊富にあるのに価格を政府にコントロールされていることから新規投資が行われず生産量が同じで、毎年消費量6―7%は増えるため状況悪化となっているわけ。先が暗いのは明白で、チリ政府は2008年以降、電力供給に問題あるのを認め、またそのためコストの上昇は避けられないとしています

3) 久しぶりにフジモリのニュースが新聞に出ました
それによると2005年11月からチリで拘留(刑務所に拘置じゃないですが)されているフジモリに対する判決が来週出るらしい。このままチリに滞在かそれともペルーへ護送かな?


(経済)
1) バチェレットが教書を発表した翌日株式取引所の平均株価が4.4%下がり、これは今年2番目の落下になっています。もうバチェレットが何を言っても景気の悪化につながるのかナ?当の大統領はこれを受け、株価は毎日上がったり下がったりするもの。まだまだ高い水準にあるので全然心配していませんとコメントしている


(一般)
1) サンティアゴの大気汚染はひどく今週も準非常事態宣言の日がありました。この日は新型の排気ガス対策車も20%の走行制限を受けますが、それを無視して市内を走っていた車が警察に捕まり罰金刑になっています。ところでこの走行制限ですが識者の意見として、現行のナンバープレートの末尾の番号で制限するのは公平に見えて、実は科学的ではないとされます。それは古い車ほど排気ガスを出すのが普通だから、車両の古いものほど走行制限をすべきとなるわけです。この意見を採用すると、番号の末尾でなく最初のアルファベットで制限することになります。すなわち最近の車はすべてWかZで始まる。それにくらべてRやTの車は古い。またDやFの車はさらに古いわけです。分かるかな?もっともこの方式を取ると一般の混乱はさらに増えると思いますが。
それから汚染の元とされた薪ストーブの製造会社が新聞に広告を出して、当社の生産する二重燃焼システムは米国でも大気汚染を引き起こさないとして承認されている。単に薪を燃やすだけの安い簡易方法のストーブと同じに論じるのは不適切と訴えています。
   この大気汚染の結果、喉や気管支をやられて病院に来る患者が今週になって30%も増えたと報道されています


(スポーツ)
1) サッカー
  国内リーグ戦は首位同士の組み合わせで、コロコロのモヌメンタル競技場は満員の観衆。9割がコロコロ、1割がカトリカのファン。そんなところに私がカトリカのユニフォームを着ていったら、もう騒ぎに巻き込まれるのは目に見えています。かって2度サッカー場で騒ぎに巻き込まれ、警察官に指導されていますから、同じエラーをしないため家で大人しくしていました。結果は2対1でカトリカの負け。試合の後、選手、監督、ドクターが入り乱れての乱闘。チリではこういうのをコンボと言います。
さて明日会社に言ったら部下に掛け金を払わなければ。何しろコロコロファンの部下が金曜日、私に賭ける勇気はあるかとか言って挑発するので受けてしまったもの。しかしまだ後2試合あるので、カトリカにチャンスはあり。
  一方、国際試合もありました。チリ代表チームはカリブ海の島、ハイチに行って同国ナショナルチームと対戦、0対0で引き分けました。どうしてそんなところへ行くのかな。近いところでウルグアイエクアドルの方がよっぽど勉強になると思いますが。さて6月にはいればまた国際試合がありますが、南米カップに向けての準備はどうなっているのか心配。
  さて本日の勝者コロコロは先年、破産宣告の後、清算され新しく株式会社として出発しましたが、チリでコロコロと人気を二分するチリ大学も破産し、今回メキシコとチリ資本で新しい会社組織として発足します。チリ大学がそのチームの名称に「チリ大学」の使用を認めないため、チームカラーの青(アスール)を取ってチーム名を「アスール・アスール」にしています

2) テニス
  惜しかったな、ドイツで行われた国別世界選手権で、赤組に入ったチリは1回戦アメリカを破り、2回戦スエーデンにも勝ちました。そして3回戦の対アルゼンチン。これに勝つと決勝進出というところまで行ったのですが、これに惨敗して涙を飲みました。何でアルゼンチンに負けるのかな?サッカーでもラグビーでもバレーでも。たまにはすっきり勝ちたいものですね。次回を期待しましょう。結局アルゼンチンが青組み1位のチェコを倒して世界1位になりました。

以上