チリの風  その240  07年9月10日―16日

チリの風  その240  07年9月10日―16日

5連休の始まったこの週末、私のアパートの住人は80%もいなくなりました。知人の中でもブラジルに行ったり、キューバに行った人がいます。私の子供たちは海辺の別荘に、パートナーのバレリアは南部の実家に行ってしまい、私のヂエシオチョの休みはとても静かです。で、週末はいつもの様にマラソン練習と登山を楽しみました。

しかし病気や怪我もなく、こうして毎週毎週チリの風を続けていますが、世界の誰かの役に立っていると信じて、今週も書きます。

(政治)

1) 私は完全に一人のチリ人としてチリの会社に働いています、上司も同僚も部下も全員チリ人です。ですからチリが好きかとか嫌いかと聞かれると困ります。チリに住みついているのはチリが住みやすいからでしょう。しかしその「チリ人」の私でもこの1年のチリの急激な変化には驚いています。明らかに悪くなっています。住みづらくなっているのです。国家財政は以前にも増して豊かなので、政治の問題が社会を混乱においやっているということになります。

さて先週お知らせしたとおり、今週の最大の話題は9月11日でした。1973年のこの日、軍隊によるクーデターがおこったわけで、大統領官邸に、バチェレットはアジェンデ大統領の娘と孫を招待して、その悲劇の場所で追悼のセレモニーをおこないました。(奥さんは健在ですが、老齢のため出席せず)

しかしその静粛さと全く異なって、サンティアゴ市内では翌日の早朝までデモ隊と警察の激しい戦いがくりひろげられ、303名の逮捕者が出たほか警官が一人射殺されました。デモ隊というとなんだか、その昔、私も学生時代に参加していましたが、最近のサンティアゴのそれは単に道路を封鎖し、タイヤを燃やし、警察と銃撃戦を繰り広げるという感じです。何しろ、テレビのニュースに映りますが、若い男がライフルなど銃器を持って道を歩き、時々発砲するわけです。もちろん機動隊も出ていますが、デモ隊は数でも武器でも警官と対等で劣っていません???

   この射殺された警官の葬儀に出席したバチェレットは「チリは平和を愛する国です。このような混乱を許すわけには行きません」と演説しましたが、同じコメントの繰り返しで彼女を信用する人はいないでしょう

   笑い話のようですが、その前日、ピニェラが警察病院に死亡した警官の未亡人を見舞いに行き、「暴徒が警官を襲う事態は私の政府では許さない」と発言したら、驚いたバチェレットはその17分後に同病院に駆けつけたとか。先手を打たれたわけですね。

   とにかく彼女の人気(信任)は落ちる一方でラテンアメリカ20カ国の大統領の中で信任率は39%と第15位に落ちています。まぁ彼女より下の19位にブッシュ大統領がいるのは心強いでしょうが。

   16日のキリスト教会の集まりに参加したバチェレットはそこで牧師から社会不安は政治の責任と厳しい苦言を受けました。

   チリのキリスト教は新教とカトリックにわかれますが、大統領は両方の教会の18をお祝いする集会に参加するしきたりになっています。

   今年は新教が16日、カトリックは18日です。

2) フジモリ問題

そろそろ判決が出そうですが、もしペルー送還が決まるとガルシア大統領は落ち着けないでしょうね。人気の落ちた彼は何とかフジモリ派と上手くやっていきたいわけで、彼をペルーの裁判所に立たせると国内混乱は想像以上になりそうです。

日本に送還されればチリとの関係は一旦冷えるでしょうが、ひどく悪くなることないでしょう。しかしチリに据え置いて国際裁判ということになれば、チリ・ペルー両国にとって重荷になりそう。いずれにしてもフジモリがチリに来たのは両国にとって迷惑な話です。

(経済)

1) しかし最近ペソが1ドル500ペソに近づくペースで切り上がっています。

ラテンアメリカの国では各国の通貨はアメリカドルに比べると弱いというのが通常ですが、チリの場合、着実に切り上がっています。

当然ですね、外国投資が続き(主に鉱山関係ですが)チリ経済の堅調とあいまってペソが切りあがるわけですね。だから最初に書いたように現在のチリ社会の混乱が不思議なわけです。

確かにモーガン・スタンレイの発表では世界の金融機関の貯蓄ランキングで1位のアラビア首長国連邦の総額8750億ドルは別格としても中国の3000億ドルなどに続きチリの国庫備蓄機関は13位の180億ドルとか。ねっ、いつも言っているでしょ。チリって決して貧乏な国じゃないって。使い方を知らないだけなんですよ。

