チリの風  その862  2019年11月18日―24日

今週も暑い日が続き、水曜日は35度で、平均温度では過去10年間で11月として最高とか。家の近くのジャカランダの紫の花が満開です。
土曜日は登山教室。仲間の10名とプロビンシア山の中級広場へ登りました。往復6時間の歩きでしたが、小学生もしっかり歩きました。その日、気温はそれほど上がらず、涼しい風が吹いたので歩きやすかったです。私は34000歩くらいの歩きでした。
日曜日はマラソン練習。4名で出発、走り終わってからベランダに座り、コーヒーを飲みながら話し合い。いつものように人生を楽しんでいます。

(政治)

1)ピニェラ動向
何かやっているようですが、すっきりしません。
さて外務大臣の訪日がありました。
G20外相会議が日本で行われたのでリベラ外相が訪日。
G20外相会議(メインテーマはWTOの改革案)に出席したほか、日本の大手7社と面談。チリの実情を説明し、日本からチリへの投資を呼びかけ。もっともその7社は支店をチリに置いているので、外相から聞かなくてもチリの実情はよく理解しています。また他国外相との面談も実施しました。
国際人権委員会が今回のチリの情勢をチェックし、軍隊を批判する報告書を発表しましたが、政府はそんな報告書は虚偽のものでチリの真実を見ていないと軽く一蹴しました。警察の発表では警察署が襲われたのは169署、怪我をした警官は2255名と言われます。
しかし政治の世界は大騒ぎです。野党の中でキリスト教民主党DCが政府と種々の話し合い・ネゴをしようとすると社会党が嫌がらせをすると批判しました。野党連合崩壊寸前ですね。新左翼FAも参加の各党が独自の見解を持ち、連合体制の維持が困難。一部の党は連合から離脱を来週発表する見込み。新憲法設立の会議で共産党以外の与野党が議論したわけですが、新左翼の中にどうしてこの会議に参加したのか、ボイコットするべきではなかったのかとする意見が多く混乱しています。           

2)暴動さわぎの継続
ここで考えたいのですが、どうして暴動が続くのか、誰がそれをやっているのか。
彼らを後ろで操る勢力についていろんな説があります。例えば、アナキストグループ。もう何年も前から彼らは爆弾を使ったテロを実施しています。その連中が外国から支援を受けて暴動を演出していると言うわけです。デモ隊が通過した後の落書きに1312、ACABと書かれていればそれはそのグループです。彼らのシンボルを赤字で商店の扉に書くと、しばらくして暴徒が略奪に来るとか。新聞の略奪事件の写真で良くその表示が写っています。             
それから麻薬組織も噂されています。警察の自分たちへの攻撃を薄めるため暴力デモグループを支援するのですね。今週、麻薬組織の幹部が一人逮捕されました。ビデオにその男が警官に発砲するところが撮影されていたからです。                    
さらに共産党グループも言われます。共産党が牛耳る労働組合のデモは頻繁です。 
まだあって、サッカーチームの応援団。熱狂的なグループを勇敢グループと呼びますが、もちろん日本語では暴動グループでしょうね。彼らはサッカー場で暴れるだけでなく略奪・放火時に積極的に参加しています。その時、ひいきのチームのユニフォームを着ています???。
嘘みたいな話ですが、中小スーパーマーケットを暴力グループが襲い、略奪・放火をするとそんな店はほとんど立ち行けなくなって破産します。それを買い上げるグループがあるらしい。買い上げる価格は通常の半分以下でしょうね。                  もちろんそれらの怪しい組織の間にコンタクトはないでしょうが、いや、あるかな?
120万人が参加したデモの時は暴動・略奪・放火の問題はほとんどなし。つまり一般の反政府デモは暴動とは全く関連していないと思われます。
略奪・放火の事件に外国人が関与していると言う話は前から出ていますがが、少数の外人が多くの事件を起こしているのではなく、彼らがリーダーになった事件もあるだろうが、実行するのはチリ人でしょう。
ここで浮かび上がってきます。物を壊す・放火するのに喜びを感じる人間は、それまで通常の生活を送っていなかったのだろうと言うことです,そしてその古い自分を破滅するかもしれない機会が現われると、それに没頭するのでしょう。ほとんどが20歳以下の未成年と考えられていますが、個人の問題より、平和・幸福を感じて育っていなかったわけで家庭の問題が大きいということになりそうです。
チリが南米の優等生と言われた1か月前も同じ状況だったわけで、いつ爆発するかわからない火山の上にいたわけです。これは左翼・右翼の問題ではなくチリ全部の責任で、この暴動騒ぎが収まっても問題の解決に向けた手を打たないと、5年後、10年後に同じことが繰り返されるでしょう。
今日、日曜日にピニェラは爆弾宣言。社会の平穏を守るため、軍隊を使用するとしました。先月のように街頭に立たせるのではなく水道・ガス・電気などの市民生活の基礎となる分野の施設保護にあたる模様。もちろん野党は厳しく批判しています。
ところでチリで起こっている状況は、一番ひどいべネスエラを筆頭にメキシコ、コロンビア、エクアドルボリビアと続き、近々アルゼンチンに飛び火するでしょう。ラテンアメリカでは暴動が各地で日常茶飯事になっています。そしてその裏組織の連結で、同時にそれらの国で暴動騒ぎが起きれば、通常の危機を超えた破壊の危機になります。政治・生活すべてが動かなくなるでしょう。その各国の同時デモが設定されているとか。

