チリの風  その242  07年9月24日―30日

チリの風  その242  07年9月24日―30日

仕事でコンスチツシオン(Constitucion)に行って来ました。第7州にありマウレ川の河口の町です。林業と漁業が盛んな所。そこで野犬と飼い犬が目立ったので同行者に聞いてみると「ここは泥棒が多いんですよ」???

魚の水揚げが悪いので漁師の懐が寂しく、したがって泥棒が増えるので、犬をたくさん飼っているとか。バチェレットさん、知ってた?

この川を渡ってアラウカーノ領に侵入するときのペドロ・デ・バルディヴィアの心境は緊張の極みだったでしょうね。しかし当時のスペイン人は南米で乱暴狼藉・傍若無人に振る舞いましたが、運があったのですね。生き残りましたから。

河口の小島など観光にも適していますが、余り観光客は来ていません。

(政治)

1) ニュヨークの国連総会で人権保護委員会の理事に立候補したチリに識者が警告しています。現在幾つかの国に明らかな人権侵害が起こっているが、(例えばミャンマー)、その中にキューバもある。もしチリがその委員会のメンバーになればキューバと対決する可能性もあるわけで、与党を構成する社会党などキューバ支持を明確にし、そこでの問題には目をつぶる傾向がある。それを国連加盟国が許さなければ、与党崩壊の危機を抱くことになる。どうなるかな?

2) 今週、軍事政権下、教会側で反ピノチェットの代表格だった故エンリケ・シルバ大司教の生誕100周年記念の集まりがありました。そこでバチェレットは人権問題は公正な社会問題と並ぶ私の政府の二つの基本方針ですと演説しています。もちろんこの行事に野党側からは誰も出席していません。

シルバが大司教だったときバチカンから派遣されていたソダノ代表はシルバとの関係が悪く、行事があったその日、たまたまチリに滞在していましたが出席せず。つまりカトリックの中でも人権問題で一致した見解がないことを示しています。ソダノはカトリックは政治に関与せず宗教組織として存続すべきとしていました。もちろんこれが二人の個人的な反目だったのか、バチカンの指示で親ピノチェットと反ピノチェットの二本立て作戦だったのかはわかりません。所で彼はこのチリの休暇でルクシックの別荘に行くそうです。

ところでチリ人権委員会はバチェレットは軍事政権時、拷問を受けた側に入っているのにその原因究明が生ぬるいと批判しています。

カトリック関連ですが、南米に侵入したスペイン人、ポルトガル人は原住民を奴隷にし、大きな利益を本国に送りつづけましたが、それをカトリックは擁護してきました。やっと500年たってから前ローマ法王カトリックのしたことは間違っていたと反省しましたが、宗教と政治の関連、宗教内でのヒッチ、宗教者のレベルなど高い所から低い所まで問題が存在しうるわけで、チリの例ではピノチェットもカトリック信者としてミサに参加していましたから、チリのカトリックは民衆の見方だったとも軍事政府の側に立っていたとも言えません。

3) さてニューヨークから戻ってきたバチェレットですが、経団連が厳しい通告。大統領に指導力が無いから政治の混乱が起こり、また大衆に迎合した政策で労働者を甘やかせるから労働争議が続発していると強い調子でコメントしました。

しかしそれを言うなら、チリ経済に強い影響力をもつアンジェリニ・グループのセルロース工場が河川の汚染を続けているのはどうでしょう(クルセ川やマタキート川)政府はこれに強い姿勢を見せないでいますが、それだけ嫌味を言うならちょっと苛めてみましょうか。もっとも一貫性がない、指導力が無いとする財界の批判ははからずも彼女の限界を示しています。

それに対し彼女は私たちは全力を上げて事態に対処している。けっして大衆に迎合する政策をとっているわけではないとし、さらに彼女の誕生日を利用して財界や野党と政治懇談会をしたいと持ちかけました。与野党で政策作成なんて信じられないけど???

4) 2008年予算案提示

予算案については多分来週以降に論争が起こると考えますが、予算案をテレビで発表した大蔵大臣はその中でチリは2020年には先進国の仲間入りとコメント。さしあたりポルトガルのレベルに到達できるらしい。

ちなみにポルトガルは人口1000万、平均寿命78歳、義務教育99%、失業率7.6%、一人当たりの国民総生産19800ドル、一方のチリは1600万、77歳、91%、7.8%、12600ドルでそう遠い目標ではありません。

5) もう大分古い話になりましたが、チリとアメリカの自由貿易協定が締結される前、2002年の始め、ブッシュはチリ政府にアメリカのイラク侵攻を援助しなければアメリカ政府は協定批准に反対するよう国会に圧力をかけると脅迫していたことが明らかになりました。別に不思議なことではないですね。それは政治の世界では日常でしょう。

6) フジモリ問題は先週の話題のトップでしたが、急になくなりほとんど報道されなくなりました。先方の依頼を受けて、チリ政府が報道機関に余り熱中しないようにネと依頼しているのでしょうか?

