チリの風 その109  05年1月24日―30日

しかし驚きました。連日30度を超える暑い日が続いていたのに、29日の土曜日、昼から急に天気が崩れ、その日、私は日本人学校でサッカー教室をしていましたが、夕方からなんと雨になりました。今年初めての雨でした。これから秋に移っていくという兆候でしょうか?天気予報では二三日すれば再度30度を超える日に戻るだろうとのことですが。


(政治)
1)しかしすごいですね、政治が。国が動いているのが感じられます。
 人権問題で裁判になっている356件について、最高裁判所は最長6ヶ月で審判を下すと発表。話題を呼んでいます。裁判に時間がかかりすぎるとのラゴス大統領、チェイレ陸軍司令長官の談話に関連してでしょう。
 さて軍事政権時代、闇の部分を取り仕切っていたのがCNI(諜報部門)とDINA(秘密警察)ですが、その両方の元長官が今週懲役刑に服することになりました。
 そのDINAの元長官コントレーラスは既に別の事件で服役した経験がありますが(1995年)このとき彼は司直の手を逃れ、陸軍基地や病院に入り、なんと4ヶ月も逃げまくりテレビドラマを独演しているようで国民の目を釘づけにしました。時の大統領フレイは陸軍司令長官ピノチェットのお許し?を得て、元DINA長官のための監獄を準備しなければならなかったほどです。
 今回、陸軍は辱めを感じさせない配慮をお願いしたいと要請しただけで表立った動きは見せず、彼個人は自宅にきた警察関係者にピストルまでだして抵抗しましたが、多勢に無勢、無事逮捕劇は終わりました。
 今まで軍高官が人権問題で逮捕されても、軍の基地内で拘留とか、プールのついたホテルのような施設に拘留されるのが普通で全く通常の犯罪人とは異なった待遇を得ていますが、今回はどうなるのかな?
 コントレーラの息子がチェイレ陸軍司令長官を裏切り者と口汚くののしっているが・・・、これは来週にも尾をひくでしょう。

2)その昔、陰に陽に彼をかばったピノチェットは今は自分のことが精一杯で、例のバンコ・デ・チレ(チリ銀行)の口座問題でも劣勢です。一方、アカウント管理の不備を指摘されているそのチリ銀行側はアメリカ政府の攻勢に必死の応戦という感じで、罰金は避けられないだろが、アメリカでの銀行免許を剥奪されなければ良しとしようとしています。
ピノチェットがメイン・バンクとしていたリッグス銀行はピノチェットの隠し財産について調査の打ち切りと引き換えに1800万ドルの罰金を受けたらしいですから。

3)さて先週自殺したDINA高官の娘の投書が新聞に掲載されました。
「父は軍人として、任務を全うするより他なかった。また彼には妻と子供があった・・・」
それに対応して今週、全く違った投書がのりました。
「私の息子は革命が起こったとき23歳でした。彼は警察軍の中尉補でした。彼は人権問題に関して上司の命令を遵守しませんでした。彼は逮捕され拷問を受けました。また私の夫は同じく31年間の軍務期間のあと、上司の命令をそれは同胞の取り扱いとして適応ではないと拒否、息子と同じ目にあいました。それだけでなく我が家まで家宅捜査が入っています。
さらに息子は現在厚生年金を月98000ペソ受けていますが、同期に入った人たちはその金額が100万ペソ近くになっています。
つまり上司の命令だったから、同朋の拷問殺害を拒めなかったというのは大義名分にはならず、正義で生きていこうとした陸軍、警察関係者も人権問題の被害者になっていることを知ってもらいと思います」
もちろん、この論議はこれからもはてしなく続くでしょうね。

4)大統領の人気について
中南米の各国で大統領の人気を調べると一番評価の高いのはパナマ大統領で80%、ついでコロンビア大統領が74%、3位がアルゼンチン、チリのラゴス大統領は4位で66%の支持率。最悪はペルーのトレドで8%。気の毒。

