チリの風  その863 2019年11月25日―12月1日

もう40日も経過したのに社会不安が継続で、先週書いたことと同じことを書かなくてはいけません。
カイゼンがありません。            
この週末、南部の大学で日本文化の講演を2日間することになっていましたが、暴動を恐れた大学が行事を中止したので、その南への旅はなくなりました。その代わりに来週、嫁さんと二人でパタゴニアにバケーションで行きます。
こうして時間ができたので、トレッキングを二日楽しみました。最初はアポキンドの滝へ。往復6時間半歩いて滝の飛沫をあびました。またここまで歩いて来られたという喜びです。そして久しぶりに郊外のカホン・デル・マイポに行きました。地下鉄とバスを乗り継いで、その渓谷の中心の町サン・ホセに。そこからしばらく丘の上に歩きました。暴動で閉まっていた地下鉄4号線は最近開通したのですが、途中数駅が閉鎖でした。事情を知らない人が乗って、自分の降りたい駅に降りられなかったらその後、苦労するでしょうね。プエンテ・アルトの町はデモ隊と警察の衝突から町中が混乱しているようで、現金引き出し機の前で長い列がありました。今週も高校生の地下鉄無賃乗車のデモがあちこちであり、多くの駅が閉鎖されました。                           

(政治)

1) ピニェラ動向
相変わらずパッとしません。陸軍学校の卒業式に参列して卒業生に励ましの言葉を送りましたが、迫力無し。
反政府運動の中心の社会連合グループ(労働組合、反年金会、教師連合とか)をモネダに招き、面談しましたが、大きな進歩はなかったようです。ただ来年の予算が議会を通過したのは彼にとって一安心でしょうが。
2) 国際政治グループがチリの現状に関し、「ピノチェット軍事政権時から、軍隊とその関係者が政治・経済を把握し、その勢力を維持している。最右翼のUDI党は軍事政権下の政府の中枢にいた人間が設立しているが、先日解雇された内務大臣のチャドウィックは同党創立時のメンバーだった」とレポートしました。
民政化して現在は7代目の政権ですが、そのうち5代は左翼政権だったわけで、軍事政権の名残がいつまでもチリ政府の中枢にあると言うのは疑問です。
ところでそのチャドウィックは人権問題から憲法審議に訴えられ下院でそれが可決、上院に移ります。もし上院でも認められれば彼は5年間公職につけません。
3) 上院議長のキンタナ(野党側の議員)は現在のチリの危機の基本は上下格差の存在(大きな格差が縮小しない)としました。元外相のバルデスは略奪・放火の暴力行為が市民が巻き起こした社会正義の行動を台無しにしているのは自明だとしました。共産党党首のテリエルはチリの民主主義は危機的状況だが、それは政府が社会問題を解決しようとしないからだと批判。
それから新左翼は多くの党からなる集合体ですが、そこからエコ党、人民民主運動党が抜けることを確認しました。
4) 反政府運動と諸外国の動き
べネスエラ、キューバそしてニカラグアがチリの反政府運動をSNSを通じて支援していると言われます。
チリがんばれ、チリは目覚めた・・先週からコロンビアでチリと同じような反政府運動がおこり、連日デモ隊が警察と衝突しています。今週、コロンビア政府は10名ほどのべネスエラ人を国外追放にしました。彼らはデモ隊の暴力行為に参加していたからです。同じような理由でボリビアでべネスエラ人が逮捕されました。ということはチリでも同じことをやっているのでしょうね。
5) 組合活動
新聞の論調に「組合が勝利宣言をしているようだが、国の実情を考えれば反政府を掲げる現在の組合活動は適切なのだろうか」と出ました。会社が利益を出しているときに、自分たちだけでなく労働者のことを忘れるなとするのは理解できますが、現在のように会社がおかしくなるような状況をさらに後押しするのはいかがなものかと言うものです。
会社が崩壊すればその労働組合も存在しませんからね

(経済)

1) 銅価格と為替
1ポンド2.68ドルとほぼ同じ、為替は1ドル797ペソから827ペソまで動き、最終的に809ペソになりました。一次ドル840ペソになる瞬間があり、中銀が手持ちのドルを売りに出して市場を穏やかにしようとしました。
2) 経済成長率
昨年は4%でしたが、今年の予想は1.8%、来年も同じく1.7%と激しく下がりそうです。
3) 小売業
首都圏の小売業の動きですが、前年対比で8月は5%アップ、9月は4ダウン。10月は17%のダウン。11月はもっとひどい数字でしょうね。
同じように10月の航空界は、国内線が前年対比4.3%、国際線は8.2%の減少。11月はもっとひどくなりそうです。そして第4四半期の失業率が大幅増になるのは避けられませんね。

(一般)

1) ホテルの強奪
チリの各地でホテルが襲われていますが、今週はラ・セレナのホテルが襲われました。今年の皆既日食グループアテンドの為の予行演習の時、そこに私は宿泊しましたが、なんでもほとんどの部屋のテレビが奪われたとか。
似たようなことで高速道路の運賃徴収所が50カ所も燃やされました。
デモは毎日チリ各地で行われていますが、この土曜日、私の家の前をデモ隊が通りました。これで4回目です。それほど数は多くないデモ隊が静かに歩いているところに、警察の放水車がいきなり水を掛けました。明らかに過剰です。まだ警察は人権問題で批判されていることを認識していませんね。なんでも来週、ここラス・コンデス区にある3つのモールにデモ隊が襲い掛かり略奪・放火があるらしい。そういう噂が出ています。

(スポーツ)

1) サッカー
サッカー連盟の会議で、ペンディングの数試合を残して今年のリーグ戦は終了と決定しました。
安全が確保できないということから、選手はストに入っています。
順位は現行のままですが、規則を変えて、下位の2チームが2部リーグに落ちるのを止め、1部にとどまる、逆に2部リーグの上位が1部リーグに上がるのも中止となりました。人気のチリ大学は下から2番目ですから、通常では来年は下部リーグ転落ですが、この新ルールで1部に残りました。何だか怪しいですね。
2部リーグのチームはこれらから連盟は1部リーグのことだけを考えチリのサッカー全体を考えていないと強く批判しています。
私はかなり熱狂的なサッカーファンでしたが、もう熱が冷めています。その昔、カトリカファンクラブを作って、カトリカのホームゲームの応援に仲間と参加。最大16名の日本人が大声で応援しました。目立ちますよ、それだけ日本人が集まれば。それはカトリカの応援ではなく、日本人にチリ人がどのようにサッカーを楽しんでいるかを見てもらいたかったのです。
それは昔の話。ここにきてもうカトリカもチリのナショナルチームの応援もそこそこにします。やる気のない選手、各チームの運営者、サッカー連盟にがっかりですから。

以上