(経済)

1) 経団連の大統領攻撃の話は政治1)のとおりですが、失業率が目に見えて減少し、季節労働者(果物の収穫やその出荷など)は既に人手不足の気配が見えるらしい。つまりこのままでは来年の夏の収穫期には人手不足から大幅な賃金上昇が避けられず、それを防ぐために近隣諸国の安い労働力を導入したいとしています。チリも南米の中でそこまで来ているわけです。

2) 世銀期間の発表でチリは国際経済ランキングで下落を続けています。例えばその中の汚職ランキングでは178か国中22位になっています。(日本は17位)また新規事業の簡易さのランキングでは33位と大きく後退しています。(06年は24位)

と言いながらこのランキングではチリはラテン・アメリカのトップでメキシコ、ブラジルなどより上位になっています。

しかしこうして世界各国を各種の指標で比較できるのは素晴らしいですね。最もその信憑性については若干の疑問も残りますが。

(一般)

1) 最近で最も笑ってしまった話題が今週は二つもありました。その1は警察の話題で、ある朝、新聞の1面を見てびっくり(もちろん3流新聞ですよ)と言うのは、すごくデブの警官がどこかの門を通ろうとしてつかえているところ。制服からして現職の警官でしょうが、少しは体を鍛えたらどうとからかっているわけですね。窃盗犯などを追いかけても体力に劣る警官は逮捕できないという事実も暴露されました。この新聞が出た後、警察内で自分たちの食事を見直すとかジムに通うとかする動きがあるらしい。

その2は全国運転手連合が道路の大穴コンテストを実施しています。サンティアゴのみならず全国の道路の穴の大きさを競うコンクールで、大きいホールの写真を送ってきた運転手にその車のタイヤをプレゼントするらしい。で、全国から巨大ホールの写真が続々集まっているとか。新聞の時事マンガにそれが出て、観光バスで大穴巡りをし、その前で観光客が写真をとっているのは笑えました。

ちゃんとこれもフォローがあります。大穴コンクールに入賞しそうな所を区役所があわてて補修したようです。チリ1位の不名誉は困るというわけですね。またイキケで会社の社長が自分のお金で道の穴をふさいだのがニュースになりました。毎日子供を学校に送っていくのに大きな穴があって迷惑だったからとコメントしています。チリの実態ですね。

2) 大学進学率

ユネスコの発表ではラテンアメリカで20歳以上で大学(各種学校)で勉強している率が最も高いのはアルゼンチン(60%)。2位がパナマ(51%)そして3位がチリ(46%)でした。チリの46%は実際より高い気がしますが・・・。

3) しかし今週の話題で一番ショッキングだったのは中学生が自分たちの性行為を撮影してインターネットで流したことです。その14歳の女子学生はカトリック系の学校でしたがすぐに退校させられました。もう一人は15歳の学生で彼がどうなったかは発表されていません。文部大臣は彼女を退校させるのはおかしい、彼女は学業を続けるべきとしました。また性医学者のコメントとして子供は親を見ながら生きており、彼らがおこなったことはチリ社会の反映であり、学生がおかしいという前に社会がおかしいと反省すべきとしています。やっぱりバチェレットさんの問題なのかな?

4) テレビ放送

今年はチリでテレビ放送が始まって50年になります。日本より少し送れて始まったわけですね。

で、もっとも印象に残る5つの出来事が発表されました。1位はビーニャでの歌謡祭がカラー放送の初日だったこと。2位は1978年の第1回テレトン(障害児のためのチャリティショウ。私はこの第1回テレトンを見ていますから、チリ滞在も長いですね)3位は1962年のサッカーワールドカップ(チリで開催)4位に1988年のラゴスピノチェットを名指して批判(この番組、今でも思い出します。私は彼の勇気に感激しました)5位は1969年アメリカの宇宙船が月に着陸(全放送局が同じ放送を流し続けたらしい)

(スポーツ)

1)もう10月がそこまできているわけで、ワールドカップ南米予選はすぐです。それなのになんと不運なことかチリのレギュラー選手の負傷が続出。アルゼンチンで活躍中のサンチェスが3ヶ月の重傷、ドイツリーグでプレーし、既にゴールをマークしたビダルも負傷。チリ大学のサラスも負傷とこれではチームが作れません。これ以上の怪我人が出ないように祈るばかりです。

  南米カップでコロコロはコロンビアのミジョナリオと敵地で対戦し1対1で引き分け。3回戦進出に大きく躍進。出張先のレストランでこの試合を見ましたが、各地の出張者がテレビの前に集まって、まるで昔からの友だちのように一緒にはしゃいでいました。

2)ラテンアメリカ剣道大会

  週末サンティアゴラテンアメリカ剣道大会がありました。国別対抗戦と昇段試合が実施されましたが、私たちは初日の国別対抗戦を見物。驚いたのは武蔵のような二刀流の選手を見たことです。

  それからブラジル代表選手はほとんど全員日本人でした(違う、顔は日本人でポルトガル語を話していたから日系の人でしょう。さすがブラジルには日系人が多い)何だか日本に戻ったような気になりました。

  団体戦でチリは男子が2位、女子は4位でした。

以上