チリのニュースが二つ日本のメディアをにぎわせたようですね。地震の話とロンの彫刻盗難事件。それはチリの風の中でふれてあります。
さて今年は本当に雨の多い冬で、サンティアゴは今週もほとんど毎日雨が降りました。チリの南部は従来から雨が多いのですが、首都サンティアゴはそれとは違い毎年そこまでしつこく雨が降らないのですが・・・19日の日曜日やっと青空が出ました。サンティアゴからメンドーサに向かう国境は雪で閉鎖されています。
(政治)
1)スウェーデンに出張、いや外遊か、していたラゴス大統領は地震のニュースを聞いてすぐに日程を切り上げ帰国。イキケに向かいました。そこに次期大統領候補の3人も集結。被災者援助を声を高くして叫びました。
さてその大統領選挙ですが、新参のピニェラが人気を上げてきて、野党側のもう一人の候補ラビンを追い抜き2位に浮上。トップのバチェレットととの差を縮めました(まだまだ差は大きいですが)
しかし人生は面白い、わずか2ヶ月前、誰もピニェラが候補になるとも思わず、彼は大統領選挙の準備運動ではラビン応援団の席も無かったのですから。
彼の実力を過小評価して冷遇していたラビン陣営は今ごろ悔し涙の毎日でしょう。適当な席を与えておけば良かったと。
2)一方、一番ホットな話題は大統領の親戚友人が国営企業と巨額の契約を結んでいるとの疑惑です。公共事業省の不正事件裁判に連続して、今週は大統領の奥さんの兄弟と政府関連企業(郵便局の通信業務の仕事などを受注)の癒着が問題されています。政府側は癒着などではない、正式のテンダーで公式に選定されたもので何らやましいことはない。この反政府キャンペーンは選挙目当ての嫌がらせで、この種の癒着は彼らの軍事政権時に目に余るものがあったと反論しています。まぁどっちもどっちといえるでしょう。私にすれば、右翼でも左翼でもすることは一緒と思いますがどうですか?大統領の周辺から高級官吏の周辺まで煙は拡大しています。
さてテンダーをして勝ったのだからやましいことはないというのは間違いです。テンダーをしてもその業者選定の基準がはっきりしていなければテンダーを開かず決めたのと大きな差はありません。コデルコなどではテンダーの乙波を受理するとき当社と個人的な関係はないか聞かれます。例えば営業部長の家族などがテンダーに参加していれば、それ以外の業者より信頼が置けるとして勝つ可能性が高いはず、やっぱりどこかで歯止めが必要でしょう。おまけに問題視されているコデルコと結ばれた契約の大半はテンダー無しで決定されていることが明らかになってきて、政府発言は事実と違うのがばれてきた。
大統領は奥さんに、「ねぇあなた、(私の弟の)ロベルトがスペインの会社に働いているんだけど、そこが今、チリ郵便局に郵便物がちゃんとついたかどうか調べるシステムを乙波しているの。ねっ大事なことでしょ。年間百万ドルで5年契約だからたいした金額じゃないんだけど、考えてくださる?」なんて言われたのでしょうか。
しかし政府内では毎日大変でしょうね。どこまで不正を認めるか、どこまでばれそうか、本当に他に不正なことはないのか、相手側より先に情報がほしいでしょうからね、他の仕事をしている時間はなさそうです。
3)裁判システムの改正
私は全くの素人でどこがどう変わったのか良く分かりませんが、この16日から首都圏の裁判システムが変わったそうです。その前日、新裁判所に関係者が集まり、深夜12時になったところで大喜びをしていました。なぜ深夜の12時から新システム開始なのか翌日9時からではいけないのかわかりませんが、大騒ぎ。で、この改正で裁判が公正、迅速、透明に行われるらしい。つまりその日の前まではのろくて不公平で不透明なところがあったことを意味するのだろう。昔、犯人を捕まえ、警察に引き渡したことが何度かありますが、その後の裁判で何度も泣かされました。私をまるで犯人のように扱うのですから・・・???
