チリの風 その130 05年6月20日―26日

最低気温がマイナス1度なんて日があったのですが、冬至の日を迎えた今週、最低10度、最高19度の日があってもう冬が終わったような暖かさでした?
もちろん、そんな暖かさが続くわけはありませんが。


(政治)
1)政治と経済の癒着というのは天下りなどと言ったりして世界中どこにでもある問題ですが、今回のチリでの問題は大統領の周辺から与党の政治家に飛び火して、あちこちから煙が出ています。日本でいうと火の無いところに煙は立たないですが・・・。
その中でもコデルコ(国営銅公社)問題が目をひきます。最近の銅価格の高騰で利益が上がって上がって隠し様がないようですが、それを自分たちの仲間で分けてしまおうというのが問題の根幹でしょうか。(冗談)
政府は野党が「現政権もコデルコもモラルにかける」と大声を出している事に関し「軍政下、人権問題を含め、その政治姿勢にはモラルのかけらも無かった。その人たちがここにきて、私たちに対しモラルがないとはどういうことだ」と反撃しています。
軍事政権時代、コデルコの不透明さは現在の比ではなかったと言う訳です。確かにそれは正しいと思いますが、それは自分たちの不正を正当化するおまじないにはならないと考えます。まぁ先週、私が書いた右翼も左翼も同じという範疇でしょう。
しかし自分の兄弟が怪しいとされているラゴス大統領夫人が、公共事業省の不正問題がはっきりしないからこんな事態を生じている。これはもう2年以上調べているのに結論を出せない裁判所の怠慢のためだと発言。やつあたりの対象になった女性判事は、私の仕事振りにご不満がおありなら、裁判所の上層部にお話されてはいかがですかと冷たい姿勢。さてこの先どうなるのか
コデルコは国民の不信の目をそらすため、現行契約について特に疑惑をもたれているコンサルタント契約など第3者に調査させることを発表。
またそれらを徹底的に追求するため国会で特別委員会の設置要求が野党から出たとき、政府はラゴス大統領が先頭に立って、その設置をボイコットしようとしましたが、なんと1票差で設置が決定。与党側の人間で投票時欠席した議員に懲罰を加えるかどうか検討中とか。いやはや。
まだまだ出るでしょうね、この種の不可解契約が。役に立たない形だけの短いレポートを書いて巨額の報酬を得ている人間(会社)のリストが目に見えるようです。
元外国大使が世界の情報をコデルコに提供して報酬を得ていたなんて笑ってしまいます。昔の大使が作ったそんな会社に世界の動きを聞くより現在の話を各国大使館から出させればよいだけの話・・無料で、ねっ。

2)アルゼンチンとの問題
現在、70年代後半のチリ・アルゼンチンの国境問題を扱った映画が封切りになっています。(私の最良の敵というタイトル)
ところで今週ロンドンで82年のフォークランド戦争を扱った本が出版されました。それによるとイギリスはチリの協力を最大限に生かし、戦場と本国との遠距離のハンディ・キャップをカバーしアルゼンチンとの戦争を有利に終了させたとなっています。
まぁそれは誰でも知っていることですが、本になって詳しくその協力関係があからさまになると当然チリとアルゼンチンの関係がギクシャクします。
当時ピノチェットを頭とする軍事政権の責任者の一人だった元空軍長官のマテイはその頃、どの国もチリに武器を売ってくれなかった。したがいイギリスから武器の乙波があり、その見返りにチリの応援を要請されたら、私たちでなくてもその要請を受けたに間違いない。さらに実際チリはアルゼンチンの武力介入の可能性を危惧していたのだから・・・。(イギリスからの武器の値段は市価の半額くらいだったのでしょうね)

