チリの風 その1047 2023年6月5日-11日

サンティアゴは朝7時でも外は真っ暗です。冬至の日が近いですからね。寒いと言っても今までは最低気温は3,4度ほどでしたが、今日は零度まで下がりました。空港のあるプーダウエル区はマイナス3度だったとか。
金曜日、久しぶりにかなりの雨になりました。そのためグラウンドに水が溢れ土曜日のサッカー教室は中止になりました。で、学校に行く替わりに近くの丘歩きをしました???日曜日のマラソン練習は仲間の後を走りました。10キロは無理だったけど。走り終わった後、太陽が当たるベランダの椅子に座ってコーヒーを飲みながらケーキを食べました。そして仲間と会話をしていると最高の幸せを感じます。
テレビのニュースで中高年の厳しい生活ぶりの特集がありました。夫婦で年金ももらって生活していたが、どちらかが無くなると収入が減少し手生活費が出せなくなるとか。子供がいても親を助ける余裕はないでしょうね。長い間働いてきて、人生の最後で一番苦しむなんて厳しいですね。それがほんのわずかの例外でないとしたらチリの状況は大変です。チリだけじゃないかな?
私は毎日何かすることがあります。つまり他の人を助け・助けてもらって生きています。
幸せな毎日です。

(政治)

1)ボリッチ動向
年次教書が終わってからテレビの番組に出演しました。そこで種々の質問を受けましたが、そのうちの二つで回答できず混乱しました。
一つ目は社会騒乱の時、ボリッチは議員だったのですが、警察は市民を傷つけるのを仕事にしているのかと批判していたのに、今は犯罪を抑えるのは政府として最重要事項であり警察の力を発揮させたいというのは矛盾していないか?
もう一つは大統領恩赦で、犯罪は抑えると言いながら強盗犯人を恩赦しているのは矛盾していないか?でした。
もちろん、最初の項はやっている仕事が違うわけで、野党議員でピニェラ政権を潰したい議員の時はデモ隊が盛り上がるのが目的だったわけです。デモ隊が犯罪を犯しても、それ以上に重要なのはデモを盛り上げることでした。
恩赦の件は、対象者は法務大臣の提案を受け、それを認証したとしてきましたが、(つまり法務大臣の責任)彼の秘書がボリッチも恩赦対象者を詳しく調べ内容を分かってサインしたとコメントしたことから、他人の責任ではなく彼が凶悪犯人を恩赦の対象にしていたわけです。
そのため、ちゃんと回答できず、他の問題に口をはさんだりして惨めでした。
しかし先週の長々と続いた教書は一般市民の共感を得て、市民調査で彼を支持するとしたのは今までの30%からかなり上がり41%になりました。
先の教書で一番重要な項目と思われる新税に関し、ボリッチはモネダ宮殿に財界首脳を招待して面談しました。
チリをよくするためには新税制が必要なので、どうすればあなたの支援を得られるかと聞いたのでしょうね。野党からそんなコソコソする動きでなく国会で堂々と論議すべしという声が出ています。
新聞の論調に増税案より経済成長率を上げる案を検討する方が大事なのではとされました。
今年の9月に軍事革命50周年記念日が来ますが、ボリッチと共産党の間にそれに関する見解で相違点が見られるとか。一方的にピノチェットが悪いとする見方と、民主主義は軍事政権下だけではなくアジェンデ時代にもなかったとする考えもあるわけです。
もっとも識者によるとボリッチやそのグループはアジェンデの時代のUP(人民連合)の考え方(動き)を正しく把握していないとしています。
なんでもよい点と悪い点があるわけですね。

厚生年金6回目の引き出し
政府がそれを止めようと言っているのに6回目の引き出し案件が国会で討議されました。提案したのは与党側です。結局、下院で拒否され次の1年間、同じ問題は議題にしないとなりました。この法案に賛成したのは48名、反対したのは63名でした。

