チリの風 その235  07年8月6日―12日

チリの風 その235  07年8月6日―12日

しかし雪が降りました。アンデス山脈に雪なんて冬になれば日常のことですが、サンティアゴ市内にです。街の中心に位置するサンクリストバルの丘が真っ白になったのは40年ぶりとか。そう言えば、家の庭で雪合戦をしたのは、長男が小学校の頃でしたからもう10数年前のことですね。日本は厳しい暑さ、チリは厳しい寒さ、これは正常なのか異常なのか。エル・ニーニョとかラ・ニーニャ現象で気温が上がったり下がったりするのは知っていますが。


(政治)
1) バチェレットさんは今週はエクアドルに外遊した後、プンタ・アレナスに飛びました。外では彼女もにこにこしていますね。心身の健康にはその方が良いですよ。もうトランサンティゴの失敗は政府の責任とはっきりしてしまったから、それをどう解決するかに手腕を見せてもらいたい。バス会社に払う保証金を低くするためバスの導入台数を低く見積もらせたのが最大のエラーのようです。
さて彼女は9月には日本に飛んでEPAの調印式に出席します。今年は日本とチリの修好110周年にあたるので、サンティアゴ始めその他の都市でも日本を紹介する行事が数多く行われる予定です。

2) 新聞の世論調査の結果として3分の2の国民はチリの左翼は崩壊したと見ています。先週、発表された社会党関係者のコメント「ラゴス政権はチリの中道右翼政権で・・・」が口火となって、チリの左翼はもはや左翼としての国民への責任を忘れ政権維持に没頭していると手厳しいが、それを国民が認識しているわけです。


(経済)
1) しかしとうとうアメリカ経済が破綻してきましたね。もちろん私の書いているのはチリの風でアメリカの風ではありませんが、ちゃんとチリのテレビでもアメリカがくしゃみをすると南米では風邪をひくといっていました。株も下がるし銅の価格も下がるし、アメリカ破綻は大きな影響を与えています。チリの金利も上昇一方です。
   そのアメリカ経済破綻の原因になったのは住宅販売ですが、サンティアゴのマンション販売も好調でこの数年では最高の記録を記録しそうです。しかしそれにもまして建築数が増えており、販売数の4倍近くの乙波が記録されていますが、明らかにオーバーストック問題が出てきそうです。じゃ、日本のバブルの後を追ったアメリカの、さらにその後ろをチリが走っているわけか?
チリの今年のインフレは推定4.7%で、最近の10年間で最悪の記録。しかし経済成長率の予想は少しずつ上がってきて、現在では07年の成長率は6%と推定されています。
さてこのままチリの金利が上昇すると為替レートは大きく変わって現行の1ドル520ペソから1ドル500ペソに近づくと見られています。何年か前、1ドル800ペソが近いといわれたのですから、これだけ大きくペソが切り上がるなんて経済評論家はいいかげんなことを言っているか良くわかります。

2) チリの銀行の信用度は高いですね
ムーディズの発表ですが、07年7月の世界の銀行安定査ランキングでスイスの1位、アメリカの2位など当然でしょうが、チリはラテンアメリカでトップの17位でした。これでチリ銀行がシティ・グループと合併すれば、ランキングはさらに上昇でしょね。

3) 日本とのEPA経済連携協定)が調印され9月3日から発行になりました。もっとも私にはそれが自由貿易協定(FTA)とどこが違うのか良くわかりませんが・・・。チリの新聞はスペイン語TLC自由貿易協定)と表現しています。
この調印の結果、そのメリットでチリから日本への輸出は4億ドルほど伸び、これは新規に56000人の労働者に職を与えることになるらしい。確かにインパクトがありますね。

4) 雪を含む寒波の襲来で、チリ中央部の農業は壊滅的打撃を受けています。サンティアゴの気温としては83年ブリの寒さだそうです。この寒さで大被害を受けた農業が全面回復できるのはずっと先の2010年頃からだろうといわれています。このため野菜果物の生産供給に大きな支障がでています。値段が上がって!

