チリの風 その116  05年3月14日―20日

1年間の精進のあと、とうとうレースの日が来ました。20日の日曜日、仲間のリカルドと42キロを走りました。その結果はともかくとして、今回から選手の靴にチップをつけ、レースをコンピューターで管理し始めました。しかしチリのマラソンも近代化してきましたね。


(政治)
1)まづはラゴス大統領の話。年末の大統領選挙に与党側から一人の候補が立ちますが、予備選挙にキ民党から一人、社会党社民党グループから一人の計二人が候補になっています。現大統領は社民党グループの出身なので、「どちらかといえば、その代表に投票します」とテレビの番組で言ってしまったので大騒ぎ。当然ですね、誰に投票するかをテレビで言うのは失言です。で、キリスト教民主党は怒ってしまい、それなら予備選挙の結果を尊重せず、本選挙に二人だそうという過激な発言も出ています。大統領はごめんなさいと言っていますが、どうなるか。
一方、右翼側の2大政党はこの数年、ラビンと言う候補者を押していましたが、人気が下降気味で、国民改革党から、右翼側も予備選挙を行おうという声が出始めました。
このまま混乱が続くと、大地震が起こる可能性もあります。すなわち両陣営の崩壊です。政府側から中央よりのキ民党が離れ、右翼グループから中央よりの国民改革党が分離して、その両党が合併すれば、右翼、中央、左翼の3候補の戦いと言うことになります。
政治家は全員嘘つきだと思い始めた私は白紙投票するつもりですが、上記のような大地震が起これば、誰に投票するか真剣に考えます。

2)次は当然、我らのピノチェットの話。左翼の私にも、我らのと言わせるくらいいつまでたってもくたばらない彼はえらい。
しかしチリの政府、裁判所もなめられていますね。
またアメリカからの情報でピノチェット、その家族、そして関係者の隠し口座が発見され、今までの規模を大きく上回って・・・何しろ125口座とか。それに陸軍も関連しているというもの。
じゃ、チリの裁判所は今まで何をしていたの?外国に教えてもらわなければ自分たちの取調べではそれが分からないの?なめられている。関係者を全員逮捕して拘留し、ちゃんと白状させたらどうかな?

3)アルゼンチン
しかし新聞に投書が載りましたが、チリ政府はだらしない。天然ガス問題で昨年、経済大臣がアルゼンチン政府は信義にもとる、契約を履行しないとしながら、アルゼンチン大統領と閣僚がサンティアゴ入りをしたとき、まったく彼らと渡り合おうとせず、せっかくの機会を無駄にしたというもの。
これは当たっている。で、私はその会議の前に、逮捕されたドイツ人のチリ引渡しと天然ガスの不問を取引したのだろうと読んだわけ。(先週のチリの風に書きましたが、その通りの結果になりました。アルゼンチンにすればドイツ人の引渡しには1ペソもかかりませんからね)
アルゼンチン大統領は天然ガスの件について、会談結果として政府として出来るだけのことはすると誠実に発表。(この言葉に私は嘘はないと思う。実際、出来るだけの事はしましたというのなら誰にでも出来るから)
それからキヒネル大統領の写真が翌日の新聞トップにならず、サッカーの写真がそれを抑えたのも、会談の内容が乏しいものだったという新聞社の判断を露骨に出しているのでしょう。

4)ボリビア
しかしボリビアも分からない国ですね。何がしたいのか。チリ人の中には「ボリビア人は猿だね。何を考えているのか、何も考えていないのか分からない」と極端なことを言う人がいます。
大統領は国会を説得できない。国会は国民の信用が得られない。国民はどうすればよいのかわからない。で、全く進歩がない。
彼らのチリ嫌いは筋が通っていて見事だが、それで自国の利益を損失している。それからコカの葉っぱを守れ、生産を認めよと言うのは理解できる。またそれを誰が買おうが、コカインの原料になろうが、農家の責任ではないというのも理解できる。
(実際彼らはコカの葉を常習的に使用しているが、コカインの常習は聞いたことがない)そのためアメリカ政府と戦ってコカの葉の減産をしないのは理解できる。
外国資本に対して嫌悪感を示すというのも理解できる。しかし自分たちの国の資源を略奪しているという理論には同調できない。
しかし何と言っても、国中を麻痺させる道路封鎖を頻繁におこなってどうなるのだろう。国を19世紀の状態において何の得があるのだろう。グロバリゼーションなんか関係ないといっても、彼らもテレビやラヂオは手にしたいのですからね。(車がほしいとは考えないかもしれないが)山高帽をかぶったアイマラのおばちゃんが石を並べた道路に、並んで座っている写真を見ると違和感を感じざるを得ません。こんなにたくさんの女性が本当に自分の意志で政治行動を起こしているのだろうか?それとももっと違う意味があるかと?
ラ・パスの隣りで飛行場のあるエル・アルト地区はこの道路封鎖に苦しむ地区ですが、そこの産業の90%が他地区への移転を考えているといわれます。もちろん彼らはボリビアの小さな会社で外国産業ではありません。
ところで日本と韓国もいつまでたっても関係修復が出来ませんが、チリとボリビアもいつになっても関係修復が見られません。
ボリビアの海を実現するため、私はボリビア天然ガスの生産地とチリ最北部アリカの領土交換をすればよいと思うのですが、私の案はチリ人からすると、甘いね、ボリビアにはまともに交渉できる政府が存在しないのだからと言われます???!!!