3)大統領選挙
全く意外ですが、盛り上がりません。今週話題を読んだのは次の事件くらい。
政府が選挙運動をじゃましてはいけないのでエイズ・キャンペーンを選挙が終わるまで延期すると発表したところ、野党側の候補のみならず、与党側の候補からもそれとこれを混同するのはいけないと反論があった。それを受け政府はみなさんの忌憚のない意見を聞けて喜ばしいとし9月からエイズ・キャンペーン実施を発表。
これも深読みすれば盛り上がらない世論を盛り上がらせるために仕組んだ芝居と見えるがどうか?
政府側では金を使って選挙運動をするのは馬鹿らしい、新聞テレビなどメディアがどんどん盛り上げるべきだと考えているのでしょうね。どうせ与党側の勝利に終わる選挙だから余計な費用は使いたくないとする姿勢が見えています。

4)元アメリカ大統領のクリントンがチリで行われたシンポジュームに出席。自家用ジェット機で到着ですから、すごい。彼が現職大統領のとき、サンティアゴに来て、街角で急に喫茶店に入って周囲が大騒ぎになったのを覚えています。

5)我らがピノチェットは入院です。ある朝、会社に行くため、七時頃陸軍病院の前をバスで走っていると門の所に報道陣がたくさんいましたが、それは前夜、彼がめまいがしたとかで入院したからでした。しかし隣国アルゼンチンにも彼の隠し口座が見つかったらしいが、いつまでこんなあやふやの状態が継続するのかな。

(経済)
1)今週もめた話題としては最低賃金の改定が国会で承認されたことでしょう。12%を2年に分割して上げるとする案ですが、最低賃金を市場でなく政府が決めるのは雇用者側としては受け入れられないと経営団体が反発。これでは新規雇用を促進する流れが止まってしまうとしています。この法案では今年7月から賃上げ第1弾として127500ペソ(3万円弱)になります。

2)例のセルロース工場はまだ閉鎖されたままです。いつまで?
ところで鉱山関連ですが、今まで話題になっているバリッグ社の金鉱山の始業はまだ決定されていません。この鉱山会社すごく宣伝に金をつぎ込んでいますが、相当やきもきしているでしょうね。一方銅鉱山のほうも新鉱山の話が出ています。世界最大級の鉱山会社BHPビリトンがカラマの近くにスペンサー鉱山を開く予定。この最終決定は来月になりそうです。しかしチリの新規銅鉱山は終わりがないほど登場します。

3)株式市場が好調で、空前の人気で(そこまではいかないか?)株価はうなぎのぼり。今年に入って平均で15%のアップ。昔日本にもそんな時期がありましたね。そのため?ドルは580ペソを割って1ドル570ペソ代です。


(一般)
1)チリ北部地震による最終的死亡者は12名だったようです。また教会など主要建物の修復には1200万ドルの費用がかかると発表されました。
週末にもう一度、同じ場所で軽い地震があって、人々があわてるという場面がありました。

2)45名の死者を出したチリ南部のロス・アンへレスでの吹雪の下の死の行進の一次裁判結果が出ました。行進命令を出した幹部を始め数名に実刑判決。上級裁判所に控訴しなければこれが最終結審となり、その内の何人かは実際に収監されることになります。しかしチリの新裁判もやるじゃないですか、すっきり早くって。45名のうち、まだ一人の死体は見つかっていません。

2)犯罪の増加
最近の12ヶ月にチリ人の10人に一人は犯罪の犠牲者になっている統計が発表されました。経済が好調といっても犯罪の増加は困ります。軍事政権時代は貧しいが秩序があったということでしょうか?国中が貧しかったので、泥棒も入るところが無かったが現在は金持ちの住む地区に行けば、いくらでも取るものがある感じでしょうか?

