チリの風 その995 2022年6月6日―12日

先週は曇った日が続きましたが、今週は太陽がさして最高気温20度ほどになり秋晴れの雰囲気。
陽の当たるベランダに座り、ゆっくり本を読むのは最高の贅沢です。もっとも天気予報では来週は再度、元に戻って曇り・雨の日が続くとか。
土曜日、登山教室がありました。絶好の登山日和に恵まれ、10名で第1展望台に登りました。

意外とスモッグが少なく、きれいな街を見下ろす展望台に着いたのは全員の喜びでした。
ラソンもいつもの通り、週日は一人で10キロ、週末は仲間と楽しく走っています。
今週のトピックとしては準備が整ってきた日本の歴史の事を近くの四つの学校で登録(?)しました。ある学校の教頭の前で、少し話をすると、もっと聞いてみたいと言われました。先方からいつか依頼が来るでしょうね。日曜日の昼食は仲間と楽しく。今日は仲間が料理を作ってくれました。ありがとう。
こうして毎日、いろんなことが出来るのがうれしいです。

(政治)

1)ボリッチ動向
 私の先週の予想が当たって、彼の年次教書が良い印象を与えたようです。6月の世論調査で彼を支持するは44%まで上がり、不支持は47%に下がりました。
 その教書ですが、68%の人が教書の発表を見たらしい。そしてその内63%はそれを評価するとしました。その数字は2014年の時以来の高い数字。
ボリッチの人気が上になったわけですね。
ところが、その後の政府機関の世論調査は全く逆の結果が出ました。
ボリッチを支持するは32%にしかならず、民主化が始まってから最低の数字でした。国民の多数が、社会の安全・経済の安定を現行政権は実施できないと悲観的です。内閣の中では大蔵大臣がトップの評価を受け、逆に大統領に次ぐ内務大臣が低い評価を受けています。

さてボリッチの北米出張ですが、先ずカナダでトルードウ首相と会談して、同国の安全体制が隣国アメリカと全く違って堅固なのを評価し、カナダの銃の所持の仕組みをチリも学びたいとしました。
翌日、アメリカに入り米州首脳会談に出席しましたが、その前にロス・アンジェルスの区長と面談。水不足から来る問題を話し合いました。両者ともその問題を抱えています。
さらに起業家と会議をしました。彼は「チリでは右翼から左翼に政権が変わったが、皆さんの企業に与える影響はありません。皆さんの権利は全く不動です。
税務問題とか自然保護などの問題で関係省庁が連絡してくることは考えられますが、それは各省庁の動きで、責任は政府ではありません」
彼は「世界はチリを必要とする。そしてチリも世界が必要だ」としました。
その首脳会議に関しては良かった・大きな成果はないと評価が分かれていますが、ボリッチには初めての各国首脳とのコンタクトで値打ちはあったと思われます。その後、バイデン大統領と少し面談しました。
この北米外遊で、彼は英語とフランス語を使って面談しました。会談出席者の中の男性でネクタイを締めていなかったのは彼だけです。
2)新憲法委員会
 ボリッチの件と同じく新憲法を承認するはアップして42%、拒否するは下がって45%になりました。ほとんど互角の勝負ですね。9月まで緊張は継続です。
右翼側はもし否決が勝つとすれば、私たちは現行憲法の一部改訂を提案したいと余裕を見せています。

(経済)

1)公定金利の上昇
中銀の発表で再度金利が上がり9%になりました。昨年12月は4%でしたから、短期間に極端な上昇をしたことが分かります。
5月のIPCが再度大きく上昇していますから、物価上昇と金利の上昇が競っています??
その物価上昇率は1.2‘%、過去12か月で11.5%と高めで動きません。
このため、物価上昇率が賃金上昇を上回り、今月は実質賃金が下がりました。
2)銅価格と為替 1ポンド4.33ドルと高値安定、為替は1ドル827ペソとややペソ安になりました。

(一般)

1)コロナ問題
 木金と二日続けて新規感染者数は11000人を超えました。土曜日も10600人とほぼ同じ。陽性患者総数は47000人と3月以来の高い数字になりました。
 現内務大臣はピニェラの時代は医師協会の会長をしていて、政府のコロナ対策が適切ではないと批判していました。彼女が政治を動かすようになったら、適切な指示を厚生大臣に出していないようです。感染をどう抑えるか政府案は全く出ません。もっとも市民も緊張している様子は全くありません。慣れてしまったの?

