チリの風  その205  06年12月18日―24日

チリの風  その205  06年12月18日―24日

クリスマスです。キリスト教国では復活祭と並んでもっとも重要な行事ですが,私の目にはここのクリスマスは日本のそれと同じでデパートの売上増に貢献する行事の一つのようにも見えます。
週末、金曜日、子供と三人でデパートにプレゼントを買いに行ったらあまりの人ごみで気持ちが悪くなりました。その後,レストランで食事。土曜日は朝からマラソン練習。午後に最後の買い物。日曜日はミサに行って,昼食は家族そろって。チリ中の家庭で私たちのように過して(マラソン練習以外は)疲れているのでしょう。
夏時間と夏至の日のおかげで最近のサンティアゴは夜9時でもまだ暗くなりません。スポーツを楽しむには最高です。
さて最近,読者からの反応がなかったのですが,先週は反響がありました。やっぱりピノチェット問題は人目を引くようです。
ところで、日本から、日本人の注目はピノチェットよりフジモリですよというコメントも頂きました。ピノチェットのやりかたをコピーしたとも言われるそのフジモリですが、先週,私が日本人会の一世グループの集まりアンデス会に出席したところ、グループの中の一人が、日本メディアの通訳として最近彼と面会したと聞きました。
それは極左グループによるリマの日本大使館占拠事件の10年記念だったからなのですが、フジモリは70歳近い老齢ながらまだ迫力があったとか。大統領のイスを狙う気持ちがある間はボケないでしょうね。ところでペルーの日本大使がチリが彼の出国を認めフジモリがそれを望むなら日本政府は彼の帰国を認めると発言したそうです。


(政治)
1)先週の風でお知らせした通り,今週のトップは例の国家機密費の行方ですが,バチェレットは次の三つの手を打ちました。
(1)昔に比べて機密費の重要性は落ちている(そんなに使っていないとして問題の重要性を縮小化する) 
確かにピノチェットの最後の年1989年には200億ペソ使っていたのが2005年には約7分の1の30億ペソになっている由。(実質的には10分の1くらい)
(2)ピノチェット時代の機密費の使用は異常だった(問題点のすり替えと引き分け狙い)。
(3)機密費の使用について政府に関係している(関係した)人間が口に出すのは規律違反だとするものです(反撃)。与党側の元党首が発言しているので,政府の不正関与について疑いなし。
つまり、まったく反省して頭を下げるつもりはありません。
今週開通した地下鉄駅の開所式で演説した彼女は「私たちの悪口を言う野党には飽き飽きする。今日の地下鉄延長を喜んでくれる国民のために私たちは働いている。」と自分の権限、責任を認識せず力で批判網を破ろうとしています。しかしすごい。とにかく強気一辺倒で突破を狙う彼女の力は、たんに相撲とりのデブの強さではない。がんばれ,おばちゃん。
しかしテレビの討論番組でこの問題を取り上げたら視聴者の93%は最近,チリの汚職が増加したと回答しており,国民の目はごまかせません。
国会機密費だけではありません,既に毎週報告しているスポーツ振興費の横流しなんか,もうあきれるほど不正の例があがっています。もっともそれに関した裁判で、起訴された政府関係者はなぜか釈放されてしまいます。裁判所ってバチェレットの援護機関なのかな?
国税庁の職員がそういう不正をおこなった幽霊会社設立に関与している疑いで起訴されていますが,バチェレットはどう考えるのでしょうか?

2)今年のアホだった政治家
こんなタイトルのランキングに出るのは屈辱物ですがあるテレビ局のそれで、3位にピノチェットの隠し金塊が見つかったと発表した外務大臣が入賞。1位はチリで開催された女子ローラースケートホッケー世界選手権で優勝したチリチームを国会に迎えた歓迎式で、その大会場所をスペインとまじめに発表した下院議長が選ばれました。

3)ピノチェットが残した文書が発表されましたが,全く新味のあるものがなく、あっと驚く秘密でもあるのではと期待したピノチェットファンをがっかりさせました。彼の往年にはもうその力はなかったのですね。
それよりピノチェット関連の話題はラス・コンデス区の区長がピノチェットの名前をつけた道路を残したいとし、何とバチェレットの住む家の前の通りまで、その候補にあがってかんかんがくがくです。


