チリの風  その231  07年7月9日―15日

チリの風  その231  07年7月9日―15日

首都サンティアゴは何年ぶりかの寒さで10日マイナス5度まで下がりました。不思議なことにその日一番寒かったのは7州のクリコで最南端のプンタ・アレナスはマイナス2度しかなりません。
隣りのアルゼンチンでも首都ブエノスアイレスに90年ぶりの雪が降り極寒です。自国内の天然ガスの供給も止まりがちで、チリ向け輸出に影響が出るのは避けられません。今年の冬は寒そうで、7月の残りと8月の間にサンティアゴの家庭向けガスが止まったら・・・大事件ですね
日曜日、大使館に行って参議院選挙の投票をしてきました。全国区と兵庫県の二つの投票をしましたが、どじを踏んで書き間違えてしまい、書き直し。年はとりたくないものです。


(政治)
1) バチェレットの人気の後退
しかし笑ってしまいました。新聞の日曜特集の記事に各大統領候補の人気の動きが発表されていました。各政党はこれをもとに協議を繰り返すのでしょうが、素人の私から見ると新聞社が政党、政治家をおちょくっているとしか思えません。選挙まで何年もあるのに、今ここである候補者の人気度が1ポイント上がろうと2ポイント下がろうと大問題じゃないのですが、それを新聞でさも大変動が起こっているように書くと読者も政党人も大反応するわけです。新聞社の主幹あたりはこのあたりを熟知しているのでニコニコしているのでしょうが。
バチェレットを指示する層が41%、反対するのも41%と並びました。これからこの数字が逆転していくのでしょうね。

2) やっぱり今週の最大の話題は先週から継続のピニェラ処分問題でしょうね。金融保険局がインサイダー取引としてランチリ航空の大株主ピニェラに罰金刑を課しましたが、今週の新聞では同様取引は少なくとも75件認められ過去何年もこの問題で罰金を課された例はないらしい。彼に対する罰金は正当と政府が主張するなら何故他の例では罰せられないのか説明がつかず見せしめとか政治的配慮で彼にダメージを与えるためおこおなわれた措置と考える人が増えています。

3) しばらく話題にならなかったチレ・デポルテ(スポーツ振興局)の汚職問題に光が当たっています。やっぱり政治家の名前が出てきました。スポーツ振興の名目で得た資金を選挙費用に流用していた実態が明らかになってきました。有力政治家の名前が出たら、大騒ぎになるでしょうね。
ところでDCの造反議員サルディバルは党の規律委員会に呼び出されましたが、全く動じることなく反論しています。党は彼を処分できるのか、それとも彼は他の仲間とともに新派、新党結成、もしくは他の党との合併を図る力があるだろうか?

4) フジモリ問題
問題が煮詰まってきました。以前検事がペルー政府の提出したすべての事項でフジモリの責任が認められるとし、彼のペルー送還を請求したのに対し、地方裁判所で全く逆に彼をペルーに送還するに十分な証拠はなかったとし、送還不要を発表しました。これがチリ裁判所の最終結論になるかまだ予断を許しませんが、一応チリ司法は彼をペルーに送らない方向に動きました。人気が急に落ちだしたペルーのガルシア政権にとって同国でフジモリを裁判にかけ刑務所に入れることは大きな時限爆弾を抱えるようなもので好ましくないので、この裁決を表向きは批判しながらホット一安心だろう。ペルーと事を構えたくないチリ政府は司法は独立した機関として一切の責任から逃れホット一安心だろう。当のフジモリもペルーでもう一旗上げる計画が実現不可能の空気だけにチリで無駄に時間をつぶしているより日本で参議院に入れればこれ以上の幸せはないというところ。もっとも彼が選挙に当選する可能性は低いと思うがどうだろう。
新聞報道では彼はチリにいながら、支持者に指示を出し、ペルー政界に影響力を行使しているとあったが、ホンマかな?
自信があるならペルーにいって勝負すべきでしょうが。


(経済)
1) 寒波の襲来はエネルギー問題だけでなく広範な影響を与えていますが、農作物では被害がなんと50%にも及ぶ品目が発表されています。アボガド、パパイヤ、チリモヤなどがその代表で壊滅的な打撃になっています。これはもちろん価格に影響し、スーパーマーケットに行くと、野菜果物の品不足と価格沸騰が一目瞭然です。
07年の物価上昇率は4%、来年になってやっと正常の3%に戻りそうです。

2) コデルコ銅公社と下請け労働者の間の争議は依然として継続され一部のマインでは操業が全面的に停止されています。損失は巨額になりますが、流血の惨事を避けるようにという指示がどこかから出ているのだろう、今の所、各マインの首脳は警察権力を使って力で労働者を排除することはしていません。

