チリの風  その241 07年9月17日―23日

チリの風  その241 07年9月17日―23日

18日の祝日にサンティアゴ郊外のカホン・デル・マイポに行って来ました。

地下鉄とバスを乗り継いで、そこの中心の町サンホセ・デル・マイポに2時間くらいで到着。そこから適当に近くの山に登ることにしました。ところが岩山が意外に急峻で苦戦し、登頂断念。まぁええやん。で、太陽がポカポカ、そよ風がさわやかだったので、昼寝をすることにしました。日焼けしないようにマラソンの大先輩からもらった手ぬぐいを顔にのせてすやすや。まわりに誰もいない自然の中で休息しました。私は出世もしなかったし、金持ちにもなりませんでしたが、こういう贅沢は楽しんでいます。

(政治)

1) 18に関した話題があったはずなのですが、もう週末のフジモリ問題に焦点が集まり、他の問題は霞んでしまいました。

何しろ、最高裁で判決が出るとされた金曜日から、報道陣が裁判所につめかけ、判決が出た後は、フジモリの住む地区の周りを取り囲みました。

しかしチリもやりましたね。フジモリをペルーに送還です。いくらバチェレットがチリは三権分立ですといっても、それをそのまま信用する人は少ないでしょう。バチェレットは何らかのサインを受け取っていたはず。フジモリをペルーに戻すことで、ペルー国内に分裂混乱が生じることを承知の措置でしょうね。思い切った正面作戦ですか。しかしチリ司法はフジモリに対する罪状のうち半分くらいを訴訟に値するとしましたが、それは適切ですね。もし全部刑事罰に値しないとすれば世界の批判を受けるでしょうし、一つだけ疑わしいとなれば賛否両論で騒然とするでしょうから。そして土曜日の朝、ペルー機に乗せられてフジモリはペルーに帰国しました。意外と落ち着いて見えました。最後の晩餐は近所の人の差し入れの鳥の丸焼き、ポテトチップだった由。
ペルーでフジモリはモンテシーノと対決します。どうなるか注目。

2) しかし先週ルーテル派の教会で牧師から説教を受けたバチェレットは今週18日にカトリック大聖堂のミサで大司教から人道的給料や公正な社会を目指す政治の必要性を説かれました。どうして愛国週間の記念行事で政府首脳が(与野党の議員や財界、軍隊の長官も含む)大挙して新旧キリスト教会の行事に出席して、そこで政治姿勢について教えを乞う必要があるのでしょうか?

教会を出てくると報道陣が待ち構えていてコメントを聞くのですが、一様にごもっともですと回答します。

さて給料問題のない国はありませんが、今のチリで最重要課題は犯罪の抑制でしょうね。政府の無策が犯罪者の数を増やし、市民の暮らしに大きく影響しています。しかし毎日のようにテレビのニュースに出るイタリア広場付近の犯罪者をどうして一掃出来ないのかな?無策のバチェレット。

3) その翌日19日は恒例の軍隊パレードでした。ピノチェットの死後、始めてのパレードでしたが、記者に感想を求められた現陸軍長官は、もはやピノチェットは陸軍のリーダーでもないし、理想の軍人でもないと冷たい感想。もちろんすぐに新聞に投書がきて、「彼は何を言っているのだろう。1973年の9月11日に苦しむチリを救い出したのは誰だったか忘れたのか」とありました。

軍隊のパレードって、国民はこれでリマまで攻め込むのかとか、ブエノス・アイレスに爆弾落とせるかなとか、ボリビア海軍の船に魚雷を仕掛けるんだなんて考えながら見るのでしょうか?

このパレードに先住民グループ、マプチェ、ケチュアそしてイスラ・デ・パスクアも参加しました。そうそう特別参加でカナダの軍楽隊も。

4) バチェレットは今週末からニューヨークに外遊です。少なくとも18のお祭りを無事に終えたとして彼女に対する市民の評価は高まったと新聞に掲載されました。私はそんな記事は余り信用してません。

(経済)

1) ドルの下落を受け、チリ・ペソが急上昇。1ドル500ペソに迫る勢いです。しかしペソ上昇で輸出業者は青息吐息。今年末までこの傾向が続くと零細輸出業者のみならず大手まで影響が出て、雇用問題に発展するとみられています。

原油価格の上昇が継続していますが、これもドルの価値が落ちているとすれば当然の理論ですよね。

2) JPモルガンの国別安全性ランキングでチリはとうとうラテンアメリカトップの座を墜落、メキシコに次ぐ2位になりました。メキシコの方が株式市場、金利など経済規模が大きいだけに安定性があるのでしょうか?