(経済)
1) 中国がとうとうチリの貿易相手国の1位になりました。06年11月の数字でチリからの輸出額は中国が62億ドル,アメリカが61億ドル,日本は3位で47億ドルでした。しかし中国もチリ製品(大半は銅ですが)を大量に買い付けているものです。
ちなみに同月のチリの輸出は対前年39%アップ,輸入は16%アップ。貿易量全体で30%アップと,絶好調ですね。

2) チリペソは非常に堅調で,昨年12月が1ドル511ペソだったのが今年は525ペソです。ドルが世界的に弱含み,銅の価格が高値安定などがその原因とされますが、過去3年の国家備蓄の増大がされていなかったら,1ドルは400ペソ台まで落ちていたと考えられています。

3) 2007年の投資計画ですが、最大の投資金額になりそうなのはスペンセという鉱山で10億ドルの投資総額とか。続いて木材関係でサンタ・フェが七億ドル,3位はロス・ブロンセス鉱山のダム建設。しかしこのダムには反対意見が大きく,揉めつづけています。
大きい順に7つのプロジェクトで30億ドルの投資になるが、道路建設,電力発電用ダムなどもあり,チリの将来の命運を握るようなプロジェクトに育っていくのだろうか?
銅の値段が過去8ヶ月で始めて3ドルをきったのは心配事項ですが,05年の平均は1.7ドルでしたからまだまだ笑いが止まらない状態。従って巨額投資の中に銅鉱山関係が幾つも出てきます。

(一般)
1)地下鉄の新駅が開所
バチェレットが言わなくてもこれは確かに良いニュースですね。サンティアゴ市内の交通渋滞を解決する最良策の一つが地下鉄で,毎年,新線,新駅が増えて充実していきます。今回は第2線の北側に新駅が3つ。私の住むロス・ドミニコス地区で地下鉄工事が始まりますとの立て看板が最近出ました。もう少しの辛抱です。
ところでバチェレットは地下鉄側に終電を12時まで延長するよう指示を出しましたが,地下鉄当局はコストが高すぎると反対しています。欧州の都市では深夜にもメトロが走っているのですが。
2)海水浴の季節になりましたが,海岸の駐車代金が高すぎると問題になっています。来年1月からのそれは高い5州のサパヤールは1日6千ペソにもなるそうで、海水浴客の不満が聞こえてくるようです。
3)スペインの航空会社エアー・マドリッドが操業を中止しています。
で,可哀相にその航空会社の航空券を手にした乗客が飛行場にいっても便がありません、サンティアゴでスペインに出発できないのもかわいそうですが,向こうから戻ってこれない客はもっと悲劇です。安い切符にはこういう問題が隠れているのですね。ただし航空券を発売した旅行代理店の中には代金払い戻しをするところもあるそうです。

4)豪華客船の入港
チリの夏は他の国からの客船がやってくる季節ですが、今週ロビンソン・クルソー島に入った客船は,なんとその80%は個人客に客室を売っている船で(1室あたり3百万ドル!)それ以外の普通の客は1泊4000ドルとか。しかし世界にはそんな金持ちがいるものですね。


(スポーツ)
1) 今年のベストスポーツ選手の選定があり,サッカーのマチアス・フェルナンデスが選ばれました。ところが世界選手権で優勝した女子ローラースケートホッケーの選手たちが世界1になった私たちを追い抜いて南米1にもなれなかったコロコロの選手が選ばれるのは選考基準がおかしいとクレームしてもめました。単に金になるスポーツ,選手が大事なのか,世界的基準によるものなのかはっきりさせなくては。
2)さてサッカーの後期リーグの優勝はやっぱりコロコロでした。彼らはこれで前期後期の通年優勝となりました。南米大会の決勝は惜しかったけど,国内では無敵ぶりを見せ付けました。何しろ国内リーグでの25度目の優勝で,2位のチリ大学が12回ですからダントツです。
その夜,喜んだファンが車のクラクションを鳴らしながら町中を走っていましたが,興奮の盛り上がりはそこそこでした。やっぱり南米大会の惜敗が尾を引いている?


以上