チリの風 その108 05年1月16日―22日

この週はバケーション中で、アルゼンチンのウシュアイアに行っていました。夏とはいえアメリカ大陸最南端の都市は、夜とは言わず日中から暖房が入り、さすがにサンティアゴの32度の気候とは違いました。ちゃんとまた旅のレポートを書いてこのHPに掲載します。


(政治)
1)人権問題
チリのニュースのトップは人権問題ということが多いですが、今週のトップは、軍事政権時代の秘密警察(DINA)の中堅幹部だった人間の自殺でした。彼は左翼系人間の拷問虐殺に直接関与したとして裁判中でした。彼の遺族を休暇中の陸軍司令官が訪問し、慰めの言葉をささげています。
それだけでも一面トップのニュースなのに、なんと彼の娘が新聞に次の投書をしました。
「私の父は73年の軍事革命が起こった時、ほんの27歳の若さで、陸軍中尉でした。・・・・」
彼は自殺する前、家族に自分のおこなったことを告白しているそうですが、新聞の投書はさらに続き、「父はその後、秘密警察への移籍を命じられました。一人の軍人として、常に命令に服従し、その内容が自分の意になじまないものであったにせよ、実行していったのです。被害者側の人たちは父にすべての責任があるように言われます。その考えを、私は理解しながらも、娘として、父は上層部の命令を実行したに過ぎないと言わせてもらいたいのです・・・」
これはまだまだ尾を引くでしょう。

2)ピノチェットノ隠し財産事件
アメリカ政府は、彼がアメリカに持っている口座としてバンコ・デ・チレ(チリ銀行)のマイアミとニューヨーク支店を捜査。
これはさっぱり進まない彼の隠し口座問題をうやむやにさせないためのアメリカからの応援でしょうね。もしくは正面切ってピノチェットをたたけないチリ側がアメリカの外圧を要請したのかもしれない。

3)ラゴス大統領は現在エジプトなど外遊中ですが、彼の動向がトップニュースになりません。やっぱり彼の外遊は地味なのか、あまり値打ちが無いとメディアに見られているのか。
同時期、アルゼンチンの大統領もフランスなど欧州外交に出かけていますが、向こうの新聞はちゃんと一面トップで報道しています。

4)それよりチリ国内では、次の大統領選挙が盛り上がってきています。社会党系の候補に続き、キ民党の候補がアルべアルさんに決まる。彼女の陣営の最高責任者に首都圏知事の人間がなったことから、与党内の統一候補をどちらの女性にするか、そして選ばれた一人は与党統一候補のラビンに勝てるか・・・がぜん、盛り上がってきました。
そのラビンも彼女たちに対抗して女性票を起こすこと、また女性の力をもっと自陣に活用することなど明らかに方針を変えてきています。

5)ラバンデロ議員幼児性的いたずら事件
しかしその上院議員も粘る。普通ならこれだけあからさまに自分の異常性的嗜好を暴かれると大人しくなるものだが、彼の場合はなおも無罪を主張して奮闘中。チリ人の間でもこの事件は話題になる。一般には彼の無罪を信じる人は少ないが、彼を訴えている少女たちの母親を攻める声が高い。それは彼の異常性癖を知りつつ自分の娘を彼の家に送り出し、子供がお小遣いをもらって帰ってくるのを、認めていたということ。それは最近のことだけではなく、もう20年、30年も続いていたのだから。

6)クスコの落書き事件
つかまった二人のうち、一人しか落書きはしなかったというのに、なぜかまだ二人とも収監されていおり、仮保釈に何百万円を払えといわれている。ペルーではこんなに高い保釈金は他に例がないらしい。
チリ対ペルーとして、向こうが考えているのなら、チリ政府が本腰を入れなければいけないのだが・・・。


(経済)
1)サーモン関連
もう既に何度も警報がでているが、チリ産サーモンが欧州になだれをうって流入し、市場を席捲しているとして欧州産鮭の保護のため特別関税の適応が検討されている由。
チリ側では、それでは何のための自由貿易交渉だったのかと、欧州側の態度を疑問視する声が高い。
昨年10月なんか、前年対比60%アップだったらしいが、ふーむ、これは確かに異常な数字だ。

2)セリロース工場一時閉鎖
首黒白鳥がたくさん死んだ事件から環境汚染に関連して疑いをもたれていた工場が一時閉鎖の処分を受けました。
もくもくと白煙を上げていた工場が静まりかえっています。一日の損害額は1億3千万ペソとか。しかしこれで本腰を入れて環境対策にあたるだろう。そうか工場が止まってしまえば、原材料、製品の運送をするトラックが止まり、タイヤの売れ行きに影響する。そうか、私の商売に関係しているのを感じてしまう・・・


(一般)
1)ツナミ事件
アジア津波で20万人以上の被害者がでていますが、あれはチリにとってショックな出来事でした、決して他人事でないとして。
で、今週第八州のタルカワーノの周辺で、津波がくるという噂が流れたとき、1万人以上が山に非難し、そのときの騒ぎで一人ショック死しています。
消防署がサイレンを鳴らしたといわれますが、それも避難しているグループが他の人にも知らせないといけないと、消防署に入ってサイレンを鳴らすように要請したからとか・・
アルゼンチンのテレビでもこの事件はニュースとして流れました。

2)サンティアゴのメイン道路、アラメダの補修工事が始まって2週間たちましたが、なんと死者2名を含む10名の重軽傷者がでています。混み合ったバスの間を無理に向こう側へ渡ろうとする歩行者がバスに轢かれるのですが、連日テレビで放送されても事故は減りません。チリ人には交通信号を守る、信号のあるところしか道を渡らないという感覚はありません。
それに関しては、私ももうチリ人ですが・・・


(スポーツ)
1)サッカー
いよいよ公式戦が開幕。コロコロやカトリカの有力チームは開幕戦を楽勝しています。一方、コロンビアで行われている20歳以下のオランダで行われる世界選手権への南米大会でチリは予選を勝ち抜き、決勝リーグに進出しました。
来週から決勝リーグ、さてどうなるか。

2)テニス
4大カップの一つ、豪州トーナメントに参加したチリの2選手は良いところなく敗退。それどころか、その一人マスが負傷してしまい、これからのトーナメントの参加も疑われる次第。モスクワであるデービスカップの世界リーグ戦もマスがいないのでは勝ち目が無い。


以上