JPモーガン発表ではチリはラテンアメリカで経済的に安定したもっとも危険の少ない国となっています。

2008年の予算審議が始まりますが、どうなるのでしょう。

2) 再度の金利上昇が噂され、証券市場の動きは緩慢です。平均株価は大きく下げて木曜日など一日で1.3%の下げです。

3) クリーンな地球を維持しようとするのは最近の世界の傾向ですが、OECD関係の国でチリは世界で最少の費用しかかけていないことがわかりました。デンマークは国民総生産の1.4%を環境汚染対策に充てています。ついでドイツ、オーストリア。日本は14位で0.6%。チリは28位で0.1%でした。確かに銅鉱山なんか公害垂れ流しに近い状態のようですからね。

4) ついでにコデルコ銅公団の話しですが先日来の労働争議で生産額が減少したことから今年は5億ドルの収入減が想定されています。おまけに生産コストがうなぎのぼりで1999年に1ポンドあたり60セントだったのが、7年たった昨年は116セントに急上昇、今年は126セントの予想。何してんのかな?08年はこの傾向を抑える予算にすると発表されましたが、どうなることやら。

(一般)

1)18のお祭り騒ぎが始まりました。チリはラテンアメリカでは珍しいカーニバルの無い国なので、その分、この18のお祭りで国民は鬱憤晴らしをするのでしょう。

全国各地で露天やテントの店が並び、食事をしながらそこでクエッカなどの踊りを踊っています。サンティアゴのオヒギンス公園はその集大成のような所で、その幕開きにはバチェレットがサンティアゴ市長とクエッカを踊りました。

しかし飲みすぎと食べすぎで、フォンダに遊びに行った翌日はベッドで休養でしょうね。えっ、そんなことはない5日連続で遊びまくるぞ!ですか?それなら20日の仕事に差し支えるでしょうね。

さてサンティアゴから繰り出した車の数は驚異的で、南に向った車は料金徴収所が詰まってしまい、なんと土曜日に20キロ以上の交通渋滞。2時間も待たされた時間帯があったらしい。全員が同じことをするとこうなるのは日本のお盆休みなんかも同じですね。

アルコールが嫌いで、人ごみが嫌いな私は、例年フォンダには行きません(いや行けませんかな?)

2) ところでこのディエシオチョは何のお祝いですかと聞かれるとチリ人は独立記念日と答えるのが普通ですが、そうではなく、第1回執政会議が開かれた日で、その席では独立を採択していません。1810年の9月18日ですから、今年は197年目です。しかしそれなら何でこの日を祝うんかな?

3) 調査機関の発表でチリ国民の88%は自分の子供は親よりランクの上の暮らしができると考えています。その肯定的な姿勢が単に能天気に終わりませんようにお祈りします。この数字はラテンアメリカ諸国の中では1位でした。

(スポーツ)

1)テニス

久しぶりですね。テニスの話題が出るのは。

 その1)デービスカップの世界大会予選に出場のチリは今回はイスラエルと対戦です。いくら最近弱くなったチリといえ、格下のイスラエルに負けることは無いと思いますが。

 その2) 最近、出ると負けだったゴンサレスがATP北京大会で決勝進出。その試合は日曜日の昼頃、ちゃんと生中継され見事優勝しました。

     これで世界6位に戻った彼は年末の世界大会の出場権を手に入れることが出来そうです。

2)サッカー

欧州遠征の第一戦、対スイスを落としたチリですが、第2戦の対オーストリアには見事2対0で勝ち。凱旋帰国しました。来月のワールドカップ南米予選の初戦の相手になるアルゼンチンが豪州に辛勝だったので、もしかしてこれはいけるかと国民の期待が膨らみました。

欧州のこれらの試合で活躍したサンチェスは所属するアルゼンチンのリバープレーに戻り試合に出場、見事ゴールを決め観衆からチレーノの大歓声を浴びました。

で、10月13日にブエノス・アイレスでおこなわれるワールドカップ南米予選の第1試合でチリに割り当てられた入場券は既に完売とか。

監督が変わるだけでチームが代わることはないとする意見と、いや戦う姿勢、攻撃に徹する姿勢は明らかにこれまでとは違うという声に分かれます。私とすれば、何でもええからアルゼンチンに勝ってほしいです。

しかしこの欧州の大会に日本も参加していたのですね。日本はスイスに勝って、オーストリアとは引き分けの後PK戦で負け。しかし日本のメディアには参加国としてチリの名前も出ていましたが、チリの新聞テレビには日本は一行も触れていません。しかし同じ場所で4国が戦っているのにそのうちの一つを全く無視するなんて・・・信じられない事実です。


以上