今週のボリッチは新税制法案、その6回目の引き出し案、風邪などの病院問題、イサプレの問題が頭痛の種だったのでしょうね。来週はもう一つ問題が増えます。
教員組合が首都圏でストに入ると宣言しているからです。教員に政府が約束した報酬・金額の未払額の早期支払いを組合は訴えていました。ピニェラ政権の時は新左翼共産党は彼らと一体になって行動していたのですが、それが政権が変わっても全く変化がないことから教員組合はがっかりし、政府への抗議行動をとることにしたわけです。ボリッチも議員の時代は、いかにも正義の味方の行動・発言をしてきましたが、自分が責任を取る立場になると自分が批判していた「敵」と同じことをしているのでしょうね。
厚生大臣・教育大臣の二人を更迭せよとする声が出ているとか。
チリに報道の自由は無いとする国際機関の見解がありますが、かなり自由はあると見えますが、どうでしょう。
2)イサプレ民間健康保険
大問題になっています。最高裁判所がイサプレに過去に過剰に徴収した金額を各自に払い戻すように判決を出したわけですが、その額が過大だったためイサプレ企業の生死にかかわることなりました。それを何と第3法廷のビバンコ裁判官が、週の始めにイサプレは全員に支払うのではなく、支払い要求の訴えを出した人だけに払えばよいとするコメントをしました。少額の支払いを受ける人は、大多数でしょうが、そんな手続きをすることはないでしょうから、イサプレの支払う額は激減するでしょう。まさかビバンコ裁判官がイサプレから金をもらって方針を変えたということはないでしょうが。
その辺を突かれた最高裁判所長官はこれは最高裁判所が行っているのではなく、それを担当する第3法廷の問題だとしました。さぁこの先どうなるでしょう。
この件であちこちから吊るし上げになっているビバンコは最高裁判所の顔としてマスコミ担当の仕事もしていましたが、それを今週辞任しました???
そして何と第3法廷は金曜日にビバンコ案を消し、当初の通りにイサプレは全員に支払えとしました。最高裁判所長官、政府高官などから圧力がかかったの?いやはや。まるでテレビのドラマ番組みたいでした。
3)新憲法委員会
この水曜日にボリッチも参加して正式開会式が行われ、正副議長が選ばれました。正議長ヘビアは最右翼の共和党から出た女性です。確かにチリは男女の差が無くなっていますね。
12月に新憲法案を仕上げ、国民に提案します。国民の望む憲法が用意されるかな?与野党の同意があり、4つの委員会を作って月曜日から正式に起動する由。
ところで左翼の国会議員がこの新憲法委員会は右翼側の勢力が強く、その方向で成立するだろう。従って私たちとすればその新憲法案を否定することになるはずだ。まったく逆に新憲法案が連続して否決されれば民主主義の危機になるはずだという意見も出ています。新憲法案が出される前に結論の心配がされています。

(経済)

1)経済成長率
OECDの発表では今年のチリの予想成長率はマイナス0.1%です。
それをチリ政府は何とかプラス成長にしたいと頑張っています。
2)消費者物価IPC
5月のそれは0.1%と大きく下がっています。一時期、1%に近づいていましたからね。過去12か月で8.7%でした。
3)銅価格と為替
銅価格は先週とほとんど同じ3.80ドル。為替はチリペソが堅調で785ペソでした。

(一般)

1)病床
コロナの問題はほとんど消えました。新規陽性者は毎日50名以下で、陽性率は0.5%ほどです。ところが新しい風が来ました。インフルエンザを含む肺関係の病気で、特に年少児の問題がひどく多くの病院で90数パーセントの病床が使用されています。今週生まれたばかりの赤ちゃんが病気で緊急病床が必要になりましたが、何と病床のあるペルーの国境に近いアリカに行く必要があると言われたそうで、それも出来ずに赤ちゃんは死亡。その後に同じようなケースが出て死亡者が二人になりました。大混乱ですね。
コロナ問題の時、医師組合幹部が厚生大臣を批判しています。あの頃も病床が不足して最初は大混乱でしたね。
ピニェラは私の政権での問題解決の手腕をボリッチにお伝えしたいとしました。ボリッチは返事しません。
肺炎問題のピークは2,3週間後と予想されていますから、この先しばらくの間、この問題は大騒ぎになりそうです。現在の厚生大臣はその問題をうまく抑えられないから誰かほかの人に替えた方がよいとのコメントが出ています。
2)犯罪
多くの問題があり解決策が良く分からないのは最近の傾向ですが、今週新しい犯罪が起きました。それは高圧鉄塔の破壊です。鉄塔に爆弾を仕掛け二つに折るのですが、それがバルパライソ州(第5州)と南のビオビオ州(8州)で起きました。右翼グループか左翼グループの犯罪かまだ分かっていませんが、その辺のひったくり犯とは全く違った犯罪グループですね。彼らが捕まらない限りこの犯罪は継続するでしょう。 

(スポーツ)

1)サッカー
チリ代表はこの日曜日、キューバと対戦しました。場所は南のコンセプシオンです。観客は28000人でした。
最近の10試合でチリ代表の平均得点は0.5点で南米10か国で最少でした。
さて今日は前半にいきなり2点を取りました。後半にも1点取って3対0で勝利。しかし相手がキューバですからね。

さてリベルタドール杯に参加しているコロコロはアルゼンチンでボカ・ジュニアーと対戦し0対1で負けました。ここまではスポーツの話題ですが、その後コロコロファンがブエノスアイレスで暴行事件を起こしなんと50名も逮捕されました。5名ではありません。50名です。
もうサッカーファンというより犯罪グループですね。そういうのが国の内外で事件を起こしています。昔はそんな事件はほとんどなかったのですが。
2)テニス
全仏オープンでベスト16まで上がったジャリーですが、残念そこで敗北。ベスト8には入れませんでした。


以上