チリの風  その895  2020年7月6日―12日

水曜日、少し雨が降りましたが、それ以外はパッとしない憂鬱な冬の日が続くサンティアゴです。最高・最低気温は13度・6度くらいの日が多いです。
近所に老人ホームがあります。1か月の入居料は最低賃金の2倍以上と、かなりの高級ホームですが、コロナウィールス問題で外部からの訪問者は受けず、入居者の外出も禁止しています。さらに少し前は食堂や、建物内の庭園で老人グループが話し合っていましたが、今はすべて禁止で自室滞在を要求とか。まるで独房入りですね。
私はそれよりはマシで、週に2回(毎回3時間まで)買い物に出ることができます。今週は血栓症の薬を買うのにトバラバ地区まで1時間ほど歩きました。道路に面した多くの店は閉まっているし歩行者も少ないしゾンビの街みたいでした。3月までは活気があったのですが。戻りは地下鉄を使いましたが、乗客はほとんどいませんでした。
道を挟んだ前のビルの事務所に、夕方になる電気がともります。年の初めは全部の部屋に電気がついていたのに、今は2割くらい。ほとんど自宅での仕事になっているわけですね。厳しい毎日が続きます。

(政治)

1)ピニェラ動向
 7月9日はコンセプシオンの戦いの記念日。太平洋戦争でペルーに攻め込んだチリ陸軍が、リマ近くのコンセプシオンでペルー軍に攻められ、小隊基地の全員77名は全滅しました。彼らをたたえる行事です。ピニェラはその式典をモネダ宮殿で実施しました。
その隊長はチリの1000ペソ札になっています。海軍も5月21日のイキケの戦いを祝いますが、それも艦長のプラットが戦死した戦いです。戦争には勝ったけど、記念日は両方とも負けの戦いです。
 さて250 万箱の食料品援助配布は終了したようですが、市民から一度では足りない、2度目も頼むという声が出て政府側はそれを認 めました。今日、モビスターのアレナ劇場でピニェラが出席して第2回食品配布の出発式を実施。今回は前回より数を増やすとか。
 バルパライソ市長は2万ペソで購入できる品物を4万ペソかけて市民に配るのは賢い方法ではないとコメントしています。
 ところで最初の250万箱ちゃんと配ったのかな?どの市・区にいつ何箱配布したか発表すればすっきりしますけれど、なぜそんな簡単なことをしないのかな?
2)厚生年金
 下院で各自が積み立てた年金を10%引き出すことが認められました。
 野党が賛成、与党は反対というのが当初の見方だったのですが、与党側議員が13名も賛成に投じたため、下院では引き出しが認められることになりました。
 賛成に投票した与党側議員は党を辞任することになるかもしれないとか。このため、与党側の亀裂は激しく、週に1度、集まっていた与党グループ会議は当面中止になりました。
 土曜日、ピニェラはモネダ宮殿に与党各党の党首を呼び、各党ごとに面談。政府として彼らをコントロールできるのか、しているのか、全く統制は取れていないのか惨めな話し合いをしたようです。
 この法案についてスコッシャ銀行の経営予測部門は事前にこれが決まれば、チリの株式市場は大幅に下がると発表しました。結果は4.5%下がり、ぴったり当たりでした。外から見てもチリの政府はバラバラとなるわけですね。
 厚生年金は各自が積み立てたものですが、将来の年金の為で、各自はそれを触ることはできません。10%じゃ少ないから20%にしてくれと市民が言い止せば、国会はどうしますか?10%は良いが20%はだめと言えますか?
 昨年、現行厚生年金システムAFP反対の声が出ましたが、それを取り上げて討議するのは正常ですが、現行AFPの運用を変えるのは無責任です。
 国民が収入減で困っているなら、それを触らず、政府が中階級の人に無金利で貸し出しすればよいはずです。借金をコロナ問題が終わってから返せば問題解決になるでしょう。既にこの貸し出し案は政府から出ています。
 低所得向けの援助がいまだにすっきり行きませんが、それは条件が多く、その規則が一般に連絡されていないためです。今週、政府事務所の前に市民が長蛇の列を作り、その援助額を渡してほしいと待っていました。政府の役人は皆さん規則を守らなければ、いつまでここにいても入手できませんよとにっこり笑って説明。並んでいた人は恐らく一人もそのルールを知らなかったようす。私もネットでその要求ルールを見ましたが、以前の収入と現在の収入の証明書とかすごく複雑でした。地下鉄やバス停などに説明のパンフレットを出せば何とか市民に通知できると思うけどどうかな?
 ピニェラが悪いというより、その下の部下が細かいことをちゃんとしていないわけですね。

