チリの風  その188  06年8月21日-27日

チリの風  その188  06年8月21日-27日

先週は冬から夏へ一足飛びに季節が転換しましたが、それが一段落。今週は本来の初春に戻りました。
それでもあの暖かい気温に既に反応してしまったシルエラはもう満開になり白やピンクの花で飾られています。先週のチリの気温がそれに直接関与しているのかわかりませんが、地球の温暖化は南極の氷を溶かしているようです。南極が広大な緑の大陸になるころは、その温暖化を招いた人類は滅んでいるでしょうから、その後、再度、地球に寒冷化の波が訪れるかもしれません。


(政治)
1) がんばれバチェレットと言いたいが、国民の支持率は落ちる一方だし、下記の社会党党首発言のように、彼女が強いリーダーシップを持っていないことを露呈する事柄が続出し、可哀相にと言うのが精一杯の慰め。
さて一番の問題は来年度予算でしょうね。与党間でもめています。その次は社会党党首の発言からくる財界との問題。それから高校生の問題も深刻さを増し、学生と有識者で作っている評議会から、学生代表は脱退するかもしれないとなっています。ほとんど進展しない状況に高校生が苛立っているわけで、これを若者は甘い、もっと大人の世界を理解してほしいなどと言いつづければ、9月に入って前回以上の大規模なデモが起こることは必至ですが、女性の現文部大臣にそれを抑える能力は無いようです。

2) さて社会党の党首の発言が問題になっています。彼は企業の経営者は吸血鬼のようなものだと発言。経団連のみならず各方面から批判が上がっています。政府からも発言内容には注意してほしいと喚起を促すコメントが出されました。しかし身内にこういう人間がいれば、おばちゃんの気持ちも萎えるでしょうね。せっかく財界のメンバーと懇親会を持ち、何とか上手くやっていこうと彼女は努力しているのに。
社会党内でも問題になっていますが、その党首はかたくなに発言を取り消そうとはせず、挑戦の姿勢を続けています。
このままでは与党連合の消滅まで進む・・・と言う気がします。で、ずっと前から私が言っているように与党連合からキリスト教民主党(DC)が離脱して、野党連合のRNと合併。中道連合を結成し、右翼、左翼と対決するのでしょう。それが一番自然です。で、そのときは、そのアホな社会党党首は党内で葬られることになるでしょう。

3) ピノチェット
やっぱり彼の話題は注目を引きますね。なんと言ってもチリを代表する役者ですから。さて今週は彼の息子がテレビに出てコメントしました。
まず将来の父親の葬式に政府は国葬を準備しないと言うことに関し、全く関心がない。左翼政権の人間に父親の葬式にきてもらいたいとは思わない。これは家族の問題ですと冷たい反応。またフレイ元大統領が暗殺された疑いに関し、そのフレイの息子は大統領をしていたが、彼の在任中に全くこの問題に触れなかった。それを今になって事件にしてくるのは納得がいかない。単に嫌がらせ、政治追求なのだろうってコメント。さぁどうかな。 
それからそのピノチェットをロンドンで逮捕させたスペインの判事がチリを訪問しています。土曜日、彼はモネダ宮殿を一般観光客として訪問。しかし政府の主要人物は誰も彼を公式に招待しませんでした。もちろん右翼政党は彼をチリにとって好ましからざる人間として強い否定のコメントを出しています。

4) まぁそれと比べるとインパクトは小さいが、フジモリはあっちこっち出歩いて楽しい生活を送っているようです。先週の週末はサパヤールと言う保養地・漁港に行ったらしく楽しそうににっこり笑って小さな船に載っている写真が新聞に掲載されていました。人権問題や不正蓄積などで追及されている人間には全く見えません。やはりトップに立つような人間の精神は通常の我々のそれとは全く違うものなのでしょうね。


(経済)
1) チリの6月の経済成長はわずか4.9%の伸びで投資にブレーキがかかり始めたと中銀が発表。

2) エスコンディーダ鉱山はもう3週間目に入ったストで散々です。しかし労働者も粘るが会社も粘る。もう少々(小額ではありません。百万ドル単位の話です)の損害は目をつむるから、労働組合には負けるなという指示が本社から出ているのでしょうね。
お隣りのコデルコの労組みが、激励応援に駆けつけ、最後まで負けるなとコメントしていましたが、当然ですね。彼らはこの交渉の結果を見て自分たちの賃上げ・一時金のネゴに入るのですから。

3) 先週、中国との自由貿易協定の話を書きましたが、10月からその協定が発効、この中国との協定でチリは既に50カ国、世界の75%の経済圏と自由貿易協定を結んだことになるらしい。日本との話は進展が遅いとしましたが、今週、日本から代表団がサンティアゴ入りし、遅れを取り戻そうとするらしい。あまり期待しないで見守りましょう。

4) アルゼンチンから不当に安い牛乳が入ってきて、自分たちの製品を押しのけるとチリ南部の酪農業者が政府に対する抗議の声を高めています。
先日、スーパーで牛乳を買うとき、いつもより安いのがあったのでつい買ってしまった。アパートに帰ってよく見ると、アルゼンチン品だった。ごめん、オソルノの牛乳屋さん。次回はちゃんと国産品を買います。