(経済)
1)銅価格
毎週、同じような事を書いていますが、それは同じ事を言っているのではありません。今まで10年ぶりの高値とか15年ぶりの高値とか言っていましたが、今週はなんと歴史上3番目の高値となりました。まるで世界選手権で戦っているようです。で、銅プライスの上昇はチリ経済にとって大きな貢献になるわけで、日本風に言えば神風。これを上手く利用しない手はありません。
今から2年半ほど前、チリ経済は不調のどん底で失業者があふれ政治批判があふれていました。それがアメリカの低金利政策と銅価格の急騰に助けられ(1ポンド60セントだったのが今では166セント)、なにしろ経済状態は過去30年で最高と言われる状態になり、経済は順調というより快調のペースで走っています。
しかし原油価格の上昇も著しく、このままでは1バリル60ドルを越えるのではないかと心配され、また天然ガス問題のように基本的なエネルギー問題をかかえています。つまりチリのような小さな国では自分たちの国の努力だけでは不十分で、各国との自由貿易協定締結の努力のように最後には外国からの風つまり神風が必要ということになります。
(一般)
1)少し前、陸軍の死の雪中行進が話題になったら、今週は地震と暗い話題が続き、チリにいい話は無いのかな思ってしまいますが、地震はチリの責任でもないし、日本でもなじみの問題ですから、しょうがないですね。
なんでも昨年のインドネシア大津波の時の地震に続くほどの最大級の地震がチリを襲ったのですが、震源地がアリカやイキケなど北部の辺鄙なところだったので被害者は少なくてすみました。震度7.9なのに死者11人でした。
その辺の家はアドベといって土を固めた日干し煉瓦の家なので、大きな地震では見る影も無く崩壊してしまいます。しかも次の集落に行くのに山のそばに細い道路を作って走行しているので、上からの落石で走行中の車両が襲われ死者が出ています。
ペルーとの国境に近いその地区には大きな銅山があり、私も何十回と通行した道が今回の地震で大被害。もしその銅山にその日訪問していれば、ちょうどマインから町に戻る頃で、危なかったです。
しかしいつものように被害者がテレビカメラの前で文句を言っていますが、大統領が約束した援助が来ない、政府は口ばっかりで何もしてくれない。サンティアゴから毎日軍隊の飛行機で援助物資を送っているのですが。
私もちゃんと銀行に設けられた被災者援助口座に振り込みしました。
2)ロダン彫刻盗難事件
驚きましたね。国立美術館からロダンの作品が盗まれたと報道されたらすぐに大学生がそれを拾ったと届け出たというのですから。その大学生は逮捕され、彼が盗んだのがわかりましたが、美術館の警備に欠陥があるのを知らせたかったからと発言しています。彫刻の大きさは50センチくらいのものなのでかばんに入るでしょうが、重さが20キロといわれるのでそう簡単には持ち出し出来ないと思いますが。
5月から8月までの間、ロダン展が開かれており、そのためにチリ入りした美術品。
警備員は何も見なかった、各展示物に設置されている警報は発動しなかった、カメラもその時点で何も写っていないと警備システムは全く役に立っていません。
美術好きの私は今年もその美術館に行きましたが、警備体制は甘く確かに本物に触れるほどです。それから過去にも同様の犯罪が発生しています。
でも逆にこの事件のために観客と展示物との距離を広げることになれば楽しみが減りますが。
3)コロニア・ディグニダと言えばチリの南部にある旧ナチのドイツ人が作った共同体ですが、そこの元責任者ポール・シェイファがチリ官憲の目を逃れ、国外逃亡していた先のアルゼンチンで逮捕されたと、既にチリの風で報告済みです。さてその共同体で今週大量の武器が発見されました。しかもそれがたんなるピストルの類でなくもっと重火器類で、例えば対空ミサイルとか、それを何に使用するつもりだったのか調べられています。そこではサリンガスの生産もされていたと考えられていますが、軍事政権時、秘密警察がそこを左翼側逮捕者の収容所、拷問場所に使用したことが明らかになっており軍、コロニアが共同で何らかの作戦を行っていたことがはっきりしてきています。しかも1990年ごろまでの秘密書類が見つかっており、それには政治家や行方不明者など約500名の個人データが含まれているとかで、これを調べればもっと事件の全貌が分かるはず。悪事も最後には明るみに出るという例でしょう。
4)冬休みはまだなので、飛行機の座席が空いていることから安いツァー旅行の案内が新聞に良く出ます。例えば4万円でブラジルやウルグアイのリゾートに6泊七日の旅。8万円でマイアミ、メキシコに4泊5日の度などです。安い。
5)交通事故
04年のチリ全国の交通事故は約46000件で、死者は1757人、交通事故による損害総額は5億6500万ドルと計算されています。
(スポーツ)
1)サッカー
何と言ってオランダで開催中の20歳以下の世界選手権。初戦オンズラスに7対0で大勝したチリですが、私の危惧が当たって次のスペイン戦でなんと屈辱の0対7。ぴったり同じ得点が面白い。さらに最終戦も落とし最悪の結果でしたが、何とか二次予選にもぐりこむ。最初の試合に勝って大騒ぎしたチリ人ですが負けが続くと、最後はもう食事時の話題にもならず、テニスの話でもしょうかと言っていました。
一方日本も一度も勝てない最悪の展開にもかかわらずニ次予選もぐりこみ成功。なんだチリも日本も同じような展開。でも良かった良かった。次の試合、勝てるかな?チリと日本。がんばれ。
チリのサッカーはプレイオフが始まりベスト4が決まりましたが、常連のコブレロア、チリ大学、コロコロは負けてしまい、残っている有名チームはカトリカだけです。
一方リベルタドーレス杯の準決勝進出チームが決まり、チリのチームは既に敗退。チリ人のサラスがいるアルゼンチンのリバプレートは見事4強に入りました。準決勝ではブラジルのサオパオロと対戦します。
2)テニス
ATPの4大大会の一つ イギリスのウィンブルドン大会が来週から開催です。チリからは3人の選手が出場します。マス、ゴンサレスに新人のガルシアです。どうなるかな?
以上