チリの風 その234  07年7月30日―8月4日

チリの風 その234  07年7月30日―8月4日

高地にあるチリの銅鉱山を訪問するには高地順応可能との医師の証明書が必要です。その証明書をもらうため労働者病院に行くことになりました。ある日の午後、会社をでてバスで地下鉄の駅につきました。時間があったので、地下鉄に乗らず森林公園(パルケ・フォレスタルと言います)を歩き始めました。昔、違う会社に勤務しているとき、この公園を毎朝歩いて通ったのですが、そのころの平和な雰囲気が一変していました。で、周りを見て怪しい奴がいないか注意して歩きました。10年前に比べてチリの進歩は認められますが、こんな弊害もはっきり現れています。

日曜日、いつものマラソン練習で丘の上に走っていたら、もうシルエラの花が咲いていました。チリの8月は日本なら2月、そろそろ梅の花が咲く頃でしょうか。


(政治)
1) もうバチェレットは家に帰ったら、泣くか、喚き散らすかしているのではないでしょうか?前大統領のラゴスなら今の段階で「もう1年以上経過した。任期はあと少ししかない」と考えていたでしょうが、彼女の場合は「まだ1年しか任期がすんでいないわ。まだ沢山残っているのね」という感じでしょうね。かわいそう。

もう政府の内部が無茶苦茶で、与党の内部も混乱し放題で、国会対策も十分ではなく、優先順位もつけられないほど問題山積です。

とうとう世論調査で、不支持が支持派を抜き、彼女の落日ぶりが顕著になっています。内閣改造が話題に上り、それもどの大臣とどの大臣が仲が悪い、誰々を外すとその大臣の属する党首は誰々を推すだろうとか細かく推測されています。これだけ書かれればバチェレットとしては仕事がやりやすいのかやりにくいのかどちらかな?

ところでバチェレットさん、不人気を盛り返すのはトランサンティアゴの改善案と、犯罪の減少を図れば、すぐにまた支持派の数が増えますよ。

路上のかっぱらい犯人が警察に捕まっても翌日保釈になる実態を改めるだけで、人気度が変わります。司法がちゃんと法に乗っ取って裁いていると言い張るなら国会でその法案を変更させ、それでも世論を理解できない裁判官がいればクビにするなり左遷すればよいわけで、これで半年後には問題が激減のはず。簡単やん。

2) トランサンティゴ
新交通計画が実施されれば地下鉄はパンク状態に陥るとする書類が世論を賑わしていますが、その問題の書類をバチェレットは見ていたのか見ていなかったのか問題になっています。彼女をかばう側はそんな細かい点まで大統領は報告されていなかったとするでしょうが、確かに彼女が、この新計画について4月頃、私の第6感は危ないと教えていたとわけのわからないコメントをしましたが、この書類のことを言っていたのでしょう。
大統領補佐官はあの書類は既に公のものになり、新聞に掲載されたが、それは問題が起こる可能性を示唆しただけで、一行も計画を中止、延期せよとは書いてないと強気の答弁。アホみたい。
最も今週の新聞にはその報告書のほかに各種の大学の研究所なども同様の警告的レポートを提出しているのが報告されています。
最後に前運輸大臣がとどめの一撃。大統領は全部知っていたと手紙に書きました。
4日の土曜日、日本人学校にサッカー教室をするため出かけましたが、バス停に行くとずいぶん沢山の人が待っています。聞いてみると「1時間も来ないのよ」1時間か50分か知りませんが、かなり長い間待たされているようです。怒るのも無理はない。この解決は簡単です。全部のバスにGPSを取り付け、バスの運行を調べ、主要なバス停にピークの時間は10分おきにバスは来ますと張り出せば、乗客の不快感、不安感は減少します。そしてバスが運行表のとおりに走っていなければ、バス会社をよんで釈明させる。簡単でしょう。素人の私でもこれだけわかるのだからプロをそろえたチリ政府がなんで解決できへんねや?しっかりせえバチェレット。ごめんバチェレットさん。

3) 政府のアホさ加減の例ですが、チレ・デポルテ(スポーツ振興局)の任命されたばかりの局長がまた更迭されました。この6ヶ月で3人もやめさせられています。その前々任者の女性局長が学歴を偽っていた事件はこのチリの風でもお知らせしましたが、その後任は野党党首の幼児売春事件で虚偽の報告をしたことで飛ばされ、3人目のこの男はスポーツをだしにした不正支出問題に関連していた他、なんと義務教育もちゃんと終わっていなかったらしい。何でそんな怪しい人間ばっかりこの事務所につれてくるのか政府の気が知れません。さて次の責任者はコロコロのキャプテンをしていたプロのサッカー選手でピサロ。かれは任期をまっとう出来るかな?
いったい政府は何度エラーをすればおさまるのか開いた口がふさがらないという感じですね。