3)ラバンデロ上院議員の子女性的虐待事件に判決
アメリカのマイケルジャクソン事件は劇的に全面無罪になりましたが、チリでは裁判所は良識を見せ有罪にしました。アメリカの裁判システムって素人には理解しにくいですが、まだチリのほうがましと言うことでしょう。新システムのおかげで裁判所にテレビも入って撮影していますから透明さは確かに最高です。
さて自分から有罪と認めると自首してきた犯人のように刑が軽減されるのか、彼は有罪と自ら認め、賠償金支払いにより裁判を終わらせようとしています。有罪判決が出た後、彼の弁護士の一人が、裁判を早く終わらせ、不当に重い刑がでないように同氏は心ならずも有罪を認めてしまったとコメントしています。まぁ嘘を言っているというのが嘘でしょう。確かにテレビのニュースで彼は相変わらず自分は無罪だと言い張っています。有罪になると議員を辞めることになりますから、彼に代わって先の選挙で次点だった人間が彼の任期中、議員を務めることになりそうです。
彼とすれば3000万円くらいの軽い罰金(弁償)刑で裁判を終わらせ、しばらく欧州にでもバケーションにでかけ、気分を一新したいところ。(冗談です)
それから刑期は5年と決まったのに、なにか保護観察処分のようなもので牢屋の中にいる必要はないと言われますが、何で?

4)インディへナの日
冬至の6月24日はチリではインディへナの日としてお祝いされます。チリには多様の文化が存在すると言うわけです。マプチェ、アイマラケチュア、ラパヌイなどの民族はチリの中でも良く知られていますが、その存在をきちんとチリ社会が認識しているとても思えません。イキケ近くのチラナのお祭りでボリビア風の踊りを参加者が踊るのはチリ全国に知られていますが。
それからマプチェの人はこの日を新年として祝う風習があります。またインカはこの日をインティ・ライミ(太陽のお祭り)として祝っていました。
ところでチリの北部の人は、チリ人かボリビア人か見かけのつかない人が多くいますが(当然です、昔から同じ種族だったのが単に国境が引かれただけ)その人たちがサンティアゴに来ると外人(ボリビア人とかペルー人)に間違われて冷遇されるケースがあります??

5)イースター島の人気
日本でもイースター島は良く知られています。もっともそれがチリ領というのは知られていないかもしれませんが。さて2004年の同島を訪れた観光客は24000人ですが、欧州から11000人、南米から6千人、日本から2千人とか。確かに日本人が目立つわけですね。リゾートホテルを開く案とか、まだまだ投資がされそうで、観光客が増えそうです。


(スポーツ)
1)サッカー
コンフェデ杯で日本がブラジルと2対2で引き分けましたが、衝撃的ですね。日本もそこまで行けるとは!他のスポーツ、例えば野球の世界大会で日本がアメリカと引き分けても、チリや南米の人は全く興味を示さないでしょうが(ベネスエラの人は除く)
サッカーですからね、チリ人も驚きました。しかも2対2ですよ。これは0対0なら一方的に攻められたのだろうとか言いがかりをつけられますが日本も2点入れているのですから互角の勝負。私も鼻が高いです。しかしそんなことでチリ人に威張っても仕様がないといわれそうですが・・・
20歳以下の世界選手権は2次予選に進出したチリですが、オランダに手もなくひねられて3対0で惨敗。帰国の途につきました。活躍したという印象よりだらしなかったという感じが強いのは悲しい。
国内リーグ戦のほうは、来週決勝戦ですが、勝ち残ったのはウニオン・エスパニョ-ラとコキンボと全く予想されていなかったチーム。つまりチリの有名チームは名前だけで実力は今ひとつということでしょう。

2)テニス
ATPの4大大会のひとつウィンブルドンでチリ人のゴンサレスが活躍。なんと準々決勝まできています。さぁ月曜日の試合にまだ勝ちつづけるか。

3)ゴルフ
女子USオープンで日本選手の活躍はありませんでしたが、チリ人のぺロがなんと2日目までトップでした。さすがに新聞の1面報道でした。最後はちょっと腰砕けになりましたが・・・(それでも23位で終了)

そうか、サッカー、テニス、ゴルフとチリスポーツの幅が広がるのは素晴らしい。


以上