チリの風  その232 07年7月16日―22日

  チリの風  その232 07年7月16日―22日

21日朝のマラソン練習の後、私たちはプロビデンシア美術館にロシアのシンボルのアイコン(イコノ)展覧会に行きました。そこで宗教美術を見ましたが、アパートに戻るとき雨が振り出し、そのまま午後の間ずっと雨でした。
翌朝、またマラソン練習で山の方に走って上がると、いつもは頂上だけの雪がふもとまで真っ白にし、道路の水溜りはうっすら凍っていました。それでも汗をかくまで走りました。冬が寒いのは当然。子供は風の子でなければ。あれっ、風の子って15歳くらいまでだったかな?
今週の最大の話題はスポーツか政治の問題かわかりませんが、トロントでU20のサッカー選手権に出場中のチリ代表選手団が警察に殴打、逮捕される事件がありました。与野党の国会議員を中心にこれは南米蔑視、人権問題として国際機関に訴え出ようとする騒ぎになっています。


(政治)
1) チリは隣国アルゼンチンに比較すれば格段に汚職の少ない国ですが、それでもこの1―2年政界の汚職事件が目立っています。今週はなんと刑務所を管理する刑務庁が政界に献金(給料)を払っているのが明らかになりました。名前の上がった国会議員や各国大使の大半はその頃法務省の仕事を種々手伝っていたのでその報酬を受けたと白々しく言っています。その中でバチェレット大統領の娘の名前が出ています。刑務庁が彼女に奨学金でも出したのかな?
政府は週末の間に対策を整えるのか、新聞報道の後、バチェレットを含め沈黙を守っています。
もう連立政権の最後の日が近いという感じで、国営テレビTVN(日本ではNHK)の新ダイレクタ―を政府が指名したところ、国会でそれが否決され面子まるつぶれ。コデルコの労働争議も時間が立つばかりで解決の目途がたたず、政府内部でコデルコ執行部寄りと労働者側の二派に別れぶつかっているとか最悪事態です。

2) バチェレットは野党のピニェラを批判して政治と企業家活動を両立させようとするのはモラルが足りないと厳しくコメントしましたが、新聞報道では22人の現政権関係者のうち、会社経営に全く関与していないのは8名だけとありました。大統領は自分の陣営の管理も全く出来ていないことが判明。苦しい。

3) ボリビアが思い切った手を打ちました。チリのルクシック・グループが経営するチリとボリビア間を結ぶ鉄道の国営化を発表です。どのようにその国有化を実行するのかな?

4) サンティアゴイギリス大使館で爆弾騒ぎ
人通りの少ない夜間を狙って同国大使館に爆弾がしかけられました。幸い被害はありませんでしたが、この先、同犯行グループが何を考えているのか調査中です。
チリのサッカーチームが警官に暴行されたとしてカナダ大使館に国会議員を含む抗議グループが押しかけました。こっちの場合はチリの警察はカナダ大使館を警護しています。


(経済)
1) しかしチリ経済が活発なことはこういう資料からでも明らかになります。ラテンアメリカの企業ランキング上位500社に入った会社の数をチリはこの数年毎年増やし、ブラジル、メキシコについで3位となっています。しかも04年には48社だったのが06年は63社と急増中。ライバルのアルゼンチンは国の経済規模はチリよりずっと大きいのにそのランキングに41社しか顔を出していません。
ところでチリで最大手の会社はコデルコ銅公社、2位は同じく銅鉱山のエスコンディダ、3位は石油のコペックです。
相変わらず銅関係企業が上位ですが、そのコデルコは下請け労働者との争議が未だに解決せず毎日巨額の損失を垂れ流しています。

2) チリの貿易国ランクで変動がありました。今年上期のチリからの輸出先1位は中国で16%、2位がアメリカ14%、3位が日本で10%でした。中国はしかし購買力がありますね。一方輸入先では1位がアメリカ16%、2位がアルゼンチン11%、3位がブラジルと中国で10%。日本はその他に入って名前が出てきません。チリは日本に製品を売りつけながら日本からの輸入はほんの少しなわけです。

3) チリの大手銀行バンコ・デ・チレがアメリカのシティ・バンクと合併に向けて話し合い中で、どうやら合意に達する見込み。じゃ私のチリ銀行の口座は世界のシティ銀行の支店でも使えるわけか?国際化に向けて悪い話ではないですね。


(一般)
1) 大気汚染
  毎年冬になると、大気汚染の問題と病院の麻痺問題がクローズアップされます。もちろんそれは連結している問題で、大人は一日約12000リットルの大気を吸入するらしいが、それが汚染されていると気管支系の故障を起すのは当然です。アルゼンチンから天然ガスが以前のように入ってこないので、その代替としてディ―ゼルオイルを工場が使用するため大気汚染が一段とひどくなっているらしい。準非常事態日は05年の3倍、危険日がその年の5倍という数字になって表れている。どうするバチェレット!