4) 野党の次の大統領候補のピニェラはランチレ航空のダイレクタ―を辞任しました。けじめをつけた訳ですね。ますます次期大統領に近づいていきます。もっともダイレクタ―を辞めたと言っても、同航空の筆頭株主であることには変わりなく、ありあまる資金にものを言わせ数字、情報はどこからでも入ってきます。このダイレクタ―職を辞任したことから、かえって政治に使える時間が出来たということでしょう。

5) フジモリ事件
先週のチリの風に日本からコメントを戴きました。私はフジモリの実績を無視するつもりはありませんが、やはり政治の世界は、一度踏み込むと抜け出せない麻薬のような(いかん、比喩が悪い)世界と思っています。フジモリと同じようにチリでは前大統領のラゴスが同じ症状にかかっています。フジモリは明らかに行過ぎて、犯罪といえるかはペルーの観点から考える必要がありますが、彼の行ったことは国際的には違法でしょう。
彼はペルーに戻ってもう一度と甘い夢を見たのでしょうが、それより自分の人生を本にするような生き方をすればよいのではと思います。


(経済)
1) 先週、新聞にコデルコ(国営銅公社)は私営の銅山に比べて著しく非生産的だとする記事がでましたが、それに対し、前総裁がその記事は間違っているとする投書を書き、掲載されました。もちろん新聞記事の一部に誤りがあるのは考えられますが、その前総裁が言うように全くの誤りとはとても考えられませんが、どうでしょう。私もタイヤ関連でコデルコとは20年以上のお付き合いがありましたから、内部の様子は良く分かっているつもりですが・・・
さてそのコデルコ、35日の争議の後、とうとう下請け労働者と合意に達しました。何しろこの争議でコデルコの失った金額は9千万ドルとか。1日百万ドルではすまなかったわけです。おまけに争議解決金としてさらに1600万ドルが余分の出費になり、厳しい。
コデルコ争議に勝った下請け労働組合の次の目標はエナップ(国営石油)で来週にはスト突入、さらに小売業界といわれています。じゃそのうち百貨店がバリケードで開店できなくなるのかな?

2) と言いながら国庫は今年の前半を歴的な数字で締めくくりました。なにしろ入超が178億ドルですからね。少少の出費なんかびくともしません。

3) しかし7月の物価上昇率は何と1.1%を記録し、過去10年間で最悪の数字になりました。これはUF建てで借金をしている人にとっては大きな痛手になります。またこれから家屋を買おうとする人にとっては頭痛の種ですべての商品の売れ行きにブレーキがかかりそうです。


(一般)
1) 犯罪の急上昇は最近のチリの象徴ですが、その中でも今週の強盗は目新しかった。
それはコンセプシオンからサンティアゴ行きの長距離バスに4人組の強盗が乗り込み乗客の身ぐるみはいで逃げたという事件。
ちょうどバスに警察官も乗客として乗り込んでいたが何も出来なかったらしい。まるで映画のようでしたと客室乗務員が言っている

2) これは同じ種類の犯罪ではないですが、ピノチェット時代の軍人による左翼誘拐殺人で有罪判決を受けた元陸軍大将が収監寸前に逃亡しすでに2月ほどたっていましたが、今週彼はビーニャのアパートにいるところを逮捕されました。国外逃亡と思われていましたが、意外に近所に潜んでいたもの。夜になると変装をして散歩をしていたとか。サンティアゴに移送され刑務所に入れられました。不思議なのは逃亡したことで刑期が延長されると思いましたが、それにはお咎めなしらしい。どうして?

3) 医者の数
国民1000人あたりの医者の数は南米でトップはウルグアイで3.7人。2位がアルゼンチンで3.0人。続いてベネスエラが1.9人。ボリビアやペルーにも抜かれがチリは下から2番目で1.1人。最下位はブラジルで0.9人とか。何でチリがこんな低い数字になるのかバチェレットの見解を聞きたい。私の娘は医学部に進むつもりで勉強していましたが、病院で働く医者の実態を知るにつれ、疑問を感じ、結局理学部の生物学科に入りました。このあたり政府に問題がないと言えないかな??

4) 外国からの旅行者
今年上半期のチリへの入国者は昨年より12%アップの130万人でした。最もその増加した旅行者の国別では大半が南米からのお客さんでした。
つまり欧米にもっと宣伝する必要があるということです。


(スポーツ)
1) サッカー
  早く決まらないかとやきもきしますが、ナショナル・チームの監督がまだ決まりません。チリの20歳以下のチームを率いて活躍したスランタイが有力紙されましたが、彼とは決まらず、かってアルゼンチンのナショナルチームの監督をしたマルセロ・ビエルサに決まりそうとか
  その20歳以下のチームと元代表選手との試合がありました。若手が3対1で勝ちましたが、オールド・チームのフォワードはかって世界を風靡したササ・コンビでした。サモラーノとサラスです。彼らが活躍した時代が懐かしいですね。今のチリは弱すぎる。


以上