(一般)
1) 犯罪の増加
日本大使館からチリ在住の日本人にメールで各種のお知らせが来ますが、その中で邦人女性が襲われたとありました。アパートの近くで自動車から降りたところを襲われたそうですが、大声で助けを求めたので、大きな怪我もなく物は取られたが助かった由。そのとき誘拐される可能性もあったと報じられています。しかしショックでしょうね。自宅近くで襲われるなんて。他の場所なら、もうそこには近づかないですみますが、自宅では引っ越ししなければ逃げられませんから。犯人はすぐに捕まったらしいが、それは近所の人が警察に通報してくれたからとか。
それからショッピング・モールに軽四輪貨物車で突入し、車をぶつけてシャッターを壊し、中に入って物を盗むと言うアクション映画のような事件が続いていますが、今週その犯人グループが逮捕されました。ちゃんと映像に残っていたので犯人の特定が出来たのですが、犯人は捕まるとき、意外に早かったなともらした由。チリの警察もやるじゃないか!
派手な犯罪の増加は確かですが、犯罪全体では増加は認められないと内務省が発表しました。数字は本当なのか、手が入れられているのか知りませんが、それによると首都圏などわずかなところ以外は、今年の犯罪届け出数は減少しているらしい。

2) 各地で区役所と地域住民の戦いが繰り広げられています。それは税収の増加を図る各地の区役所が大手の建設会社と組んで宅地の増加を図っているものです。それに反対する地域住民が裁判所に訴え出るわけですが、
裁判が続いていると建設工事が開始(継続)出来ず、会社側の損害が増大すると言われます。それにしても首都サンティアゴのマンション建設はもう常軌を逸したほどの急速度ですね。

3) CDやDVDのコピーが出回って、CD制作会社やレコード屋さんに利益が入ってこない、いわゆる知的所有権抵触問題でチリは世界の最低水準に位置しています。先週の裁判事務所でコピーDVDが売られていた事件とか、今週ニュースになった法務省内でのコピーCDの販売はその象徴のような事件ですが、まだ逮捕者は出ていません。しかし法務大臣は同じ事務所の中で海賊版CDが販売されているのを見なかったのかな?

4) 現行の市内バスは来年早々に消滅し、新システムに切り替えられます。現行のバス(黄バスと呼ばれています)は会社そのものがなくなるわけですが、今週政府はその黄バスに74億ペソを準備すると発表。なんと言うのですかね、このお金。慰労金、感謝金、退職金?・・・
しかし他の業種でこんなお金を政府が払うなんて聞いたことはありません。ちゃんとテンダーで新システムの担当バス会社を決めたのですから、それに負けたところは自前で処置をするのが当然で、政府が巨額の保証金を払うのは不可解です。このお金はバス会社のオーナーや失業する運転手の懐に入るとか。しかし不思議な補償です。

5) 新札の流通
目の見えない人のためにお札に点字の数字が入ったお札が流通し始めました。1000、5000と10000ペソです。世界に22カ国がこの種類の紙幣を使用中とか。チリも一歩、進歩したわけです。

6) チリへの入国者
今年1−6月にチリを訪問した入国者の数は380万人。トップはアルゼンチンからで約10%。ついでペルー、アメリカ人になっています。注目されるのはボリビアで、昨年8月からチリ入国にパスポートのいらなくなったボリビア人が何と前年対比60%もアップしています。日本は遠いから10位にも入りませんが、もっとチリを訪問してもらいたいものです。

7) チリ南部でマプチェが農場を襲撃する事件が後を絶ちません。しかし警察は何も出来ないのかな?ここはマプチェの土地だと言う理屈は納得できても、じゃ今の地主を脅して?土地を奪うのは正当なのか?


(スポーツ)
1) これはスポーツの範疇なのか、一般の項目なのか分かりませんが、チリサッカーで賭博にからんだ八百長事件が発生しています。
セルビアの人間がチリを訪問し、ある選手と一緒にサッカーの試合を見に行っていますが、その試合の前に該当チームの選手に八百長を頼んだと言うもの。私は、イタリアやイギリスのサッカーならともかくチリみたいなサッカーでは世界の3流国で、誰かその結果を注目するのかと疑問でしたが、識者によると賭博の対象にするのはチリでもボリビアでもよく、単にどっちのチームが勝つかを競うらしい。従って自分の賭けた方があたると金銭が転がり込むことになるわけです。既に裁判所の事項にっていますが、まぁ調べても良く分からなかったで終わるでしょう。
さて1部リーグの今週の話題は大学チーム同士の対戦でチリ大学対カトリカ大学。これは通常のシーズンではベスト・カードに当たるわけですが、今シーズンはラ・ウーが不調で最下位に沈んでいるため、カトリカが圧勝すると思われましたが、意外にラ・ウーの勝利に終わりました。で、月曜日、カトリカファンの私は会社で大勢のラ・ウーのファンに馬鹿にされたうえ、コーラ―をおごらされることになります。トホホ。

以上