5) 最低賃金問題
カトリック教会のゴイック司祭がチリの最低賃金を人間らしさの観点から決定すべきではないかと発言したところ野党議員のマテイが全く経済を知らない人間が口を出す分野ではないと厳しく糾弾、俄然議論を帯びました。興味深いのはこれに関して与野党が対立するのではなく、各陣営に賛成反対が入り乱れていることです。与党側の党首の一人が相手側の大統領候補のピニェラはチリで最も金持ちの一人だから、彼に最低賃金を払わせればどうだろうとコメントしましたが、与党のレベルの低さをあらわしています。最低賃金を上げるのは法制化すれば簡単に出来ますが、企業がそれで競争力を失えば倒産するわけで、それは失業率アップに直結。つまり市場は最低賃金を人工的に高く(低く)するのを許さないと思いますがどうでしょう。
新聞発表で国民の過半数がこの意見に賛成としていますが、当然でしょう。

6) ボリビアのタリハに集まったベネスエラ、アルゼンチン、ボリビアの大統領はガスのパイプライン建設条約に調印しました。全長8000km、総工費230億ドル。しかしあのチャベスもちゃくちゃくと計画を実行していますね。
外交の分野ですが、ボリビアは今週、チリ駐在の領事を更迭しました。今年に入ってもう2回目です。チリとボリビアの国境問題の解決が近いなどというコメントをするとすぐに飛ばされるらしいが、本国が正しいのがチリ駐在の領事館が正しいのか、正解を知りたいところ。
しかしボリビア大統領モラレスは、10年か20年後、ボリビアはスイスを凌ぐ国になるだろうと発言。注目を浴びました。国民所得で10倍、汚職度合いで世界のトップと最下位クラスの国の比較ですから、かなり思い切った発言をしたものです。何、根拠が全然ないって?私が言ったのではありません。
   それからペルーがまたぞろ国境問題(陸地から沿海の境界線)も持ち出し、チリが反発しています。同じことの繰り返しですが、やっぱり何かしら意味はあるのでしょうね。


(一般)
1) 来月の建国記念週に一日祝日を加えるという法案が論議を呼んでいます。
火曜日と水曜日が今年の祝日なのでその間の月曜日を休みにしようというもの。なにしろ下院では法案成立です。他の南米国の建国記念日は2―3日なのにチリは5日にしようというのですよ。休みを増やすと国民は酒を飲んで暴れ、生産が落ちて、それで誰が給料を払うんかな?これでは将来が危ぶまれる。コツコツ働くしか方法はありませんからね。

2) チリでも大学院で学ぶ学生が増えています。その中でも奨学金が出れば、海外で勉強したいとする学生が多く、その希望地ランキングによると1位スペイン、2位アメリカ3位イギリス、4位フランスそして5位に日本となっています。しかし日本の大学院で勉強したい学生がこれほど多いとは思いませんでした。日本の中で人気のあるのは京都大学だそうです。
先週アメリカを訪問していたフォックレイ外相は同国の大学院生の受け入れについて合意し来年から100名の奨学金を用意するとか。国際化が進みます。

3) チリ人のインターネット好きはちゃんと数字で証明できます。ラテンアメリカでインターネットとつながっている人口は平均13%ですが、チリは断然トップの45%、アルゼンチン26%、ブラジル11%ですからね。

4) 先日死去したピノチェットの話題が新聞に載りました。彼の息子がピノチェットの使っていた背広を売りに出したらしい。1着100万ペソ以上と古着にしては非常に高いがピノチェット・ファンなら買うでしょうね

5) チリの子供は外で遊ばない
   子供が戸外で遊ぶことについて世界11ヶ国で調査が行われ、チリは最下の23%でした。1位はアルゼンチンで76%、2位はイギリスで74%
   3位はインドで70%とか。ブラジルやアメリカはそれより下位でした。よかったアルゼンチン、イギリスの次がブラジルならまるでサッカーのランキングみたいだから。
それにしてもチリの子供は外で遊ばず、テレビやコンピューターゲームにはまっているのですね。

6) チロエと本土を結ぶ橋の建設
前大統領のラゴスが約束したこの橋の建設をバチェレットが反故にしてから1年立ちましたが、その記念日に島民が怒って交通遮断しました。そして公共事業省の大臣などの人形を燃やしました。責任は大臣でなく大統領と思いますが。


(スポーツ)
1) サッカー
   やっとナショナルチームの監督が決まりました。元アルゼンチンの監督のビエルサです。アルゼンチンの監督をしたくらいだから実績としては立派なものがあるのは当然ですが、チリのメディアではこれでチリのチームに規律ができる、選手が羽目を外した行動を自粛するだろうというコメントをしているのは情けない。いかにチリのサッカー選手がいいかげんな選手生活を送っているかがわかってしまう。新監督のもと、髪の形とか就寝の時間とか決められ、禅寺に入ったような生活を送るのでしょうか?
   私としては誰が監督になってもチリのレベルが上がって、南米の最低クラスを脱出し、ブラジル・アルゼンチンに次ぐ3位になってくれれば大喜びです。これは国民の大多数の意見でしょうが。

2) チーム別南米カップは1回戦が終わり、チリの2チーム、アウダックス・イタリア―ノとコロコロは勝ち進み、2回戦で両チームが対戦することになりました。


以上