チリの風 その128  05年6月6日―12日

Overseas SiteというHPがあります。世界各地の日本人が発信しているHPを集めたものです。チリの風もそれにリンクされていますが、それを見ると各国の様子が良く分かります。私にとって既に訪問したことのある国でも、まだ未訪の国でもその国の雰囲気が良く伝わってきます。一生懸命、こつこつと書かれている皆さんの努力が感じられます。私もチリの風を通してチリの現状紹介に勤めたいです。
雨が良く降る冬で、今週もかなり降りました。雨の日は暖かい事務所で、ゆっくり仕事をしたいところですが、そうもいきません。まぁ少しくらい雨に濡れるのは我慢しなければ。


(政治)
1 大統領選挙
動き始めました。最初は変な話。元私服警察軍の幹部だった悪いやつが捕まったのですが、そいつは自分の地位を利用して麻薬関係者と取引をしていたようす。その後彼は野党ラビン候補の護衛をしていたらしい。(別にラビンが麻薬関係者ということでは無いが)。これは彼を雇った側に問題あるのか、彼はラビンとどう接触していたのか(スパイとか?)問題になりそう。
ところで、私服警察のコントロールが出来ないなら日本のように制服警察と私服組みの一本化をすればよいのに。
さてそのラビンは公共事業省の不正汚職関連で政府は全く知らないふりをしているのは容認できないし、ある大きなテンダーでラゴス大統領の親戚がそれをとったのは職権乱用にならないかと大声を上げている。何でもその親戚は公共事業省関連だけではなくコデルコでも大きな契約をしていたらしくラゴス大統領の面目丸つぶれ。しかし大統領は強気に親戚といって契約を取れないというのはおかしい。テンダーでは一番良い乙波をしたものが勝つわけだとしている。
もう一人の野党候補ピニェラは人気投票ではまだ3位ですが2位のラビンに、君には勝つチャンスが無いから、ここで私に席を譲って大統領選挙を辞退してはどうかと発表。いやはや。この二人の争いは外から見ている私にとって実に興味深いものです。
 さて先週問題発言で話題を投げかけたDCの元チリ大統領のエイルウィンは全く方向を変えて、にこやかにバチェレットと写真に写り、全力で彼女を応援すると発表。政治の世界は本当にどれが真実でどれが虚偽なのか計り知れませんね。
DC元大統領候補のアルベアルはサンティゴ東部から上院議員に出馬することになりそうです。ちょうどそこは私の住んでいるところですが、私は白紙投票ですからね・・・。

2)ピノチェット
しかし我がピノチェットのニュースが少なくなりました。彼は不正蓄積、税金の不正申告、パスポートの不正申請、軍隊の武器製造工場の不正など幾つもの罪状で告訴されています。今週裁判所はその5つの罪状うち4つを訴訟に値する認定。さて罪状が確定するまで彼は生きているのでしょうか?

3)隣国の話
その1)パタゴニアの両国国境近くで道路の舗装が完成したのを記念してチリとアルゼンチンの大統領が面会しました。その場で、両国はお互いに問題を起こすのではなく問題を解決するために存在することを確認しました。
例の天然ガス問題もペルーのそれをアルゼンチンのものに加え、量的に十分なものにした上で、それをチリ、ウルグアイ、ブラジルに供給するという大国家計画を検討しはじめました。どうなるかな?
(チリは天然ガスをもらい、逆にペルーに電力を供給するバーター貿易を検討)
その2)ボリビアの大統領が国内から沸きあがった反政府の声に耐え切れず突如辞任しました。そして後継者が選定されました。すると道路を封鎖していたインディへナのおっちゃんおばちゃんがごみを片付けて元通りにしています。なんだか出来すぎた芝居のようです。大統領が変われば自分たちの要求が通るのか、前大統領はそれほどボリビアにとって不要な存在だったのだろうか?
影で動かす勢力の言うままに動いているようなボリビア国民が気の毒。
彼らは天然ガスの国営化を要求しているようですが、他に何を目標にしているのか伝わってきません。また天然ガスの国営化が、仮に出来たとしてそれをどう使うつもりなのでしょうか?南米で最も貧しい国と言われるボリビアで、その天然資源を有効利用しないなんてチリ人には理解できませんが。しかもペルー、アルゼンチン連合が出来てボリビアのガスは不要となったら・・・・。
さて12日、知人の葬式で教会に行ったら、ミサのとき神父がボリビアの平和を全員で祈りましょうといったのには驚かされた。いや悪いことではないけれど。国際的な神父さんですね。


(経済)
1)チリ経済の発展
05年の推定経済成長は6%と上方修正。これは4月が5.1%だったのが5月に6.3%と大きく伸びたことを受けての修正。
輸出の伸びは1−5月で前年対比20%の伸び。また鉱山業界は04年に6億ドルの税金を国庫に支払いましたが、05年はその2倍11.6億ドルが見込まれています。それも銅価の16年ぶりの高値安定を受けて、各銅山の収入が増加しその分税金の支払いも多くなるという素晴らしい図式。チリにとってこの世の春はまだ続きそうです。
5月の物価上昇率は0,3%となりましたが、これはガソリン価格の上昇と、それを受けてバス代の上昇が主な原因になっています。最近の12ヶ月ではかなり悪くなり2,7%になりました。