3) チリの今年の銅生産は570万トンが予想され、それは世界の生産トップでシェアーは36%に当たるらしい。この先もチリの銅生産は伸びるが他国の銅生産量の伸びがチリのそれを上回るため来年のシェア―は34%、09年は32%とやや小さくなるらしい。チリより伸びの大きな国はザンビア、豪州、米国とか。

(一般)

1) 今年のディエシオチョのお祭りでチリ人が消費した金額は宿泊や移動の旅行費に食事などを加えると総額3億ドルと推定され、これは前年対比36%の伸びとか。やっぱり景気が良くなって、チリ人の懐があたたかくなっている証拠でしょうね。それともアメリカ人のように消費癖がついて借金をしながら消費しているのかな?

この期間にアルコール関連で逮捕された人間は5千人にもなり、これは前年対比32%アップ。さっきの36%アップと数字が似ているのが面白いですね。酔っ払って暴れる、車を運転するのは犯罪ですからね。

2) その祭りの幕開けにバチェレットがクエッカを踊ったというのは先週の風に書きましたが、そのとき、官房長官ラゴス(前ラゴス大統領の息子)も踊りました。ところが彼は踊りが下手で、見ていられないほど・・・で、話題になりましたね。踊り方を知らないならテレビカメラの前で踊るなとか、恥だねとか、良くそれでチリ人と言えるとかきつい言われ方。彼は「踊りの上手な人もいるしヘタな人もいる。私はそのヘタな方に入るだけ」と答えていますが・・・。確かにクエッカは難しいですね。

3) 週末を含め5日間の休暇の後、木曜日職場に戻りました。朝アパートを出るとまわりの景色がくっきり見えます。年をとってきたのにトレーニングのおかげで目が良くなってきたのかとアホナことを考えましたが、もちろんこれは大気汚染が激減したからです。やっぱり人間が自然を汚していることは私の目には明らかです??

4) ディエシオチョのお祭りで国民一人当たりの肉の消費量は大変なものだったでしょうが、週末の新聞に和牛の話題が出ました。(ちゃんとスペイン語でWAGYUと書いてあります)神戸を原産とする牛の肉と解説あり。
もちろんそれらの肉は輸出用で、輸出のレベルに達しなかった部分が国内で売られるのですが、わずか総生産の5%だけとか。
スーパーマーケットでそれはキロ5000円くらいで売られていましたが、急激な値下がりをし何と現在がキロ千円です。これなら一般市民でも買える。輸出の急激な伸びを見込んだセバスチャン・ピニェラはちゃんとこの分野にも投資を始めたとか。彼が次の大統領になったら、和牛はチリで通常に庶民が食べられる産品になるのかな?
冬の8月が終わったら、老人がまた1年間長生きできると喜ぶチリの風習はもうお伝えしました。今週新聞の風刺漫画に、18のお祭りが終わったからこれでしばらく長生きできるねと牛と鶏が喜んでいるのが出ました。言えてる?

5) 教室に入る生徒の数

OECD参加国の中で一つの教室で勉強する生徒の数の多いのは1位が韓国2位がチリ、3位が日本でした。すし詰め教室でチリは日韓と争ってほしくないですね。チリは狭い国に沢山の人間が住む日韓とは違うはず。

6)離婚方程式
チリ大学の調査によると若いときに結婚するほど、失敗する数が多いことがわかりました。
24歳以前に結婚したカップルは男性62%、女性75%の確率で失敗しています。これが25―35歳になると男性で34%、女性で16%と激減です。あわてないのが成功の秘訣といえそうです。

(スポーツ)

1) テニス(デービス・カップ
   意外でした。明らかに格下と見られたイスラエルに世界リーグ戦で苦戦。2日目が終わった所で2対1とリードされ、最終日のシングルはもはや1敗も出来ない背水の陣でしたがエースのゴンサレスがよもやの敗戦。これでチリの世界リーグからの陥落が決定。
   同じ3対2で日本も負けましたが、日本のほうがずっと惜敗でしたね。そこで活躍した鈴木選手は彼が少し前チリに来て同じデービスカップでプレーしたとき、少しだけ話をしたことがあります。本当に日本の敗戦は惜しかった。

2) サッカー
   来月のワールドカップ南米予選が始まるまで、国内リーグの話題が中心になりますが、今週は4位カトリカが3位のコブレサルを破り上位進出。トップを争うアウダックスは無敗を続け、コロコロも順当に勝ちました。
   しかしやっぱり国内リーグの話より、10月のワールドカップ予選の話が盛り上がります。チリ国内での第一戦対ペルーの入場券が発売になりますが、入場料は何と最低7500ペソで、これは南米で最も高い入場料とか。チリが南米で最も強いチームならそれもわかりますが・・・。(注 最も高い席は10万ペソです)

   アルゼンチンで活躍するサンチェスが試合で負傷。対アルゼンチンの予選には出られません。


以上