(経済)

1)物価上昇率IPC
 6月のIPCは前月と同じマイナス0.1%でした。ガソリン代、交通運賃が下がり、食料品は値上げがあったらしい。1年間では2.6%です。
2)銅価格と為替
 銅価格が2.91ドルと急上昇。銅の生産が先細りと言うのを見込んでいるのでしょうか。為替は銅価格上昇を受けて、ペソが強くなり1ドル797ペソでした。
3)ラタム航空
 アメリカので13億ドルの投資を受け、チリ政府からの援助は不要とか。しかし従業員の削減とか、残った人の給料削減で、苦しいですね。

(一般)

1)コロナウィルス
 患者数がこの2週間で36%減少とか。1か月前、一日で患者数が6938名まで増えましたが、今は3千人かそれ以下。今日は3012人でした。一日当たりの死亡者数も6月19日の175名から100名ほどに大きく下がっています。今日は98名。つまり問題解決には程遠いけど、最悪事態は通過したと言えそうです。医師会の方ではワクチンの予防注射ができるまでこの問題は解決しないとしていますが、通常生活に戻る可能性は出てきました
しかしチリ政府は市民に自宅待機を命じて、軍隊・警察が乗用車・歩行者が許可証を持っているか厳しく調べていますが、それと全く逆に大半の地区で好きなようにさせているブラジルと人口百万人当たりの死亡者数を比較するとチリは355人、ブラジルは332人。じゃチリ方式は意味がないのかな?
首都圏の学校は閉まったままですが、今月から一部で再開する可能性が出ています。新聞の記事に授業がなくなってノイローゼ、ストレスが高まった先生が多く出たと書かれていました。学生でなく先生ですよ。
2)そのほか
 移民関連では、先ず今年に入って移民が自国に戻った数が10万3千人になったらしい。アルゼンチン、ペルーがその中の上位とか。
 それから1か月前、ボリビア領事館の前にテントを張っていた700人はチリ政府の援助で帰国。すると今週、同じように150人がテントを張ったらしい。区役所は彼らを体育館などの収容し、帰国の手配をしているとか。まるでそこに行けば食事・宿泊、帰国の手配が全部無料でしてもらえるみたい。不思議な気がします。
 チリ人を迎える飛行機をラテンアメリカ6か国向けに準備しています。まずはドミニカ共和国。チリにいる移民難民の人をそこに連れてゆき、そこからチリ人を乗せて戻ってくるというルートです。
(1) マプチェの問題
 先週と同じく、機械やトラックに放火する事件が継続。刑務所に入っているマプチェが釈放を要求してハンスト実施中。自分たちの領土からチリ人がいなくなれば、問題はなくなるとしています。
(2) 反政府運動
 昨年10月からの運動がまた戻ってきました。その反政府デモは昨年と同じ地区で実施されているというとか。今週は6カ所で警官を襲撃する事件が起きています。去年の運動家がコロナ問題に飽きてきたのでまた警察隊と対決したくなったのでしょうか。
(3) 癌の患者が70%減少
 がんの種類によって30%から70%まで減少したと発表されましたが、それは病院がコロナ問題で手がふさがって、そのほかの病気、例えばがんに関し、診断・治療・手術が通常に実施されていないということですね。
(4) 不法占拠
 あちこちで空き地に掘っ立て小屋を建てる不法占拠問題が起こっています。バルパライソの場合は先年の山火事で家屋が燃えた人に政府が家賃援助の約束をしていたのに最近それが止まったとかで、空き地に小屋が建ち始まりました。

以上