2)マプチェ問題
 毎週、同じですね。今週もカニェテなどで放火事件が継続。死亡者も出ています。ビオビオ・アラウカニア州(第8,9州)の各地で市長・町長が脅されていると報道されました。
 コントロールができないわけですね。森林地区でトラックや重機に放火され、軽四輪車が盗まれるる事件が毎日続いています。
今日の新聞に「消えかかった町の明かり」として第9州のカピタン・パステネスの特集が組まれました。20世紀の初めにイタリア人の移民が住み着いた町です。イタリアの雰囲気で人気があったのですが、今では誰も来ません。以前はイタリア系とマプチェは友好な関係でしたが、今ではマプチェが移民の子孫の車に銃弾を浴びせ、出て行け侵入者と言うとか。
 コロンビアのゲリラ組織が同国の領土の一部を占拠していましたが、チリでも同じようなことが起きているわけです。
 ボリッチ政権は彼らとの会話が必要だとし、内務大臣がアラウカニア州を訪問しましたが、全く誰とも会えないで首都に逃げてきました。ボリッチもそこには行けません。
 政府は3回目の軍隊駐屯案を国会が承認するよう要求中です。これに関して前政権の内務大臣がどうしてこの案を犯罪が抑えられない首都圏にも運用しないのかとコメントしています。

 さてマプチェの最大勢力のCAMの創始者がテレビのマイクの前で、彼らの信条を語りました。その中で学校の占拠案(彼らの管轄に置く)も出ました。
 もし彼が国会を訪問して、下記のように話せばどんな反応があるでしょう?
 「私はマプチェを代表してここに来ている。私は君たち全員を刑務所に送り込みたい。君たちがマプチェにおこなったことの責任を取らせるためだ。チリが独立した時アラウカニアはチリの領土ではなかった。しかし君たちは一方的に侵入し私たちの領土を奪い、住民を殺害した。その時、政府は会話が大事だと言ったか?
 ノーだ。国会は暴力はいけないと言ったか?ノーだ。
 私たちが森林会社の土地から材木を盗んでいると君たち喚くが、ここは私たちの領土だから、盗んでいるのではない。
 私たちが麻薬を扱っていると君たちは批判してくるが、君たちが銃で私たちを攻撃してくるのをどう防げばよいのか?私たちも銃で防衛する必要がある。
 君たちの銃は国税から費用が出るが私たちには税金は回ってこないから銃を購入する費用を自分たちで出す必要がある。
 税金を回してくれるなら麻薬を扱う必要はない。
 私たちはマプチェの領土に入ってきている君たちを追い払いたいのだ。のんびりとあの昔の頃のようにマプチェの生活を送りたいのだ。
 君たちの狂った頭を正常化したいのだ。君たちも私の言う事実を真摯に考慮し、一方的な考え方でマプチェを攻撃するのは止めてほしい」
 もちろん、これは私の発想ですが、これが発表されれば、世界中でマプチェ問題が取り上げられるでしょうね。
 
 いつも付加として出していますが、高校生の暴力デモも継続で、その内の一つとして有名な高校INBAの校長室に火がつけられました。その学校は授業が停止になっています。またイタリア広場のデモも金曜日にあり、交通が遮断しました。全く進展・改善がありません。
3)観光
 パタゴニアの最も有名な観光地はプエルトナタレスにあります。そこにサーモン業界が進出し、自然破壊の問題が出ています。
 養殖が全部悪いと言うことはないし、全部問題ないと言うこともありません。つまり今、そこで自然汚染が起きているなら現在そこで操業している会社に適切な指示を出すべきです。操業停止ではなく改善指示ですね。市民は観光が大事なのはわかっているが、サーモン関連でかなりの人が仕事を得ているのは喜ばしいと養殖廃止には反対しています。
4)大気汚染問題
 またキンテロなどで大気汚染問題が起こり、多くの住民の生活に影響が出ています。学校も授業が止まっています。ピニェラの時に大問題になった同じ地区です。
 その近くの数社の企業が石炭火力発電や化学薬品などを使用した操業をしており、問題の本質は既に明白のはずですが、問題が再燃しました。
 その頃、反政府だった新左翼は政府は企業の側に立って市民の健康を守るために企業の行動を抑えることをしないと批判しましたが、今こそ自由に企業を規制してほしいです。
 新聞にこの大気汚染問題は3月に始まっているのに政府は何ら対策を取ろうとしなかったとされています。右も左も政治家は同じですね。

(スポーツ)

1)サッカー
アジア訪問中のチリ代表チームは先ず韓国で同チームと対戦。0対2で軽く負けました。その後日本に入り、対チュニジア戦。朝3時の試合だったので実況は見られませんでしたが、昼頃、その試合を見ました。敵のゴールが取り消しになったり(日本人審判のエラー)、チリがPKを失敗したりしましたが、結局前戦と同じ0対2の敗戦。
チリがアメリカップで連勝した時、ブラジルやアルゼンチンにも負けませんでした。その頃はアジアやアフリカのチームに負けるのは考えられませんでしたが今では全く勝ち目がありません。その黄金の世代の選手で、今回の遠征でプレーしているのは一人だけです。
10代の選手がこの試合に出ていましたが、後2・3年で彼らがチリのトップ選手になれば、チーム力も上がるでしょうね。期待します。

以上