(経済)
1)しかしコデルコの健闘には恐れ入りました。コデルコは国営銅公社ですが、04年の黒字がなんと、(税引き前)33億ドルで、もう笑いが止まらないところ。石油会社のコペックが良く儲かったといってもコデルコと比較すると何分の1、わずかなものですね。
しかし銅の価格がいかに不当に(失礼)高騰しているかが分かります。
さてアメリカの鉱山会社(ホワイト・マウンテン社)はチリでチタニウムの鉱山を始めると発表。石油はほとんどないけど、天然ガスも近海から出そうだし、チリには鉱山関係の資源には本当に恵まれていますね。
例の鉱山業者への増税の改定案(ローヤリティ2)の国会審議はどうなったのかな?
銅の価格もひどいが、最近の石油の価格も高すぎないかな?誰かが価格操作を行って、その作戦がぴたりと当たっているのでしょうね。イランとかイラクでの動きが怪しいですが。


(一般)
1)サンティアゴの大聖堂(カテドラル)の地下室からミイラが発見されそれが何と170年前の元大臣ディエゴ・ポルタレス氏のものではないかと考えられています。彼はバルパライソで暗殺されたことになっていますが、当時のチリを代表する政治家です。

2)ポール・シェフェル事件
彼がアルゼンチンで捕まってチリに護送されたことは先週の風に書きましたが、その後、ほとんど進展がありません。もちろん、身体検査と同時に取調べは始まっているわけで、彼の発言が流れないのは、政府がストップをかけているからでしょうね。ピノチェットとその妻が、そのドイツ共同体(コロニア・ディグニダ)を訪問していることははっきりしていますから。
ところで、その共同体の内実が漏れてきますが、シェフェルが支配していた30年間、中で生活していた人間は給料を1ペソももらわなかったとか。(5千円という話もあります)つまり生活を保障されていただけで、貯金はゼロ。そこでは人権ってなかったのでしょうね。
それから彼の事件で弁護士がいません。誰もこの事件で彼の弁護士になろうとしないらしい。数ある弁護士の中にはこれで有名になれると思う人間がいるはずですが。

3)観光
チリも観光に力を入れ始めましたが、4州ラ・セレナから100kほど山に入ったところに変わったホテルが建てられました。エルキ・ドモスという名前の天体観測ホテルで、一つ一つの部屋が半球型のドームになっています。小さな半球の1階部は普通だが、2階部は寝転んで天体観測が出来るというもの。このあたりは実際に天体観測所が設けられているほど、それに適したところで、世の中の物好きな人を呼びたいというもの。1泊5千円くらいなので特に高いわけではないようです。
パイネの火事の件は新聞の載らなくなりました、南は雨の季節に入ったのでもう火事は全部消えてしまったのでしょう。次に記事になるのは、どの種類の木を植林するかという復興作業関連でしょうね。


(スポーツ)
1)マラソン
20日に行われたマラソンに、アテネオリンピックで銅メダルを取ったブラジルのデ・リマさんが来ました。(彼はオリンピックで最後までトップを走っていたが、アイルランド人が急に飛び出し彼の走行を妨害し、銅メダルに終わった。しかしゴールまで諦めず走り多きな感動を与えたのは記憶に新しい)もちろんちゃんとニュース効果を考えて主催者が呼んだもの。
チリ人ランナーと一緒にレースに参加。42kの優勝はケニヤ人。

2)サッカー
国内リーグ戦ではトップを走るカトリカと2位のコロコロが4万人の観衆を集めて国立競技場で対戦。カトリカが勝って首位を堅持。
一方、リべルタドール杯でチリ大学はボリビアチームを破り、アルゼンチン、ブラジルのチームを抑えて前半戦を終えて現在同グループのトップを走る好調さ。後半戦もうまくいくのか?

3)テニス
最近、あかんねんと書きましたが、今週もメディアを賑わしたのはゴンサレスがATPマスターシリーズのインディアンウェールズ大会でベスト16まで行ったのことより、足を怪我してデービスカップの対ロシア戦を欠場したマスの記者会見でした。しかしそれはチリのデ杯監督のアルゼンチン人を厳しく批判した内容で、私にはお粗末なものでした。他人の悪口を言うより、早く怪我を治して試合に復帰してほしい。彼もまじめにプレーしなければ世界のトップを維持するのは難しいだろう。サッカーでもそうだが、チリ人は世界のトップクラスになると(近づくと)周りにちやほやされて道を誤り、すぐに消えていってしまう。テニスのリオスなんて世界のトップまで到達したのに、若くして引退。今では離婚騒ぎでメディアを賑わしている。寂しい。


以上