3) 小売業の変化
小さな商店が巨大資本の百貨店に圧迫されるというのは世界的な傾向ですが、チリ資本のデパートがペルーで大躍進しています。チリから進出の2つの百貨店が同国の百貨店売上の約90%をしめるとか?
ちなみに百貨店の売上が一般家庭の消費のどれくらいを占めるかの統計で世界1位は日本で6,8%、2位はアメリカで4,9%らしい。チリはずっと下の2.5%、ペルーは1%です。


(一般)
1) 冒頭に書いたようにアルゼンチンに寒い日が続き、自国内での天然ガスの供給に問題が出ている。つまり自国内に供給問題があることは隣国チリへ約束した量の供給が困難ということになる。このままでは7月末か8月に家庭向けガスの供給中止が起こる可能性があるらしい。これはトランサンティアゴ以上の規模の反発を呼ぶことは必至で、バチェレットのアキレス腱になることは間違いない。
先週はあたたかかったので凍死者は出ませんでしたが、今週はホームレの人間が数名死亡しています。
もちろんこれは社会問題だけなく経済問題で発電のためディゼル油を大量に使用しているのでコストが上がり6月の発電コストは前年同月の400%アップとすべての生産業に多大な影響を与え、経済成長の鈍化が心配されています。

2) しかし指名手配になっていた犯人が裁判所に出頭したら、どうなるでしょう。裁判所は書類を整え、警察を呼んで刑務所に護送させるでしょうね。ところが今週、サンティアゴでそれが起こりましたが、その裁判所は犯人たちが身分証明書を所持していなかったので本人と確認できないとし逮捕しませんでした。これにマスメディアが反対の声を上げ大騒ぎ。最高裁判所も反応せざるをえなくなって、その裁判所に調査官を送り調べた結果、該当裁判官の処分を発表しました。これまで警察が犯人を捕まえても回転ドアのように即日自由になるとからかわれていましたが、今回はそれを超えて犯人の逮捕を拒否したわけです。しかしどういう考え方をしているのでしょうね、チリの裁判官って。最高裁判所長官が渋い顔をして、裁判官が足らないので、以前なら下積みを8年経験してやっとその職についたんだが、今はもっと若く第一線の仕事が回ってくる。で、経験不足からこういう不祥事が起こるんだ・・・。

3) 来週の月曜日は祝日ですが、この日を含め週末の3日、第1州の州都イキケからアンデス山脈の方に入った地区ラ・ティラナでお祭りがあります、何しろ700人が住む村に昨年は18万人。ことしは20万人を超える巡礼・観光客が来るらしい。
ここで3日間踊られるダンスはペルー、ボリビアと同じくいろんな面をかぶった男性と民族衣装的スカートをはいた女性のコンビで踊られ、彼らはブラジルのカーニバルのように疲れきるまで踊りまくっています。
ホテルなんかほとんどないので、テントを張っての自給生活。それほどまでしてその日その場所で踊りたいのですね。やはり熱狂的な人はそんな困難を犠牲とは思わないんでしょうね。


(スポーツ)
1) 同じサッカーの話題でも大人のナショナルチームと20歳以下のチームでは内容が全然違う。
   20歳以下の世界選手権。 日本は惜しかったですね。対チェコ戦。2対0で勝っていたのに最終的に2対2で引き分け。延長戦の結果、最後にPK戦で負けてしまいましたが、日本の将来性を感じました。もう日本はサッカーの弱小国ではありません。
さてチリはポルトガルに勝って準々決勝に進出。ナイジェリアと対戦しました。規定の90分は0対0で引き分け。延長戦に入りました。そして延長の30分で何と奇跡的な4対0の勝利。チリは準決勝はアルゼンチンと対戦です。ひょっとすると優勝?しかし国民の喜びようったら。
   一方大人のナショナルチームの方はアメリカップの惨敗のあと、チリに戻ってきた選手を待っていたのは大量処分でした。監督は自発的に辞任。レギュラーの6選手が国際試合20試合の出場停止、さらに金銭的にはこのカップ出場による給料の全面カットになりました。
   もちろんこの後もこの処分は尾を引いて、再処分(再考)があるでしょう。後任の監督は何人かの有力候補が出ていますが、未確認です。

2) ところでブラジルでパンアメリカン大会が開催されました。これはアメリカ・オリンピックですね。
   最初に二日の結果はアメリカがメダル獲得数でトップ、当然かな、2位がメキシコ、ホームのブラジルは7位。チリはメダル2個で13位でした。ちゃんとチリもメダルを取っていますね。よかった。


以上