2) チリで最もすみやすい都市のランクが発表されました。何と1位はプエルト・バラス。この4月に私たちは訪問していますが、確かに良さそう。そして2位はプンタ・アレナス。チリ最南端のこの都市は汚染が少なく失業率が低く、平均給料が高く、平均寿命がトップクラスらしい。しかし仕事でここには数十回行きましたが、冬はもう3時には暗くなって翌朝10時まで太陽は出てこないし、雪や風の強さはハンパじゃないです。
続いてラ・セレーナ、コンセプシオン。首都サンティアゴは最低クラスの15位でした。フーム、そんな所に私は28年も住んでいるのか?
じゃ定年になればここを出て、南部の都市に移住かな?

3) チリのスポーツ人口
調査の結果、チリでは87%の人間が何もスポーツをしないことがわかりました。たった13%の人間がスポーツをするわけです。人口1600万の小さな国でその13%しかスポーツをしないのだから、チリのスポーツが発展しないのは当然です。政府は学校時代からもっとスポーツに親しむよう子供の教育をすべきでしょうね。
スポーツから離れた理由のトップは子供が生まれたからとか。

4) ハリーポッターの最新刊が売り出されました。世界的な現象のようですが、チリでも本屋の前に長い列が出来、その中には主人公の服装を真似た若者がいたりして、ブームというのはすごいものですね。

5) ブラジルのサオパオロ空港で航空機が着陸に失敗、炎上し乗客全員が死亡する大事故が起こりましたが、空港の安全性ランクで世界のトップ10はアジア、欧州がほぼ独占し、アメリカの空港は一つも入りませんでした。さらにラテンアメリカの空港は国際的には最悪ランクで、世界平均の3倍の事故を記録しているらしい。南米の空港の中では安全性の高い順として1位、ブエノスアイレス、2位リマ、3位サンティアゴとなっています。


(サッカー)
1) アメリカオリンピック
   前回は金メダル2個で終わったチリが今回は既に4個と好調で、第9位につけています。アメリカ、キューバ、ブラジルは別格にしても5位か6位くらいに入れても良いはずですが・・・欲をいえばきりがないか。

2) サッカーU20世界選手権
   木曜日の準決勝対アルゼンチン戦の前はチリ人のなかでこんな結果になると想像した人は一人もいなかったのではないかと思います。試合に敗戦したばかりでなく、試合後ホテルの戻るバスに乗る際、警察ともめ、バスに乗り込んでいた選手もバスから下ろされ留置所に。その際、警棒で殴打されたり、電気の通った棒で電気ショックを受けた選手も出ています。一緒にいたサッカー連盟の代表もこの警察の乱暴の犠牲になっています。トロント警察のコメントはチリ選手団が警察の指示を守らなかったのでやむをえない処置としています。
   しかしその試合、今まで無失点を誇ったチリが3点を喫する惨敗でした。その原因は2名の退場者が出て、数的にハンディキャップを負ったためで、全くアルゼンチンに歯が立たなかった試合内容ではありません。とくに1対0で負けている段階で、チリの選手の放った超ロングシュートは前に出ていたキーパーの頭を超え、飛行距離はピッタリだったのですが僅かに角度がそれゴールポストをかすめました。アレが入っていればこの大会のベストシュートだったし、同点になってその後の試合が変わっていたのですが・・・惜しい。
   そして最終日、オーストリアとの3位決定戦。危ない場面もありましたが、キーパーの好守もあって無失点におさえ1対0で勝利。世界3位で大会を終えました。チリに戻ってくればもちろん英雄扱いですね。

3) ヒマラヤの8千メートル峰ナンガパルバットを目指していたカトリカ大学とサンティアゴ大学山岳隊は登頂に成功しました。エベレストを筆頭とする14の8千メートル峰のうち既に10峰に登頂しているチリの次の目標は第3位のカンチェンジュンガです。

4) スキー場のホテル
   サンティアゴ近郊のスキー場のホテルが予約で満杯だそうです。で、なんと予約の65%はブラジル人とか。昨年対比35%もブラジル人観光客が増えたとかで、彼らも金回りが良くなったのですね。しかし大半のブラジル観光客はスキー場に来てもスキーが出来ないらしい。


以上