5)ブラジル、アルゼンチンを訪問したスペインの大統領が水曜日24時間だけですが、チリにも立ち寄りました。忙しいスケジュールの中、社会党系の大統領候補バチェレットと15分会談。3月にスペイン訪問を招待したらしい。
政治の世界もイメージの世界。世界中にお友達がいるというのは大事なことですから・・・
そのサパテロ大統領はチリのサーモンに特別関税をかけるという欧州の動きに同調しないと、チリサーモン擁護を表明しました。ありがとう。

6)毎週の話題になっているラバンデロ上院議員ですが、幼児性的いたづら事件に関連して議員資格剥奪の決定がありました。もちろんこれは調査を尋常に行える権利が出来たということで、有罪になったというわけではありませんが、彼にとって厳しい風であることは間違いない。いつまで強風に耐えて強気の姿勢を保てるのだろうか?


(経済)
1)物価上昇率 
04年のIVA(物価上昇率)は2,4%になった由。

2)失業率の上昇
経済の好調と相反して失業率が下がりませんが、これは、女性、若年労働者の市場進出のためと説明されています。チリ国全体では04年12月に9.2%でしたが、首都圏ではこれが12.1%にもなっています。
国際機関の発表ではチリの成長率はこの先2年くらい(05年5.5%、06年5.1%)は中南米のトップを維持するだろうと見込まれています。

3)中高年労働者の雇用について
上記に関連しますが、日本だけでなく、チリでもこの話題が出るようになってきました。現在65歳以上の人口は180万人と、全人口の12%弱ですが、3年間で0.5%のアップとこれから高齢化は避けられません。で、その中でまだ仕事についているのは26%だけ。彼らの評価は若年の労働者より経験があるだけ失敗が少ないと事業主には好評の由。私もひとごとのようなことを言えませんが・・・

4)投資国
チリへの投資を最も行っている国は今までアメリカ合衆国と決まっていましたが、スペインが投資合計でわずかにアメリカを抜いてトップに踊り出ました。最近、スペインの進出は著しく、電話、水道、高速道路など多範囲に及んでいます。


(一般)
1)環境指数
イェ―ル大学などの研究結果として世界各国の環境指数が発表になりました。水、空気、土壌、ごみなど21項目を指数で表すもので。チリは残念ながら世界は146か国中の42位。中南米ではウルグアイがトップ、チリは10位にランクされました。確かに水、空気などの汚染はひどいですからね。
これについて、02年の調査ではチリは32位になっており、他国が環境改善を行ったからチリのランクが落ちたのではなく、チリの努力が足りずにランクが下がっているとして、最近、セルローサ工場が一時閉鎖になったことを例にして政府批判の声も聞こえている。


(スポーツ)
1)20歳以下の世界大会南米予選
コロンビアで南米予選が始まり、チリは予選を突破したことは先週お知らせしました。今週は決勝リーグが始まり、チリは今のところ1勝1敗1引き分けで4位を確保。何とかオランダの大会に行けそうな雰囲気。(南米から4チームが出場権確保)
べネスエラとの戦いは3対2で勝ちましたが、見ていて興奮するほどの良い勝負でとくにチリの3点目、選手全員の熱気がテレビを通じて伝わってきて、攻撃をかけ始めた時点から、これは得点につながると確信しました。で、見事にチリのゴールが決まると、深夜でしたが、たまらず私はアパートの窓をあけ、世界の皆さんに向かって「ゴ――――ル」と叫んでしまいました。

2)スポーツとは関係ないけど、サモラーノが結婚しました。アルゼンチン人のモデルと。しかし1年前の破局の後、急いで子持ちの外人と結婚する必要があったのか不思議です。
その彼が申請したスポーツ大学が文部省の認可をえたと新聞にのっていますが、事業家の彼は次の目標は大学ですか・・・

以上