そこでその対策を考える必要がありますが、120万人の反政府デモ参加の人にとって、暴動をはじめるのが目的ではありません。議員が喜んでいる新憲法設定でもありません。
年金、最低賃金、労働時間、失業率対策、健康問題(薬品価格)など毎日の生活に関することの前進が必要です。
これに関しては、先ず国会で議員の給料を半分にするのが決定されました。もちろん手取りが半分になるのか、いろんな項目の援助は同じなら、最終手取りはいくら下がるのか、詳しいことはわかりませんが、少ない仕事で最高給を取ると言うクレームに答えました。しかし議事堂の中で議員の手伝いをしている職員が抗議行動をして、議員と違って自分たちは高給取りではないから、私たちの給料に手を付けるのはやめてほしいと訴えました。議員が各自の経費を縮小するために、彼らを首にするとか給料を下げることもやりかねないのですね。また議員だけでなく裁判所や政府関係者の高給取りにも影響するようで、裁判所から三権分立なのだから国会が裁判所のことに口をはさむなとクレーム。いやはや。
このデモ暴動で来年は失業者が増えると言われますから、何のための戦いかということになる可能性もあります。確かにこの2か月、チリを目指してくる移民が激減しました。予想では今年のべネスエラからの移民は昨年の7分の1になるとか。観光客がこないほどだから移民なんか来ませんね。
私の個人の意見では今、全力を挙げて注力するのは市民の声を聞くことで、新憲法が第1ではないだろうということです。       
政府はその問題の一つ、最低年金をこの先3年で50%アップすると言う方針を立てました。3年後にはピニェラ政権はないですが。現行の11万ペソを80歳以上は来年から16万5千ペソに、それ以下の中高年は3年間でその価格に着くよう調整とか。
チリ再建に、私もボランティアで何か手伝うことがあれば引き受けたいです。

所でいろんな国内問題を解決。縮小するためには資金が必要ですが、その金の出所は大半が借金になるのは自明。ただしムーディズの発表ではチリの国債は国民総生産の28%、日本の238%に比べると余裕です。
そういえば、5か月も続いた香港の騒動も終焉が近いようですね。香港の場合は政治問題が中心でしたね。昔の日本の学生運動の雰囲気がありました。

(経済)

1)経済成長率
今年の第3四半期は3.3%と好調。もちろん10月から奈落の底へ落ちるのは自明のこと。
投資もその期間は過去6年で最高の5.9%だったが、2019年合計は4.8%で終わるらしい。つまり10月の暴動騒ぎがチリ経済に与えた影響は大きいです。もちろんそれより市民の生活を守る、よくすると言う必要性も理解できます。
2)銅価格と為替
銅はポンド当たり2.65ドル、1ドルは796ペソとほとんど動きなし。
3)所得税
チリの最高所得税が35%から40%になりますが、これはOECD平均の42%より少し低い数字。スウェーデンは57%、日本は56%とか。日本もなかなかやりますね。素晴らしい。
4)ガソリン価格
4週間ほど価格据え置きでしたが、今週は少し値上げ。もっと1リットル6ペソほどで1円にもなりません。

(スポーツ)

1)サッカー
国内リーグ戦が再開しましたが、ほんの少しだけ実施され大半は中止。暴動ファンがサッカー場に流れ込むとかの嫌がらせで試合が中止になりました。警官は全く現れず、混乱の収拾はなし。しかしほんの少数のファンがしたい放題と言うのは理解できません。
2)テニス
デービスカップの世界大会がマドリッドでありましたが、チリはアルゼンチン・ドイツの組に入り2連敗でみじめな敗退。まだまだ世界の壁は高いですね。

以上