2) 自由貿易協定
チリとこの協定を結ぶ国が増えてきました。北米ではカナダ、アメリカ、メキシコ。欧州では欧州連合、アジアでは先週発表の国々と協定発効済み。
これに加え、年内に中国、さらに日本、インドを検討中。すごいペースです。

3)セルコ・セルロース工場
地震です。同社の主要弁護士が二人とも突然辞任。その翌日ジェネラルマネージャーが辞任。さらに続いて環境保全部長が辞職。会社はがたがた。それらの騒動の最後に唐突に、しかし自主的に工場閉鎖を発表。
もちろんこれは同社にとっての一大芝居で、恭順の意を表しながら、政府、裁判所から生産継続を認めてもらおうという高等戦術でしょう。これには従業員(300名)や関連会社の社員(4500名)の雇用問題が絡むとして、周囲の同情をひき、引き分けに持ち込む作戦に違いありません。
前にも書きましたが、私はタイヤ関連でこの工場に何度も訪問しています。もっとも中に入ったことは無く、工場の外で待っていてそこに木材を運んでくるトラックをチェックしていたのですが。現地の情報では工場の生産中止にもかかわらずトラックは木材の搬送を継続しています。当然でしょう、工場閉鎖といっても最終的な決定ではありませんから。
12億ドルの設備投資をしたこの工場は1日休むと25万ドルの損失ですからこの芝居も懐にもろに影響します。もっとも親会社はコペック石油会社を持つアンジェリーニ・グループですから倒産の心配は無いですが。


(一般)
1)サンティアゴ公共バスシステム
今年8月から先のテンダーに勝ったコロンビア資本のグループを中心にした新システムが導入される予定でしたが、これが10月まで導入延期になりそうです。しかしチリの運輸省も弱い。もしくは計画がずさん。システムの計画発表から、テンダー結果の発表、システム開始までちゃんとリードできないのだから。
これに対し現在路線バスの運行権を持っている昔からのバス業界が自分たちの運行権を剥奪するなら賠償金を払えとストをちらつかせて政府を脅しにかかり、政府はへなへなと言う図式です。情けない。

2)陸軍の死の行進
45人の行方不明者のうち44人まで死体が発見され残りは一人。

3)安い政府援助住宅に大量の欠陥
政府の発表では何らかの欠陥のある住宅は約6万軒らしい。で、その安いがぼろい住宅に住んでいる住民が欠陥住宅の前で政府に抗議している風景がテレビのニュースに良く出ます。汗水流して頭金を作り、何とか仮住宅から自分のアパートに住むことが出来たと喜んだのもわずかの期間で雨が降れば水が漏れる、上階のトイレの水が漏れてくる・・・と全く通常に住める状態ではないとクレームしています。そのなかでも特にひどい集合アパートは補修するより壊したほうが安くつくとし、政府は住民に100万円くらいを払うから出て行ってほしいとしています。で彼らは100万円では他のアパートは買えない。せめて120万円はほしいと要求しています。日本では想像しにくい状況ですね。
しかも政府関係者がテレビで彼らは被害者のような顔をしているが、彼らの半数近くはちゃんと毎月の支払いをしておらず、アパート代未払いで出て行ってもらうことになるはずだったのだからとコメントしていましたが、いやはや困ったものです。どっちが悪いのかな?

4)首都圏高速道路(北湾岸路線)が開通して大分立ちました。
今週のある朝、テレビのニュースを見ていると1台の乗用車が地下鉄の駅に向かって乗り入れて横転と報道されました???朝まで飲んで酔った運転手が高速道路の入り口と間違って地下鉄の駅に降りていったものらしい。
しかし階段を落ちていくとき、この高速は舗装状態が悪いなと思ったのでしょうね。

5)ランチリ航空
チリの航空会社ラン(LAN)はアルゼンチンに進出しましたが、先週から正式に運行開始。今年中にアルゼンチンの8都市とマイアミへ、来年中に欧州にも運行開始の予定。ただボリビア線は運行を当面運行を見合わせるらしい。当然。


(スポーツ)
1)サッカー
先週Wカップ南米予選でボリビアに楽勝したチリは今週、連続してホームでべネスエラと対戦。2対1と連勝になりました。これで今までの星取表は5勝5敗5引き分けと全くの5分になり順位は5位。後3試合でこの5分の成績を守れればドイツ行きの切符を何とか手に入れる可能性があるのですが。次の南米予選は9月です。
しかしこの連勝にチリ国中が沸きあがりました。久しぶりにサッカーを楽しめた感じ。
一方今週から20歳以下のオランダ世界選手権が始まりました。1回戦、なんとホンジュラス相手に歴史的な7対0の大勝。あまりの勝ち方に先が怖い。このまま勝ちつづけるのか、これが最後で負けてしまうのか。
同じ大会に出場している日本は初戦オランダに負けてしまいがっかりですが、まだまだこの先が楽しみです。

以上